親の介護と育児のダブルケアは突然に。もしもの備えと活用できるサポートを解説!

みなさんは「ダブルケア」という言葉を耳にしたことがありますか?

育児と介護を同時期に担うことを「ダブルケア」、その当事者を「ダブルケアラー」と呼びます。

聞きなれない言葉かもしれませんが、少子化・晩婚化が進む現代では、とても身近な社会問題になりつつあります。
ダブルケアをしている方は、一人で育児と介護を行うのは当たり前と思い込み、知らず知らずのうちに自分を追い込んでしまっていませんか?
また、ダブルケアだと気づかず、すでに育児と介護を同時にされている方もいるかもしれません。

ダブルケアに直面すると、体力・精神面ともに追い込まれてしまうだけでなく、離職などから金銭面に影響が出る可能性も。

この記事を読むことで、ダブルケアとダブルケアラーの認識、自分自身や周りの方に、ダブルケアで苦しんでいる現状がないかを確認するきっかけになればと思います。また「自分にはまだ関係ない」という方も、正しい知識を身に付け、いざという時に備えておくことをオススメします。

ダブルケアの現状

実は、昔から育児と介護を同時に担っている人は少なくありませんでした。

2012年に「ダブルケア」という言葉が生まれ、少しずつ社会問題として認識されるようになりましたが、現在でも国や自治体によるサポートはまだまだ充実しておらず、心身共に追い込まれている人が多いのが現状です。

平成28年の内閣府の調査(※1)によると「ダブルケア」を行う推定人口は25万3千人となっています。そのうち男性が8万5千人、女性が16万8千人とされており、女性が男性の2倍という数字から、女性に負担が偏っていることが分かります。年齢別でみると、30歳~40歳代が多く、男女ともに全体の8割を占めています。

このように、働き盛りな年代に育児と介護の負担がかかると、忙しくて介護離職せざる得なかったり、自身のキャパシティーを超えてしまい、うつ病など精神的な病を患ってしまう場合も。
男女平等な社会へ向けて取り組みを進める日本において、ダブルケアの負担が女性に偏っているという現状も、改善する必要があるといえるでしょう。

(※1 出典:内閣府委託調査「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」2016年)

ダブルケアの問題点

今後ますます増えていくであろうダブルケア。
ここでは具体的な問題点を挙げていきます。

・金銭的負担
育児と介護、どちらか一つだけでも負担が大きいケアが両方となれば、労働時間を減らしたり、離職を余儀なくされることも珍しくありません。ダブルケアラーの8割が30~40歳代で、住宅ローンや教育費など、生活をする上で非常にお金が必要なときに、「働きたくても働けない」という現状が、経済面と精神面、共に追い込んでしまっています。

・女性の負担が大きい
内閣府の調査結果にもあるように、女性のダブルケアラーは男性の2倍となっています。
その理由の1つに「育児や介護は女性の仕事」という考えが、現代でも根強く残っていることが挙げられます。また、働き盛りの年代ということもあり、男性側も管理職や長時間労働を行っている場合は、女性側にしわ寄せがいってしまうという現実もあるでしょう。

・一人で抱え込んでしまう
現在、少しずつ世間から認知されてきていますが、まだまだ国や行政からの支援は充実したものとはいえません。
各自治体で育児と介護、それぞれの相談窓口は用意されていますが、ダブルケア専門の相談窓口となるとほとんどありません。
家族や親戚など、身近な協力者がいない場合、相談する相手がおらず孤独感を感じ、ストレスや負担を一人で抱え込んでしまう可能性があります。

突然始まったダブルケアの事例

さまざまな問題が起こるダブルケア。まだ関係無いと思っていても、特に育児をすでにしている場合、突然「ダブルケア」が始まることも少なくありません。
そこでここでは30代で、ある日突然ダブルケアをすることになったMさんのケースをご紹介します。

夫婦共に正社員フルタイム勤務で忙しい中でも、子ども達と賑やかな日々を過ごしていたMさんご家族。この年代であれば似たようなライフスタイルのご家庭は多いかと思います。

Mさんは、38歳のときに当時10歳、8歳、2歳の子ども3人を育てながら一般企業に勤務していました。しかし認知症の実母を介護していた実父が亡くなり、ダブルケアに直面。
仕事は辞めざるをえず、それからは別居していた実母と同居を開始し、子育てと介護の多重ケアが始まりました。
毎朝6時に起床し、夜ベッドに入ることができるのは、午前1時頃。5時間程の睡眠時間はありますが、下の子の夜泣きなどもあり、常に寝不足状態で疲労は溜まるばかりでした。
また、上の子ども達の習いごとやスポーツクラブの送迎など、介護を理由に子ども達の楽しみを我慢させないようにと必死の毎日。
介護では、認知症の実母が、Mさんが寝ていて気が付かないうちに深夜俳諧してしまい、真夜中に警察のお世話になることも。他にも、認知症の影響で気性が荒くなってしまった実母から心無い言葉を浴びせられることもありました。病気だから仕方ないと分かっていても「こんなに頑張っているのに……」とうまく気持ちを切り替えられない日々。
このように育児も介護もトラブルは日常茶飯事でしたが、働き盛りの夫は仕事で忙しく、誰にも相談できず精神的に追い込まれていきました。気持ちに余裕がなくなり、思わず子ども達に当たってしまい自己嫌悪に陥る日もありました。

このように、ダブルケアはある日突然やってきます

育児と介護、そして離職。すべてMさんが1人で抱え込んでしまっています。離職する選択の前に、勤務先や自治体に相談はできたのでしょうか。同居をする際に、介護施設やヘルパーさんなどに頼る選択を身内で話し合うことはできていたのでしょうか。

自分自身と家族を守るためにも、介護をまだ先のことと後回しにせず、両親が健康なうちに考えておく必要があるといえるでしょう。

ダブルケアの備え方、サポート

育児は子どもの成長段階によって、ある程度の予測はできますが、介護は症状もタイミングも予想ができません。いつかやってくる介護に向けての知識として、ダブルケアの備え方とサポート方法をご紹介します。ぜひ、参考にしてみてくださいね。

親が元気なうちに家族で話し合いをしておく

まずは、介護が必要となった場合、在宅介護サービスを利用するのか、施設を利用するのか、家族それぞれの意向の確認をしましょう。
施設の場合は、近くの介護施設を確認、介護にかかる費用、またその費用は誰が準備しておくのかなどを確認しておくと、いざというときの心構えができます。
協力できる身内がいるのであれば、1人に負担がかかりすぎないよう役割分担を話しておくとより安心です。

勤務先の制度の確認

仕事をしている方は、勤務先で利用できる制度がないか確認しておくと良いでしょう。
2021年に法改正された「子の看護休暇・介護休暇」という制度があります。
条件を満たせば1年度につき5日(子ども・対象家族が2人以上の場合は10日)を限度とし、1時間単位で休暇を取得できるというものです。
また、勤務先が独自の休暇制度や支援制度を設けている場合もあります。

自治体の相談窓口を調べる

ダブルケアの認知度は以前より高まってきてはいますが、育児と介護を両立させる制度はありません。まずは、住んでいる地域の自治体の相談窓口を調べると良いでしょう。
高齢者の介護・医療・福祉などの困りごとがある際に支援をおこなう総合窓口が「地域包括支援センター」、ダブルケアと仕事の両立については「労働局」へ相談すると離職を回避するために利用できる制度の説明や助言を受けられます。
ダブルケア専門の相談窓口はまだ無いため、別々の相談窓口となってしまいますが、1人で抱え込んでしまうことがないよう、活用することをおすすめします。

女性の社会進出による活躍が喜ばしい背景で、晩婚化や少子化が進み、ダブルケアは今後より深刻化すると予想されています。
ダブルケアに直面した場合、大切なわが子、大切な両親、どちらも手を抜くことは難しく、自らを犠牲にするという苦しい判断をする方もいるでしょう。
ダブルケアについては、まだまだ認知度も低く、支援制度などの取り組みも少ないのが現状です。

他人ごとではなく自分ごとと捉え、一人ひとりが声を上げていくことが、今後の介護の未来を変えていくのではないでしょうか。
ケアされる側だけでなく、ケアをする側の身体も大切にしていくことが、家族の幸せな未来へと繋がるでしょう。

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