遠距離の親の介護を上手に進めるには?帰省頻度と帰らなくても出来ること

遠距離介護では、親や家の様子を見たり、病院に付き添ったりするため、「帰省」を定期的に行う必要があります。
遠距離介護を実際に行っている方で、どのくらいの頻度やタイミングで帰省すれば良いのか悩んでいる人は多いのではないでしょうか。また、これから遠距離介護を始める人にとっては検討もつかず、漠然と不安に思ってしまうかもしれません。実は遠距離介護において帰省しなくても済ませることができることもあります。今回は遠距離介護で悩む方に向けて、帰省の頻度や帰省を減らす方法などについて解説していきます。

遠距離介護の帰省における悩み

まずは、遠距離介護の帰省に関する悩みを挙げていきます。どのような悩みがあるのかを把握して、それぞれに対処していきましょう。

悩み① 仕事が休めず帰れない

そもそも帰省しようにも、仕事が忙しいので帰れない人は多いと思います。中には介護が理由で職場の人に迷惑をかけるのが申し訳ないと感じている方もいるかもしれません。

悩み② 費用負担が大きいので帰れない

親が離れた場所にいると、往復の交通費がばかになりません。親の入院などが決まって帰省頻度を増やさなければならなくなったときには、さらに費用負担が大きくなってしまいます。

悩み③ どれくらいの頻度で帰省したらよいかわからない

帰省するのは良いけれども、どのタイミング、どれくらいの頻度で帰省をしたら良いかわからないという悩みです。また、1ヶ月にどれくらいの頻度で帰省する人が多いのか知りたい方もいるでしょう。目安として自分の帰省頻度の参考にするのも良いですね。

悩み④ 帰省時に何をすれば良いのかわからない

帰省しても、具体的に何をすればわからないという声もあります。一度の帰省で、できるだけ多くのことができるように事前に把握しておきたいものです。

悩み⑤ 帰省頻度を減らしたいけど方法がわからない

負担が大きい帰省の頻度をなんとかして減らしたいけれども、どうしたらよいかわからないという方も多いでしょう。いくつか方法があるのでご紹介します。

帰省の頻度とタイミング

ここでは、遠距離介護の帰省の中でも大きなポイントである頻度とタイミングについての悩みを解消していきます。頻度やタイミングを間違えると、思わぬ出費や負担につながるので事前に計画を立てて帰省することが大切です。

①頻度

民間企業が行った介護のために帰省する頻度のアンケートによると、「月1回以上帰省している人」は8割以上、「月3回以上帰省している人」も半数以上という結果が出ています。(参考:https://money-viva.jp/kaigo-okane/0005/)意外と多いと感じるのではないでしょうか。

帰省の頻度を決める上で、まず気になるポイントは交通費です。仮に帰省を月2回するとして、往復の交通費が1万円だとすると年間24万円の出費となります。もし実家との距離が離れていたり頻度が増えたりするとさらにお金がかかります。こちらの記事(遠距離介護にかかる費用は?節約法も解説!)でも紹介しましたが、場所に応じて、移動手段を変えてみたり、往復割引や回数券を利用したりすることもおすすめです。介護全体にかかる費用から逆算して交通費に充てられる金額を出し、それをもとに帰省回数を決めましょう
費用から決めるのも重要ですが、頻度を決める一番の目安となるのは親の状態です。普段ビデオチャットやLINEでやり取りをしている中で、親が変わりなく元気そうであれば月1回帰省で十分かもしれません。逆に親が体調不良になったり、怪我をして入院してしまったりしたときには帰省回数を増やしたほうが良いでしょう。どれくらいの介護を必要としているかにもよるので、「要介護度」などを参考にして帰省頻度を決めていくと良いでしょう。

②タイミング

帰省するタイミングも重要です。帰省時には役所に行って手続きをしたり、親を病院に連れて行ったりすることがあるので、帰省は行政や病院が開いている平日にすることが望ましいです。また、年配の方は自分の病状を医者にわかりやすく説明するのが難しいことが多いので、親の通院日に合わせて帰省し、通院のサポートをしてあげましょう
平日に帰省するといっても、仕事があるので帰れないという場合もあります。また、できるだけ有給を取得して帰省したいところですが、有給の取得日数にも限りがあります。会社で取得できる介護休暇や介護休業を調べ、利用できる制度があれば積極的に利用して帰省しましょう。介護休暇などを取得することになると、まとまった休みや定期的に休みを取ることになるので、事前に家族の介護を行っていることを職場に伝えておくと安心です。

たくさん帰省できるに越したことはありませんが、どちらかというと頻度よりも臨機応変に帰省できる、職場や家族のサポート、環境作りの方が大切です。そのためにも、日頃から周りに現在の状況を共有して、いつでも協力してもらえる体制にしておきましょう。

帰省した時に何をしておくべき?

頻繁に帰省することが負担になる場合、一度の帰省でなるべくできる限りのことをしておきたいものです。ここでは、実際に帰省時に何をしておくと良いのかをご紹介します。

①介護スタッフやかかりつけ医などと会って情報交換する

帰省したタイミングで、まずはお世話になっている介護スタッフやケアマネージャーに会い、情報を交換しておきましょう。親は自分の現在の状況を子どもに心配されたくないと隠すことがあります。積極的に親の状態を教えてもらったり、現在抱えている悩みを相談しておいたりすると良い関係が築けます。
また、親のかかりつけ医にも会っておくと良いでしょう。高齢の親は自分の病気の症状をうまく伝えられないことがあるので、病院に同行してサポートすると安心です。また、医者から親の病状を詳しく教えてもらい、親の今の状態をしっかりと把握しておくことも大切です。

②近所の人とのコミュニケーションをとる

親にも普段から近所の人とのつながりがあると思います。お互いに助け合い、信頼がおける関係は、何かあったときに手を差し伸べてくれる強い味方です。帰省のタイミングで挨拶をして緊急連絡先を渡しておいたり、ときどき様子を見に行ってもらえないかお願いをしてみたりすると良いでしょう。

③親とのコミュニケーションを深める

親の状態が良いうちにコミュニケーションを密にとっておき、親の気持ちや健康状態を把握しておくと安心です。普段、オンラインでコミュニケーションを取れている方でも、対面で会うからこそ得られることもあります。親との距離を縮めることで介護もスムーズに行いやすくなります。ここで注意したいのが、親のプライドを傷つけたり不安を煽らないことです。親は子どもに身の回りの世話をしてもらうことや苦労をかけることを負い目に感じることが多くあります。関係が悪化して口を聞いてもらえない状態になると、より介護が難しくなってしまうので、徐々に仲を深めて話しやすい環境を作っていきましょう。

④大掃除などの親だけでは難しい作業をしておく

帰省時には、高齢の親だけでは難しい作業を行ったり、サポートしてあげたりすることをお勧めします。例えば、大掃除や切れた電球の交換などが挙げられます。粗大ごみを出すなど、重たいものを運ぶ作業も帰省しているうちに率先して行ってあげると良いでしょう。

⑤賞味期限切れの食品などのチェックをしておく

高齢の方は目が見えづらくなっている場合が多く、賞味期限切れの食品で溢れかえっていることがあります。帰省時に確認して捨てておきましょう。

帰省を減らす方法と帰省しなくてもできること

費用面、身体・精神面からみても帰省は負担が大きいことが分かります。本当は、できる限り帰省して親の様子を直接見てあげたいところですが、仕事や家庭環境の問題で帰省を減らしたいと考えている方もいるかと思います。この章では、帰省を減らす方法と帰省しなくてもできることをご紹介します。

①帰省を減らす方法

・一度の帰省でできる限りのことをすべてやる
親の状態が良いうちは、帰省頻度を減らすために一度の帰省でできる限りのことは行いましょう。帰ってから何をするのか考えるのではなく、事前にやることをチェックリストなどにまとめてから帰省するとスムーズに動くことができます。

・介護保険サービスを利用
要支援1〜2、または要介護1〜5の認定がおりると介護保険サービスが受けられます。介護保険サービスでは、自己負担が1〜3割で訪問介護サービスや通所型サービスが利用でき、その他にも歩行補助杖や車椅子などの福祉用具のレンタルや購入などができます。
介護保険サービスを利用することで、本来帰省しなければできなかったことをかわりにやってもらうことができるので、早めに自治体の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談をして、申請手続きを進めましょう。

・自治体の支援制度や地域のボランティア団体のサービスを利用
自治体によっては介護支援サービスを無料で提供している場合があります。その他にも地域のボランティア団体が支援活動をしているケースもあります。費用負担を抑えるためにも大変ありがたい支援なので、積極的に利用しましょう。まずは市区町村の相談窓口や地域包括支援センターに相談することをお勧めします。

・民間企業のサービス(「わたしの看護師さん」、警備会社の見守りサポートなど)を利用
有料ですが、民間企業の介護サービスを利用するのも手でしょう。体調が悪化したときに警備会社が駆けつけてきてくれるサービスや、プライバシーにも配慮したセンサー型の見守りサービスなど多岐にわたります。「わたしの看護師さん」でも訪問サービスから健康生活サポートまで、医療資格を保持したスタッフが介護のお手伝いをしているのでぜひご活用ください。

・兄弟姉妹や親戚と協力
ご自身に兄弟姉妹がいる場合には、一緒に協力しあって介護をしましょう。誰が何を担当するのかを事前に決めておくと、おのずと一人あたりの負担が減り、帰省の頻度も少なく済むでしょう。兄弟姉妹の中の一部の人だけに負担が集中しないように協力することが大切です。

・介護施設へ入居
介護施設に入居するのが一番安心かつ帰省する頻度も減らせるかもしれません。しかし、施設介護は費用が高額になることが多いので予算と相談して入居するかどうかを決めましょう。

②帰省しなくてもできること

・親とのコミュニケーション(LINEなどのチャットツールを使用)
実際に会わなくても、親とのコミュニケーションはLINEやZoomなどのチャットツールを使用することで取ることができます。日頃から親の悩み、生活状況、健康状態などを把握しておきましょう。帰省をしない分、お互いの認識のズレがないように心がけると良いです。

・親の安全の確認(見守りカメラ設置など)
最近では、離れた場所に住む親を見守るためのICT機器も充実してきています。あらゆる家電に通信機器が設置されており、一定時間の使用がないと家族に通知が行くようなシステムになっています。プライバシーも守られるよう設計されているため安心です。

 遠距離介護における帰省の頻度と帰らなくてもできることについて解説してきました。ポイントをまとめると、以下の3点になります。

・帰省の頻度とタイミングは、親の状況(体調、通院日など)と自分の状況(仕事、交通費 など)を照らし合わせながら決める
・帰省時には親の周りの人とのコミュニケーションを通して情報交換をする
・公的、民間サービスを上手く利用する

費用負担も身体的負担も大きくなりがちな遠距離介護の帰省ですが、親に会いたいと言われたり症状が良くなかったりする場合は、なるべく帰省してあげることも大切です。会社や周りのサービスを上手く利用し、あらかじめ計画を立てて、しっかりと準備した上で帰省するようにしましょう。
遠距離介護の帰省は、工夫次第で減らすことができ、有意義なものにすることもできます。親とのコミュニケーションを取り、どのタイミングで帰省することが親にも自分にも負担が少なく、お互いに寄り添った関係を築けるか考えながら上手く帰省をしていってください。

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