高齢の親が眠れない原因は?在宅介護の負担を軽減する睡眠ケアとサービスを紹介します

「高齢の親が夜なかなか眠れない」、「夜中に何度も起きてしまう」などで悩んでいませんか?親の在宅介護をしている場合は身体的にも精神的にもなかなか休むことができないですよね。昼間が大変な分、夜ゆっくり休むことができたら良いですが、親が夜も頻繁に起きると介護者も睡眠不足になり疲れきってしまうことも。

私の祖母も在宅介護でしたが、昼夜逆転で夜中に家族を起こすことも多かったため、介護をしていた母が睡眠不足になってしまった時期もありました。そんな母の負担は、祖母のデイサービスの利用やケアマネージャーに相談することで軽減しました。

今回は不眠症の種類や不眠が体に及ぼす影響、高齢者の不眠の原因や対処法、利用できるサービスについてご紹介します。

不眠症とは?不眠症のタイプと不眠が体に及ぼすさまざまな悪影響

不眠症とは、寝つきが悪い、眠りが浅く途中で何度も目が覚める、早朝に目が覚めてその後眠ることができないなどの睡眠の問題が1か月以上続き、日中の倦怠感、意欲低下、集中力の低下、食欲低下などの身体の不調が出現している状態です。

1.不眠症のタイプ

不眠症には4つのタイプがあります。

・入眠障害 慢性的に眠るまでに1時間かかる
・熟眠障害 十分な時間眠っているが、ぐっすり眠ったと感じられない
・中途覚醒 眠りが浅く睡眠中に何度も目が覚める
・早朝覚醒 起床したい時間よりも2時間以上早く目が覚めることが続く

2.不眠症になるとどうなるの?不眠が体に及ぼす悪影響

不眠になると眠れないだけではなく、体にさまざまな悪影響を及ぼします。

・日中に眠くなる、意欲低下、記憶力が衰えるなど精神機能が低下する。
・糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、高血圧などの生活習慣病になる確率が高くなる。
・免疫力が低下し、病気にかかりやすくなる。
・ホルモンの分泌や自律神経機能の影響により食欲が増し、肥満になりやすくなる。

高齢者が不眠症になってしまう原因は?

不眠症状を抱えている割合は成人で30~40%、60歳以上では50%以上と、加齢とともにその割合は増加傾向です。(e-ヘルスネット 厚生労働省|不眠症 )なぜ、加齢とともに不眠症になりやすくなるのでしょうか。

高齢者の不眠を引き起こすとされる原因は以下の4つです。

1.睡眠の変化

加齢により深い眠り(ノンレム睡眠)の時間が減り、浅い眠り(レム睡眠)の時間が増えるため、目が覚めることが多くなります。

2.生活習慣の変化・乱れ

定年退職や家族構成の変化、体の衰えなどで昼間の活動量が減少し、人との関わりも減ってしまい、昼夜のメリハリがなくなってしまいます。

3.夜間頻尿

睡眠中にトイレで何度も起きてしまうと、睡眠の妨げになり昼間の眠気や倦怠感で日常生活に支障をきたしてしまいます。

4.不眠症に関連した病気

・周期性四肢運動   寝ている間に足が勝手にピクピク動く
・むずむず脚症候群  足がムズムズ、チクチクし、足を動かすと治まる
・レム睡眠行障害   睡眠中に大きな声で寝言を言う、寝ぼけて行動する
・睡眠時無呼吸症候群 睡眠中に呼吸が止まる、呼吸が浅くなる
などの病気が関連している場合もあります。

不眠症に対する予防法と対処法

不眠を予防・改善するには高齢者が不眠になる原因を理解し、対処していくことが重要です。できることから少しずつ無理なく取り組んでみましょう。

まずは、生活習慣を見直してみてください。生活習慣を見直す際のポイントをご紹介します。

・規則正しい生活を心がける

毎朝決まった時間に朝日を浴びて起床し、部屋から出て家族と一緒に食事をしましょう。

・昼寝はせず体を動かして夜とのメリハリをつける

昼間に自分の部屋で寝て過ごしたり、体を動かす時間が少なかったりすると夜の寝つきが悪くなってしまいます。昼間は散歩やデイサービスに出かけるなど体を動かして、夜とのメリハリを。どうしても昼寝をしたい時は15時までに20~30分の短時間にしましょう。

・夜のトイレの回数を減らす

緑茶やコーヒーなどのカフェインを含む飲み物は利尿作用があり、トイレが近くなるだけではなく、睡眠を妨げてしまうので夕方以降は飲まないようにしましょう。水や麦茶はカフェインが含まれていないのでおすすめです。

水分を一度に大量に摂取すると、体に吸収できず多くが尿として排出されてしまいます。数十分に一回の頻度で数口ずつこまめに摂取するようにしましょう。
また、夜眠れないと尿がつくられ尿意を感じやすくなるので、昼間にしっかり活動し、夜ぐっすりと眠ることも大切です。

生活習慣を見直しても症状が改善しない場合は医療機関を受診しましょう。
不眠症は睡眠薬での治療が中心です。はじめは睡眠薬を飲むことに不安な気持ちがあるかもしれませんが、医師の説明を聞き正しい飲み方をしていれば過度に心配しなくても大丈夫です。
また、前述した周期性四肢運動などの病気が不眠症状と一緒に現れていることもあるため、不眠を感じている方は一度、医療機関を受診することをおすすめします。

不眠症になった時は介護サービスの利用を

不眠の対処法を実践しても不眠が改善しない、介護者の自分も夜になかなか眠れなくなってしまった、誰かに相談したいけど誰に頼ればいいのか分からない。そんな時は、一人で抱え込まず、これからご紹介するサービスを利用してみてください。

1.地域包括支援センターへ相談

地域包括支援センターでは「介護者の介護負担が大きい」「親が夜眠れない」など高齢者の介護や生活のさまざまな悩みをケアマネージャーなどの専門家に相談することができます。問題の解決に向けて必要なサービスの紹介や支援、アドバイスも受けることも可能です。地域包括支援センターは、各自治体に設置されており、無料で相談することができます。

2.高齢者向けの健康教室へ参加

各地の市区町村では、高齢者の健康の保持増進を目的とした健康教室を開催しています。運動機能や認知機能の向上、ストレス解消を目的としたものなどさまざまな教室がありますので、お近くの地域包括支援センター、市区町村の介護予防窓口にご相談ください。 

教室に参加し、人と関わったり、体を動かしたりすることで、親は昼夜の活動にメリハリをつけることができ、不眠の改善にもつながります。

また、親が健康教室や介護保険サービスを利用している間に、介護者は睡眠や休息を確保することができるため、介護の身体的・精神的な負担を軽減することが可能です。

3.介護保険サービスの利用

介護保険サービスには訪問型、通所型、宿泊型、融合型など、さまざまな種類があります。利用するサービスが親や介護者にとってベストなものになるよう、ケアプランの作成時には親の心身の状態だけではなく、介護者の悩み、家庭の事情や状態などもしっかりと伝えることが大切です。ここでは、代表的な介護保険サービスを3つに分けてご紹介します。

①訪問型サービス
「夜間対応型訪問介護」においては、18時~8時の夜間にホームヘルパーが定期的に自宅を訪問し、排泄の介助や安否確認などを行います。また、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」では、ホームヘルパーや看護師が連携しながら定期的に自宅を訪問し、利用者の状況に合わせて食事や排泄など必要なサービスを24時間必要なタイミングで行います。

また訪問型サービスでは、緊急時に自宅に訪問してもらうこともできるため、、介護の精神的負担を減らすことができるのではないでしょうか。

②通所型サービス・宿泊型サービス
「デイサービス」を利用すると、親は日帰りで施設に通い、食事や入浴などの日常生活の支援を受けられ、機能訓練やレクリエーションに取り組むことができます。また、「ショートステイ」とは、施設が常に介護が必要な状態の親が、高齢者施設に短期間入所し、入浴や食事などの日常生活の支援、機能訓練を受けることができるサービスです。

③訪問・通所・宿泊の融合型サービス
「小規模多機能型居宅介護」では、利用者の希望に合わせて、施設への通所を中心に、短期間の宿泊や自宅への訪問を組み合わせ、日常生活の支援、機能訓練を行います。また、「小規模多機能型居宅介護」で受けられるサービスに加え、看護師による訪問看護の医療ケアを利用できるのが、「看護小規模多機能型居宅介護」です。親と介護者の希望に合わせて、サービスを利用してみてはどうでしょうか。

①〜③の介護保険サービスの利用によって、親は生活リズムを保ち、他者と交流したり体を動かしたりできるため、不眠の改善が期待できます。また、介護者の負担軽減、睡眠時間確保にもつながります。

介護保険サービスを利用するには介護保険の申請が必要です。介護保険の申請についてはお住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターにご相談ください。

またご家庭の介護状況によって、介護保険外サービスの利用を検討することも、親の不眠の改善、介護負担の軽減につながります。わたしの看護師さんでは、「健康生活サポート」「訪問サービス」などのサービスを医療資格のあるスタッフが提供しています。介護認定が受けられない方や介護保険では対応できない手助けが必要な方にも利用していただくことができます。

年を重ねていくことで起こる身体の変化は避けることはできません。しかし不眠症に対処することで不眠を予防したり、症状を改善させたりすることはできます。自分の親だからと一人で頑張って在宅介護をしようとするのではなく、いろいろなサービスを利用しながら、自分の身体も思いやってあげましょう。大切な親との時間を少しでも穏やかな気持ちで過ごしてもらえたらと思います。


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介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

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