病院に付き添いたいけど、仕事や育児で手が離せない。
遠方に住んでいるご両親の体調が急変してしまったが、急には帰ることができない。
など、親御さんの通院に付き添いたいけど付き添えないーーという状況に直面することが多い、遠距離介護。病院まではヘルパーさんに付き添ってもらえても、診察室の中の様子までは分からず、「診察の内容がよくわからない」、「親に聞いても“大丈夫”としか言わないから、本当に大丈夫なのか心配になる」ともどかしさを口にするご家族もいらっしゃいます。
そこで、「わたしの看護師さん」の病院付き添いサービスでは、私たち看護師が診察室の中まで付き添うだけでなく、遠方の家族とをzoomなどで繋ぐ「オンライン病院付き添い」を実施しています。
「中の様子を見聞きすることができ、安心できた」、「病状を聞きながら今後の治療方針を決めることができた」と好評なのですが、今回はこの「オンライン病院付き添い」について詳しく解説することで、親の病院に付き添えないと悩む遠距離介護中のご家族のヒントになればと思います。
※この記事は、「わたしの看護師さん」代表、神戸さんへのインタビューを通して作成いたしました。
オンライン病院付き添いとは?
オンライン病院付き添いの前に、まずは「病院付き添い」とは何か、なぜ必要なのかを紹介します。
病院付き添い
介護が必要な親御さんが病院を受診する際、耳が遠かったり、認知症のために、親御さん一人では診察室内で医師などとやり取りをすることができない場合があります。介護保険では病院までは付き添ってもらえても、診察室の中までは付き添えない場合が多く、家族などの付き添いが必要になります。
しかし、遠距離介護や仕事や育児で忙しく、病院付き添いの時間を作ることができない方もいらっしゃいます。自分自身が付き添えない場合は、ケアマネジャーへ他の方法が無いか相談をしたり、近くの家族・親族を頼る、介護保険外サービスを活用する、という方法があります。詳しくは、「病院付き添いを上手にやりくりするコツ」で紹介しています。
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オンライン病院付き添い
病院付き添いを周りの人の手を借りながら行ったとしても、医師から家族の付き添いを求められるケースや重要な治療方針の説明を一緒に聞きたいという場合もあります。
けれど、先ほど書いたように遠距離介護や家事育児のため時間を作れない……という方に向けて私たちが行っているのが、ご家族にオンラインで診察に付き添っていただく、オンライン病院付き添いです。オンライン病院付き添いとは、介護を必要としている方の病院受診の様子をオンラインで繋ぎ、ご家族と医師がコミュニケーションをとることができる様にすることです。
(「わたしの看護師さん」が行う、オンライン病院付き添いの様子)
コロナ禍を機に「オンライン診療」が話題となりましたが、オンライン診療とオンライン病院付き添いは異なります。オンライン診療は受診したい人と、医師をオンラインで直接繋ぐものですが、オンライン病院付き添いは受診している人の家族と、医師を繋ぐものです。
オンライン病院付き添いの具体的なケース
ここからは、オンライン病院付き添いの2つのケースについて具体例を交えて、解説をしていきます。
がんの告知と治療方針を伝えるケース
1つ目はがんの告知と治療方針を伝えるケースです。がんの告知と治療方針は一般的にご家族も交えて説明を受けてもらうことが多いです。ここでは、コロナウイルス感染症や仕事の関係で病院へ付き添うことができない状況について取り上げます。
【介護にまつわる状況】
・Aさん(75歳父親):地方在住、認知症、1人暮らし
・45歳の息子:都内在住。遠距離介護中、介護をお願いできる親族がおらず、介護保険内のサービスと介護保険外のサービスを併用して介護中。
Aさんは体調が悪くなり、介護保険外のサービスを利用して病院付き添いを依頼し、検査にいきました。検査や診察の結果、悪性のがんであることを告げられました。医師は、今後の治療方針について本人だけで決めることができない場合、ご家族の方に来てもらい、一緒に決めてほしいと伝えました。
コロナ禍で、息子さんが都会から地方の病院に来ることが難しい状況でもあり、原則対面で行っているがんの告知と治療方法を伝える診療をzoomで繋ぐ許可を得て、息子さんとAさん、医師とで今後の治療方針について話をすることができました。
このケースでは介護保険外サービスとして「わたしの看護師さん」のスタッフが医師とご家族を繋ぐ役目を果たし、息子さんがオンラインで病院付き添いすることで、がんの治療方針を家族揃って検討することができました。
手術実施の可否を決めるケース
2つ目は、手術実施の可否を決めるケースです。手術実施の可否については原則、患者自身が決めることになっています。ですが、患者本人と意思疎通をすることが難しい場合、家族の判断が優先されます。ここでは、手術実施の可否を遠方にいる家族が判断するケースについて取り上げます。
【介護にまつわる状況】
・Bさん(80歳の父親):地方在住、介護施設に入居中。ほぼ寝たきりであり、意思疎通が難しい。
・53際の娘:海外在住の医療関係者。日本にいる弟がメインで介護をしている状況。
Bさんは病院で検査をしたところ尿路血石であることが分かり、治療をすることになりました。
Bさんはほぼ寝たきりで、意思疎通が難しかったため、医師からは家族の方に手術実施の可否を判断してほしいと伝えられました。娘さんは弟さんを介して症状を聞いていましたが、医師の説明を聞いた上で判断をしたいと考え、オンラインで繋ぐことができるかを医師に相談しました。
緊急で決めなければならないことでもあったため、特別に許可がおり、弟さんがオンラインで接続をする役目を担い、娘さんが手術の説明を受けることができました。
オンライン病院付き添いを成功させるためのステップ
オンライン病院付き添いを成功させる方法
ここまで、オンライン病院付き添いの具体的なケースについて解説をしてきましたが、もし自分が同じような状況になった時、どのようなステップで実施まで進めていけばいいのでしょうか?ここからは、オンライン病院付き添いを実現させるためのステップを解説していきます。
【前提条件】
1.スマートフォンを操作できない方が受診する。
2.家族もしくは介護事業者が病院付き添いをする。
①本人からの依頼を確実に受けていることを証明できるものを用意する
病院の医師からすると、病院の付き添いに来ている人が本人や家族から正式に依頼を受けているかを確認したいと思われます。書類で本人からの依頼を受けていることを証明できるものを用意しましょう。
②医師にご家族とオンラインで繋げる依頼をする(アポを取る)
オンラインで繋ぐことが出来るかどうかは、医師や病院の方針によって決まるため、その場ですぐにオンラインで繋ぐことは難しい場合が多いです。次回の診療の際に、「遠方にいる家族とzoomなどで繋げて診察に同席してもいいでしょうか?」と聞いてみましょう。zoomが難しい場合は、電話ではダメか聞いてみましょう。
③診察室とご家族をオンラインでお繋ぎする
診察当日は、診察室内に端末を持ち込み、家族の方でもオンラインで接続することができる端末を用意しましょう。後は、病院の医師に接続開始のタイミングを確認して、オンラインで家族と医師を繋ぎましょう。
まとめ
ここまで、オンライン病院付き添いについて、その内容や実現方法について解説してきました。最後に今回のポイントをまとめます。
①オンラインで病院や施設の付き添いを可能とするオンライン病院付き添いという選択肢があること。
②遠距離介護をしており、病院や施設の付き添いに行くことができないという悩みを持っている人の解決策となること。
③オンライン病院付き添いを行いたいと思った際には、ケアマネージャーや担当の医師に相談をしてみてください。
私たちへの相談で寄せられるものとして多いのは、「病院付き添い」の依頼です。診察室の中への付き添いや重要な告知の場面など、家族の付き添いを求める場合がありますが、現実問題、病院へ付き添いたくても付き添えないご家族もたくさんいらっしゃいます。
病院付き添いサービスやオンライン病院付き添いという選択肢が、少しでも、前向きに介護と向き合うためのヒントとなっていたら嬉しいです。
介護にまつわる悩みやお願いごとは、「わたしの看護師さん」にご相談ください。
介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。
家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
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