家族の介護は、急に始まるケースが多くあります。そして同じように、家族の病院付き添いも急に担う時がやってくる場合がほとんどです。
「親の病気で病院に付き添うことになった。」
「親が忙しい時に認知症のおばあちゃんの通院を手伝うことになった。」
このような状況が急にやってきた場合、持ち物や保険証、診察証の保管場所が分からない、車椅子の扱い方が分からない……など不安に思ったり悩んだりすることが出てくるかもしれません。
「そんな時の不安を少しでも解消させるお手伝いをしたい!」という思いで、はじめての病院付き添いに必要な準備するものや心構え、付き添い後するべきことなど、自分の体験などの中で「これ知ってたら便利だったな」と思ったことも含め、「病院付き添い」をちょっとだけ深堀りしてご紹介します。
病院付き添いとは
病院付き添いとは、病院やクリニックへの通院に不安のある方に、家族などが付き添うサポートのことをいいます。例えば、認知症や高齢の方の場合、自分一人では病状についてちゃんと説明できず、また、医療機関からの説明も理解できないことがあるため、家族などまわりの方が病院へ付き添うことがあります。その他にも、足腰が悪く一人で病院まで行けない場合などに、家族やヘルパーさんが帯同し、病院へ付き添うことになります。
このように「病院付き添い」はご本人の負担を軽減してくれる大事なサポートなのです。
そして付き添いには、付き添う相手の病状にあわせて必要な準備があります。
また、介護保険が適用されるヘルパーさんに付き添ってもらえるサービスは、自宅で出かける準備をし移動に同行した部分のみとなります。病院に到着後、院内での移動、診察室に同行するなどは介護保険適用外となる場合がほとんどです。
家族がどうしても病院付き添いできない場合は、自治体のサービスや「わたしの看護師さん」のような介護保険適用外サービスを利用するのも一つの手となります。
病院付き添いで準備すること 道具編
まず病院付き添いに必要な持ち物は何でしょうか?
経験も踏まえ、チェックリスト形式にして紹介していきます。
□保険証
保険証の他に医療費負担額に関係する証書があれば持参して下さい。この証書も保険証と同じくらい医療費の負担額に関わる重要なものです。例えば70歳から74歳の方なら高齢受給者証、所得区分を記載した証書などがあります。
(しかし、今後はマイナンバーに移行していく予定です。)
□診察券
保険証で代替可能ですが、病院側がカルテなどの情報を早く探すことができます。
□お薬手帳
病院で処方するお薬を選んでもらう時、今飲んでいるお薬の情報があれば、スムーズに処方してもらえます。また、処方箋薬局でお薬を出してもらう時に値段が安くなることもあります。
□紹介状
他の病院からの紹介の場合、必要になります。あれば持参しましょう。
□予約表
特に大きい病院などでは、発行されて渡されていることがあります。あれば持参しましょう。
□現金
□車いす、補聴器、眼鏡、杖など普段使っている物
□マスク
コロナ禍により大人はほぼ必須になっております。忘れた場合は院内で購入も可能かと思います。
□オムツ
通院では、病院までの移動や診療時間が長いことから長時間トイレに行けないことが考えられます。オムツやパッド、ライナーの予備を多めに準備すると良いでしょう。
□メモを取れるもの
医師の言うことなど、後の確認用に+αで持っていっておけば便利です。
また大きい病院では、近年はコロナで付き添い自体が制限されていることが多くあります。
付き添う場合は人数制限がされたり、付き添いの許可証が必要であったりと、付き添うための手続きが必要になっています。事前に病院のホームページを確認するなど、現在の病院の体制を調べてから付き添えば間違いないでしょう。
初めは分からないことがあって当然です。誰でも起こりうることなのに、教えてもらう機会はあまりない病院付き添い。不安に思うこと、調べても分からないことは病院に電話で問い合わせるなどしてどんどん聞いていきましょう。
病院付き添いで準備すること 心構え編
高齢のご家族がいる方は特にですが、普段から「何かあるかも」と考え、いつでも迅速に行動出来るよう心構えをしておくことが重要です。
いざという時の不安を少しでも軽減して、冷静に行動出来るよう事前に知識などを頭に入れておきましょう。
□症状・体調の事前把握
離れて暮らしている、他の家族が介護をしている、認知症を患っているなどの場合は、いざ病院付き添いをしようとしても医師に症状を伝えられないといったことが起こります。
事前に本人や症状・体調をよく知る家族などとコミュニケーションをとっておき、状況を把握しておきましょう。
□保険証など必要な物の保管場所の把握
コミュニケーションをとり、事前に病院付き添いに必要な物の保管場所を把握しておきましょう。
また一緒に暮らしている方や介護をしている方が付き添われる場合は、事前に病院付き添いに必要な物をまとめて、保管場所をあらかじめ決めておいても良いでしょう。
□医療関係の窓口になるキーパーソンを決める
キーパーソンとは、①連絡・相談・調整 ②判断・決定 ③身元引受人の役割を担う人のことを言います。
医師から症状の説明を受ける時のキーパーソンを決めておき、説明で分からないことは積極的に聞くようにしましょう。
□医師に確認しておきたいことを考えておく
・症状や検査結果
・治療後はどのような状態まで回復が見込まれるか
・どのような治療をするか
・その治療をするとどのような効果があるか、しないとどうなるか
・治療によって起こり得る合併症や副作用、起きた時の対応
・他の治療法はないのか(提案されている治療法との比較)
など、分からないことはそのままにせず、医師に質問しましょう。
しかし、その場ではたくさん情報が入ってきて、せっかく聞いたのに覚えきることが出来ていないかもしれません。そんな時メモをとっておけば、後で確認することが出来ます。
□車椅子の移乗における6つの注意点
車椅子で病院まで移動する場合は、ベッドから車椅子、車椅子から車などへの移乗介助が必要です。はじめての移乗介助の注意点を6つご紹介します。
①できる限りベッドと車椅子の位置を近づける
②車椅子のハンドブレーキをしっかりと固定し、少しの弾みでも車椅子が動かないようにする
③介助者の腕は相手の腰(背中)に、被介助者の腕は介助者の肩に手を回す
④介助者は、相手の上半身を自分がいる方向(前方)へ引き寄せるようにする
⑤介助者は両脚を広げ、安定した体勢を整える
⑥声かけでお互いの意思疎通を図る
身体を無理に動かそうとすると、介助される側に大きな負担がかかるばかりか、介助する側にも余計な負担がかかることになります。身体の動きに合わせ、安心して移乗できるように心がけましょう。
私の祖母も最近では足が動かず車椅子での移動になっています。病院からの移動の時などにこの知識があれば、「もっと母や祖父を手伝うことが出来たかも……」と感じています。
しかし、普段からたくさん考え過ぎて気に病んでしまうと元も子もありませんので、自分の負担も考えて付き添いに備えましょう。
病院付き添いが終わったら
病院付き添いが終わっても、そこで終わりではありません。
その後の生活を、付き添った側も付き添われた側も安心して送れるように、病院で聞いてきたことの共有や薬の管理など、その時々に合った対応をしましょう。
●診療内容を共有する
ケアマネージャーや家族などの関係者に情報を共有しましょう。自分一人だけで抱えないためにチーム内で共有することが大事です。
メモを取っていればより整理して伝えることが可能です。
●薬の管理
①一包化して間違いなく飲めるようにする
家族がセットするか、処方箋薬局で一包化してもらいましょう。
処方箋薬局での一包化のデメリットとしては、費用がかかること、途中で薬の内容が変わった時、服用中止になった薬を抜き出すのが難しいなどが挙げられます。
②「服薬ボックス」「おくすりカレンダー」などを使う
曜日や日付が分かる段階の方であれば、該当時刻の薬服用の有無が確認できるので、有用です。
1日1回のみの服用であれば、大きなカレンダー(暦)に薬を貼っておくだけで上手くいく可能性もあります。
この場合も一包化しておくと、扱いやすく間違えにくいです。
③テーブルに、「薬を飲みましたか?」と書いた紙を置く
認知症の方には、「耳で聞いたことはすぐ忘れてしまうが、眼で見て繰り返し確認できることは通じやすい」という特徴があります。見やすい位置に紙を置いておくと、認知症の方が自分で服薬を確認する場合があります。しかし、書いた文章に関心を持たなくなったら効果はなくなります。
④家族がタイミングをみて電話する
遠距離介護をしている場合は服薬時に電話して、「今日の分の薬はありますか?あったら今すぐ飲んでね」と電話することで、服薬が確実になったケースもあります。
⑤訪問薬剤指導を利用する
主治医の指示により、薬剤師が薬を自宅に配達し残薬などを調べて服薬状況を把握し、適切に服薬できるように工夫や指導をしてくれる制度があります。
しかし、自己負担が発生します。
⑥服薬時刻を外れてもよいので、訪問介護やデイサービス利用時に服薬
デイサービスなどを利用している場合には、スタッフが服薬介助するのが現実的です。服用時刻に訪問してもらえなくても、必ず飲むということの方が重要です。
また、初めからこのことについて医師や薬剤師に相談しておくのも良いでしょう。
はじめてのことは、誰でも多かれ少なかれ不安がつきものです。そして、病院付き添いを含め介護は想像しているよりも大変なことが起こり、不安や悩みを抱えてしまうことがあります。
介護サービスなどの利用・主治医に相談・介護者の会などに参加・身近に相談相手を作るなど、介護疲れを軽減する方法は様々なので、自分にあった方法で無理なく介護を続けていけるように心がけましょう。
時には頼ることも悪いことではありません。自分一人で抱え込まないで下さいね。
この記事が皆さんの心を少しでも軽く出来るような記事になっていれば幸いです。
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