〜親の在宅介護で疲れを感じていませんか?〜「介護疲れ」を軽減するためにできること

「自分の親だから、誰にも頼らずに在宅介護をしないといけない」と一人で抱え込み、身体的にも精神的にも疲れていませんか?介護者が身体的・精神的な疲労が溜まった「介護疲れ」の状態になってしまうと体調不良になり、介護者も要介護者も共倒れしてしまうという最悪のケースも考えられます。

そうならないためにも、「介護者が一人で抱え込まず誰かに相談すること」「外部のサービスを利用して介護者の負担を減らすこと」が大切です。今回は、介護疲れを引き起こす要因、介護疲れの問題や症状、介護疲れを軽減させるために利用できるサポートについてご紹介します。

多くの人が抱えている介護疲れ。介護疲れを引き起こす要因とは?

在宅介護が必要になる原因には、どのようなものがあるのでしょうか。厚生労働省が全国の要介護者等のいる世帯を対象にした調査の結果、在宅介護を始めた原因の一位は認知症、二位は脳血管疾患(脳卒中)、三位は骨折・転倒という結果でした。

また、介護者の約6~7割が日常生活で悩みを抱えていて、その原因は「家族の病気や介護」だと約7割の方が回答しています。このことから在宅介護は介護者にとって身体的・精神的に負担が大きいものであることが分かります。

1.介護疲れを引き起こす3つの要因

介護者が介護疲れになる要因には何があるのでしょうか。ここでは3つの要因についてご説明します。

①身体的な負担
在宅介護では起き上がりや体位変換・移動・衣服の着替え・トイレや入浴の介助などを行うため、女性や高齢の方が介護をする場合、体力的にも大きな負担がかかります。また、トイレ介助やおむつ交換が必要になると夜中に起きる必要があり、十分な睡眠がとれないことも負担の増加につながります。

②精神的な負担
身体的な疲れを抱え、睡眠不足の状態になりやすい在宅介護は精神的にも大きな負担です。同居家族が親の病態に理解がなく介護に対して協力的でないと、介護者は悩みを誰にも話せず一人で抱え込んでしまうことも。

また、親が認知症の場合、症状によっては、何度も同じことを聞いてくる、夜中に起きて家の中を歩く、トイレの失敗、ご飯を食べたことを忘れて何度も催促するなどにも対応する必要があります。こういった対応を毎日積み重ねることにより、介護者の精神的な負担はより重くなります。

③経済的な負担
介護保険サービスを利用する場合でも、在宅介護では紙オムツなどの介護用品に費用がかかります。また、介護と仕事の両立が難しくなり仕事を辞めてしまった場合は収入が減少し、経済的な不安が増加することも考えられます。

参考:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|Ⅳ 介護の状況」
参考:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況|Ⅳ 介護の状況」

介護疲れが引き起こす問題と注意するべき症状

在宅介護がはじまると、介護疲れから様々な問題へと、どのように発展していくのでしょうか。ここでは様々な問題へと発展していく例をご紹介します。また、介護疲れが引き起こす4つの問題についてもご説明します。

<介護疲れが様々な問題に発展してしまうケース>

① 突然の在宅介護がはじまる

② 家族が要介護状態になったショック、慣れない介護に戸惑う

③ 介護生活の時間制約、身体的負担、精神的なストレスで「介護離職」する

④ 身体的・精神的負担が積み重なり、「介護疲れ」を感じる
     
⑤ 人との交流の減少、家族間の問題などで介護者が周囲から孤立する
    
⑥ 介護者の孤立が深まり、体や心のバランスが崩れ始める
      
⑦ 介護者が「介護うつ」になる(「介護放棄」「虐待」などの事件が起こることも)

・介護疲れが引き起こす4つの問題と症状

①介護うつ
「介護うつ」とは、慢性的な睡眠不足や疲労、ストレスなどの「介護疲れ」の蓄積が原因で介護者がうつ病になることです。初期症状として、「楽しみや喜びを感じない」「食欲がない」「よく眠れず、途中で何度も目が覚める」などがあります。

介護うつになってしまった場合は介護者と要介護者の生活が成り立たなくなり、共倒れのリスクがあるため注意が必要です。

②介護離職
介護離職とは、介護と仕事の両立が難しくなり、介護をするために仕事を辞めてしまうことです。介護者の収入の減少で、相対的に経済面の負担が大きくなることや社会的な孤立に繋がることもあります。

③虐待
介護者が介護疲れで追い込まれてしまうと冷静な判断ができなくなり、要介護者に対して身体的虐待や暴言などの心理的虐待などを行ってしまうこともあります。

④介護放棄
介護者が介護で疲れ果ててしまうと、要介護者への食事やオムツ交換などの排泄ケアを放棄してしまうこともあります。

介護者は毎日一生懸命介護をしているので、自分自身の身体的・精神的な状態などを客観的に把握することは難しいと思います。自分自身の状態の把握や介護疲れの予防のためにセルフチェックをしておくことが大切です。

介護疲れを軽減させるために利用できるサポート 

介護疲れで引き起こされる問題は誰にでも起こる可能性があり、それを防ぐためには介護保険サービスなどを利用し、心身の負担を軽くすることが大切です。ここではどのようなサポートがあるのかご紹介します。

1.介護保険が適用されるサポート

①訪問介護
ホームヘルパーなどが自宅を訪問し、要介護者の食事・排泄・入浴介助などの身体介護、掃除・洗濯などの生活支援を行います。

②デイサービス
要介護者が日帰りで施設に通い、食事・入浴などの生活支援を受け、機能訓練やレクリエーションを行います。

③ショートステイ
要介護者が高齢者施設に短期間入所し、食事・入浴などの生活支援、機能訓練を受けます。

このほかにも様々な介護保険サービスがあるので、ご家庭に合ったサービスを利用してみてください。介護保険サービスを利用するためには介護保険の申請が必要です。お住まいの市区町村の窓口や地域包括センターにご相談ください。

2.介護保険外のサポート

民間の事業所が提供している様々な介護サービスもあります。ケアマネージャーやお住まいの地域包括支援センターに相談するほか、詳しくはインターネットの情報を参考に、ご家庭にあったサービスを選択しましょう。

①配食サービス
定期的に自宅に食事を届けてもらうサービスです。栄養バランスだけではなく、塩分やカロリーなどに配慮した食事もあるため、糖尿病や腎臓病などの持病に合わせて食事内容を選ぶこともできます。

②家事支援サービス
料理・掃除・洗濯・買い物などの生活支援に加え、介護保険サービスでは提供されない庭の手入れやペットの世話なども依頼することができます。

また、弊社の介護保険外サービス「わたしの看護師さん」では医療資格のあるスタッフが病院付き添いや家事支援など、介護負担の軽減になるサービスを提供しています。

3.高齢者施設入所によるサポート

要介護度が高くなるほど、介護に必要な時間や介護者への負担は増加します。在宅介護が難しい場合は、「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「グループホーム」などの介護施設への入所も検討しましょう。

介護保険が利用できる場合や、施設によって介護度などの入所条件があるため、担当のケアマネージャーにご相談ください。

4.専門家や自助グループによるサポート

介護の悩みなどは誰に相談すればいいのか分からなかったり、相談しにくかったりしますが、誰かに相談することで気持ちが楽になり、介護サービスの情報を得ることもできます。

①ケアマネージャー
普段から悩みを相談しておくことでアドバイスをもらえるだけではなく、介護者・要介護者にあったケアプランへの変更や利用する介護保険サービスの提案などもしてもらえます。

②地域包括支援センター
地域包括支援センターの保健師・ケアマネージャーなどの専門家に、無料で相談をすることができます。担当のケアマネージャーに話しにくい場合は、こちらに相談してみても良いかもしれません。

③介護患者の家族会
介護者同士で在宅介護の悩みや日頃の思いなどを話すことで、共感してもらったり、自分と同じ人がいると安心したりすることができ、気持ちが楽になります。また、経験者からのアドバイスや情報をもらうことができ、悩みの解決に繋がることもあります。

都道府県や市区町村、NPO法人などでは介護者や認知症の介護者を対象とした集いの場「家族のつどい」を開催しています。お住まいの地域包括センターにお尋ねいただくか、インターネットの情報を参考にしてください。

介護疲れの対策には、介護サービスを利用することや、誰かに相談することが大切です。毎日の介護に追われて介護疲れの状態が続くと、介護者自身が体を壊してしまいます。まずは「週に1回デイサービスを利用してみる」「誰かに心の中にあるモヤモヤを話してみる」など、親の介護は自分がしないといけないと抱え込みすぎず、少しずつ周りに頼ってみることをおすすめします。

また、時間ができた時には好きなことをする、友人とおしゃべりや外出をする、ストレス解消に運動をするなど、時間を自分のために使い介護生活から離れて疲れを取りましょう。ご家庭に合った外部のサービスを利用し、自分自身のことも大切にしながら介護に取り組んでみてはいかがでしょうか。


介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。

「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。

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