介護未満の親に起きている変化とは?今からできるサポートと将来への備え

「まだ元気そうに見えるけれど、歩くスピードが遅くなり、同じ話を何度もする」。高齢の親と接する中で、「前とちょっと違うな」「この先大丈夫かな」と感じる場面は、少しずつ増えてきます。

たとえ親が自立した生活を送っていたとしても、加齢に伴う身体や認知機能の変化は避けられません。ただ、その変化は急に現れるものではなく、「介護が必要になる前の段階」、いわゆる「介護未満」の時期から始まっています。

この時期に、親の心身にどのような変化が起こっているのかを知り、日常生活の中で感じやすい困りごとやその対処法を理解しておくことは、将来への不安を軽くすることにつながります。

今回の記事では、介護未満の親に起こりやすい心身の変化や日常の困りごと、そして将来の介護に備えて今からできるサポートについてお伝えします。

介護未満の親に訪れる心身の変化。加齢により見られるサインとは?

ふとした瞬間に、親の身体や認知機能の低下が気になることはありませんか?加齢により、親の心身にどのような変化が生じるのかを知れば、これからの支え方が見えてきます。サルコペニアやロコモをはじめ、高齢者に見られる認知機能や行動の変化をご説明します。

身体能力の低下とサルコペニア・ロコモ

見た目には元気でも、年齢とともに身体能力は少しずつ低下していきます。例えば、これまで何でもなかった「ちょっとした段差」でつまずいたり、椅子の「立ち座り」がつらくなったりといった変化です。

こうした変化の裏には、「サルコペニア」や「ロコモ」といった状態が関係していることがあります。

サルコペニアとは、加齢にともなって筋肉の量が減り、筋力や身体能力が低下した状態のことです。その影響で、立ち上がったり歩いたりすることが難しくなる場合があります。

ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは、骨や関節、筋肉など、体を動かす仕組みの障害により、移動能力が低下した状態のことです。進行すると、立つ・歩くといった日常の動作に支障が出やすくなります。

日常生活で現れてくる体の変化

サルコペニアやロコモにより、体の動きが少しずつ弱くなると、日常生活にさまざまな変化が現れます。

・青信号で横断歩道を渡りきれない
・手をつかないと立ち上がれない
・つまずきやすくなった
・ペットボトルや瓶のフタが開けにくくなった
・階段では手すりがないと不安

こうした日常生活で起きる小さな変化を「年齢のせい」と簡単に片付けてしまうのではなく、早めに気づいて対策を始めることが大切です。

認知機能の低下と行動の変化

認知機能は加齢によって変化します。記憶や計算する力などは低下しやすい一方、言葉によるコミュニケーション力や相手を思いやる力、経験に基づいた知識などは長く保たれる傾向があるのが特徴です。

日常生活でみられる高齢者の認知機能や行動の変化は、次のとおりです。

• 鍋を焦がしてしまう
• 同じ物を繰り返し買う
• 探し物が多くなる
• 話の内容が理解しづらくなる
• 「あれ」「それ」と言うことが増える
• 慣れた道で迷うことがある

<スタッフ体験記>祖母に現れた変化
祖母は料理が得意で、味付けもいつも安定していました。けれど、ある日を境に何度も鍋を焦がすようになり、「今までこんなことなかったのに」と、激しく落ち込んでしまいました。その姿を見て、私は思わず「大丈夫かな」と、さみしさと不安を感じました。元気そうに見えても、少しずつ変化が起きているのかもしれないと、初めて実感した瞬間でした。

介護未満の親の困りごとを解決するヒントとは?

高齢者の選択や行動には、加齢による変化が表れやすくなります。その背景を理解して接することが大切です。なかには、ご自身に起きている変化に気づき、不安を感じながらも準備や工夫をしている方もいます。家族や身近な方による高齢者の不安な気持ちを理解し寄り添う姿勢は、親の自立した暮らしを支える力になります。

ここでは、高齢者の日常によくみられる「困りごと」の具体的な解決のヒントをご紹介します。

Q:食事の準備や片付けが親の負担になっているよう。どうしたらいい?

A:食事の準備が負担になる背景には、「買い物で重い荷物を持てない」「火の消し忘れが不安」といった心身の変化が影響しています。悩みを解決するための3つのポイントを確認しておきましょう。

1. 調理道具や器具を工夫する
調理を楽にする便利グッズは料理の負担を軽減します。一例として、力が伝わりやすいようにハンドルが付いた包丁や、小さな力で蓋を開けられるボトルオープナーなどがあります。また、火を使わないIHへの変更も安心につながるでしょう。

2. 食材確保と安否確認
食材宅配を利用すると、外出が難しいときの買い物の負担を減らすだけでなく、業者によっては安否確認をしてもらえる場合もあります。

家族が、定期的に親と一緒に買い物へ行くようにすると、食事の状況を知ることやコミュニケーションを計ることにつながります。

3. 調理済み食品を活用する
料理をするのが億劫なときに、レトルトや市販のお惣菜を頼れる味方として活用しましょう。栄養のバランスを考えた商品も販売されているので、うまく活用する方法を親子で考えることが大切です。

Q:親の車の運転が不安。移動手段を確保する方法は?

A:高齢になると、判断力が低下することがあります。家族が安全のために運転免許の返納を勧めても、親は移動手段を失う不安から拒絶してしまうことも少なくありません。下記1〜3の流れを参考に、親とよく話し合ってみましょう。

1. 認知機能や身体能力の変化を医師から説明してもらう
病院での検査結果をもとに、本人の現状を医師から客観的に伝えてもらいましょう。家族からの指摘には反発する親でも、第三者による「瞬時の判断力の低下」といった具体的な説明には納得しやすくなります。

2. 運転免許返納後の生活手段とコストを具体化する
車の維持費とタクシー代を比較して提示し、金銭的なメリットを伝えましょう。あわせて買い物代行サービスの利用など、免許返納後も生活が維持できる見通しを立てることで不安を解消します。

3. 免許センターの相談窓口を活用する
家族だけで説得せず、免許センターの相談員やケアマネジャーに協力を依頼しましょう。「安全のための選択」として、免許返納を提案してもらうことは、親の自尊心を傷つけずに返納を促すことにつながります。

Q:親が物忘れや失敗を恐れて、閉じこもりがちに。社会とのつながりを保つには?

A:探し物が増えたり、予定を忘れたりすると、親は強い不安を感じるものです。失敗を恐れて閉じこもりがちになる前に、心の負担を軽くする3つの工夫を始めましょう。

1. 「忘れても大丈夫」な環境を整える
探し物には「紛失(落とし物)防止タグ」や「キーファインダー」が役立ちます。貴重品に取り付けておくと、スマートフォンなどで、置き忘れた場所を調べることができます。

大きな文字で数字が表示されるデジタル日めくりカレンダーは、日付を確認するのに便利です。また「薬を飲む時間」「通院」など、時間になると毎回スマートフォン等のアラームが鳴るように設定しておくと安心です。こうしたツールを利用することで、物忘れの不安を和らげることができます。

2. 外出や人との交流を促す
物忘れや失敗への不安から閉じこもりがちになるのを防ぎ、社会との接点を持ち続けられるよう後押ししましょう。散歩や趣味の場への参加など、短時間でも家族以外と話す機会を持つことが、脳への良い刺激になります。 

3. 買い物のトラブルを防ぐ
買い物は脳を活性化させる良い機会です。しかし何度も同じ物を買ってしまうなどの困りごとが起きることもあります。そのため冷蔵庫の中を写真に撮る、買う物メモを作るといった準備をしておくと役立ちます。親と一緒に出かけ、楽しみながら買い物をサポートしてあげましょう。

将来の介護への備え。介護未満の親のサポート

親の身体や認知機能に変化が見え始めたら、本格的な介護が始まる前に、不安にならないための「仕組みづくり」をしておくことが大切です。まずは「お金の管理」「見守り機器の導入」「専門家への相談」の3つについて、早い段階から準備を進めてみてください。家族だけで抱え込まず、無理なく親を支える体制を整えることにつながります。

①お金の管理:財産凍結に備える事前準備

介護が必要となると、親本人が銀行まで出向くことが難しくなる場合も考えられます。また認知症などで親の判断能力が低下していると金融機関により判断された場合、口座が凍結され、生活費や介護費用の引き出しができなくなるリスクがあります。元気なうちに親子で話し合い、対策を検討しましょう。

・銀行口座の整理:メイン口座を絞り、不要な口座を解約しておくだけで将来の手続きがスムーズになります。

・銀行口座の代理人カード作成、代理人登録:代理人カードとは、家族が使用可能なキャッシュカードです。窓口での手続きを代行できる代理人登録も済ませておきましょう。

・任意後見制度:判断能力があるうちに、将来の財産管理を誰に任せるか決め契約しておく、法律に基づく制度です。

・家族信託:信頼できる家族に特定の財産管理を託す仕組みです。「信託契約書」の作成は難解なため、専門家に依頼することが一般的です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。
高齢の親の財産を凍結から守る〜認知症が心配な親の預貯金を、適切に管理するには〜

②見守り機器の導入:親の自立した暮らし支え、安否を確認するために

生活スタイルに合わせて、最適な見守り機器を選んでみましょう。導入にあたっては、親の自尊心を傷つけない配慮も大切です。

・家電センサー(ポット・電球):日常で使う家電から通知が届く仕組みです。親のプライバシーを守りつつ、離れて暮らす家族がさりげなく見守れます。

・見守りカメラ:離れて暮らす親の室内での様子を確認できるため、緊急時にも安心です。反面、事前に親としっかり話し合って、カメラの設置に対しての心理的抵抗を減らす必要があります。

・GPS(位置情報)機器:親のカバンや靴に装着しておくと、外出先を家族が確認でき、迷子防止にも有効です。装着した機器を持ち歩くことを、親に習慣化してもらうことがポイントです。

③専門家への相談:信頼できる相談先を見つけておく

実際に介護が必要な状態になったときに慌てないためにも「介護未満」の段階で、早めに相談先を見つけておきましょう。第三者の力を借りながら、親が安心して生活を送れる環境を少しずつ整えることをおすすめします。

・かかりつけ医:将来の「要介護認定」における強力なバックアップとなります。日ごろの親の体調や、心身の変化を知る医師は、いざというときの心強い支えです。

・地域包括支援センター:日常の困りごとを幅広く相談できる公的な窓口です。最適なサービスの提案や、必要に応じて自宅への訪問も行っています。

・介護保険外サービス:要介護・要支援の認定を受けていない方も利用できるサービスです。また介護保険サービスではカバーしきれない通院の付き添いや定期的な自宅訪問などにも、家族に代わって柔軟に対応してもらうことができます。専門職が関わることで、親の体調の変化にいち早く気づくきっかけにもなるでしょう。

介護未満の時期は、親の心身の変化について理解を深め、日常生活の中の小さな困りごとに早めに対応できる大切なタイミングです。

今回の記事を参考に、今からできることを少しずつ取り入れてみてください。無理のないサポートや備えを進めておくことで、将来への不安は和らいでいきます。親にとっても、家族にとっても安心できる関わり方を考えていきましょう。

介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

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