知っておいてほしい介護の給付金制度~給付金を賢く使って、納得の介護を~

親が高齢になると、骨折や脳血管疾患などから、突然介護が必要になることがあります。突然介護がはじまると、心配なのが「お金」のことです。お金がないと十分な介護ができないのではと不安ですよね。

国や自治体は、介護の負担を軽くするさまざまな給付金制度を用意しています。しかしその利用条件や申請方法は複雑なため、利用をためらってしまう方も多いのではないでしょうか。要点を押さえ専門家を頼ることで、必要な制度を賢く活用し、安心して介護を行っていくことができます。

今回の記事では、介護にかかるお金、給付金制度の種類、実際に申請する時のポイントをご紹介します

介護にはどれくらいのお金がかかる?

介護がはじまると、自宅をリフォームする費用や介護用ベッドの購入などの初期費用がかかります。そして栄養バランスを考えた毎日の介護食代や、おむつなどの日用品代は、毎月まとまった金額になります。それに加え、介護施設利用料や在宅介護サービス利用料も大きな負担です。

このように介護には、一時的な初期費用に加え、介護を継続する間に日常的にかかる費用を考えておく必要があります

介護サービスにかかる費用は、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム 介護事業所・生活関連情報検索」の「介護サービス概算料金の試算」で計算することができます。要介護度や利用する施設によって変わりますが、まずはこちらで試算してみてはいかがでしょうか。

参照:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」

介護費用の負担を軽減させる制度を活用しましょう

国や自治体が用意している制度の種類や利用条件などを正しく理解し、賢く活用しましょう。介護費用の負担を軽減させる制度と、介護用品の貸与や購入、住宅改修に役立つ制度についてご説明します。

介護費用の負担を軽減させる制度

・家族介護慰労金
家族介護慰労金とは、介護サービスを利用せず、1年以上にわたり要介護度4〜5の被介護者を在宅介護している家族に、自治体から年額10万円~12万円が支給される制度です。利用条件は他にもあり、「介護サービスを利用していない」など厳しいため、まずはお住まいの自治体に確認してみましょう。

・高額介護サービス費
高額介護サービス費とは、1か月に支払った介護サービス利用時の自己負担額が一定の限度額を超えると、超えた分が払い戻される制度です。限度額は所得に応じて決まります。

高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度とは、医療と介護の両方のサービスを受けている世帯の医療保険と介護保険を合算した自己負担額が軽減される制度です。収入によって決められた限度額を超えた分が支給されます。制度を受けるには、市区町村に申請書を提出する必要があります。

・医療費控除
医療費控除とは、支払った医療費が一定額を超えた場合、所得控除を受けられる制度です。1年間のうち、納税者自身または自身と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が対象となっています。また高額介護サービス費などが支給された場合、それらを差し引いた金額が控除の対象です。福祉用具貸与など、医療費控除の対象外である介護費用もあるため注意してください。

医療費控除を受けるには、確定申告の時に1年間の医療費の領収書が必要です。大事に保管しておきましょう。

介護用品の貸与や購入、住宅改修に役立つ制度

・福祉用具貸与(レンタル)
車いすやベッド、スロープなどの福祉用具はレンタルすることができます。福祉用具貸与という介護保険サービスに該当し、一般的な所得者の場合、自己負担額は1割(一定以上の所得がある場合は、2割または3割)で利用できます。要介護度に応じてレンタルできる福祉用具が決まっています。

・特定福祉用具販売(購入)
腰掛便座や入浴補助用具など、再利用に抵抗感があるものは購入することができます。特定福祉用具販売という介護保険サービスに該当し、一般的な所得者の場合、支払った費用の9割(ー定以上の所得がある場合は、2割または3割)が払い戻されます。1年間で購入できるのは10万円までと決まっています。

必要な介護用品は一人ひとり異なります。訪問看護や介護の担当者、ケアマネジャーの意見を聞いて、それぞれに合った福祉用具を選ぶことが大切です。

・居宅介護住宅改修費
自宅に手すりを取り付けるなどの住宅改修を行ったとき、20万円を上限として、所得により実際の住宅改修費の9割から7割相当額が介護保険から支給されます。申請するには必要な書類を揃える必要があります。ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談し、手助けしてもらいましょう。

<参考>
高額介護サービス費:https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html(厚生労働省|介護サービス情報公表システム)

福祉用具貸与(レンタル):https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group21.html(厚生労働省|介護サービス情報公表システム)

特定福祉用具販売(購入):https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group22.html(厚生労働省|介護サービス情報公表システム)

介護をする家族にも役立つ制度をご紹介

仕事をしながらの介護は負担が大きいですよね。ビジネスケアラーに知っておいてほしい介護と仕事の両立に役立つ制度を3つご紹介します

・介護休業制度(介護休業給付金)

介護休業制度とは、介護者が介護のために休業する制度です。介護が必要な家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。休業開始予定日の2週間前までに、書面等により事業主に申し出ることが必要です。

また、介護休業期間中はハローワークから休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給されます。忘れずにハローワークに問い合わせましょう。

・介護休暇制度

介護休暇制度とは、介護をするための休暇制度です。病院の付き添いなどで短時間の休みが必要な時は、介護休暇を活用しましょう。取得可能日数は、対象家族が1人の場合は年5日、対象家族が2人以上の場合は年10日です。また、取得単位は1日または時間単位です。書面の提出は必要なく、事業主に口頭で申し出ることができます。

・遠距離介護に役立つ、航空会社による介護割引

遠距離介護の場合、飛行機を使う方も多いのではないでしょうか。航空運賃はかなりの負担です。これまでご紹介したような公的な補助ではないですが、介護の場合の特別運賃を設置している航空会社もあり、介護をする家族を対象に普通運賃よりも安く利用できます。

介護割引を利用するには、航空券を購入する前に登録が必要なケースがあります。利用する航空会社のホームページを確認してみてください。

給付金について、まずは身近な専門家に相談してみましょう

介護費用の給付金制度には、さまざまな種類があり、利用条件も複雑です。実際に申請をするときには、3つのポイントをおさえておくことをおすすめします。

1.ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する

介護者がひとりで抱え込まず、まずは身近な介護や看護の専門家に聞いて、利用できる制度を把握しましょう。申請をためらわず、必要な制度を活用してみてください。

2.相談する前に、給付金制度の情報を集める

ご自身で情報を集め、少しでも知識があれば、ケアマネジャーをはじめとした専門家に相談する際にスムーズに話が進みます。

3.要介護度や所得を確認しておく

給付金制度を利用する際の自己負担額などは、多くの場合、要介護度と所得が関係します。事前に確認しておくことが重要なポイントです。

誰もが安心して介護ができるように、介護費用の負担を軽くする、さまざまな制度があります。どの制度が利用できるのか判別するのはなかなか難しく、申請をためらっている方も多いかもしれません。しかし給付金を活用すれば、経済的圧迫を軽減しながら、介護を続けていくことができます。

また、ケアマネージャーや地域包括支援センターの担当者など、頼れる専門家は身近にいます。介護者が自分だけで負担を背負うことはありません。まずは相談をして、それぞれのご家庭に合った給付金制度を見つけていただけたらと思います。

要点をしっかり押さえ、ぜひ給付金制度を活用し、お金に関して無理のない介護生活をおくりましょう。

介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。

「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。

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