「高齢の親に人工透析が必要になるかもしれない」、「治療のための通院や費用について不安を感じている」という方も多いのではないでしょうか。
実際に人工透析がスタートすると、治療の種類によっては通院回数が増え、治療費も高額になります。特に、ビジネスケアラーや遠距離介護中の方にとって、病院付き添いの問題は深刻だと思います。
けれど、このような家族の不安に寄り添う、さまざまな支援や介護サービスがあります。今回の記事では、病院に付き添う前に知っておきたい事前の備え、家族が付き添えない場合に利用できるサービス、負担を減らすための助成制度についてご紹介します。
人工透析の基礎知識
人工透析とは
腎臓の機能低下により尿が作れなくなると、血液中の老廃物や水分などを体の外へ排出できなくなります。人工透析は、腎臓の代わりに体内に蓄積した余分な水分や塩分、老廃物を取り除き、血液を浄化する治療方法です。
透析が必要になるタイミング
食事療法や薬物治療を行っても症状が進行し、末期腎不全の状態になると、人工透析や腎臓移植を行う必要があります。腎臓の機能の低下は、初期段階では気づきにくいため、早期発見が重要です。
<腎機能の低下のサイン>
・体のむくみ
・倦怠感
・尿量の変化(1日の尿量の減少、夜間頻尿)
人工透析治療の種類
主に2つの治療があります。
1. 血液透析
一般的には、静脈と動脈をつなぎ合わせて太い静脈にした「シャント」を作成します。シャント部に針を刺し、ポンプを使って体内から血液を取り出します。ダイアライザーに通すことで、血液中の老廃物や余分な水分を除去し、きれいになった血液を再び体内に戻します。
2. 腹膜透析
お腹の中に専用の管で透析液を注入し、老廃物や余分な水分を透析液へ移動させます。腹膜透析には、CAPDとAPDの2種類の方法があり、自宅での治療が可能です。CAPDは患者自身で透析液の交換を行います。APDは、就寝中に専用の機械で自動的に透析液を交換します。
透析にかかる時間
医療機関で血液透析を行う場合、週に3回の通院、1回につき4時間が標準的です。腹膜透析(CAPDの場合)は毎日1日3~5回、4~8時間ごとに透析液の交換を行います。通院は、月1~2回です。
透析の費用と助成制度
1か月あたりの一般的な治療費は、外来血液透析の場合40万円程度、腹膜透析(CAPD)の場合は30~50万円程度です。自己負担額を軽減できる助成制度がありますので、早めに手続きを行いましょう。
・特定疾病療養費制度
加入している健康保険の窓口に申請し「特定疾病療養受療証」の交付を受けます。医療機関に提示することで、1つの医療機関につき、年齢や所得により1か月の自己負担額を1万円または2万円に減額できます。
・自立支援医療(更生医療)制度
更生医療の対象は、身体障害者手帳の交付を受けた18歳以上の方です。自己負担額は総医療費の1割ですが、世帯の所得額等によって月額自己負担上限額が定められています。制度を利用するためには、都道府県などが指定した「指定自立支援医療機関」で治療を受ける必要があります。
病院付き添いで気をつけること
病院付き添いで慌てないために、事前に準備しておくとよいことや持ち物を確認しておきましょう。
事前の準備、確認
・事前に病院の情報を集める
医療機関で血液透析を受ける場合、週3回程度の通院が必要になります。自宅からの距離や交通手段、無料の送迎サービスがあるかなどを確認しましょう。可能であれば、事前に施設を見学して設備や雰囲気をみておくと安心です。
・透析のスケジュールを確認する
血液透析の場合、多くは月・水・金、または火・木・土の週3回治療が行われます。ビジネスケアラーや遠距離介護中の方は、病院付き添いが難しい場合も多いと思います。医療機関によっては、夜間や就寝中の時間を利用して透析を行っている施設もあるため、確認をしてみてください。
・親の体調をチェック
同居している場合は、日ごろから親の様子を確認し、気になる症状があれば、メモに残しておくと診察時に役立ちます。別居している場合は、電話などであらかじめ本人から症状を聞いておきましょう。
・医師に確認、相談することをまとめておく
次のリストを参考に、前もって医師に相談する内容を整理しておくと安心です。
<相談内容リスト>
・現在の親の腎臓の状態
・血液透析、腹膜透析、それぞれの治療法のメリット、デメリット
・治療に伴う生活の変化や合併症などのリスク
持ち物
・マイナ保険証、資格確認書
後期高齢者医療制度の被保険者については、暫定的な運用として、マイナ保険証を保有していない方には、資格確認書が無償で申請せずに交付されます。マイナンバーカードを取得していない方や、マイナ保険証の利用登録をしていない方は、資格確認書を窓口で提示しましょう。(令和8年1月現在)
・おくすり手帳
・診察券
特に上記3点は、通院セットとして一つにまとめ、置き場所をあらかじめ決めておきましょう。急に他の家族が付き添うことになった場合でも、慌てずにすみます。
・マスク
・普段使用している眼鏡、杖、補聴器など
・替えのオムツ
オムツを使用している方は、交換用のオムツを準備してください。治療は長時間にわたり、一般的な血液透析では、基本的にベッドから動くことができません。
・体温調節のできる上着、ひざ掛け
・メモ帳
医師の話を聞く際にメモがとれるようにメモ帳を準備しておきましょう。
高齢者の病院付き添いについて、こちらの記事もご覧ください。
はじめての病院付き添いに必要な10つの道具と5つの心構え
透析のための通院をサポート~病院付き添いサービスと帰宅後のケア~
病院付き添いサービス
遠距離介護中の方やビジネスケアラーなど、親の透析のたびに病院付き添いをすることが難しい場合に役立つサービスを2つご紹介します。
1. 病院の無料送迎サービスの利用
病院によっては、無料送迎サービスを行っているところもあります。対象地域、車いすでの利用の可否、送迎時の介助の有無などを事前に確認しましょう。
2. 介護保険外サービス
介護保険の通院介助では、診察室内の同行はサービス適用外になります。けれど、ご家族としては、親が医師の話を理解できているか不安に感じることも多いと思います。そこで介護保険外の病院付き添いサービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
介護保険外サービスは全額自己負担になりますが、スタッフが診察室内まで同行し、医師の話を一緒に聞きます。弊社の介護保険外サービス「わたしの看護師さん」では、スタッフ全員が医療介護資格を保持しているため、安心して任せていただけます。
病院付き添い後のケア
病院付き添いが終わり帰宅してからも、治療は続きます。ご本人と家族が安心して生活を送れるように、情報の共有、薬や食事の管理などの必要なケアを3つご紹介します。
1. 家族やケアマネジャーと情報を共有する
治療後は、他の家族やケアマネジャーに情報を共有しておくと安心です。遠距離介護中の方は、ケアマネジャーにオンラインや電話で相談できるか確認しましょう。
2. 薬の管理
・お薬カレンダーの利用
お薬カレンダーを食卓付近に設置することがおすすめです。遠距離介護中であれば、「朝のポケットにお薬残ってない?」など、電話での確認がしやすくなります。
・介護保険を利用した服薬介助
ヘルパーが服薬の声かけや見守りを行うことが可能です。服薬の時間をヘルパーの訪問時と合わせられないか、主治医に相談するのもよいでしょう。ただし、ヘルパーが服薬介助を行うためには、処方薬を一包化してもらう必要があります。
3. 食事の管理
・医療機関の専門スタッフに相談する
透析後は水分や塩分の制限など、食事の管理が大切です。医療機関の専門スタッフに相談し、病状に合わせた食事指導を受けましょう。
・宅配サービスを利用する
宅配サービスの中には、透析食を扱っている会社もあります。遠距離介護中で、親がきちんと食事をとっているか不安な方は、医師に確認をして取り入れてみてはいかがでしょうか。見守りを行う宅配サービスもあり、安否確認につながるため安心です。
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人工透析がスタートすると、治療は長期間にわたります。病院付き添いや食事の管理をはじめ、サポートするご家族の不安も大きく、ご自身の家庭や仕事との両立をはかることは容易でないと思います。決して一人で抱え込まず、医療スタッフや身近な方に相談する時間を作りましょう。
そして病院に付き添えない場合は、介護サービスの活用を検討することで、家族にかかる介護の負担を減らすことができます。無理なく介護を続けていくためには、専門家や協力してくれる周囲の方に頼ることも大切です。今回の記事が、高齢の親の透析治療に備えるきっかけになれば幸いです。
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