加齢性難聴の親の病院付き添いに悩んだら〜付き添いサービスの利用で不安を軽減〜

最近、親の耳が聞こえにくいと感じたことはありませんか?たとえば、話しかけても返答があいまいだったり、返事がなかったりする場合、それは加齢性難聴の可能性があります。

難聴は高齢者の多くが抱える問題です。聞こえづらさは、日常生活にさまざまな支障をきたします。病院の受診と通院もそのひとつです。適切な治療が受けられなかったり、正しく薬が飲めなかったりすることで、病状が悪化する恐れも。コロナウイルス感染症の流行後医療現場ではマスクの着用が日常化し、より一層聞こえづらい状況になっています。

ビジネスケアラーや遠距離介護が増える中、毎回の病院付き添いができず、「親は医師の説明をきちんと理解できているだろうか」と、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、難聴の親の病院付き添いをサポートするサービスをご紹介します。介護や医療の専門家が診察室内まで同行するサービスもあり、うまく活用することで不安の軽減につながります。難聴の親の病院付き添いに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

加齢性難聴とは?

加齢性難聴とは、年齢とともに徐々に進行する聴力低下のことです。国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターによると、日常生活に支障のある難聴者の割合は、70歳代男性で5人に1人、女性で10人に1人にのぼります。高齢者にとって、難聴はとても身近な問題であることが分かります。加齢性難聴は、耳の中の音を感じる細胞が加齢により減少することで起こります。高い音から聞こえが悪くなり、両側の聴力が同時に低下し始めます。

参照:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「NILS-LSA第6次調査(2008-2010)参加者(男性:1118名,女性:1076名)における難聴有病率」(「国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 在宅医療・地域医療連携推進部ホームページへ」)

加齢性難聴になると耳鳴りが起きたり、話す声が大きくなったりします。また、周囲の人から、テレビの音が大きくなったと指摘されることや、電話の着信音や玄関のチャイム、家電の音が聞こえづらくなる、会話でも聞き間違えや、聞き返すことが増えるなど生活にも影響が表れます。

難聴で注意すべき3つのリスク

難聴は日常生活にさまざまな支障をきたします。特に注意すべきリスクは次の3つです。

1.危険察知能力の低下

車や自転車が接近していることに気づかず、事故に遭う危険があります。急なクラクションの音に驚いて転倒し、骨折などのケガのリスクが高まります。地域の防災無線の放送やラジオの音が聞こえなくなると、災害発生時に必要な情報が届きません。結果、非常時に逃げ遅れる危険性もあります。

2.家族や友人とのコミュニケーションが上手くいかなくなる

聞こえづらくなることで、相手の言葉を聞き返す回数が増え、次第に会話がおっくうになります。聞き間違えで人間関係が悪化したり、無視していると誤解されたりするケースが増えることも。家族や周りとのコミュニケーションを避けるようになり、家に閉じこもるようになると、次第に社会から孤立し、うつ状態に陥る危険性が高まります。

3.認知症のリスクの増加

脳は、耳からの情報から刺激を受けることで活発に働き、活力を保っています。しかし、難聴の影響で会話が減少し、耳から入る情報量が減ることで脳の萎縮、神経細胞の弱まりが進行します。2017年7月の国際アルツハイマー病会議において、ランセット国際委員会は難聴が認知症のリスク要因であると発表しました。補聴器を使用するなどして対処することが必要です。

難聴になると困ること〜病院編〜

高齢者が難聴で困る場面として、病院の受診が挙げられます。ここでは、受診の流れに沿って、聞こえにくさによる困りごとを、それぞれの場面ごとにご紹介します。

・受付

名前が呼ばれても気づかないことがあり、そのまま順番を後回しにされることも。常に受付のスタッフの口の動きを確認する必要があるため、心が落ち着かずへとへとになってしまいます。その結果、自分の症状について上手く説明ができないこともあります。

・診察

医師や看護師がマスクをしていたり、パソコンを向いた状態で話されたりすると話の内容を理解できません。医師に自分の症状について伝えることも難しくなります。

・レントゲンなどの検査

補聴器を外さなければならない検査では、聞こえない状態に陥ります。医師や看護師が別室にいる場合は、マイクでの指示、遠隔での指示が聞き取れません。また、暗い場所やアイコンタクトが取れない場⾯での指示は、理解しにくくなります。

・薬の処方時

薬剤師より薬の説明を受ける際、聞き取りにくい「食間」「食直後」などの専門用語が理解できないことがあります。次第に医師に聞き返すことが怖くなり、理解できたふりをしてしまいます。

「水分を多めに摂ってください」の「多め」や、「様子を見て薬を飲んでください」の「様子を見て」などの指示も、会話でのやり取りが難しい場合、どう対処すれば良いのか高齢者本人では判断できないことがあります。自分で勝手に判断してしまうと、正しい服薬ができず病気の悪化を招きます。

・入院時

高音が聞き取りづらいため、体温計が鳴った音に気づかずに慌ててしまうことや、病室に看護師が来ていることに意識が向かないため突然カーテンが開いて驚くこともあります。

なぜ加齢性難聴の親に病院付き添いが必要なの?〜病院付き添いのポイント〜

難聴による会話のストレスで通院を諦める事態や、気がつかないうちに症状が悪化する危険は避けたいものです。また、医師に自分の症状を伝えられないと、適切な治療が受けられなくなるため、付き添ってサポートしてくれる人の存在が、高齢の親の安心につながるはずです。

ポイント1. 介護保険サービスの「通院介助」では、診察室には同行してもらえない

介護保険サービスの「通院介助」では、自宅から病院までの往復の介助を依頼することができます。ただし、「診察中の待ち時間や診察室への同行」や「病院内の移動等の介助」は、病院内のスタッフが対応を行うものとされているため、基本的には介護保険サービスの適用外になります。例外的に、ご本人の心身の状態や、病院内でのサポート体制によっては、ケアマネジャーが必要と判断して介護保険サービスのケアプランに組み入れられることもあります。ケアマネジャーや、普段利用している介護サービスのスタッフとよく話し合ってみましょう。

介護保険サービスは、介護保険制度の加入者で、条件を満たした方が利用できます。各自治体の窓口に要介護認定の申請を行い、要支援・要介護の認定を受ける必要があります。「通院介助」の利用対象は、要介護1〜5の認定を受けており、ケアプランに該当のサービスが組み込まれている方です。

*介護保険サービスについてさらに知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。
介護の味方!介護保険サービスを利用しよう〜公的な社会保障制度を知って負担を軽減〜

ポイント2. 介護の時間のやりくりが難しいときは病院付き添いサービスの利用を

加齢性難聴の高齢者の中には、診察室にも同行して、医師の説明を一緒に聞いてほしいと希望される方も多いと思います。しかし遠距離介護中やビジネスケアラーであれば、病院付き添いのたびに頻繁に帰省することや仕事を休むことは難しいこともあるでしょう。また、親の近くに住む親戚に付き添いを頼みたくても、親戚が本人の意を汲み取り、医師に症状を説明できるか不安に感じる方もおられると思います。

その場合、介護保険外サービスになりますが、介護や医療の関係者による病院付き添いサービスを利用するのも一つの選択肢です。介護保険外サービスでは、介護保険サービスでは対応できない診察室への付き添いにも対応します。全額自費負担になりますが、要介護認定を受けていない方も利用可能です。介護保険サービスでは提供されない部分のサポートを、介護保険外サービスで補うことができます。

病院付き添いサービスの利用例

・自宅から診察室まで同行し、医師からの説明を家族に伝える
・入院中の外出まで同行
・医療内容の説明、家族への経過報告
・健康や薬をしっかり服用しているかまで定期的にチェック

弊社「わたしの看護師さん」でも、スタッフ全員が医療や介護の資格を持ち、病院付き添いサービスを提供しています。

病院付き添いをするスタッフに介護や看護の知識があると、症状を本人の代わりに適切に医師に伝えることが可能です。また診察内容や医師からの指示についても、高齢者や家族にわかりやすく説明を行うため、安心して任せることができます。

加齢による難聴は、病状の悪化、事故の危険性、認知症の要因とさまざまなリスクを含んでいます。治療が困難なため、多くの場合、補聴器を利用するなどで改善を図っていくことになります。

もしかかりつけ医があれば、聞こえづらい旨を伝えておいてもいいかもしれません。私の80代の父も定期的に通院していますが、かかりつけ医が顔見知りのため、聞こえづらさがないかなど声をかけていただいているようです。

また介護保険外サービスの病院付き添いのサービスは、親にイレギュラーな受診が必要になった時にも利用可能です。介護や看護などの医療関係者が付き添う場合は、安心して対応を任せることもできます。

ビジネスケアラーや遠距離介護中の方には、定期的な通院は付き添えるが、急な対応は難しいと悩んでいる方も多いと思います。選択肢の一つとして、頼れる病院付き添いサービスを把握しておくことをおすすめします。ぜひ今回の記事を、親の病院付き添い、通院への不安解消につなげてください。

介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。

「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。

「介護に関するお役立ち情報」を随時更新しています。ぜひ介護のお困りごとの参考にご覧ください。

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