がん診療の病院付き添いに悩んだときに 〜遠距離介護を支える付き添いサービスとは〜

ビジネスケアラーや遠距離介護を担う方の中には、「高齢の親が、がんと診断されたが、離れて暮らしているため病院の付き添いが難しい」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

がんの治療法は、主に「手術」「放射線治療」「薬物療法」があり、「がんの3大治療」と呼ばれています。放射線治療と薬物療法は、外来通院で行われることが多く、定期的な通院が必要になります。しかし、離れて暮らしていると頻繁に付き添うことは難しく、「親は一人で通院できるだろうか」「主治医の話をきちんと理解できるだろうか」と不安は募るものです。

今回の記事では、みなさんに代わって親の通院に同行する、病院付き添いサービスについてご紹介します。あわせてサービスを利用するメリット、がん治療中の親のケアで大切なことについてもお伝えしていきます。親の病院付き添いができず不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。

がん診療の病院付き添いの選択肢 〜2つの介護サービスをご紹介〜

遠距離介護中の場合、頻繁に病院に付き添うことや急な受診に対応することは難しくなります。そこで、病院に付き添ってもらえるサービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。ここでは、主な2つのサービスをご紹介します。

1.介護保険サービスの「通院介助」

介護保険で利用できるサービスの中に、通院介助があります。利用対象者は、要介護認定を申請し、要介護1〜5の認定を受け、ケアマネジャーによってケアプランに組み込まれている方です。

主なサポート内容
・自宅から病院に向かうまでの準備
・自宅から病院までの往復の介助
・移動中の利用者の体調確認
・公共交通機関を利用する際の乗降介助
・医療機関の受診手続き

ただし、病院内での待ち時間や診察室への付き添い、トイレなども含めた移動の介助は、病院スタッフが対応を行うとされているため、介護保険は適用されません。例外的に、病院内のスタッフによる対応が難しく、ご本人が介助を必要とする場合、ケアマネジャーの判断により介護保険サービスのケアプランに組み入れることができます。まずは担当のケアマネージャに相談してみましょう。

2.介護保険外の病院付き添いサービス

介護保険サービスで病院付き添いがまかなえない場合は、介護保険外サービスで補うことができます。介護保険外サービスは、全額自費負担になりますが、要介護認定に関わらずどなたでも利用することができます。

普段から介護サービスを利用している場合は、馴染みのあるスタッフに診察室に付き添ってもらえるので、ご本人も安心を感じられるはずです。ご家族にとっては、本人が診察内容を正しく理解できているのか、痛みなどの自覚症状を医師に正確に伝えられているのか不安に感じることもあると思います。介護サービスのスタッフが介護や医療の専門家であれば、ご本人の症状を適切に把握して、医師に伝えます。また、医師からの説明についても、わかりやすく本人に伝えてもらえるため、ご家族も安心して任せることができます。

<病院付き添いサービスの例>
・自宅から診察室まで同行し、医師からの説明をわかりやすくご本人に伝える
・検査にも同行
・家族への医療内容の説明、経過報告
・薬の受け取り
・健康や薬をしっかり服用しているかを定期的にチェック
・入院時、退院時の付き添い
・入院中の介助、外出にも同行

がん治療をサポートする病院付き添いサービス 〜介護保険外サービスを活用した事例から〜

乳がん治療を受ける63歳の女性Aさんが、弊社「わたしの看護師さん」の介護保険外サービスを活用された事例をご紹介します。

Aさんは、乳がんのステージ2と診断され、乳房切除と放射線、抗癌剤治療を受けることになりました。Aさんは、未婚で一人暮らし。遠方に住んでいる甥っ子とは、ほとんど交流がありません。頼れる人がそばにいない環境での闘病生活が始まりました。退院後、在宅療養と通院を続けるなかで、食欲不振や脱毛、倦怠感に苦しみ、ベッドとトイレを往復するのがやっとの状態でした。

医師からはバランスの良い食事や定期受診を勧められましたが、一人ではとても続けられないと感じていました。病気を抱えながらの生活に限界を感じる中、病院の相談員から「わたしの看護師さん」のサービスを紹介されます。Aさんは、週3回の訪問を依頼しました。そこから、Aさんの生活は一変し、病院付き添いサービスも利用することになりました。訪問メニューは以下のとおりです。

<週3回の訪問メニュー>
1日目(介護サービス利用時間:3.5時間)
掃除、入浴の見守り、洗濯、一緒に調理・食事、ゴミ出し

2日目(介護サービス利用時間:3.5時間)
掃除、入浴の見守り、買い物代行、一緒に調理・食事

3日目(介護サービス利用時間:4時間)
外出の支度の手伝い、病院受診の付き添い、薬局から薬の受け取り、買い物付き添い

食事や入浴のサポート、病院付き添いを依頼したことで、日常生活の負担を大幅に軽減できました。「わたしの看護師さん」のスタッフは、看護や介護などの「医療資格」を保持しています。そのため、Aさんの身体の変化や症状をしっかりと理解し、精神的なサポートも含めたケアを受けることができます。体調に合わせた日常の柔軟なケアや、外出時の付き添いサービスは、Aさんにとって大きな支えとなりました。今回の事例のように、一人暮らしの方であっても、介護サービスの活用で、生活と病院に通っての治療を両立することが可能です。

この事例については、こちらの記事も参考になります。
がん治療中の女性を支える「わたしの看護師さん」~介護保険外サービスの有効活用法~ 

がん治療中の親のケアに大切なポイント〜遠距離介護で上手に利用したい介護サービスと周囲のサポート〜

先ほど事例でご紹介したAさんも、体調によってはベッドから起き上がるのが精一杯の状態が続いていました。頼れる人がいない状態でしたが、介護サービスを利用することで、Aさんらしい生活を送れるようになりました。

遠距離介護を担っている方の場合も、親のそばに付き添ってサポートをできない状況に悩むことが多いと思います。そこで大切なのが、介護保険サービス、介護保険外サービス、自治体や地域の共助組織など周囲の協力を活用して、治療中のご本人の負担を減らすことです。病院付き添いのサービス以外にも、治療中の親の生活をサポートするために大切なポイントをお伝えします。

・身の回りのサポート

意外と見落としやすいことが、早朝のゴミ出しです。「自分でゴミを出すことが難しい」「介護保険サービスのヘルパーさんに来てもらう時間では、朝早くの回収に間に合わない」など困った様子があれば、介護保険外サービスや自治体のゴミ出し支援のサービスなどが利用できないか問い合わせてみましょう。

・親の不安な気持ちに寄り添う

治療と向き合うご本人は常に不安な状況にあります。心配に思っていることなど、じっくりと話を聞く姿勢が必要です。家族が辛い気持ちを共有し、受け止めてあげることで安心感につながります。どのようなサポートや介護サービスを必要としているのかについても、知ることができます。良くなってほしいという思いから、健康を気遣ってさまざまな提案をすることがありますが、最終的には親の意思や希望を尊重しましょう。

・家族だけで抱え込まない

「闘病している親の方が辛いんだから、家族は我慢しなくては」と、家族は自分の抱える辛さや精神的な負担を押し込めてしまうことがよくあります。さらにビジネスケアラーや遠距離介護中の方は、介護に加え仕事や自身の家庭生活を維持しなければなりません。親の治療を支えていくためにも、家族自身の心身のケアが大切です。

温かいお風呂に入ったり、適度な運動をしたりして、身体をいたわることを心がけてください。同時に音楽鑑賞や読書など趣味の時間を持つなどして、短時間でもリラックスできる時間を作りましょう。そして、困りごとや悩みごとは一人で抱え込まず、医療関係者、介護サービスのスタッフ、ケアマネジャーなど周囲の信頼できる人、同じ立場で悩んでいる人などに相談し、サポートを活用しましょう。

これまでは、「介護は家族で行うもの」という考えが一般的で、介護に専念するための離職も自然な選択肢と受け止められることもあったと思います。しかし、ビジネスケアラーや遠距離介護が増え、家族だけで行う介護には限界がきています。

私の叔母も一人暮らしで、数年前から治療のために通院をしています。母と叔父が交代で付き添いをしていますが、今後は私が付き添いを頼まれるかもしれません。月に一度であれば仕事を休むなどの調整が可能ですが、週に数回となると難しく、病院付き添いの問題は他人事ではないと改めて感じています。

親や親戚の病院付き添いができず、申し訳ないと責任を感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これからは従来の介護の形に囚われる必要はなく、それぞれの家族に合わせた多様な介護の形を考えることのできる時代です。介護保険外の病院付き添いサービスなども活用して、ご本人と家族の思いや生活を大切にしながら、納得できる介護をしていきましょう。

介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。

「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。

「介護に関するお役立ち情報」を随時更新しています。ぜひ介護のお困りごとの参考にご覧ください。

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