「実家の父が亡くなり、母が一人で暮らすことになった」、その時家族として何をしてあげられるのでしょうか。健康管理や精神面のケア、経済的な問題など、親が高齢であるほど考えるべきことは多岐にわたります。しかし、どのように支援すれば良いのか、何から手をつければ良いのか迷ってしまうことも少なくありません。
高齢化や核家族化が進み、遠距離介護をしている人も増えています。自分の生活や仕事も大切にしながら親をサポートする方法を考えてみませんか?
今回は、お金や住まい、介護体制の視点から具体的な支援方法をご紹介します。親が快適で安心した生活を送ることができるよう、必要な手続きや介護サポートについてご家族で話し合ってみてください。
しっかりと把握しておきたい「お金」のこと
親が一人暮らしを始めるとき、いちばん重要なのはお金に関することです。特に、高齢者は安定した収入を得ることが難しくなるため、今後の生活費や介護資金について家族とともに考えることは必須といって良いでしょう。
1. 財産と収入の把握
まず、親の財産と収入をきちんと把握しましょう。取引のある金融機関や口座の種類、預貯金額、年金や年金以外の収入源(例えばパート収入や不動産収入など)を確認してみて下さい。正確な収入を把握するためには、通帳や年金振込通知書などのチェックを行うと確実です。通帳や印鑑、マイナンバーカードの保管場所も共有しておきましょう。
子どもに心配をかけまいと、収入状況を明かすのをためらう親も中にはいるかもしれません。「お母さんの大事なお金だから、元気で楽しく暮らすためにうまく使ってほしい」「大切に思っているからこそ一緒に考えておきたい」など、親の気持ちに寄り添った言葉をかける工夫も必要です。
2. 生活費の把握と見直し
収入がわかったら、次に支出を確認しましょう。月々の光熱費や食費、医療費、介護サービス利用料など、必要な出費の洗い出しをしてください。過剰な保険料を払っていないかの見直しや保険プランの変更、スマホを格安プランに変えるなども家計のスリム化に役立ちます。
公共料金や保険料などの定期的な支払いは自動引き落としにしておくと、払い忘れや二重払いを防ぐことができます。
3. 亡くなった配偶者の年金の停止と未支給年金の手続き
年金を受給している配偶者を亡くした場合は、「受給権者死亡届」の提出が必要です。あわせて、亡くなった時点でまだ受け取っていない年金や、亡くなった月分までの年金は、「未支給年金の届出」をすることで遺族が受け取ることができます。必要書類を揃えて速やかに年金事務所または年金相談センターへ提出しましょう。(※亡くなった方のマイナンバーが日本年金機構に登録されていれば、「受給権者死亡届」の提出は原則不要です)
4. 遺族年金や老齢年金の受給手続き
遺族年金はいわゆる一家の大黒柱だった方が亡くなった時、遺族が受け取ることのできる年金です。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、亡くなった人がどの年金に加入していたかでもらえる種類が変わります。遺族年金が受給できるか確認し、要件を満たしている場合は受給申請をしましょう。
また、65歳以上の遺族配偶者は、配偶者が厚生年金に加入していた場合、自分の老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)と遺族厚生年金が併給調整された額を受け取ることになります。障害年金を支給されている場合は、受給の組み合わせを選択できます。年金事務所などで相談しましょう。
<参照>日本年金機構|「年金を受けている方が亡くなったとき」
<参照>日本年金機構|「遺族年金の請求手続きのご案内」
住む場所はどうする?「呼び寄せ・高齢者施設・一人暮らし」それぞれの利点と注意点
住環境は親の心身の健康状態に大きく影響を与えるため、どこで生活するかを慎重に考える必要があります。以下は主な3つの方法です。親がどのような暮らし方を望んでいるのか、それぞれの利点と注意点を考慮して、最適な方法を見つけましょう。
1. 子どもの家へ呼び寄せて同居
【利点】
・健康管理や介護がしやすい
・体調不良や緊急時に即座に対応できる
・医師や介護士、ケアマネジャーに、普段の体調や様子を詳しく伝えることができる
【注意点】
・お互いに生活リズムが異なることでストレスを感じる
・親は馴染のない地域で暮らすことになり、家族以外に知り合いがいない
・親が住んでいた元の家の処分等を考える必要がある
そばにいていつでも親の状況を確認できる安心感がある一方、家族ゆえ、遠慮がなくなりお互いの生活に干渉をしてしまうことも考えられます。試しに数週間同居してみると、本格的に同居を開始したあとに「思っていたのと違った」という後悔を避けられるかもしれません。また、同じマンションの別部屋に住むなど近居という選択肢であれば、適度な距離ができ、お互いのプライバシーの確保ができます。
2. 高齢者向け施設への入居
【利点】
・医療や介護のプロがそばにいて安心感がある
・体調や栄養の管理に心配がいらず、高齢者が暮らしやすい設備も整っている
・他者との交流の機会があり、心身の機能維持に良い
【注意点】
・施設や介護度によっては費用負担が大きい
・面会や外泊の機会はあるが、24時間いつでも会えるわけではない
・集団生活なので、他者との関わりが苦手な人はストレスを感じる可能性がある
施設にはさまざまな種類があります。入所条件や費用、受けられる介護サービスも異なるため、一緒に見学し、親に合った施設を選びましょう。体験入居を実施している施設も多くあります。職員と話したり、実際に生活してみたりするとで、見学だけではわからなかった部分も見えてきます。
3. 現在の家での生活を続ける
【利点】
・誰にも気を遣わず自分のペースで過ごせる
・友人や地域とのつながりを保てる
・料理や掃除、買い物などを自分で行うため、頭も体も良く動かせる
【注意点】
・防犯面に心配がある
・急な体調不良や緊急事態への対応が遅れる恐れがある
・介護が必要になった際、家の改修や補修が必要になることがある
長年、家族や社会のために頑張ってきた親世代。ゆっくり一人暮らしをすることに気楽さを感じる方も多いかもしれません。ただ、高齢になるにつれ、誰かの助け無しに暮らすことが難しくなるのは自然なことです。地域や自治体のサポート、介護サービスなどを利用して、無理なく過ごせる体制を整えることが求められます。
介護体制を整える〜頼れる人や介護サービスとつながって〜
介護は一人で行うには負担が大きいものです。遠距離介護の場合、直接親の様子を見られない分、心配事が増えますよね。親族や地域の人達に協力を仰ぎ、介護保険サービスなども利用しながら多くの目で親を見守ることが大切です。
1. きょうだい、親戚へ協力を依頼
きょうだいや親戚と連携して、介護の役割分担をすることが重要です。日常生活のサポート担当、資金援助担当など、役割を決めて負担を軽減しましょう。親族で定期的に連絡を取り合い、一旦決めた役割の見直しや、親の様子の共有もしてみてください。そうすることで、誰かに負担が偏るのを避けられることがあります。
2. 地域とのつながり維持や見守りサービスの活用
日頃から地域で行われている高齢者向けイベントやボランティアに参加していると、周囲から異変に気付いてもらいやすくなり、親の孤立を防ぐことができます。親が住んでいる自治体の公民館や地域包括支援センターで行われている活動を調べて、参加を促してみることをおすすめします。
行政と地域が連携して、高齢者の自宅を訪問し安否確認、弁当宅配などを行う見守りサービスもあります。また、緊急事態に簡単な操作で通報できる装置を貸し出している自治体も多数あります。住んでいる地域のサービスを調べ、親の暮らしや利用のしやすさに合わせて活用しましょう。
3. 介護保険サービスと介護保険外サービスの利用
要介護・要支援認定を受けている場合、介護保険サービスを利用できます。訪問介護やショートステイ、福祉用具のレンタルなど、介護を必要とする度合いに応じてサービスもさまざまです。地域包括支援センターや自治体の窓口へ相談をしてみましょう。親の生活や身体の状況に合わせて、ケアマネジャーに必要なケアプランを提案してもらえます。
要介護認定の申請方法や利用できる介護サービスについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
要介護認定とは?介護保険サービスを利用するためにまずは申請を〜申請方法をご紹介〜
また、介護保険外サービスであれば、介護保険では対応できないこまやかな支援を受けられます。趣味のための外出介助や大掃除の手伝いなど、サービス内容の自由度が高いのが魅力です。
「介護認定こそ受けていないが、足腰に不安があるので買い物に付き添ってほしい」「病状の説明や医師からの指示の理解ができるか心配なので診察室に同行してほしい」など、ご本人やご家族の気持ちに寄り添った介護保険外サービスを弊社「わたしの看護師さん」でもご提供しています。
介護保険外サービスは、介護認定を受けているかどうかに関係なく利用でき、遠距離介護を続けていくための心強い手助けになるでしょう。
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親が一人暮らしを始める日は突然やってくるかもしれません。でも、離れて暮らしていても、親を支える方法はたくさんあります。できれば親が元気なうちに「その時」に備えしっかりと話し合っておくとなお良いでしょう。事前に情報を集め、心の準備をしておくだけでも、いざという時に慌てずにすみます。
子どもに迷惑をかけたくない気持ちから、「私が一人暮らしになったら、高齢者施設に入れてくれたら良いからね」という親世代の声を身近でもよく聞きます。一方で、親しい友人には「家ですごしたい。子どもにそばにいてほしい」とこぼしているなど、親本人にも迷いがあることも。親の本当の気持ちを尊重しつつ、医師やケアマネジャーなどの専門家の意見も取り入れながら、納得のいく答えを見つけたいものです。
親子で日頃からお互いの意向を確認し合い、理想の暮らしとのギャップが少なく遠距離介護を行う方法を選択できますように。
介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。
家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。
「介護に関するお役立ち情報」を随時更新しています。ぜひ介護のお困りごとの参考にご覧ください。
