本格的に暑くなるにつれて、気をつけたいのが熱中症です。
「高齢の親が熱中症で倒れていたらどうしよう」、「離れて暮らしている場合、どうやって熱中症の対策をしたらいいの?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
令和5年5月から9月に、熱中症によって救急搬送された人は、全国で91,467人。これは、調査開始以降、過去2番目に多い搬送人員です。
そのなかでも高齢者の搬送人員は最も多く、全体の5割を超えています。
今回の記事では、高齢者ならではの熱中症のリスクや対策、最後に遠距離介護に役立つ熱中症対策をご紹介します。
参照:総務省|報道資料|令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況
暑い夏の天敵、熱中症の原因と症状とは
高齢になった親の熱中症を防ぐために、まずは、熱中症の原因と症状について知っておきましょう。
熱中症の原因
人間の身体は、暑さや運動などにより体温が上がっても、汗や皮膚温度が上昇することで体内の熱が外に逃げ、自然に体温調節が行われる仕組みとなっています。
しかし、気温や湿度が高い状況、激しい運動などの要因から、体温の調節機能のバランスが崩れることがあります。すると身体に熱がどんどん溜まってしまいます。この状態が熱中症です。
熱中症の症状
熱中症には早急な対処が必要です。主な症状を知っていれば、小さな異変でも熱中症を疑うことができるでしょう。少しでも知識を持っていることが大切です。
以下の7つのうち、どれか一つでも症状が現れた場合、熱中症の可能性があります。
- めまい、顔のほてり、立ちくらみ
- 筋肉痛、筋肉のけいれん、手足のしびれ
- 体のだるさ、吐き気(嘔吐)、頭痛
- 大量の汗、もしくはまったく汗をかいていない
- 体温が高い、皮膚が赤く乾いているなど皮膚の異常
- 声かけに反応しない、まっすぐに歩けない、ひきつけを起こす
- 自分で水分補給ができない
このような症状が現れたら、まずはエアコンが効いている室内や風通しのよい日陰など、涼しい場所へ避難させることが重要です。そして、衣服をゆるめ、身体を冷やしましょう。特に、首周り、脇の下、足の付け根などを重点的に冷やすと効果的です。
水分・塩分、スポーツドリンクなどの補給も忘れずに行います。このとき、自分で水分補給ができない場合は、むりに飲ませることはやめて、医療機関を受診しましょう。
また、呼びかけに反応しない場合は重度の熱中症にかかっている危険性があります。すぐに救急車を呼んでください。
高齢者は熱中症になりやすい?その理由とは
高齢者は、若者に比べて熱中症になる可能性が高いといわれています。主に、加齢による身体の機能の変化、高齢者が取りやすい行動の2つの理由が考えられます。
1.加齢による身体の機能の変化が、熱中症のリスクを高める
・体温を調節する能力の低下
高齢者は若者に比べて体内の熱を周囲に逃がす能力が低く、熱をためやすくなります。一度身体に熱がたまると、冷めるまでに時間がかかります。また、循環器系への負担も大きくなるため注意が必要です。
・体内の水分量の減少
高齢者の体内の水分量は、成人の60%に比べて、50%に減少します。しかし、老廃物を排出する際にはたくさんの尿を必要とするため、水分補給は重要です。できるだけ水分をとる習慣をつけましょう。
・暑さや喉の渇きを感じにくい
高齢になるにつれ、暑さや喉の渇きに対する感覚が鈍くなります。そのため、気づかないうちに室内でも熱中症を引き起こしてしまうのです。
2.高齢者が取りやすい行動が、熱中症の原因に
・トイレに行きたくないから水分補給を控える
頻尿は高齢者の悩みのひとつです。頻尿のために水分補給を控えてしまうのは自然なことかもしれません。しかし、暑い時期に水分をとらないのは危険です。水をたくさん飲むだけではなく、スポーツ飲料や塩分補給もすることで効率よく対策してみてはいかがでしょうか。
・エアコンを使いたがらない
高齢者の中には「エアコンは嫌い」「電気代がもったいない」と感じ、「窓を開けるだけ」「扇風機だけ」というようにエアコンを使わないことがあります。
総務省の調査によると、熱中症で救急搬送される人が最も多い場所は、住居となっています。外出していなくても、エアコンを使用しないことにより、室内温度や湿度が上昇し、熱中症になるリスクがあるのです。
熱中症対策にエアコンはかかせません。高齢の親とゆっくり話し合い、エアコンの重要さを理解してもらいましょう。
参照:総務省|報道資料|令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況
高齢者に寄り添った熱中症対策をしましょう
こまめな水分補給や涼しい服装など、基本的な熱中症の対策をすることは大切です。それに加え高齢者の場合、加齢による身体の機能の変化に合わせた熱中症対策も行いましょう。熱中症を防ぐ4つのポイントをご紹介します。
1.計画的な水分補給
高齢になると、自分の脱水症状に気づかないことがあります。そのため、普段から計画的に水分補給をすることを習慣にすることをおすすめします。
例えば「朝起きたらまず水を飲む」「薬と一緒にコップ一杯の水を飲む」など、喉が渇く前に水分補給するタイミングをあらかじめ決めておきます。
また、お風呂や就寝時は身体の水分が失われやすく、注意が必要です。「入浴前後に水分補給をする」「寝るときは枕元に水を置いておく」など対策をしましょう。
2.気温や湿度を測る
高齢になるにつれ、体感で暑さを自覚することは難しくなっていきます。その対策として、温度計や湿度計を設置し、室温を測りましょう。
「室温が30℃を超えたらエアコンをつける」というようにルールを決めておきます。そうすることで、暑さを感じにくい高齢者も快適な室温で過ごすことができます。
3.外出は涼しいときにする
日中に外出する際は休憩を多くとり、身体を休めることが大切です。屋外での運動を習慣にしている方は、早朝にウォーキングをするなど、比較的涼しい時間帯に行いましょう。
4.家族や友人による見守り
高齢者は、暑さや熱中症を自覚するのが遅くなり、「まだ平気」というように、我慢してしまうこともあります。
みなさんの中には、高齢の親が、エアコンをつけずに暑い部屋にいるのに気がついて、驚いたという人も多いのではないでしょうか。私の祖母も室温が高いのに、「寒い寒い」と言い、エアコンをつけずに過ごしていることがよくあります。
そのため、家族や友人など、周りの人が、高齢者の身体の変化に気づいて対策をしてあげることが大切です。体調に異変がないか、室内が暑くないかなどよく見てあげましょう。
離れて暮らしている方や遠距離介護をしている方は、すぐに親の異変に気づくことが難しくなります。定期的に電話やビデオ通話をして様子を見守りましょう。「水を飲んだか」「体温は正常か」など、チェックリストを作り、親と確認しあうのもおすすめです。
遠距離介護に役立つ熱中症対策
ここでは、熱中症対策に役立つグッズを紹介します。遠距離介護をしているご家族にも役立つ対策がたくさんあります。お盆などの帰省のタイミングで導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
アラーム付き温度計を設置する
高齢になると、自分の感覚だけに頼らず、温度計を使い正確な室温を知ることが大切になります。そこで便利なのが、アラーム付きの温度計です。温度の上限と下限を設定し、それを超えるとアラームで知らせてくれます。
親が自分で部屋の暑さに気づけるので、離れて暮らしていても安心できるでしょう。また、アプリで親の過ごす部屋の室温を確認できるものもあります。
スマートリモコンを活用する
遠距離介護中の親が住む家のエアコンを遠隔で操作できたら便利ですよね。
そこで、スマートリモコンを活用することをおすすめします。スマートリモコンとは、スマートフォンと家電の中継の役割を担い、家から離れていてもエアコンの操作ができる機器です。
温度計の機能がついたスマートリモコンを使えば、遠距離介護をしていても、高齢の親の住む家の室温を把握でき、遠隔でエアコンの操作ができます。あらかじめ温度を設定し、エアコンの運転を自動化できるものもあります。
注意点として、使用できるのは赤外線通信に対応している家電に限られます。スマートリモコンを買う前に、あらかじめ確認しておきましょう。
遮光カーテン、紫外線カット効果のあるレースカーテンを使う
遮光カーテンは光だけではなく、熱や紫外線も通しにくい素材でできています。そのため、室温の上昇を防いでくれるというメリットがあります。遮光カーテンを使うことで、少しでも室温を下げ、冷房の効率を良くしましょう。
カーテンを開けていることが多い日中は、紫外線カット効果のあるレースカーテンを使用することをおすすめします。
冷却グッズをプレゼントする
最近は、持ち運び用扇風機や首を冷やすアイテム、涼しいインナーなど、さまざまな冷却グッズが売られています。
でも、「欲しくてもどれを買ったらいいか分からない」「そもそも冷却グッズが売られていることを知らない」という高齢者もいらっしゃるでしょう。
自分では買うタイミングがなくても、家族や周りの人にプレゼントとしてもらうと、使ってみようというきっかけができます。冷却グッズをプレゼントすることで、高齢の親に夏を快適に過ごしてもらいましょう。
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近年、日本各地で最高気温が35℃を超える猛暑日となることも増えてきました。体内機能が低下した高齢者は、他の年代に比べて、熱中症の危険性が高まります。
高齢者が熱中症の対策をしっかりとするためには、家族や周りの人の手助けやサポートが欠かせません。高齢の親が暑い季節を快適に、そして安心して生活できる環境を整えていきましょう。
また、遠距離介護をしていてもできる対策はたくさんあるので、活用してみてください。水分補給のルールを決める、スマートリモコンなどの便利グッズを活用するなど、あまりお金をかけずに手軽に取り組める対策もあります。
まずは親に熱中症の危険性を理解してもらうことからはじめ、それぞれの生活に合った熱中症対策を行ってみてください。
介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。
家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。
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