「親が詐欺被害に遭わないだろうか」「最近物忘れが多くなってきたけれど、お金の管理を親自身にまかせて大丈夫かな」と不安を抱えていませんか。
年々、高齢者を狙った詐欺の手口は巧妙化しており、犯人はあの手この手を使ってきます。しかし、親と離れて暮らしていると、対策を取ろうとしても、実際に何から始めてよいのか分からない方も多いと思います。
今回の記事では、遠距離介護でできる詐欺への対策や家族に代わって見守りを行うサービス、親のお金の管理方法などをご紹介します。
高齢者の特殊詐欺について
親を詐欺被害から守るためには、高齢者の特殊詐欺被害の現状を知ることが大切です。ここでは、1. 被害状況、2. 高齢者が被害に遭いやすい要因、3.代表的な詐欺の手口と気をつけるポイントについてご紹介します。
1.高齢者の詐欺被害の現状は?
令和5年に発生した特殊詐欺は、発生件数の多い順に架空請求詐欺、還付金詐欺、オレオレ詐欺、預貯金詐欺、キャッシュカード詐欺盗です。前年と比較すると、振込型、電子マネー型の詐欺が増加しています。
65歳以上の被害は、法人被害を除いて全体の8割を占めており、男性よりも女性の被害が目立ちます。犯行手段の約8割が電話で、内、9割が固定電話です。
2.なぜ高齢者は狙われ、被害に遭いやすいのか?
高齢者が被害に遭いやすい要因は、以下の3つが考えられます。
・自宅にいる時間が多く、固定電話を置いている
高齢者は、古くからの友人や親戚とのやりとりに固定電話を使っている場合が多く、退職して家にいる時間が多くなると、詐欺の電話に出るおそれが高くなります。
・加齢により、判断能力や声を認識する能力が低下する
聴力の低下は、家族と犯人の声の判別を難しくします。また、犯人は言葉巧みに不安をあおってくるため、冷静な判断ができず被害に遭いやすくなります。
・周りに相談できる人がいない
詐欺被害に遭っている高齢者のほとんどが、誰にも相談していません。原因として、家族や友人と疎遠になっている、離れて暮らす家族に遠慮して連絡できないということが挙げられます。
3.代表的な詐欺の手口と、気をつけるポイント
電話を用いた代表的な詐欺の手口と、気をつけるポイントをご紹介します。
・還付金詐欺
自治体などの職員を名乗り「医療費や保険料の還付金がある」と電話をかけてきます。携帯電話を持ってATMに行くように指示され、指示どおりに操作すると、意図せず犯人の口座にお金を振り込んでしまいます。
ポイント:ATMの操作でお金が還付されることや、公的機関が操作の指示をしたりすることは無いので、事前に親に説明しておきましょう。
・オレオレ詐欺
息子や孫になりすまし、知らない番号から電話をかけてきます。仕事などのトラブルを口実にお金を要求し、代理人を名乗りお金を受け取りにきます。「電話番号が変わった」は要注意です。
ポイント:一旦電話を切り、息子や孫の電話番号にかけ直すなど、冷静な対応をするよう、日頃から話し合っておきましょう。
・キャッシュカード詐欺盗
警察官や銀行などの職員を装い電話をかけ、「キャッシュカードが不正に利用されているため手続きをしたい」などと言い、訪問してきます。犯人は、封筒にカードと暗証番号を入れるよう指示し、隙をみて偽物のカードの入った封筒とすり替えます。
ポイント:警察官、銀行の職員が暗証番号を聞くことはありません。親が、不安を感じたとき、家族や信頼できる人に相談できる体制を整えておきましょう。
詐欺に遭わないために、家族ができること ~まずは電話対策!~
被害に遭わない最も有効な対策は、「犯人と話さない」「一人で判断させない」こと。詐欺の多くは電話を使用しています。ここでは、不審な電話に出ないための電話対策を3つご紹介します。
1.防犯機能のついた電話機や、防犯サービスを利用する
・迷惑電話防止機能付きの電話機
着信時に、「迷惑電話防止のため通話を録音する」という警告メッセージを流し、通話内容を録音します。特殊詐欺の犯人は自分の声が録音されることを嫌うためとても効果的です。
・ナンバーディスプレイ
NTT東日本、NTT西日本は、70歳以上の契約者または70歳以上の方と同居している契約者の回線を対象として、ナンバー・ディスプレイの月額利用料および工事費を無料とするサービスを行っています。利用するためには、ナンバーディスプレイの対応機器を購入する必要があります。対象の回線かどうか、確認してみましょう。
2.在宅時でも留守番電話に設定する
常に留守番電話に設定し、録音されたメッセージを確認してからかけ直すように、親に伝えておきます。家族や友人など、頻繁にやりとりをする相手には、あらかじめ知らせておきましょう。
3.合言葉やルールを決めて電話の横に貼る
犯人は「裁判になる」等の言葉を使い、高齢者をパニックに陥れ判断力を奪おうとします。オレオレ詐欺を防ぐために家族で合言葉を決めておく、慌てて判断しないためのルールを紙に書き、電話の横に貼っておくなどすると安心です。
・合言葉
オレオレ詐欺対策に効果を発揮するのが、合言葉を決めておくこと。ポイントは、飼っているペットの名前など、家族しか知らない内容にしておくことです。
・ルール
犯人は、「誰にも言うな」と指示をしたり、「今日中に支払いが必要」などと言って慌てさせたりして、高齢者が一人で判断するように追い込みます。例えば、「お金の話が出たら、一旦電話を切って家族に相談!」などのルールを決め、一人で判断させないことが大切です。
4.ATMで引き出せる利用限度額を下げる
親が通帳から多くの額を引き出せないように、一日で引き出せる利用限度額を下げておくことも効果的です。銀行によっては、70歳以上で一定期間ATMを使用していない場合、利用を制限する仕組みを導入しています。
遠距離介護の場合に気をつけること ~周りと連携して特殊詐欺を防ぐ~
遠距離介護中の方は、毎日の見守りが難しいため、親の住む地域の知り合いや親戚などと連携する、福祉・介護サービスを利用するなどして見守りを行うことを検討してみてはいかがでしょうか。ここでは、遠距離介護中の詐欺対策を3つご紹介します。
1.電話でコミュニケーションをとり、親の異変に早めに気づく
なるべく電話をして「変わったことはなかった?」と声かけをしましょう。親は、子どもの声を確認することができ、オレオレ詐欺を防ぐ対策にもなります。
2.近所の方にも見守りをお願いする
帰省時、近所の人や近くに住む親戚に、挨拶を兼ねて普段の見守りをお願いするとよいでしょう。
3.訪問型のサービスを利用する
・訪問介護
訪問介護は、要介護1〜5の認定を受けた方が利用できます。ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排泄、食事などの介助サービスを行います。認定を受けるためには、各自治体への申請が必要です。
・自治体の見守り制度を利用する
各自治体の民生委員は、住民の生活に関する相談に応じ、適切な支援や福祉サービスへつないだり、高齢者世帯の見守りや安否確認などを行ったりします。また、社会福祉協議会の職員が訪問する場合もあります。各自治体の福祉課、社会福祉協議会に問合せてみましょう。
・配食サービス
一人暮らしの高齢者や高齢者世帯を対象に、定期的に手渡しで配食してくれるサービスです。配食サービスを行う事業所が、自治体と協定を結ぶなどして、お届け時に見守りサービスを実施していることもあります。
離れて暮らす親のお金の管理はどうしたらいいの?
認知症などで認知能力が低下すると、これまで当たり前にやってきたことができなくなり、詐欺への不安も高くなります。そこで、離れて暮らす親のお金の管理をサポートしてくれる制度である、日常生活自立支援事業をご紹介します。
日常生活自立支援事業とは
認知能力が低下すると、自分だけで判断することや、お金の管理について不安を感じるようになります。日常生活自立支援事業は、不安を抱える方が安心して生活ができるように、社会福祉協議会が窓口となってサポートを行う事業です。
・利用できる人は?
軽度の認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などで、本人に利用する意思があり、契約の内容がある程度理解できる人が対象になります。
・サポートの内容
①福祉サービスを利用するためのお手伝い
どのような福祉サービスが利用できるのか情報の提供を行い、サービスを利用するための手続きのお手伝いをします。
②お金の管理についてのお手伝い
医療費や公共料金の支払い、年金の受け取りなど、日常的なお金の管理をお手伝いします。
③大切な書類などの保管についてのお手伝い
通帳や年金証書などの重要書類や、実印などを安全な場所で預かり保管します。
・手続きの流れ
①社会福祉協議会への連絡
②打ち合わせ
担当者が訪問し、困りごとや悩みごとについて無料で相談を受けます。
③計画書の作成
本人の希望をもとに、どのような手伝いをどれくらいの頻度で行うのかを決めて、計画書を作成します。
④契約、サービス開始
利用者と社会福祉協議会で契約を結び、計画書に沿って担当者がサービスを提供します。(契約締結後は、利用料がかかります)
※離れて暮らす親のお金の管理についてさらに知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。
・高齢の親の財産を凍結から守る〜認知症が心配な親の預貯金を、適切に管理するには
・体が不自由になっても、親に安心して過ごしてもらうために~財産管理等委任契約についてご説明します
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親と離れて暮らしている方の多くが、ご家族だけの見守りに不安を感じていらっしゃると思います。ご家族だけで抱えず、介護サービスを利用し、行政や福祉施設とつながりを持つことで、不安を安心に変えていくことができます。
初めて介護サービスを利用される方は、自治体の窓口や専門家に相談することをおすすめします。各家庭の状況や予算に合った見守りサービスが見つかるはずです。
私の親もそうなのですが、詐欺について話をすると「自分は詐欺にはあわない、大丈夫」とよく言います。みなさんのご両親はいかがですか。しかし「大丈夫」と思っている高齢の方が多く被害に遭っていることを知り、早急に対策が必要であると感じています。
みなさんも離れて暮らすご両親が安心して暮らしていくために、できることから始めてみましょう。
介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。
家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。
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