お盆を親と過ごし、介護や看取りについて考えるようになった方も多いのではないでしょうか。「看取りはどう進めたらいいの?」「遠距離介護で看取りをするには、どうしたらいいの?」など、これまで看取りの経験をしたことがない場合、分からないことばかりで不安が大きいと思います。
ただ「大切な親の最期を、できるだけ親の望む形で迎えさせてあげたい」、その気持ちはみなさん共通の願いのはず。前もって準備しておけばよかったと後悔しないためにも、できる備えを始めてみませんか?
今回の記事では、看取りに大切なこと、事前に準備をしておくとよいこと、遠距離介護中の看取りで頼れるサポートなどについてご紹介します。看取りについての知識を深め、不安を少しでも安心に変えるお手伝いができればと思います。
看取りとは 〜看取り介護の流れと、看取りで大切なこと〜
看取りとは、無理な延命治療などの医療行為は行わず、自然に亡くなるまでの過程を見守ることです。食事や排泄の介護などの日常生活のケアをメインに行われます。
看取り介護の流れ
看取り介護は、一般的に次のような流れで開始されます。
1.医師の判断
主治医を含むなるべく複数の医師によって、「心身機能の障害や衰弱がはっきりと回復できない状態」「近い将来確実に死に至る状態」だと判断された際に開始されます。
2.本人の意思を尊重しながら、治療方針を決める
医師などから十分な情報や適切な説明を受けたうえで、延命治療を行うかなど、本人の意思を尊重しながら今後の治療方針を決定していきます。
3.看取る場所を選ぶ
どこで、どのように過ごしたいのか、本人と家族で話し合いながら、看取る場所を選びます。病院での看取りが一般的ですが、看取り対応を行う施設、自宅での看取りを選択する家族も増えてきました。
4.介護に関わるスタッフと情報を共有する
看取り介護は、医師、看護師、ケアマネジャー、介護スタッフなどでチームを作って行われます。親が希望する最期を迎えるためにも、関わるスタッフと情報を共有することが重要です。
看取りで大切なこと
看取りを行ううえで、次の2つのことを大切にしながら進めるとよいでしょう。
1.日頃から家族で話し合い、親の気持ちを確認する
死について語ることに抵抗があり、話題にするきっかけがないという方も多いと思います。しかし、看取りの段階になって「元気なうちに確認しておけばよかった」と後悔してしまうことも起こりえます。日頃から「どのような人生を送りたいのか」「何を大切にしたいのか」など、なるべく前向きな質問で、親の気持ちを確認してみてはいかがでしょうか。
2.家族で抱え込まない
親が望む状態で最期を迎えるためには、家族の体や心のケアも大切です。親が自宅での看取りを希望しているからといって、介護する家族が無理をした結果、親に当たってしまうようでは意味がありません。決して家族だけで抱え込まず、医師、看護師、ケアマネジャーなどに相談しながら進めていくことが大切です。
看取る場所を決めるために
看取りを行う場所には、病院、施設、自宅の3つが挙げられます。それぞれのメリット、デメリットを理解した上で選択しましょう。
1.病院
高齢者の場合にかぎらず、家族にかかる介護の負担が少なく、医療体制が整っている病院を選ぶ人が多い傾向にあります。厚生労働省の調べによると、令和4年の死亡場所の64.5%が病院という結果でした。
メリット
・専門的な医療ケアを受けることができる
・容体が急変したときでも安心して対応を任せられる
デメリット
・医療行為が必要ない場合は、入院できない
・面会時間が決まっているため、家族と一緒にいる時間が少なくなる
・他人と共有している空間では自由が制限されるため、ストレスの原因になる
2.自宅
住み慣れた自宅での看取りを希望する人も多く、厚生労働省の調べによると、自宅で最期を迎えたい人が全体の43.8%です。病院を希望する人41.6%、施設を希望する人10%に比べ、割合が高くなっています。
自宅での看取りを決めた場合、まずは在宅医を決めます。かかりつけ医がいる場合、往診が可能か、看取りまで対応してくれるのか確認を行います。医療と介護が24時間体制で行えるように整え、介護ベッドなどの福祉用具を揃えます。
メリット
・時間の制限がないため、会いたい人と好きな時間に会うことができる
・プライバシーが守られた空間でストレスが少ない
・介護する家族も、周囲の人に気を使う必要が減る
デメリット
・24時間365日、介護医療体制を整えることが必要になる。在宅での医療介護サービスを利用できるが、家族の介護負担も増える
・専門的な医療ケアが難しい
3.介護施設
今後高齢化が進み、病院のベッド数が不足する対策として、介護施設での看取り介護への需要が高まっています。看取りに対応する施設は増えていくことが予想されます。
看取りは次のような施設で行われています。

施設によっては対応していない場合があるため、事前の確認が必要です。
メリット
・専門の介護職員が24時間サポートしてくれる
デメリット
・入居できるまで待たなければならないこともある
・費用が高額になる場合がある
参照:厚生労働省 令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書
参照:厚生労働省 令和5年度 厚生統計要覧 第1編 人口・世帯 第2章 人口動態
看取りで事前に準備しておくとよいこと
看取りの前後で慌てないためにも、事前に準備しておくと安心です。主に次の4つのポイントを押さえておくとよいでしょう。
1.事前指示書を作成する
親の意思が確認できない場合、家族が本人の意思を推定し治療方針を決めなければなりません。確認ができるうちに、事前指示書を作成しておくことをおすすめします。
事前指示書とは?
自分に行われる医療行為に対する意向を前もって示しておくための文書です。法的強制力はありませんが、基本的には本人の意思が優先されます。何回でも書き直せるため、家族、医師などと相談しながら作成し、度々見直すとよいでしょう。
書く内容は?
事前指示書は、統一された書式は決まっていません。自分のフォーマットで作成しますが、次の2つの内容を盛り込むようにします。
①代理判断者について
判断能力が無くなった際に、自分の医療やケアについて代わりに判断をしてほしい人を明示します。
②延命治療について
心肺蘇生などの延命治療を希望するか、胃ろうを行うかなど、自分が受けたい治療、受けたくない治療をあらかじめ表明しておきます。
2.お金の管理について親と相談しておく
親の認知能力が低下したと判断されると銀行の口座が凍結され、子どもであっても親のお金を引き出せなくなります。介護費用などで困らないために、お金の管理についても話し合っておきましょう。
お金の管理で利用できる制度の一つが成年後見制度です。中でも「任意後見制度」は、あらかじめ任意後見人を選んでおくことができるため、事前に手続きをしておくと安心です。他にも家族信託などの財産の管理法を利用することができます。
※成年後見人制度や他の制度についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
高齢の親の財産を凍結から守る〜認知症が心配な親の預貯金を、適切に管理するには
3.葬儀やお墓について家族で話し合っておく
・葬儀について
葬儀場や葬儀スタイルの親の希望を確認します。葬儀会社の互助会などに入会し、費用の積立を行っている場合もあります。
また葬儀の際に知らせたい人を聞いておいたり、遺影を準備したりしておくと安心です。家族の思い出にもなるような、笑顔の写真を撮っておくといいですね。
・お墓について
近年では、先祖代々のお墓以外にも、樹木葬、散骨など埋葬方法も多様化しています。どのような埋葬方法を希望しているのか確認しておくとよいでしょう。永代供養墓は生前に申込ができるため、親の希望のお墓を選ぶことができます。
※お墓について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
お盆の帰省時に話し合っておきたい「お墓のこと」~墓じまいとお墓の選択肢~
遠距離介護中の看取りをサポートするサービス
遠距離介護中の方は、いざという時にすぐに駆けつけることが難しいため、看取りへの不安も大きいと思います。ここでは、看取りをサポートするサービスをご紹介します。
1.介護保険サービス
65歳以上の方の場合、各市町村に申請して要介護認定を受けると利用できます。要介護・要支援状態区分によって、受けられるサービスや1か月の利用限度額が異なります。申請、認定には費用はかかりません。
主に受けられるサービス
・訪問介護
ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排泄、食事などの身体介助や、身の回りの家事などの生活援助を行います。
・訪問看護
看護師などが自宅を訪問し、医師の指示に基づいた医療面でのサポートを行います。通院が難しい方にとっては、心強いサービスです。また、医療保険が適用になる訪問診療と組み合わせて利用することで、最期まで自宅で過ごすことも可能になります。
介護施設に入所して受けられるサービスもありますので、ケアマネージャーに相談してみてください。
2.介護保険外サービス
介護保険のサービスで提供されないサービスを受けることができます。主なサービスに、通院の付き添いや看取りサービスがあります。市区町村、民間企業などが運営しており、全額自己負担になりますが、介護認定を受けていない高齢者も利用可能です。
弊社の介護保険外サービス「わたしの看護師さん」でも、看取りサービスを行っています。緊急のときにすぐに駆けつけられない遠距離介護中の家族に代わって見守りをしています。
*
看取りで大切なことは、まず親と家族の思いを共有することです。死について言葉にすることは難しく、これまで話題にできなかった方も、帰省のタイミングに話し合ってみませんか。
遠距離介護中で、看取りに不安を感じている方も、介護サービスや介護保険外サービスを上手く利用することで、負担を軽減しながら安心して看取りを行うことができます。一度利用を検討してみてはいかがでしょう。
家族が慌ててしまい、親と過ごす最期の時間が大事にできないことがないように、今日から少しずつ行動していきましょう。
介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。
家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。
「介護に関するお役立ち情報」を随時更新しています。ぜひ介護のお困りごとの参考にご覧ください。