離れて暮らす高齢の親を守るために~今こそ知りたい防犯と見守りサービス~

昨今、高齢者の住まいを狙った強盗事件が多く報道されています。遠距離介護を行っていると、日ごろの親の様子がわからないため、「親の防犯対策は今のままで大丈夫だろうか……」と悩んでいませんか?

また、防犯の見直しを耳にする機会が増えたものの、具体的にどのようなことをしたらいいかわからない方が多いのではないでしょうか。今回は、暮らしに取り入れやすい防犯対策や、遠距離介護の場合にも役立つ見守りサービス、高齢の親の防犯のために家族ができるサポートの方法をご紹介します。

住まいの防犯は厳重に!他人事ではない社会問題「闇バイト」

高齢者が安心して暮らすために、より厳重な住まいの防犯が求められています。まずは、高齢者の身に迫っている危険な犯罪や、どうしてターゲットになりやすいのかを知っておきましょう。

高齢者を狙う「闇バイト」の増加

2020年より始まったコロナ禍をきっかけに、ITの活用が浸透し、情報取得の方法やコミュニケーションツールに変化が生まれました。その一つにSNSが普及し、多くの世代が利用するようになったことが挙げられます。

誰もが情報に触れられる時代へ変わり利便性が高まった一方で、甘い言葉に誘われて犯罪に加担してしまう事例が後を絶ちません。中でも増加傾向にあるのが、いわゆる「闇バイト」と呼ばれるものです。

犯罪組織の中核者がSNSなどを通じて求人情報を掲載し、応募者を匿名チャットツールへ誘導して、犯罪の実行を指示する手口が多くみられます。近年、犯罪グループは、電話を使用した特殊詐欺だけでなく、強盗や窃盗にまで手を染めています。現に、2023年には東京都狛江市で強盗殺人事件が起き、大きく報道されました。

それからも闇バイトの被害は、地域問わず全国で急激に増加しているため、日本中に不安が広がっています。短期間で多数の闇バイトの被害が発生したのも、巧妙な手口が使われているという要因が大きいでしょう。中核者が匿名性の高い手段を悪用し、実行する人を募っては遠隔で指示する流れを繰り返しており、結果的に実行犯は検挙できても、中核者の特定に時間を要してしまうのが現状です。

なぜ高齢者がターゲットにされやすいのか

高齢者のみで暮らしている住まいが狙われやすい理由には、以下の3つが考えられます。

1. 力が弱いから抵抗できない

強盗被害では、侵入をして金品を奪われるだけでなく、暴行や拉致などの危害を加えられるケースが増えています。高齢者は、逃走する犯人を追いかけることが困難です。また、高齢者のみが暮らす住まいだとわかれば、万が一抵抗されても力が弱いため、標的となってしまう恐れがあるでしょう。地域や周囲の人との交流が限られ、外部への助けを求めることが難しい場合は、更にリスクが高まります。

2. 「我が家は被害に遭わないだろう、大丈夫」と思いこんでいる

歳を重ねると、つい自分を過信してしまい、防犯に意識が向きにくくなる面もあります。過度に気にすると体にも心にも悪影響ではありますが、犯罪の脅威から身を守るために油断は禁物です。高齢の親が、しっかりと防犯を心がけ犯罪に注意できるよう、離れて暮らす家族もサポートするようにしましょう。

3. 昔のままの防犯意識

昔は問題なかったからといって、玄関や窓を無施錠のままにしている高齢者もいますが、これは大変危険です。また、普段から聞こえにくさを感じている方や認知能力に衰えがみられる高齢の方は、侵入者が忍び込んだとしても気付かない可能性もあります。親が、来客時に相手を確認せずドアを開けたり、長年タンス預金をしていたりする場合、闇バイトなどに巻き込まれる可能性を意識して、見直しや対策ができるよう家族で一緒に考えてみてください。

参照:警察庁|「住まいる防犯110番」
参照:警察庁|「令和6年度版 警察白書」

今からでも・誰でもできる防犯対策の一例

普段から基本的な防犯対策をおこなっているつもりでも、ふとしたことから犯罪に巻き込まれる隙は生まれてしまいます。まずは、すぐにでも実施可能な対策を親と一緒に確認してみましょう。ここでは、高齢者自身で可能な対策を4つご紹介します。親が対策できていることとできていないことを確認し改めることで、リスクそのものが軽減するはずです。

1. 在宅時も施錠をする

たとえ家の中にいようとも、強盗は鍵の開いたドアや窓から忍び込んでくることもあります。ドアや窓の鍵を閉め、可能ならドアチェーンを付けるように習慣づけることは、簡単でもあり効果的な対策となります。一度開けたら必ず閉めるというクセをつけるようにしましょう。

2. 近隣住民とのつながりを大切にする

普段から、隣人や近所の方とのコミュニケーションを積極的に行うことも大切です。他愛ない会話や地域活動など、近くに住む人との信頼関係を積み重ねていく付き合いは、高齢者の孤立を防ぐためになくてはならないつながりです。実際に、ポストに新聞が残ったままになっているなど普段との違いに隣人が気づき高齢者を助けた例もあります。もしもの時の力添えだけでなく、周囲の方との日々のつながりが安否確認にもつながります。

3. 誰が来たか確認してからドアを開ける

インターホンが鳴ってもすぐにドアを開けず、ドアスコープなどで誰が来たかをよく確認してから開けるようにしましょう。強盗犯の中には設備点検や訪問販売業者を装い事前に家の下見をして、後日侵入を実行しようとする悪質な例もあります。身に覚えのない怪しい訪問者は相手にしないほうが懸命です。

4. 自治体の取り組みを利用する

全国の各自治体でも防犯のためにさまざまな取り組みが行われています。例えば、鳥取県では、県内在住の60歳以上を対象とした設備補助金制度が設けられています。カメラ付きドアホンなどの購入設置費用を1万5千円まで補助する制度で、申請受付を開始してから約1週間で450万円の予算額を大きく上回ったため、さらに予算が追加されるなど話題を集めています。

もしも各自治体からの補助を受けることができれば、防犯対策になるうえに費用を抑えられるため一石二鳥となります。親が住んでいる地域ではどのような取り組みが行われているか、調べてみるといいでしょう。

便利な防犯設備とサービス。離れて暮らす親のために

離れて暮らしている家族は、実際にどのように親をサポートすれば適切な防犯対策を取れるのでしょうか。ここでは、防犯のための設備やサービスをご紹介し、遠距離介護を行う家族が、親の暮らしの安全に協力できるポイントを3つご紹介します。

1. ホームセキュリティをはじめセルフ見守り・センサー型見守り機器の利用

住まいと人を守るためのサービスも、時代とニーズに合わせて進化しています。特に、セキュリティ会社によるホームセキュリティサービスの種類は幅広くなり、比較的安価で導入できる見守り特化型サービスもあります。家の中で持ち運び可能なペンダント型の見守り機器や、もしもの時にボタンひとつで緊急通報ができる設備も備わっているなど、様式は多岐に渡ります。

また、カメラ型のホームセキュリティ設備も便利ですが、中には監視をされているようで気になるといった声も少なくありません。プライバシーに配慮した人感センサー型の見守りシステムの導入も増えています。高齢者が倒れてしまい、一定の場所から動けなくなったときなど、センサーが長時間人の姿を感知しない場合に、お知らせをしてくれる仕組みとなっています。

多種多様なシステムやサービスから、親の状況に応じて必要なものを選択しましょう。ただし、見守りはプライバシーに関わる場合もありますので、親としっかり相談をして、理解を得たうえで利用を検討しましょう。

2. 住まいの部分リフォームの提案

住まいの防犯設備を整えることに「今更、大がかりな工事をやっても……」とためらいのある高齢の方もいると思います。そういった場合は、親に部分的なリフォームを提案してみてはいかがでしょうか。

一例として、ドアチャイムしかない場合には、カメラ付きのドアホンの設置を検討することをおすすめします。現在使用しているドアチャイムの種類にもよりますが、工事無しで簡単にドアホンに取り替えられる場合もあります。

あわせて、老朽化している窓を頑丈な強化ガラスに替えて、外部から侵入しづらくするなどの対策も提案してみると良いでしょう。

3. 親と定期的にコミュニケーションを

離れて暮らしていると、どうしてもコミュニケーションの場は減ってしまいますが、親と定期的に連絡を取ることは大切です。曜日や時間を決めて電話を掛ける、テレビ電話で話すなどの習慣をつけてみてはいかがでしょう。

例えば、「家にいる時もちゃんと戸締まりしてる?」「知らない人が来たらなるべく出ないでね」「最近、お隣さんとはお付き合いしている?」など、気軽に日々の暮らしについて訪ねてみてください。時には余計なお世話ととられるかもしれませんが、親を気にかけているという思いが伝われば、お互いが安心して暮らす土台になるでしょう。

また、日々のコミュニケーションの積み重ねは、防犯対策だけでなく高齢者の心身の健康にもつながります。さりげなく防犯への行動を促す声掛けをして、家族でサポートしていきましょう。

高齢者の住まいを狙った悪質な強盗被害は、いまだに後を絶たない状況です。大切な住まいや財産はもちろんですが、家族の身の安全を守ることに代えられるものはありません。まずは、すぐに取り組めそうなことから防犯対策を行動に移してみましょう。それが穏やかに暮らすための第一歩です。

しかし、中には家族だけでは対策が難しいこともあるでしょう。そういった時には家族だけで抱え込まず、行政や地域包括センターなどの機関や、日頃から利用している介護サービス等の専門家に相談するのが一番です。

今回ご紹介した防犯対策以外にも、お住まいの地域での見守り活動や、介護保険外サービスを利用するなどご家族に合った防犯対策ができるといいですね。親が犯罪に巻き込まれるのを未然に防ぎ、親も子もお互いに安心できる遠距離介護を目指しましょう。

介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。

「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。

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