高齢の親について不安なことはありませんか。「もしかして認知症?」と、ちょっとした違和感を持ったときや、どう介護すればいいのか悩んでいるときなど、相談先が分からない方も多いのではないでしょうか。
そこで頼りになるのが、高齢者の暮らしに関わることを総合的に相談できる「地域包括支援センター」です。高齢者やその家族にとって、とても心強い施設ですよね。親が住んでいる地域にある地域包括支援センターが相談にのってくれるため、高齢の親と離れて暮らしている方や遠距離介護をしている方の助けにもなるでしょう。
今回は、地域包括支援センターとはどんな施設なのか、利用方法や相談できることを相談事例もふまえてご紹介します。
地域包括支援センターの概要と設置場所
地域包括支援センターとは?
地域包括支援センターは、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるように、高齢者を介護・医療・保健・福祉などの面から総合的に支援する「総合相談窓口」です。
保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)が配置され、3職種の専門家がチームを組み、相談に対応します。他機関との協力が必要な場合は、行政機関、保健所、医療機関など枠を超えて連携します。
そして相談の内容に応じて、制度の説明や相談窓口の紹介など、具体的な解決策の提案をします。相談者の状況によっては、介護サービスやさまざまな支援が受けられるように手続きを手伝うこともあります。
設置されている場所は?
地域包括支援センターは、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築に向けた、中核的な機関です。
厚生労働省によると、令和5年4月時点で、全国に5,431か所、ブランチ(支所)を含めると7,397か所が市町村によって設置されています。
特に団塊の世代が75歳以上となる令和7年以降は、国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれ、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(具体的には中学校区)を想定して設置が進められています。
そのため、お住まいの市町村内で利用可能で、市町村や、市町村が委託する組織により公的に運営されているため、安心して利用できます。
地域包括支援センターの4つの役割と利用方法
高齢者を支援するための4つの役割
地域包括支援センターが果たしている主な役割を4つ紹介します。
1.介護予防ケアマネジメント業務
要支援・要介護状態になることを予防するため、一人ひとりの状況に応じて必要な支援を行います。具体的には、介護予防ケアプランを作成し、それぞれの状況を把握、支援していきます。
2.総合相談支援業務
地域の高齢者に対してどのような支援が必要かを把握し、適切なサービスや制度の利用につなげます。高齢者に関することであれば、小さなことから専門的なことまで、総合的に相談を受けつけています。
3.権利擁護業務
安心して生活ができるように、高齢者の権利を守るための支援業務です。困難な状況にある高齢者を、専門的・継続的な視点から支えます。
たとえば、高齢者虐待への対応や防止、詐欺などから身を守るために成年後見制度の活用のサポートなどを行っています。
4.包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
介護支援専門員(ケアマネージャー)に対する支援を行います。ケアマネージャーへの個別指導・相談や、支援が困難な事例の指導・アドバイスを行い、補助します。
利用方法と相談のポイント
市町村のホームページなどで親が住んでいる場所の地域包括支援センターを確認し、直接来所するか電話で相談することができます。地域によって地域包括支援センターの名称が異なる場合があるため、注意して探してみてください。
・利用条件
対象地域に住んでいる65歳以上の高齢者、またはその支援のための活動に関わっている方が利用できます。
・利用の注意点
地域包括支援センターは、さまざまな相談に対し、その人に合ったサービスや制度を紹介しています。直接支援を受けられるわけではない点に注意してください。
また相談は無料ですが、紹介されたサービスなどを利用するには料金がかかる場合があります。
・遠距離介護で活用するには?
遠距離介護をしていると、高齢の親の様子を把握できなかったり、何かあった時にすぐに駆けつけられなかったりして、もどかしく感じている方も多いと思います。地域包括支援センターは、離れて住んでいても親の住む地域で支援をしてくれる力強い存在です。
設置されている地域の高齢者が対象とされているので、親と離れて暮らしている方は、親の住んでいる場所の地域包括支援センターに相談しましょう。
地域包括支援センターで相談できること
地域包括支援センターは、高齢者や家族にとって心強い存在です。高齢者に関わることなら何でも相談できるといっても「こんな小さなことでも相談していいのかな」という不安もありますよね。そこで相談例をご紹介します。
・家事をすることが難しくなった
・お金の管理が不安
・要介護認定とは?どうやって受けるの?
・遠距離介護や呼び寄せを検討している
・介護に疲れて怒ってしまう
このような相談内容でも地域包括支援センターでは、高齢者本人はもちろん、その家族や友人など誰でも相談できることも特徴です。例えば、「近所の一人暮らしのおじいさんが心配……」などのように、地域の高齢者についての相談も受けつけています。
些細な不安から専門的なことまで、幅広く相談できるので、まずはどんなに小さなことでも、違和感や困っていることを伝えてみることが大切です。
<相談事例をご紹介>
実際に地域包括支援センターを利用した方から、お聞きした事例をご紹介します。
・事例1|高齢の親の様子が心配で相談
高齢の親が最近物忘れがひどいことを心配しているAさん。地域包括支援センターを知り、直接来所して相談しました。
すると要介護認定の調査を勧められ、受けた結果、要支援2とのこと。利用できる介護保険サービスを紹介してもらいました。認知症についての心配も、調査によって親の状態が分かったので安心につながったそうです。
考慮の末、サービス利用は見送りましたが、親本人に合った介護予防のアドバイスをもらいました。
また「何かあったらいつでも地域包括支援センターに相談してください」と声をかけられ、心強く感じたといいます。
・事例2|入院後に身体機能が低下し、本人が相談
一人暮らしをしている高齢のBさんは、手術で入院し、退院後、身体機能が低下しました。そこでデイサービスを利用するために地域包括支援センターに相談することに。
ケアマネージャーが決まり、現在は、週に一度デイサービスに通い、訪問介護員(ホームヘルパー)に買い物や掃除も手伝ってもらっています。
これからの一人暮らしを不安に思っていましたが、安心して生活できるようになりました。
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親が高齢になっていくにつれ、心配ごとが増えていくのは自然なことです。自分一人だけで抱え込まずに、専門家を頼りましょう。
地域包括支援センターは、高齢者を支援する施設やさまざまなサービスを利用するための最初の相談窓口としてとても便利です。高齢者に関わることであれば、誰もが無料で相談できる身近な場所なので、まずは気軽な気持ちで相談してみてください。
住み慣れた場所で必要な支援が受けられるのは安心ですよね。どんな相談内容でも、専門家がさまざまな機関と連携をとり、解決に向けて導いてくれます。
それぞれに合った支援を提案してもらうことで選択肢を増やし、自分たちに合った生活や介護を進めていきましょう。
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家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
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