親に介護が必要になるタイミング、その原因を知っていますか?
2019年に厚生労働省が公表したデータによると、最も多いのが「認知症」、次に「脳卒中」や「高齢による衰弱」が主な原因とされています。親と離れて暮らしていて介護が必要になった場合、「キャリア面で地元に転居するのは難しい」「遠距離介護はすぐに駆けつけることができなくて心配」といった様々な不安を抱えるケースが多くあります。
そのような中で、親を自分が暮らしている近くに「呼び寄せる」近居や同居などの選択肢がありますが、お互いの生活が大きく変わるため、思わぬトラブルやストレスの要因にもなりかねません。
そこで今回は、親を呼び寄せる前に考えておきたいことについて紹介します。同居・近居・遠距離介護のメリットやデメリットを確認して、各々の家庭にはどのような介護の手段が適しているのか参考にしてみてください。
呼び寄せのメリット・デメリットについて
「呼び寄せ」とは離れて生活している親を自分の家、あるいは家の近くに住まわせることです。遠距離での介護は、心配ごとや不安が多いですよね。呼び寄せのメリット・デメリットを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
【メリット】
・健康状態を確認しやすい
・緊急時に駆けつけることが可能
・会いたい時に家族の顔を見れるため寂しくない
・家族が身近にいるので頼みごとをしやすい
・帰省するための費用や時間がかからない
【デメリット】
・生活パターンがガラッと変わる
・知らない土地に馴染むまでに時間がかかり、ストレスとなる
・肉体的・精神的な距離が近くなるため、衝突することが増える
・同居の場合、親と配偶者、孫が配慮し合わなければならない
呼び寄せるメリットはたくさんありますが、呼び寄せを望んでいない両親もいらっしゃいます。子どもは良かれと思って呼び寄せを提案しても、親は「子どもに迷惑をかけたくない」というプライドもあります。お互いの気持ちを尊重し、自分たちの家庭に適切かどうか、話しを持ちかけてみましょう。
遠距離介護を続けるためにはどうすればよいか
親の呼び寄せを考えたけれど、自分たちの家庭には合わないので、遠距離介護を続けたい、と選択する家庭も多く存在すると思います。不安や葛藤があるなかで、現在の遠距離介護を続けるためにはどうすればよいのでしょうか?
遠距離介護を続けるために、最も重要なことはコミュニケーションです。遠距離介護では親の動向が直接分からないため、日ごろからコミュニケーションをとることを心掛けましょう。信頼関係を築くことが、遠距離介護を続けるうえでのキーポイントになります。家族だけでなく、周囲の人ともコミュニケーションをとることで、緊急時に連絡がとれたり、普段から気にかけてくれたりします。事前に地域の包括支援センターに挨拶を済ませておくことも良いでしょう。
次に、親子ともに安心して遠距離介護を続けるために「できたらいいな」「あったらいいな」というものを紹介します。
・ビデオ通話
電子機器を利用してデジタルに慣れておくと、顔を見ながら安心して連絡を取ることができます。アプリによっては通話料が掛からないものもあるので、通話料金を気にせずに連絡がとれます。
・防災ラジオの設置
自治体によっては無料で配布されるものもあります。スマートフォンはインターネットがないと情報を得られませんが、ラジオではその心配がありません。通常のラジオとしても利用可能なので一台あると便利ですね。
・高齢者向けサービスの利用
家事代行サービスや見守りサービスなどの情報を事前に入手しておくと、いざという時に安心です。
そして介護する側についても触れていきたいと思います。不安や悩みごとの解決策として参考にしていただければ幸いです。
・介護と仕事の両立
仕事を続けながら介護に携わっている方は多く存在します。しかし、それに限界を感じて離職してしまうと、自らのキャリアだけでなく収入源も無くなってしまいますよね。一度離職すると再就職は労力や時間がかかる場合があるため、可能な限り避けたいところです。そのために「介護休業」などを有効活用することをおすすめします。
介護休業は介護が必要な家族1人に対し、通算93日まで取得可能です。会社に申請すると、労働時間の短縮や、介護休業(休暇)の取得、転勤の配慮など様々な制度を受けることができる場合があります。介護にまつわる支援制度は認知度が低く、利用したことのない方が多いことが現状です。現在は介護離職を避けるために柔軟な政策が行われています。お勤めの会社でどのような制度が利用できるのか確認してみましょう。
・移動費などの経済問題
遠距離介護の帰省の際に言わずもがな必要となるものが「お金」です。お金の価値観には違いがあるかもしれませんが、かかる費用はできるだけ抑えたいものですよね。遠距離介護となると、長距離の移動には飛行機を利用する方が多いのではないでしょうか。実は、航空会社には「介護割引」という制度があります。航空会社によっては30%越えの割引を受けることができ、また、付き添いの方も割引を受けることが可能な会社もあります。ぜひ会社ごとに比較し進んでご利用ください。
・施設に入居する手も
「まだ元気で動けるから施設には入居したくない」といった場合などは、始めから老人ホームを利用するのではなく、高齢者向け住宅への転居もおすすめです。サービスが充実しており、介護ができる人が駐在しているアパートやマンションも多くあります。しかし、サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)は、介護施設の中でも人気があります。近年はサ高住の施設数が増加しているものの、アクセスや部屋の間取りなどが優良な施設はすぐに埋まってしまいます。適した良い物件は早めにチェックしておくことをおすすめします。
・一人で抱え込まない
家族や周囲の人、介護に携わる人との信頼関係を築くことが出来たら遠距離でも安心して介護ができます。何が起こるかわからない遠距離介護で臨機応変に対応するためには、一人で抱え込んではいけません。周囲の協力を仰いで乗り越えていきましょう。
親を呼び寄せると決めたときにすること
「呼び寄せ」のメリット・デメリットを把握したうえでの話し合いの結果、親を呼び寄せるとなったら何をしなければならないのでしょうか。ここでは、呼び寄せる際に必要な手続きや呼び寄せをサポートするサービスの紹介をします。
①親の住民票の移動
まず、住民票移動の手続きは最初に行わなければなりません。なぜなら、住民票を移していないと市町村が指定する介護サービスを受けられない場合があるからです。地域密着型サービスには住民票が必須です。住民票を移していなくて思わぬ出費とならないように気を付けておきましょう。また、住民票を移す際に要介護認定を受けていた証明書など必要なものもあるため、事前に揃えておきましょう。
②改修リフォーム
私たちが普通に暮らしていた家でも、小さな段差や階段が高齢者の歩行には困難な場合があります。高齢者の事故は8割が家の中で起こると言われており、小さな箇所でも大きな怪我につながる可能性があります。そういった事故を避けるための、手すりやスロープを付けるといった改修工事には介護保険が適用されます。各地域によっては補助金が支給される自治体もあるので調べてみましょう。また、介護を受ける側の配慮ばかりに焦点を当てがちですが、介護をする側の介護しやすい空間を作ることも大切です。
③周辺の利用するかもしれない施設の調査
もしもの時に利用するかもしれないサービスなどは、事前に情報を入手しておくと安心ですね。状態が急変したりして施設へ入居することになっても、前々から話し合っておけばスムーズに入居手続きを行うことができます。デイサービスなどを利用しながらの呼び寄せ、同居生活をする家庭も多くあります。また、病気にかかっている場合はかかりつけ医をもっておくとよいでしょう。かかりつけ医は気軽に相談でき、素早い診断を受けることができるだけでなく、地域包括支援センターやケアマネージャーと連携してくれます。通院しやすい場所にあるかかりつけ医がおすすめです。
住み慣れた土地からの移動は、ものや身体の移動だけではありません。環境が大きく変わることでストレスが発生したり、新しい土地での生活に不安を抱えることも多いため、居住地を移動する際には入念な事前準備が必要です。お互いの心も身体も安心した呼び寄せを行うためには、早めに計画を立てることが呼び寄せを成功させる鍵となります。ぜひ家族で確認してみてください。
親の呼び寄せ 同居?近居?老人ホーム?
親を呼び寄せると決めた際にはいくつかの選択肢があります。今回は同居、近居、老人ホームのメリット・デメリットについて解説していきます。
同居
【メリット】
・体調の変化などにすぐに気が付くことが可能
・同じ居住地のため家賃や光熱費を抑えられる
【デメリット】
・親、配偶者、孫ともに気を使ってしまう
・介護者と同居の場合、利用できない介護サービスがある
・距離が近すぎるために過干渉or無干渉による喧嘩やすれ違いが起きやすくなる
※現在はリモートワークなどで在宅していることも多いため、距離の問題は避けられ難い点でもあります。
近居
【メリット】
・お互いに干渉しすぎずに過ごせるため、同居の際よりストレスが低減される
・お互いの生活スタイルを崩さずに過ごすことが可能
・もしものときに駆けつけることができる距離のため安心
【デメリット】
・呼び寄せた親の近くに兄妹が住んでいる場合、兄妹間でのおしつけが発生することがある
・新しい土地での一人暮らしは新たに孤独感が生まれる
・中途な距離間のため、子どもが住む家に居座ることもある
老人ホーム
【メリット】
・基本的に施設の方に介護を任せることができるため、介護度の高い方に向いている
・他の入居者もいるため孤独を感じることは少ない
・様々なイベントがあり、健康的で変化に富んだ生活を送れる
【デメリット】
・住み慣れた土地で過ごしたいという要望から、老人ホームで生活したがらないケースが多い
・集団生活が苦手な方にはストレスとなる
・年金だけで入居可能な老人ホームもあるが、医療費や介護保険自己負担額などの別途費用がかかる
以上のことから、「同居」は介護する人が仕事に就いておらず一日中介護に付き添える、または、お互いの生活を支え合える関係にある方に向いており、「近居」はある程度元気で基本的な生活が送れる方、一定の距離は保ちたいと考える方などに向いています。そして「自宅近くの老人ホーム」は介護度が高い方、仕事と介護の両立が難しい方などに向いています。それぞれの家庭事情に適した呼び寄せで、快適な暮らしを目指してくださいね。
今は大丈夫だからといって、将来についての話は先延ばしにしてしまいがちです。子どもが心配して親に同居や老人ホームを勧めても、親は納得せずに反感を買ってしまうケースもあります。自分の意思を上手に伝える、相手の立場になって考えてみる、というように思いやりの心をもって話し合うことがキーポイントです。そのためには日頃からコミュニケーションをとり、お互いの気持ちを理解していくことからはじめてみてはいかがですか?
初めての呼び寄せは分からないことばかりだと思います。どうか一人で抱え込まないでください。地域の方や、親族、行政サービスなど周りの方々は手を差し伸べてくれます。決して一人で背負いこむ必要はありません。親子ともに幸せな生活を送れるよう、支え合っていきましょう。
介護にまつわる悩みやお願いごとは、「わたしの看護師さん」にご相談ください。
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家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
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