「家族が介護されるようになってから、元気がないように感じる……」、「介護をする側のストレスとはどう向き合ったらいいの?」など、ご自分が介護をする立場になり、このような不安を感じていませんか?
高齢者を介護するにあたって、ご本人や家族が受ける心の負担は想像以上に大きなものです。違和感を放っておくと介護をする側・される側共にストレスが蓄積し、メンタルに不調を感じる事態も考えられるほどです。
そうならないためにも、心の健康状態や対処法を知っておくことが大切です。今回は、高齢者が感じやすいストレスとは何かや、専門家のサポートや介護サービスを活用しストレスに対処する方法、家族でできるメンタルケアについてご紹介します。
心の負荷はこんなところに?高齢者が感じるストレスの現状
人は年齢を重ねるとともに、衰えを感じる場面が増えていくのが現状です。それがきっかけで、心の健康にも大きく関わってくる場合があります。
高齢者のメンタルの特徴
厚生労働省の「令和元年 国民生活基礎調査」によると、70代男性のおよそ36%、女性およそ45%、80代男性のおよそ44%、女性およそ50%が悩みやストレスを感じていることがわかります。
悩みやストレスの理由には、身体や認知機能の変化も大きく関わっています。
・身体機能の低下
さまざまな身体的変化・老化を実感することが多く、筋肉量が減ったことにより基礎体力が落ち、視力や聴力の低下などを感じるようになります。
・脳機能の低下
些細なことで不安になりやすく、物事を記憶したり考えたりすることが難しくなるなど「できていたことができなくなる」ことへの虚しさから、うつ病などの精神疾患のリスクが上がることが懸念されています。
また、家族や友人との別れなどの出来事に直面する機会が増えます。ライフステージの変化によって、環境が大きく変わることで悲観的になりやすく、悩みやストレスの一因になることも多くあります。
介護を受ける高齢者のストレス
高齢者にとって、今まで自分で問題なくできていたことができなくなるショックは大きなものです。介助されることによって、身体機能の低下をはっきりと実感してしまうため、介護そのものがストレスとなっているケースもあります。
例えば、排泄介助などに抵抗感を示される方も少なくないでしょう。介助が欠かせないとはいえ、ご本人にとっては簡単に受け入れ難い問題です。また、迷惑になるからと家族やヘルパーに気を遣うことで、より心が疲弊していってしまう高齢者もおられます。
そういった精神的な負担が積み重なると、介護されること自体を後ろめたいことだと思ってしまうことも。家族や介護スタッフの気持ちとずれが生じて「介護なんてしたくないだろうに」と感じてしまうこともあります。また、「自分の気持ちをないがしろにされている」といった思いを抱いて、更に落ち込んでしまう場合もあります。
介護を受ける高齢者のストレスを緩和するためにも、まずは当事者の気持ちに耳を傾け、意思を尊重することが大切です。可能であれば、ご本人がどうありたいか、介護する家族やスタッフに何を求めているかを今一度確認してみましょう。
介護の場面において重要視される高齢者のストレスケア
家族で話し合いをしても、明確な解決策に導けない場合もあると思います。そういう時には、迷わずプロに相談をしてみましょう。たとえば、普段利用している介護サービスの関係者などに、すぐにでも声をかけてみることをおすすめします。
ケアマネジャーに相談する
介護保険制度で、要介護と認定された方が適切な介護サービスを受けられるようにするスペシャリストで、一人ひとりに合ったケアプランを作成します。
その方に見合った介護のかたちを提供すべく、ご本人や家族、介護に関わっているスタッフと定期的にやり取りをおこなっています。体調や心の変化などの情報を、介護を行う各種事業所と共有し、問題の解決に向けて動いてくださいます。普段からケアマネジャーとかかわりがある場合は、まずは悩みを打ち明けてみましょう。
病院や高齢者施設の専門家に頼る
普段から通院している病院や、訪問看護などで関わりを持っている医師や看護師、介護福祉士や作業療法士などの専門家に相談してみるのもいいでしょう。そのほかにも、高齢者をさまざまな角度からサポートする専門職や資格があります。
1. 精神保健福祉士
精神的な病気や障がいで悩んでいる方の支援をおこない、社会復帰や日常生活への適応を援助・促進する専門職です。適切な医療が受けられるよう支援する、精神的な相談にのるなどして、高齢者ご本人や家族への支援を行います。社会福祉士と似通っている部分はありますが、特に精神疾患や障がい、認知症などを抱えた方をサポートするのが精神保健福祉士です。
2. 高齢者ケアストレスカウンセラー
近年、年齢を問わず問題視されているストレスを緩和すべく、さまざまな種類の資格を持つ方が高齢者のケアにあたっています。高齢者ケアストレスカウンセラーはそのうちのひとつです。ストレスケアについて専門性を高め、高齢者や家族の心の状態を理解し、ストレスとどう向き合い緩和するかをアドバイスする役割を担っています。
なお、一般財団法人職業技能振興会による認定資格のため、どなたでも挑戦できる資格です。高齢の親など、介護を必要とする家族のストレスケアに役立てるために、知識を培う選択肢として資格取得を考えてみてもいいでしょう。
まずは小さなことから。家族全員でできるメンタルケア
高齢になると、家で過ごす時間が長くなる場合が多いのではないでしょうか。介護を受ける親など高齢者のメンタルケアや困りごとと向き合っていくためには、家族がサポートできることを知り、共有していくことが大切です。
家族がすぐにできること
自分たちにとっては些細なことだと感じても、高齢者にとってはストレスになり、簡単に心身に影響を及ぼしてしまうことがあります。まずは、普段の対話や接し方の3つのポイントを意識してみましょう。
1. 話し方・対応を見直してみる
会話は心身の健康のバロメーターにもなる大切なコミュニケーションです。高齢者の負担にならないように穏やかに話すことを心掛けましょう。「今日の調子はどう?」など体調を聞く時も、ゆっくりと丁寧に、わかりやすい言葉を選ぶようにすることも重要なポイントです。
2. なるべく否定しない
強い言葉で責められたり否定をされると、萎縮してしまうだけでなく、高齢者の尊厳を大きく傷つけてしまいます。そういった日々の不安や怒りが積み重なると、精神状態に悪影響を及ぼすことになりかねません。可能な限り「こうありたい」というご本人の意思を最優先して対応するようにしましょう。
3. 聞き上手になる
会話をするうえで、相手が話したいことをじっくりと聞く姿勢を取ることは信頼関係を築くことにもつながります。実際に、介護士の現場でも「傾聴」という用語が使われているほどです。相槌を打って静かに相手の話を聞きながら、敬意を込めて顔を見つめてみましょう。ここでも、高齢者のお話をするペースを乱さないよう、余裕を持って接することが大切です。
介護する側のケアも忘れずに
介護をする多くの方がストレスを感じているのではないでしょうか?介護をする側の問題としてよく挙げられる介護疲れですが、蓄積されたストレスによって介護うつとなってしまうことも少なくありません。過度に気を張りすぎると疾患のリスクが高まり、共倒れとなってしまうなど最悪の事態を招いてしまいます。
そんな在宅介護のストレスを緩和すべく、デイサービスなどの通所サービスを利用して、介護する家族の息抜きの時間を作り、負担を軽減することを「レスパイトケア」といいます。空いた時間を趣味や気分転換の時間に使って、心身ともにリフレッシュをおこなうことが大切です。心に余裕を取り戻せたら、自然に要介護者ともいい関係を保っていけるでしょう。
もちろん、そうしたケアだけでは心もとない場合もあります。心の状態に少しでも違和感を覚えたら、すぐに医療機関へ相談をしましょう。
*
今を生きる私たちにとって、メンタルの不調は年齢を問わず身近なものです。介護場面でのメンタルケアに手がまわらなくなってしまうと、高齢者や介護する家族がうつ状態になってしまうなど、のちのち取り返しのつかないことになるかもしれません。
人の心はとても繊細なものですので、家族だけで悩みを解決しようとがんばりすぎてしまうと、改善が難しくなる場合もでてきてしまいます。一人で抱え込まずに、医療や介護などの専門家に頼りながら、適切に対処していきましょう。大切な家族や高齢者ご本人の心の健康を保つことが、介護に関わる全員の安寧につながります。
介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。
家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。
「介護に関するお役立ち情報」を随時更新しています。ぜひ介護のお困りごとの参考にご覧ください。
