近年、高齢者の免許返納について関心が高まっています。あなたの親御さんはどうでしょうか?お子さん目線からだと「そろそろ事故を防ぐためにも免許返納してくれないかな」、「生活に必要だからと言ってもなかなか理解してもらえない」など不安を抱えている方も多いと思います。今回は、そんなお悩みを解決するアドバイスをお伝えしていきます。
この記事の内容は、Youtube配信をもとに記事化しています。
音声でお聞きになりたい方は、こちらのYoutubeをご覧ください。
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車がなければ生活ができない!田舎に住むお父さんの思い
お悩み:田舎にいる父が高齢なのに車を運転したがる。
相談者:オカダさん
田舎にいる高齢の父が車を運転したがるんです。私も父の安全を考えて車の鍵や免許証を隠したり、車のバッテリーを外すなど運転させないために色々と工夫してきました。最近ではニュースを見ていても、誤って高速道路を逆走してしまった。アクセルとブレーキを踏み間違えて事故を起こしてしまった。といったような話もしばしば聞きます。父に免許返納を説得するためにはどうしたらよいでしょうか?
神戸:このお悩みを聞いて、私も田舎育ちなのでこれは他人事じゃないと感じました。田舎の方に住んでいるとなかなか運転免許を返すのにも勇気がいるんですよ。
私たちが利用者さんのところに行ったときに、お子様と一緒に高齢の親御さんに「免許返納をしましょう」という説得をしに行くことがあるんですよね。
でもそれを話すと、逆に「なんで取り上げたいのか?」と訊ねられるんですよ。そのとき、こちらからしたら心配だからということを伝えるんですが「身分証がなくなる」だとか、「無事故無違反でゴールド免許なのになんで返さなきゃいけないんだ」と言い返されてしまうことも多いんです。
というのも、田舎に住んでいれば公共交通機関などの移動手段が少なくなる傾向があります。例えば、バスが朝と夕方しか運行しない。それに乗っても病院にも通えない。といった生活に支障が出てしまう不便さが出てくるんですよね。かといって、タクシーを毎回呼ぶのはお金がかかりすぎたりと、田舎あるあるですごい大変なんです。
それに田舎の方だと、80代や90代の農家さんがトラクターやコンバインといった中型から大型の乗り物を公道で運転されることもよくあります。そういった方は、もし免許を返納したらトラクターに乗れないんじゃないかと不安を持ちがちです。そんな理由から免許を返納したくないという方もいるそうです。
免許返納のメリットとデメリット
次に、免許を返納してもらう前に知っておきたい免許返納のメリットとデメリットについてお話ししたいと思います。
高齢であるうえに若干の認知症が入ってくると、自分の運転技術を過剰に評価してしまう傾向があります。要は、自分の運転では事故は起こらないと信じ切っちゃうわけなんですよね。
他にもタクシーを使った生活と車を持った生活を比較して保険や自動車税などのお金のかかり方を考えてもらうこともあります。どちらの方が負担がかからないかを提示して、説得を試みます。ですが、これはなかなか理解してもらうことが難しかったりしますね。
では、免許返納をした場合に受けられる具体的なメリットの話はどうでしょうか。例えば、免許返納をされた方には行政から「運転経歴証明書」の発行・交付をしてもらえます。これは一生涯使える身分証明書です。また、発行の手順も簡単で最寄りの警察署や免許センターでも発行してもらえます。これにより、心配な要素は一つ解消されますね。
さらに、この「運転経歴証明書」は特定の銀行で預金金利が上がったり、一部のデパートでは送料が無料になったりします。タクシー料金が割引されたり、バスの無料チケットを発行してもらえたりと、魅力的なメリットが多数あります。このように地域の行政がお得なメリットを提示し、高齢者の方々に免許返納を促しているのです。
あなたの適性は?運転時認知障害早期発見テストのススメ
認知症の方だと話が合わない場合や、乗っている車に傷が増えたかもと感じたら、お子さんと一緒にこのテストをすることをお勧めします。
それは、 「運転時認知障害早期発見チェックリスト」というものです。全部で30問あって、そのうち5問以上にチェックがはいった方は要注意になります。車を見ただけでは、それが認知症だろうとは言い切れないんと思います。ですが、一緒にチェックすることで親御さんも免許返納について納得してもらいやすいのではないでしょうか。
1-車のキーや運転免許証などを探し回る事がある。
2-今まで聞いていたカーステレオやカーナビの操作が出来なくなった。
3-トリップメーターの戻し方や時計の合わせ方が分からなくなった。
4-機器や装置、アクセル、ブレーキ、ウィンカーなどの名前を思い出せないことがある。
5-道路標識の意味が思い出せないことがある。
6- スーパーなどの駐車場で自分の車を停めた位置が分からなくなることがある。
7-何度も行っている場所への道順がすぐに思い出せないことがある。
8-運転している途中で行き先を忘れてしまったことがある。
9-良く通る道なのに曲がる場所を間違えることがある。
10-車で出かけたのに他の交通手段で帰ってきたことがある。
11-運転中にバックミラー(ルーム・サイド)をあまり見なくなった。
12-アクセルとブレーキを間違えることがある。
13-曲がる際にウインカーを出し忘れることがある。
14-反対車線を走ってしまった。(走りそうになった)
15-右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった。
16-気がつくと自分が先頭を走っていて、後ろに車列が連なっていることがよくある。
17-車間距離を一定に保つことが苦手になった。
18-高速道路を利用することが怖く(苦手に)なった。
19-合流が怖く(苦手に)なった。
20-車庫入れで壁やフェンスに車体をこすることが増えた。
21-駐車場所のラインや、枠内に合わせて車を停めることが難しくなった。
22-日時を間違えて目的地に行くことが多くなった。
23-急発進や急ブレーキ、急ハンドルなど、運転が荒くなった。(と言われるようになった)
24-交差点での右左折時に歩行者や自転車が急に現れて驚くことが多くなった。
25-運転している時にミスをしたり危険な目にあったりすると頭の中が真っ白になる。
26-好きだったドライブに行く回数が減った。
27-同乗者と会話しながらの運転がしづらくなった。
28-以前ほど車の汚れが気にならず、あまり洗車をしなくなった。
29-運転自体に興味がなくなった。
30-運転すると妙に疲れるようになった。
「運転時認知障害早期発見チェックリスト」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/koreisha/korei_check_list30.html 出典
安心!免許返納後でも農業トラクターは使えます
神戸:農機具についてですが、いつまでも農機具に乗りたいから免許返納ができないとお考えの高齢者の方って多いんです。でも、実際はそうでもなくて、普通運転の一部だけ取り消して、トラクターとか小型特殊自動車については乗り続けられる設定ができるんです。
この制度を適応させると、普通車に乗ることはできなくても、田んぼや畑に向かうためにトラクターに乗ることは可能です。とはいっても、全体的な判断能力の低下も考えられるので、やっぱり注意は必要です。トラクターを運転してた人の中には溝にはまって大怪我をされたというお話もありますし、一概に安心とは言い切れません。それでも、自分に合った免許返納ができれば、必ずしも農機具が使えなくなるということはないんです。こうした説得を正しくお伝えできれば安心して免許返納の手続きを進められると思います。
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生活の必需品としてこれまで使ってきた車。それを手放すとなると、免許返納のハードルは低くはないかもしれません。しかし、事故を起こさないためにも、本当にこのまま運転し続けても大丈夫なのかを考えることはとても大切です。今日紹介した早期チェックを活用して自分の運転適性を確かめたり、農作業のトラクターなどの小型特殊自動車は免許返納後も使える、といった正しい知識を身に着けることから始めてみてはいかがでしょうか。
自分の体調や年齢と向き合って、自分や周りの命を守る行動の第一歩、踏み出せれば良いですね。
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