介護に関する相談の中には「オムツの中に尿取りパッドを挟んでいるのにどうしても洋服やシーツに漏れてしまいます」という大人用オムツに関するご相談があります。
みなさんは色々なタイプのパッドをオムツに当てていると思いますが、それがきちんと合っているのかな?と疑問に思うこともあるのではないでしょうか。今回はゲストにオムツ事情に詳しいオムツフィッターのりえさんをお迎えして、最適なオムツの選び方と正しい使い方についてお聞きしました。
この記事の内容は、Youtube配信をもとに記事化しています。
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「大きめのパッドで安心」実はそれが漏れの原因になっているかも。
りえ:皆さんがパンツにパッドを入れる主な理由は「パンツを汚さないため」だと思います。でも、漏れないようにすることを意識しすぎて、大きすぎるものを挟んでおられる方って結構多いんですよね。
神戸:たしかに多くの方がこれでもかってくらい大きいもの使っておられますよね。
りえ:なかには2枚重ねにされてる場合もあります。でも、あまり大きすぎるものはかえって良くないこともあるんです。というのも、大きすぎるものを入れると股の部分に厚みができます。すると、その厚みが原因で隙間が出来てしまい、結果として尿が漏れてしまうことがあるんですよね。
神戸:それでは本末転倒です。そうは言っても、つい、ご家族はオムツ交換をする暇がないからと大きいものを当ててしまいがちですよね。
りえ:そうなんですよ。例えば、5回から6回分の大きいサイズのパッドなどは、股の部分の厚さと幅が結構あるのでパンツの中に納まりきらなくなってしまいます。
神戸:パンツというのは普通のパンツのことでしょうか?
りえ:いえ、リハビリパンツのことです。このパンツは股の部分があまり幅広にはなっていないので、普通のパンツと似ています。大きいパッドだと1.5倍ほど幅がはみ出してしまいます。
神戸:幅が12cmから13cmとなるとその分、大股を広げて歩くようなイメージですよね。
りえ:そんな大きいパッドをリハビリパンツの中に入れると、まるでタオルを丸めて入れているような感じになりますからね。
神戸:それは履き心地が悪くなりますし、できれば防ぎたいところですね。
りえ:そうなんです。足がきちんと閉じなくなりますし、パンツの中で丸まってしまうので結果的に隙間ができてしまう、ということです。
神戸:だから隙間から漏れだしてしまうんですね。
りえ:はい。足の付け根やお尻の部分から漏れている方はそのことが主な原因として考えられます。
神戸:なるほど。そもそもの話なんですが、自分で歩けてリハビリパンツを履いている方が尿取りパッドを当てる必要ってあるんですか?
りえ:わたしはトイレに行けるのであれば、基本はパッドが無くても良いと思っています。
神戸:そうですよね。最近は洋式トイレが多いですが、以前パットがトイレに落ちてしまって、手を突っ込むわけにもいかずそのまま流してしまったという話がありました。そしてトイレが詰まってしまい修理を呼ぶはめになったそうです。こうなってしまうとすごい大変ですよね。
りえ:そのようなことって結構多かったりします。パッドも種類が色々ありますが、皆さんがよく使われているのが比較的安価で真四角の裏面がツルツルになっているパッドだと思います。でもそういったタイプのパッドはテープが付いていないものもあるので、パンツをおろすときに落ちやすいんです。
神戸:もしパッドをトイレに落としてしまって、詰まってしまった。トイレの修理が必要。となれば想像以上に高くつきますよね。
合わないパッドが姿勢や体調悪化の原因に?おすすめのパッドとは
りえ:わたしのおすすめのパッドは、二つ折りのマジックテープが付いているタイプのものです。前と後ろがパンツに貼り付けられる仕様になっていて股の部分がくびれており、砂時計のような形をしています。
神戸:そういうものがあるんですね!
りえ:それでしたらパンツにもしっかり付きますし、股の部分がウエストシェイプのようにくびれているので、足が閉じやすいです。女性の場合は真下に尿が出るので中央に多く吸収されますが、男性の場合は中央ではなく前の方に出るので、あまり中央にはパッドが必要無いですよね。ですので男性には特におすすめできます。また、このタイプのパッドは落下も防いでくれるうえに付け心地も良く、隙間もできにくいので良いですよ。
神戸:やはり、付け心地が良いと動きやすくなりますか?
りえ:そうですね。たとえば座るときに股の部分に大きいタオルを挟んでいたら、自然と足が開いてしまうので踏ん張れないですよね。そうなると体勢がずれていってしまいます。これは「仙骨座り」といって、骨盤が転がってきてしまいお尻の仙骨の部分が座面に当たるような座り方を引き起こします。
神戸:専門用語で説明するとなかなか難しいかもしれませんが、尾てい骨の部分で座っているような感じですよね。
りえ:そうです。背筋を伸ばしていればそういったことはないですが、足が開いていることによって踏ん張れないので、座椅子に半分寝ているような状態に普段の椅子でもなってしまいます。これが続けばだんだんと背中が曲がってきたり、腰も弱くなってくるリスクが上がってしまいます。お尻の部分が床ずれしてきたりするのも、そういったことが原因だったりするのです。
神戸:奥が深いですね。歩けるのに床ずれができてしまうとは。
りえ:股に大きなパッドが挟まっていると立ち姿でも足がしっかり伸びていない状態が続いてしまいます。
神戸:高齢者でそういった歩き方になっている方っておられますよね。
りえ:そうです。少しガニ股で膝が伸びないので腰や背中が曲がってしまい、ちょこちょこと歩く感じですね。
神戸:腰が曲がってくると内臓が圧迫されて胃や腸の調子が悪くなったりしますよね。
りえ:はい。便秘になって食が進まなかったりと悪い方向に繋がっていきますので、最適なオムツやパッド選びはとても大切です。
生活や用途に合ったオムツ選びで、快適に過ごせる毎日に
神戸:先ほど教えてもらった砂時計のような形状のパッドが見つけられない場合についてお聞きします。たとえば、最近よくある5回吸収型でお尻も蒸れないように作られているリハビリパンツをパッドなしで履くという方法でも良いですか?
りえ:おそらく皆さんがパッドを付ける理由は、パンツが濡れた時に全部脱いで着替えるのが大変だからということだと思います。ですので、まずは「1回でどのくらいの量が出るのか」を把握しておく必要があります。その上で、少しであれば軽失禁用で小さめの尿吸収パッドを使用すると良いと思います。
神戸:本人に認知症などがなく自己管理できていたり、家族がマメにチェックできるのならその方法が良いかもしれませんが、そういったことが難しい家庭ではそもそもパッドは無い方が良いですか?
りえ:そうですね。先ほど話したようにトイレで落としてしまったりもしますし、忙しくてパッドを変えることができない場合は、濡れたら全部変えることになります。それなら最初からパッド無しで何回か持ち堪えられる吸収力の高いパンツにしてしまった方が良いと思います。パッドは認知症の方だと変なものがくっついていると思って外してしまったりすることもありますので。
神戸:ベッドの周りにたくさん落としていたりなどありますよね。
りえ:ありますね。やはり少し恥ずかしい事だからとベッドの下に隠してしまって掃除のときに驚くということも。なるべくそういったことが無いようにと考えるなら、認知症の方の場合は今までの生活に1番近い方法をとる方が良いかもしれません。
神戸:分かりました。ここまではリハビリパンツのように履くタイプのオムツについてお話してきました。次に、寝たきりの方などが履いておられる「テープタイプ」のオムツについてお聞きしたいのですが、このタイプのオムツを付ける基準というものはどういったところにありますか?
りえ:テープタイプのオムツは基本的に先ほど言われていた寝たきりの方や、昼間はトイレに行くが夜間はぐっすり寝て起きない方向けだと考えてもらうと分かりやすいと思います。ですので、「自分でトイレに行かない」ことをひとつの基準とするといいのではないでしょうか。
神戸:介護する側にとっては、お風呂も自力では難しい寝たきりの状態ですとお下のところにお湯をかけてケアする場合には、パンツタイプよりテープタイプの方が開放型なので綺麗にしやすくなりますよね。
りえ:そうですよね。寝たきりの方はどうしても後ろの方に尿が流れてしまうので、それをカバーするためにも大きめのパッドを使いがちですが、テープタイプなら体に沿ってパッドを当てることが可能なのでパンツタイプよりは漏れにくいと思います。
汚れていないオムツを変えるタイミングはいつ?
神戸:最後にもう1つ聞きたいのですが、パッドをよく使われている方の中には「パッドを交換しているし本体のオムツは勿体ないから変えなくてもいいや」と思われる方もいます。オムツを変える正しいタイミングを教えてもらえますか?
りえ:オムツ本体はどんなに汚れてないと思っていても、一度尿が出れば蒸気で菌が繁殖します。私たちでさえ下着は1日1回は履きかえますよね?オムツの場合は中で排泄もしているわけですから、さらに衛生環境はよくないです。そしてもうひとつ考えないといけないのは、長時間使用しているとオムツの中の吸収体が段々擦れてしまい、中がボロボロになってしまうということです。なので最低1日1回は確実に変えてほしいです。
神戸:ボロボロというのは中の吸収体がヨレてしまうということですか?
りえ:そうです。ヨレて団子のようになって切れてしまったりします。
神戸:私もそのようになったのを見たことがあります!
りえ:そのオムツを透かしてみると吸収部分があるところと無いところができている状態になっていて、いざ尿が出た時に吸収ができず漏れてしまいます。最低でも1日1回変えるということは衛生面を保つ目的もそうですが、オムツの機能をきちんと活用できるようにするためでもあるんです。
神戸:なるほど。皆さんもお分かり頂けましたか?
今回はオムツのことに詳しいオムツフィッターの、りえさんとお話させていただきました。りえさん、今日はありがとうございました。
りえ:ありがとうございました。
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正しいオムツ選びやパッドの使い方を知ることは、ご本人や家族が快適に暮らすためにも大切なことですね。オムツは汚れていないように見えても最低1日1回は変えるようにして清潔さと十分な機能を保ちましょう。また、吸収パッドのサイズは動きやすいように最適なものを選ぶことも覚えておきたい点ですね。
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