【ヤングケアラーの実体験を聴く】16歳から母の介護をする「Yancle」の宮崎さんにお話を聞きました。

みなさんは、ヤングケアラーという言葉を知っていますか?

「ヤングケアラー」とは、年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を負って、本来大人が担うような家族の介護やケア、身の回りの世話を担っている18歳未満の子どものことです。これは実際に厚生労働省が定めている内容です。

最近では、介護をする人の中でも特に18歳から30歳代の人のことを、若者ケアラーといい、ヤングケアラーと同様に問題視されています。

今回は、16歳の頃から家族の介護を経験し、現在は家族の介護をしている20~30代向けの転職支援サービス「Yancle」を運営する宮崎さんにお話を伺いました。

この記事の内容は、Youtube配信をもとに記事化しています。

音声でお聞きになりたい方は、こちらのYoutubeをご覧ください。

家族の世話を担う、ヤングケアラー

ヤングケアラーの実情とはどのようなものなのでしょうか。皆さんが想像されているよりも過酷なものかもしれません。ここでは、宮崎さんの実体験とともに、ヤングケアラーについて詳しく見ていきたいと思います。

神戸:今日は、若い時から親御さんの介護をしていらっしゃった、宮崎さんをお呼びしました。

宮崎:こんにちは、宮崎です。よろしくお願いします。

神戸:よろしくお願いします。若い時から介護しているという話を以前伺いました。宮崎さんはヤングケアラーとしての介護活動を何歳くらいの時から始められたのでしょうか?

宮崎:16歳から世話を含めてやっていました。

神戸:なるほど、高校生の時からだったんですね。私のイメージなんですけど、ヤングケアラーの方々は、自分がヤングケアラーということをまわりに発言する人は少ないと思います。そんな中で、今ヤングケアラーにあてはまる方はどれくらいいるのでしょうか?

宮崎:現在、若者ケアラー、ヤングケアラーは約21万人くらいいるといわれています。

神戸:すごくたくさんいらっしゃるんですね。最近、「40歳で介護をする」とかも聞きますよね。親が高齢出産とか、叔父さん叔母さんの面倒を見ているとか、などもありますよね。

宮崎:はい。

神戸:宮崎さんは、若いうちから親御さんのお世話をしていたと伺いましたが、一般的にヤングケアラーが担う介護のお世話というのはどのようなことをするのでしょうか?

宮崎:若いので、よく知られている直接的な介護をするというよりも、メインで介護をしている人のサポートをすることが多いですね。介護をしている人が忙しくて帰れないときに、兄弟の面倒を見たり、料理をすることなどでサポートしている人が多いと思います。

神戸:宮崎さんはどのようなサポートをしていたのでしょうか?

宮崎:私は寝たきりの母の介護をしていました。やっぱり大黒柱の父が、仕事をやめるわけにはいきませんでしたし、ヘルパーがいないときはほぼ全部のお世話をしていました。

神戸:それは大変だったんですね。16歳からというと、当時は多感な時期だったと思います。部活動や受験勉強などもあったと思いますが、どのように乗り越えられたのですか?

宮崎:16歳から介護が始まったときは、母の日常のサポートみたいな感じでした。母は、多系統萎縮症という病気で、脳がどんどん委縮してしまうというものでした。闘病生活が進むにつれて、めまいがひどくなって動けなくなっていったんです。そんな母を支えるために私が取り組んでいた介護の内容は、最初は階段の補助や買い物の手伝いをすることでした。

しかし、大学受験が終わった頃、母が突然目覚めなくなってしまったんです。普段から、夜中のうちにトイレに連れて行くことがあって、隣で寝ていたのですが何度起こしても母が目覚めなくなりました。

これはやばいと思って救急車を呼んで、病院で気切(気管切開チューブ)をいれてもらったところ半分寝たきりという状態で一命を取り留めました。そんな状態で家にナースコールを整備したのですが、ナースコールを母は使える状態だったので、夜中もナースコールのオンパレードとなりました。結局、勉強どころじゃなくなり、大学にいくのもやめて介護に専念しなければならない状況になりました。

友達と違う自分。外出への恐怖心

宮崎さんは高校生でありながら、過酷なケアを経験されていたことがわかりました。当時は、身も心もぼろぼろの状態になるまで思い悩んでいたそうです。

神戸:なるほど、その話を伺うと、友達とかは大学受験できたり、大学に行ってサークルやカラオケなど行って楽しそうにしている最中に、親御さんの介護をしていたということですよね。そうした自分がやりたいことを自由にできない中で、精神的な面での心の支えやモチベーションなどについてはどのように対応していらっしゃったんですか?

宮崎:若いときって、親との距離感がうまく取れてない方が多いといわれています。というのも、例えば60代で介護している方は、親と適度な距離感を掴むことができます。それって、自立してから20年ほど離れて生活している人が多いからだと思います。

親との距離感を丁度いい具合に保てることは、介護とうまく関わっていけることに繋がります。

しかし、やっぱり若いと自分がやらないとという気持ちが強いです。でもまわりの友達を見ると、大学に行ったり遊んだりしていて、精神的にうまくやっていたかというとそうでは無いです。私の場合も、一時はノイローゼになってしまい、外に出ると吐いてしまうこともありました。

神戸:そんなに追い込まれてしまったんですね。

宮崎:そうですね、追い込まれていました。ずっと家に引きこもっていた状態だったので、外に出ることに恐怖心を抱いたというか、どうしたらいいのかわからなくなっていったんです。

「誰かを頼る」ことが前を向く一つの支えに

宮崎さんをノイローゼの状況から救ってくれたのは、家族の存在だったそうです。

神戸:宮崎さんにはお父さんのほかにご兄弟や、お母さんの兄弟など身近にサポートしてくれる人はいなかったんですか?

宮崎:兄弟は、姉と弟がいます。当時、弟は小学生くらいでまだ小さかったのですが、姉は大学に進学していました。姉は、大学が忙しい時期でなかなか家にいなかったです。でも、僕が1年くらい介護した後に、単位がほとんど取れたからと言って、家によくいてくれるようになりました。そこから精神的にも安定してきたので、姉の存在が大きかったと感じています。

神戸:ご家族の介護をしながら、ノイローゼになってしまったときにどなたか相談に乗ってくれるような人はいらっしゃらなかったのですか?

宮崎:相談する相手はそんなにいなかったんですけど、それでも親戚には相談していました。例えば、大学を辞めるとか、ほかの選択肢がないかなどを相談していました。

神戸:なるほど。そういう存在がいることで、ずいぶん楽になりましたか?

宮崎:正直、そのときは「言ったって仕方ない」という感情もありました。でも、今思うと自分が自暴自棄にならなかったのはその存在のおかげだったと思います。

宮崎さんは、親戚やお姉さんの支えもあり、ヤングケアラーを乗り越えて現在に至っています。ヤングケアラーの方は、自分は1人だとか、もっと自分が頑張らなけらばいけないと考えてしまうかもしれません。

でも、決してそうではないことを少しでも多くの方に知っていただきたいです。また、もし家族に相談できない状況だとすれば、地域包括ケアセンターや市役所など行政関係へ頼るのも1つの選択肢です。

全国的にもヤングケアラーに対するサポートが動き出しました。鳥取県でも相談窓口が開設されていますので、自分のことかも…と思う方、身の回りで「あの子かも」と思い浮かぶ方はぜひ、相談窓口へご連絡ください。

鳥取県のヤングケアラー支援をサポートする取り組みのご紹介

鳥取県では、令和3年4月1日から県内3カ所に、ヤングケアラーの方々への相談窓口を設置しています。詳しくは、下記URLに記載されているので、ぜひご活用ください。

ヤングケアラー支援/とりネット

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