超高齢化社会と呼ばれるようになった今、介護を必要とする人が急増していますが、介護施設は飽和状態を迎え、設備も人手も不足状態。
これまでの「介護」の当たり前が、通用しなくなりつつあります。
例えば、「家族が介護をする」という前提。今の仕事現役世代は都市集中型のライフスタイルが当たり前になってきており、夫婦共働きが専業主婦世帯よりも多い時代です。両親が祖父母の介護をできないために、子どもが代わりに家族の世話をする、「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたちが増えているとも指摘されています。
今回は、「ヤングケアラー」と呼ばれる、家族の介護やケア、身の回りの世話を担う18歳未満の子どものこと、そして、『これからの介護の形』について考えていきたいと思います。
家族の世話や介護をするヤングケアラー
ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子どものことです。
ヤングケアラー診断
以下の条件に一つでも当てはまったら、あなたはヤングケアラーかもしれません。
※年齢が18歳未満の方向け
①障がいや病気のある家族に代わり、買い物、料理、掃除・洗濯など家事をしている。
②家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている。
③アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族の対応をしている。
④がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の看病をしている。
⑤日本語が第一言語でない家族や、障害のある家族のために日常的に通訳をしている。
⑥障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている。
このように、日常的に家族の世話や介護を行っている若者のことをヤングケアラーと呼びます。しかし、彼らは自分自身がヤングケアラーであることを認識していない場合もあり、支援者なしの孤立状態で介護をしている人がたくさんいると言われています。
約20人に1人が「ヤングケアラー」
厚生労働省と文部科学省は、2020年12月から2021年1月にかけて初めての実態調査を行いました。この調査は、公立の中学校1000校と全日制の高校350校を対象として約1万3000人から回答データを収集したものです。
調査の結果、「世話をしている家族がいる」という生徒の割合は、中学生がおよそ17人に1人、高校生が24人に1人でした。
世話にかけている時間は、平日一日の平均で、中学生が4時間、高校生が3.8時間にものぼります。
ヤングケアラーの実情
ここでは、実際に若者が抱える実情や声について、いくつかの記事からその様子を紹介します。
「誰にも言えなかった。親がお漏らしをする、なんて友達に話せますか」
父は地方公務員、母は近所でパート勤務。私立の中高一貫校に進み、部活動のアメリカンフットボールに打ち込む16歳の生活が02年、父が脳梗塞で倒れた日を境に一変した。父はまだ57歳だった。退院した父の世話を、日中は母が、夕方からは私が担った。一次的な看護のはずが、父は後遺症が重く認知症も発症。気付くと在宅介護に突入していた。高校には通い続けたが、遅刻や早退も多かった。おむつを嫌がり失禁する父。トイレ清掃をして登校した。母の負担を減らそうと部活をやめ、放課後は家に直行した。
長い長い、介護生活のはじまり
ぼくが高校2年生になったころ、ようやく母の病気に診断がつきます。
「多系統萎縮症」という現代の医療では治すことが難しい、原因不明の病でした。
(中略)
階段の上り下りはもちろん、布団に寝た状態から一人で起き上がることすらできなくなりました。夜間にトイレに行くことも難しかったので、夜はぼくが母の隣に寝てトイレにいくサポートをするようになります。ときにはおぶってトイレに連れていくこともありました。
(中略)
母のケアはライフサイクルの一部として当然のごとく行っていて、「介護をしている」という認識はなかったからです。
(中略)
ぼくはできる限り母のそばを離れたくなかったので、大学への進学をやめることを決意しました。
(引用元:中学生から15年間母親の介護をしてきた私が、過去の自分に伝えたいこと。ヤングケアラーを支援する宮崎成悟さん)
ごく一部の事例ですが、少しずつヤングケアラーへの関心が高まっているためか、NHKで特集が組まれたりメディアで目にする機会も増えてきました。ですがまだまだ、ヤングケアラーへの支援や制度、世間的な関心は十分とは言えず、大人が生み出した問題に子どもたちが苦しんでいる、という状況にかわりはありません。
誰かを頼る勇気と、一人じゃないという事実
「介護は辛い」「大変そう」というイメージがある中でも、彼らが介護をやる・続ける理由の中には、やっぱりお父さんとお母さんが好きという気持ちもあるようです。
ヤングケアラーと呼ばれる方の年齢層は18歳未満の子どもです。彼らは精神的にも自立しきっておらず、お父さんやお母さんにはまだまだ甘えたいお年頃でもあります。また、幼い頃から親子で仲が良く、一緒に築いた数々の思い出は彼らを縛るのも確かです。素敵な思い出が多ければ多いほど「早く元気になってね」と、抱いた希望を尊重するのです。
こんなにも献身的に大切な人のことを考えられるのはとても立派なことです。ですが、このままでは自分自身を擦り減らし過ぎてしまいます。
そのため、自分自身が潰れてしまわないためにも、ぜひ知ってほしいことをご紹介します。
・「自分が頑張ればいい」と抱え込まないでください
「自分が頑張ればいい」なんて一人で抱え込まないでください。親戚、学校の先生、幼馴染など、あなたの気持ちに寄り添ってくれる人はきっといるはずです。「ヤングケアラー」と検索すれば、10代の頃から介護をする人たちの声がたくさん見つかります。ぜひ、「自分が頑張ればいい」と一人だけで抱え込まないでほしいと思います。
・自分の状況を、誰かに話すということ
多くのヤングケアラーの方が「介護をしているつもりはなかった」「何を相談したらいいかわからない」と、相談することの難しさを挙げています。一方で、相談した結果、救われたと感じられた人もたくさんいます。「自分の家族のことだし、自分でなんとかしないと」という思いもあるかもしれませんが、あなた自身が自分の時間や生活を取り戻すためにも、どうか相談をしてほしいと思っています。
「わたしの看護師さん」では、SNSのダイレクトメッセージから相談を受付けています。「今、こんな状況で…」「1日の時間が足りません」など、何でも構いません。今、感じていることをぜひメッセージでお送り下さい。
「わたしの看護師さん」公式Twitter https://twitter.com/watashi_kangofu
若者介護・ヤングケアラー支援に求められる3つのこと
こうしたことを踏まえ、これからの介護について考えていく必要があります。
第一に、若者の介護についての理解や、ヤングケアラーということばの認知を広めることが大切。現状を改善するための第一歩として、まずはたくさんの人にこうした介護事情があるということを「知ってもらう」必要があるのではないでしょうか。
次に、介護は決して他人事ではないという意識を持つこと。自分が介護の経験が無い場合、実際に介護をする人たちの苦労や想いを理解しづらいと思います。ですが、介護は誰の身にも起こりうるものであり、10代の子どもたちが介護を理由に夢を諦めないといけないといった現実もあります。
いつ訪れるかわからない介護に備えるためにも、困ったときは地域包括支援センターに相談をする、どんな制度があるのかなど、社会保障やライフデザインを学ぶ機会が重要だと思います。
最後に、当事者の心の負担を減らすことができるコミュニティを発達させるということです。ヤングケアラーたちは様々な思いを抱えています。相談できる人がいるひとも、いない人も、当事者同士で関わることができる場を提供することが彼らを救う手段になります。こうした環境を生み出すためにも、個人だけでなく、より影響力の大きい行政、あるいは地域団体が積極的に発信する必要があると思います。
今、国を上げてヤングケアラーの実態調査や支援に向けた取り組みが進められています。ヤングケアラーの認知が広がることで、少しでも誰にも相談できずに苦しんでいる人へ、情報が届けられたらと思っています。
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この記事では、若者が介護をするの現状、ヤングケアラーの実態について触れていきました。若い人たちが介護に苦しむ状況を解決することは、本人のみならず、地域や社会全体にとっても非常に大切なことです。
誰しもにかならず訪れる「介護」。自分を守るためにも、誰かを介護の負担から救うためにも、誰しもにできることは、「介護」に関心を持つこと。ぜひ一人でも多くの人に、介護の現状、そしてヤングケアラーについて知り、まわりの方に広める。その力になってくれたらと願っています。
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