高齢者の自由な外出をサポート〜免許返納後の移動手段を考える〜

「運転免許を返納した親の生活が心配」、「足腰の不調で外出を控えるようになった親が気がかり」など、遠方に住む高齢の親の「外出」に悩んでいる現役世代の方は少なくないと思います。

近年、高齢者による相次ぐ自動車事故が報道され、運転免許の自主返納を選択する方は増えてきています。一方で、それまで自動車を頻繁に運転していた方にとっては、代わりとなる自由な移動手段が確保できないために、家にこもりがちになるというデメリットもあります。

移動手段が限られた地方ともなれば、自動車が使えないことで買い物や通院などの生活さえ困難になることもあるでしょう。今回の記事では、高齢者が安心して外出するための移動手段と、外出が難しい高齢者の生活を支援するサービスを紹介していきます。

免許返納後に直面する「移動の壁」

まずは、高齢者が運転免許返納後に移動手段を確保しようとするときに直面する現状と困りごとについて見ていきましょう。

公共交通機関の利用不安とアクセス難

自動車の代替手段としてまず考えるのが公共交通機関の利用かと思います。自動車を頻繁に運転していた方にとっては、免許返納前はちょっとした外出でも自由なタイミングで行うことができました。しかし、免許を返納しバスや電車で移動しなければならなくなると時間の管理が面倒で、外出頻度が下がることもあります。

また、長距離の歩行が困難な高齢者の場合には、自動車のドアtoドアであればこそ外出が叶っていたものが、駅までの移動やバスや電車の乗り換えなどが発生すると負担が大きく利用が難しいでしょう。

地域によっては、そもそも公共交通路線の減少・廃止が進んでいるために、利用がままならない場合があります。公共交通サービスの水準低下は、これまでは利用者の少ない地方のみの問題とされていましたが、運転手不足や燃料価格高騰などによって、都市部においても路線の廃止や縮小が課題となっています。

徒歩移動の身体的負担と自転車の危険

ちょっとした外出の場合、自動車が使えなければ徒歩や自転車の利用を考えると思います。

徒歩での外出は、自動車であれば積めていたような重い荷物を運ぶことはできないため、買い出しなどで不便が生じます。夏場ともなると、体温調節機能の低下した高齢者にとっては、ちょっとした外出でさえも熱中症のリスクがあります。

さらには、これまで徒歩でアクセスできる距離にあった地元小売店が撤退してしまい、「買い物難民」として生活に困る人が増えている現状も無視できません。

少し遠くの外出に、身近で免許不要な自転車を利用する高齢者も多くいますが、身体機能の低下や判断力の低下は、自動車の場合と同様に自転車事故も引き起こしやすくなります。内閣府が公表している「令和3年交通安全白書」では、自転車乗用中の交通事故死者のうち、65歳以上の高齢者が約7割を占めていることからも、高齢者の移動手段としては危険度が高いといえるでしょう。

自動車に代わる、高齢者に安心の移動手段

自動車を運転しない高齢者が選択できる移動手段を紹介していきます。お住まいの地域や生活状態と照らし合わせながら読み進めてみてください。

バス、電車など公共交通機関

生活圏域に利用可能な路線がある場合には、公共交通機関を使えば移動範囲が狭まることなく外出できます。

多くの市町村では、65歳以上や70歳以上の利用者に対して、運賃の割引制度を導入しています。ほかにも、免許を返納した方の身分証明書である「運転経歴証明書」の提示で、運賃の割引を受けられる自治体も増えています。お住まいの市区町村や公共交通機関などに確認してみると良いでしょう。

タクシーとライドシェア

公共交通網が充実していない地域では、タクシーが貴重な移動手段の一つです。こちらも、高齢者や要介護者を対象に利用料金補助制度を設けている自治体が多くあります。

一方で、運転手不足などによりタクシー事業が成り立たない地域もあるため、移動手段の補完のために導入が推進されている制度が公共ライドシェアです。ライドシェアとは、個人が自家用車を用いて顧客を送迎するサービスのことをいいます。日本では個人が許可なくサービスを提供することは違法ですが、公共ライドシェアは自治体やNPO法人などが運営主体となっています。利用方法は電話予約やアプリ予約、事前登録が必要な場合もあるなど自治体によって異なるため、確認が必要となります。

気軽な移動を補助する乗り物

①シニアカー(電動カート)
シニアカーは、歩行が困難な方を補助するための乗り物です。運転免許は不要で歩行者扱いになるため、歩道の走行が義務付けられています。自動車と比べると移動範囲は狭まりますが、自由なタイミングで気軽に外出する手助けとなるでしょう。要介護認定を受けている場合、利用者の要介護度によっては、介護保険を利用してレンタルすることも可能です。

②電動車いす
手動の車いすを漕ぐことができない場合、手元のスティック操作で動かせるのが電動車いすです。シニアカーと同様に歩行を補助しますが、電動車いすは屋内での利用がメインとなるでしょう。こちらも、要介護認定を受けている場合、介護保険でのレンタルが可能です。

要介護認定について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
要介護認定とは?介護保険サービスを利用するためにまずは申請を〜申請方法をご紹介〜

③電動アシスト自転車
使い慣れた自転車を利用したい高齢者には、電動アシスト機能のついた自転車が選択肢の一つとなります。自転車と同じ分類になるため、70歳以上の方を除いて車道を通行する必要があります。転倒やふらつきなど危険な側面もあるので、安定性に優れた3輪タイプのものを選ぶと良いでしょう。

自力での移動が困難な高齢者への生活支援サービス

認知機能や身体機能の状態によっては、自力で移動手段を選択して利用することさえ困難な場合もあると思います。そのような時に、利用できる生活支援サービスを2つご紹介します。

1. 買い物支援サービス

移動が困難な場合の買い物支援には、以下のようなサービスがあります。

・ネットスーパー
・移動販売
・配食サービス

ネットスーパーは店頭と変わらない品揃えがあり、重いものを持ち運ぶ必要がないことがメリットです。離れて暮らす家族が、親の代わりに注文することもできます。

移動販売や配食サービスでは、配達時に話し相手になったり、安否確認を行ったりしてもらえる場合もあります。家にこもりがちな高齢者の不安解消や孤立感の軽減にもつながります。

2. 外出付き添いサービス

買い物のほかにも、通院などで本人の外出が必要な場面には、付き添いサービスが利用できます。介護保険サービスでも外出の介助を受けられる場合もありますが、付き添いの必要性や外出目的などの制約があることに留意が必要です。

一方で、幅広い目的に対応した、民間の介護事業者が提供する付き添い介護保険外サービスも増えてきています。買い物や通院などの日常的な目的から、冠婚葬祭や趣味の外出まで、多岐にわたる介助が受けられます。予算に応じて選択すると良いでしょう。

付き添いサービスについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
親の病院付き添いを上手にやりくりするコツ
付き添いサービスという新しい選択肢〜高齢者が安心して冠婚葬祭へ出席するために〜

移動手段を確保することは、特に単身世帯の高齢者の、生活維持のための生命線といえるでしょう。それだけでなく、自由な移動は、高齢者の自由な活動につながり、心身ともにいきいきと過ごすことができます。

遠方で暮らす高齢の親が心配な方も、安全な移動手段が確保されていれば、いくらか安心することができると思います。地域の状況に合わせて、利用しやすい移動手段の情報を調べて親に提案してあげると良いでしょう。

もちろん、介護サービスにかかる費用などの不安やわからないことは、一人で悩まず、介護の専門家に相談し、地域・自治体による支援をぜひ活用してくださいね。親が社会や人とのつながりを保ちながら、活力や生きがいを持って過ごしてもらう方法を考えていきましょう。

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