「遠距離介護をしている高齢の親が被災したらどうしよう……」。相次ぐ災害のニュースを見ていると、ふと不安に陥ることがあります。災害はいつどこで起こるか分からないため、万が一に備えることが重要です。
遠距離介護をしている場合、災害時にすぐに駆けつけることができず、もどかしい思いをした経験をお持ちの方もいるかもしれません。食べるものはあるのか、トイレを我慢していないかなど心配は尽きません。
また高齢者にとっては、生活環境が変われば命に関わることも考えられます。自宅の停電・断水などの災害時にも、高齢の親ができるだけ安心して過ごせるように、私たちにできることを考えて備えましょう。
今回の記事では、災害に備える大切さや、「食」と「くらし」にまつわる備えをご紹介します。
停電・断水などの災害に事前に備える大切さ
高齢者における停電・断水などの災害時の問題点
停電・断水などの災害が起きると、冷蔵庫やエアコン、トイレなど日常に不可欠なものが使えなくなり、生活環境が大きく変わってしまいます。慣れない環境での生活は、身体的、精神的なストレスから高齢者の体力の低下を引き起こし、それに伴い感染症や持病の悪化につながります。災害時における生活環境の変化は、高齢者にとって大きな負担といえるでしょう。
また、災害時の問題点や確認しておく点は、家族構成や高齢者の体や心の状態によってそれぞれ違います。災害時に少しでもストレスを減らすために、事前に家族会議をして、話し合っておきましょう。
家族会議で確認すること
・非常用の食料や生活用品の備蓄品の準備
災害時は、非常用の食料や生活用品の事前の準備がとても大切です。一般的な備蓄品のほかに、介護食やおむつなど、高齢者ならではの準備も必要になります。家族会議で高齢の親の生活を把握し、必要な備蓄品を揃えましょう。
・電気が必要な介護機器の確認
補聴器やパルスオキシメーターなど、電気が必要な介護機器を把握しておきましょう。電気を使う場合、予備バッテリーの準備も必要です。
・助けてくれる親戚や地域の人の把握
例えば、飲料水の支給があっても高齢者は自分で自宅まで運ぶことが難しい場合もあります。高齢の親の身近にいる、いざというときに助けてくれる人を知っておくことができたら安心ですよね。
・避難経路、避難場所、連絡手段の確認
家の外に避難しなければならない際の、避難経路、避難場所、連絡手段を家族会議で事前に共有しておくことが大切です。また高齢の親の中には、自ら避難することが難しい方もいます。その場合、「避難行動要支援者名簿」に登録しておくことも重要です。
「避難行動要支援者名簿」の登録について、こちらの記事でも詳しく説明しています。
在宅介護、遠距離介護中の親に必要な災害の備えとは?〜必需品や活用できる支援をご紹介〜
災害時の備え~食~
停電・断水などの災害時、高齢の親に少しでもストレスなく過ごしてもらうためには事前の準備がとても大切です。災害時にも欠かせない「食」に関する備えをご紹介します。
災害時に準備しておくと良い「食」に関するもの
・レトルトおかゆなどの食品
レトルトおかゆはスーパーなどで気軽に購入できます。温めなしで食べられるものが多く、停電のような災害時に便利です。飲み込みやすいおかゆは、高齢者にもおすすめです。ほかにも、水やお湯があれば食べられるフリーズドライの食品や、非常用の長期保存用パンも重宝します。
介護食の場合は、レトルトのものを備蓄しておきましょう。高齢の親の体調やアレルギーを考慮した食品を準備してください。
・水
水は、一人当たり1日3リットルが必要です。災害時は最低3日分、9リットルの水を準備しましょう。
・カセットコンロ、ボンベ
災害時はガスが止まり、料理ができなくなることがあります。IHの場合は、停電すると使えません。そのため、カセットコンロ、ボンベを準備しておくこともおすすめです。火やお湯が使えると調理の幅が広がります。家族会議にて、災害食を調べてレシピを知っておくのもいいですね。
しかし、カセットコンロ、ボンベは使い方を間違えると非常に危険です。高齢の親が使用できるかはしっかり話し合い、判断してください。
食品の備蓄に伴う管理はみんなで協力
災害時の食に関する準備は必須です。けれど、いざというときに消費期限が過ぎていたら食べることができません。定期的な取り替え作業が必要ですが、認知症の方など、高齢の親には難しい場合もあります。
そのため、家族会議で食品の消費期限を確認し、取り替える日、消費していく日を家族も一緒に把握してあげてはいかがでしょうか。取り替える日、消費していく日を事前に決めておいてもいいかもしれませんね。
災害時の備え~くらし~
こちらでは「くらし」に関する備えをご紹介します。停電・断水などの災害時に、非常用の生活用品を準備しておくことも大切です。また、高齢者ならではの災害への不安にも気を配っておきましょう。
非常時に準備しておくと良い「くらし」に関するもの
・トイレ用品
断水で一番困るのがトイレです。トイレの回数を減らすために水分を控えてしまうと、脱水症状や熱中症を引き起こす危険性が高まります。そのため、非常用トイレやトイレ凝固剤を事前に準備しておきましょう。
また、高齢の親がおむつを使用している場合、おむつのストックも必須です。普段からおむつを使っていなくても準備しておくと、いざというときに便利です。おしりふきなどのウェットティッシュも必要ですね。
・液体歯磨き
歯ブラシがなくても、うがいをするだけで歯磨きができる液体歯磨きが便利です。また、高齢者にはスポンジブラシという選択肢もあります。スポンジブラシは、少量の水で歯磨きができ、さらに刺激により口腔内の機能低下防止にも役立つため、高齢者におすすめの口腔ケアとなっています。
入れ歯を使用している高齢者の場合、入れ歯洗浄剤も必要です。断水時は、水なしで洗浄できる入れ歯洗浄シートも役立ちます。
・薬、お薬手帳、介護機器
健康に不安を抱える高齢者にとって、薬は命に関わる重要なものです。薬の他にも、お薬手帳、杖、補聴器のような介護機器など、高齢者が生活するうえでなくてはならないものがたくさんあります。これらは、高齢の親のすぐに手が届く場所にまとめて置いておくことをおすすめします。
その際、非常食、トイレ用品などの備蓄品も近くにまとめておくと、すぐに必要なものが見つけられ高齢の親も安心できるかもしれません。
自宅を安全な場所にしておくアイデア
・暑さ寒さ対策
ガスや電気が止まってしまうと、エアコンなどの機器が使えなくなるため、夏は熱中症、冬は寒さへの対策が必要です。夏には室内に入る日差しをやわらげ換気を徹底する工夫、冬には防寒着や保温に役立つアイテムの活用など、家族で準備しておけるといいですね。
・家具の固定
家具を固定し、自宅を安全な場所にしておくと、倒れてきた家具の下敷きになることや、避難時の通路妨害を防ぐことができます。家具を固定する金具やストッパー、滑り止めなどを活用することをおすすめします。体の不自由な高齢の親は、家具の固定がしっかりできないかもしれません。大きな家具の固定など、作業が難しいときは、家族が協力してあげましょう。
また、寝室の家具の配置にも注意が必要です。就寝時は家具が倒れてきても気が付かない可能性があります。寝室にはできるだけ大きな家具を置かない工夫をしておいてください。
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「いつかしないと」と思っていても、忙しく過ごしていると災害への備えは後回しになってしまうもの。私たちより体力が少なく、離れて暮らす高齢の親が被災したらと考えると心配でなりませんよね。
高齢者ご本人も、災害への備えが十分にできていないことに不安を持っておられるかもしれません。
この記事を機に、まずは自宅での災害時の備えを考えてみませんか。その際は家族会議をし、高齢の親の生活や体の状態をしっかり把握しましょう。それぞれにご家族に合った備えを行ってみてください。
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