高齢者介護にかかりつけ医は欠かせない!〜かかりつけ医との連携で介護に備えよう〜

みなさんは、親のかかりつけ医を知っていますか。子どもの頃からお世話になっているため、よく知っているという方もいるかもしれません。かかりつけ医は、継続的に患者の診療を行っているため、ちょっとした変化にも気づきやすく、病気の予防や早期発見につながります。遠距離介護中の方にとっては、心強い存在といえるでしょう。

介護がスタートする際にも、かかりつけ医がサポートを行ってくれることをご存知でしょうか。かかりつけ医との連携は、より良い介護を行うためにとても重要です。

今回の記事では、かかりつけ医をもつメリットを、医療、介護の両面からご紹介します。親のかかりつけ医を知っておくことは、突然の介護への備えになります。親の介護に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

なぜ、かかりつけ医が必要なの?

親の住む身近な地域で継続的に診療にあたるかかりつけ医。その存在は、高齢者の健康や生活にどのように影響を与えているのでしょうか。

かかりつけ医とは

体や健康について、なんでも相談できる身近な医師のことです必要に応じて専門医や医療機関を紹介してくれることもあり、地域医療や介護を支える頼もしい存在といえるでしょう。

かかりつけ医が頼れる理由

1.継続的な診療で異変に気づきやすい
遠距離介護中であれば、親の体調の変化を見逃すリスクが高まります。かかりつけ医は継続的に診療を行っているため、認知症の初期症状などの異変に気づきやすく、迅速な対応が期待できます。

2.専門病院への橋渡し
専門的な治療が必要になった場合、かかりつけ医が紹介状を作成し、専門病院につなげてくれます。

紹介状は、正式には「診療情報提供書」と呼ばれ、専門病院を紹介する際に、かかりつけ医が作成。検査結果以外にも、患者の病状や既往歴、検査結果などが記載されています。他の医療機関との連携に活用され、患者の情報が引き継がれるため、スムーズな受診が可能です。

国の制度により、一定規模以上の病院で紹介状を持参せずに外来受診する場合(救急の患者等を除く)、一部負担金(3割負担等)とは別に、「特別の料金」の徴収が義務付けられていることをご存知ですか。令和4年10月1日から、特別の料金の額が見直され引き上げられました。まずは、かかりつけ医を受診しましょう。

参照:厚生労働省「紹介状を持たずに特定の病院を受診する場合等の「特別の料金」の見直しについて」

【体験記】かかりつけ医の迅速な対応が、適切な処置に

私の83歳の父は、定期的に内科や眼科に通院しています。内科は、家から車で5分の医院。母も私も昔からお世話になっています。家族で頼りにしていて、何かあれば真っ先に相談するかかりつけ医です。

数年前、父が庭で作業中に不注意でケガをしました。本人は大丈夫と言っていましたが、呼吸が苦しそうでした。異変を感じた母は、すぐにかかりつけ医に連れていきました。レントゲンをとっていただくと、詳細な検査が必要とのことで、すぐに「紹介状」を書いてくださいました。

専門病院で検査をしたところ、手術が必要とのこと。その後、無事に手術を終え退院することができました。すぐに受診していなければ、発見が遅れていたかもしれません。あのとき、迅速に対応していただいたことに今も感謝しています。

介護の場面でも頼りになる!親のかかりつけ医を知っておきましょう

かかりつけ医は、介護認定を申請する際や訪問診療だけではなく、介護サービスに拒否感を示す親を説得する場面でも助けになってくれます親の状態を相談することで、負担のない介護を行う環境づくりにつながります。

1.介護認定調査のための主治医意見書作成

主治医意見書とは
介護保険サービスを利用するためには、各自治体に要介護認定を申請し、認定を受けなければなりません。要介護認定には、訪問による聞き取り調査と、医師が記載する「主治医意見書」が必要です。「介護の手間がどの程度なのか」を医学的観点から判断するためです。親の病気やケガの状態などについて、よく知っているかかりつけ医に意見書を書いてもらいましょう。初めて受ける要介護認定の時だけではなく、更新申請をする場合も、意見書の作成を行ってもらえます。

主治医意見書をかかりつけ医が記入するメリット
「主治医意見書」には、病名や症状のほかにも日常生活の自立度や認知症の有無、筋力の低下、生活機能とサービスに関する意見などについて幅広く記入する項目があります。親の状態を理解したかかりつけ医だからこそ、作成することができるため、最適な介護認定調査の結果に導くことができます。かかりつけ医の情報はケアプラン作成に役立てられます。また、リハビリテーションや訪問看護などの医療系介護サービスを利用する際に、必要となる医師の指示書も作成してくれます。

もし、かかりつけ医がいない場合、余裕を持って介護認定調査までに受診をし、介護認定調査のために「主治医意見書」を書いてほしい旨を医師に伝えてください。

主治医意見書の作成に費用はかかりません。病院で医師に「診断書」などの書類を記入してもらう場合は費用がかかるため、「主治医意見書作成も費用がかかる」と思いがちですが、介護保険を利用するために必要な書類のため、費用は市区町村が負担してくれます。

2.自宅や施設で療養生活を送りたいときや看取りたいときの医療的対応を行う

かかりつけ医は、住民の健康管理や日常的な疾患管理、通院が困難な方への訪問診療などを行います。訪問診療は、自宅や施設で療養している患者さんが、通院による療養が困難な場合に利用できます。

訪問診療を受けるには、次のような条件があります。
・病気や障害により歩行が困難な方
・寝たきり状態で移動が制限される方
・終末期の療養を自宅で希望する方
・退院後の継続的な医療ケアが必要な方
・認知症が進行していて、一人で受診が難しい方

訪問診療を受けたい場合、かかりつけ医がいる方は相談してみてください。かかりつけ医が訪問診療をしていれば、自宅や入居施設を定期的に訪問し、継続して医療を提供することもあります。もし、かかりつけ医が訪問診療をしていない場合は、他のクリニックを紹介してもらいましょう。

3.家族の説得が難しい場面での後押し

親が「要介護認定を受けたくない」「介護サービスを利用したくない」と言っていて、家族での説得が難しいと悩んでいる方も多いと思います。その際、気心の知れたかかりつけ医からの助言で、スムーズにいくこともあります。

【体験記】運転免許証の返納にも、かかりつけ医のアドバイスを

私自身、頭を悩ませている問題が、父の運転免許証の返納です。高齢者による事故が多発しているため、返納してほしいと家族で説得を試みていますが、話し合いは平行線のままです。解決の糸口を探していると、2018年の新聞記事に、かかりつけ医と連携して運転免許証の自主返納を促す、静岡県の取り組みを見つけました。

現在75歳以上の高齢ドライバーは、免許更新時に認知機能検査等を受けなければなりません。検査で認知症の恐れがあると判断された場合、直ちに医師の診断が必要になります。静岡県はスムーズに診察を受けられるよう専門医だけでなく、普段通っている内科医などのかかりつけ医でも受診が可能な体制を整備したそうです。その結果、自主返納率が全国平均を上回る結果になったと報告されていました。

免許返納について身近なかかりつけ医から説明してもらうと、耳を傾ける高齢者も多くいるはずです。家族での説得が難しい場合、信頼できるかかりつけ医に相談することも検討してみようと考えています。

免許返納についてはこちらの記事をご覧ください。
免許返納マニュアル 〜離れて暮らす高齢の親の説得から、免許返納の手続きまで〜

いつも親の健康を支えてくださっているかかりつけ医。介護認定調査のための主治医意見書作成や看取り対応などによって、医療だけでなく介護の面でも重要な役割を担っています。

介護がスタートしたときに、相談ができる病院を知っている。それだけでも、介護への不安が軽減しますよね。いつ始まるかわからない介護の備えの第一歩として、親のかかりつけ医を確認することからはじめてみましょう。

介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。

「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。

「介護に関するお役立ち情報」を随時更新しています。ぜひ介護のお困りごとの参考にご覧ください。

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