年齢が進むにつれ、女性の身体にはさまざまな変化や不調が見られます。高齢になり、心身ともに昔と様子が変わってきた母親のことが心配な方も多いのではないでしょうか。
高齢の女性に表れやすい症状や病気には女性ホルモンが深く関わっています。中でも女性ホルモンの一つエストロゲンの影響によって、心や体にさまざまな症状が生じます。
今回の記事では、高齢女性に特有の体の変化、表れやすい症状や病気、健康に生活するためにできる予防対策をご紹介します。
特に遠距離介護をしている場合は、近くで普段の様子や姿を見られない分、症状や病気を見逃してしまう可能性もあります。症状や病気を知ることで、早期の発見や予防対策につなげてください。
年齢を重ねるにつれて感じる不調、女性特有の体の変化とは
高齢になった母親が悩む症状や体の変化は、いつ頃から、どういった仕組みで引き起こされるのでしょうか。
更年期以降の特徴
40歳頃から、エストロゲンという女性ホルモンの分泌が減少していきます。そして、更年期が終わった50代半ば以降、エストロゲンの分泌はさらに減り、欠乏してしまいます。このエストロゲンの減少が女性の体の変化に深く関わっています。
エストロゲンとは
エストロゲンとは女性ホルモンの一つで、女性らしい体作りを助ける働きをしています。脳や血管、骨、皮膚など、女性の体のさまざまな機能を調節します。そのためエストロゲンが減少すると、これらの機能がうまく働かなくなり、健康面、美容面においてさまざまな変化や不調が引き起こされるのです。
加齢とともに女性に表れやすい症状、病気
更年期以降のエストロゲンの減少により、女性にはさまざまな不調が生じます。症状や病気を知っていれば、予防や早期の発見につながります。こちらでは、高齢の女性に表れやすい主な症状や病気を5つご紹介します。
1.骨密度の低下(骨粗しょう症)
高齢女性は、エストロゲンの減少により骨密度が低下しており、骨粗しょう症になる可能性が高くなります。そして、骨粗しょう症により骨折しやすい状態になると、心配なのが転倒です。心身ともに活力が低下し、介護が必要になる前の状態であるフレイルが進行するにつれ、転倒の危険性も高まります。高齢者の転倒、そして骨折は、寝たきりになるなどのリスクが高くなります。
2.生活習慣病
エストロゲンには、悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを増やす作用や、血管を拡げる作用があります。そのためエストロゲンの減少は、悪玉コレステロールなどが高い状態である「脂質異常症」や、心筋梗塞や脳梗塞などの原因にもなる「動脈硬化」の病気を発症するリスクに大きく関わります。また高血圧や糖尿病など、男性と同様に生活習慣病に注意が必要になります。
3.認知症
認知症のなかで最も多い「アルツハイマー型認知症」は、女性のほうが多いことで知られています。認知症の原因ははっきりと解明されていませんが、エストロゲンの減少も影響していると考えられています。
脳の血管が詰まることによって引き起こされる、「脳血管性認知症」にも注意が必要です。高血圧や糖尿病の人は特にかかりやすいとされており、エストロゲンの減少により生活習慣病になりやすい高齢の女性も気をつけなくてはなりません。
4.うつ病
うつ病にはさまざまな原因がありますが、エストロゲンの減少も影響していると考えられています。不安や焦燥感を抑える働きをするセロトニンが、エストロゲンの減少により機能障害を起こしてしまうのです。その結果、抑うつやうつ病につながります。
うつ病は、エストロゲンの減少だけではなく、環境などの変化がきっかけになることもあります。親にライフイベントの変化があったときは、注意して気にかけてあげてください。
5.腹圧性尿失禁
腹圧性失禁とは、咳、くしゃみ、歩行、運動などお腹に力を入れたときに尿がもれてしまう病気で、女性に多い病気の一つです。加齢による骨盤底筋の衰えが原因とされており、エストロゲンの減少も骨盤底筋の緩みに関わっています。
排泄に関わる症状は、気になりやすく自信をなくしてしまう方も多いかと思います。症状に合わせた治療を行うこともできるため、病院の受診の検討など、前向きに受けとめましょう。
長く健康に生活するために。予防対策をしましょう
年を重ねるにつれ、女性はさまざまな症状や病気と付き合っていくことになります。少しでも長く健康に生活するには、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。
バランスの良い食事
高齢期の女性が悩むさまざまな症状や病気を予防するには、バランスの良い食事が基本です。肉・魚・卵・牛乳などの食品からたんぱく質をしっかり摂ること。主食・主菜・副菜が揃ったバランスの良い食事を一日3回、毎日続けることを心がけましょう。
料理をすることが面倒な日に、スーパーのお惣菜やレトルト食品を利用することもありますよね。そんなときは、野菜や魚を多く使ったもの、油や塩分が控えめなものを選ぶようにしてみてください。
無理なく運動を継続する
骨折は寝たきりにつながるリスクが高く、できるだけ避けたい怪我の一つです。骨折を予防するには、骨だけではなく、それを支える筋肉を鍛えることが重要です。
筋肉を鍛えるには、手軽に始められるウォーキングがおすすめです。運動だけではなく、気分転換やストレス発散にもつながります。家の前を歩いてみるなど短い距離から始めて、慣れてきたら少しずつ歩数を増やしていきましょう。
また外に出て日光を浴びるだけでも、骨の健康につながります。少しずつ習慣づけることができたら良いですね。
定期的な健康チェック
心身ともに健康に過ごすためには、さまざまな不調を見逃さないようにすることが重要です。少しでも不調を感じたら、迷わず早めに病院に相談しましょう。また、気軽に相談できる「かかりつけ医」を探しておくことも大切です。定期的に受診し、血圧、血糖値、骨量などをチェックして、健康状態を把握しましょう。
心の健康
女性は高齢になると、エストロゲンの減少やライフイベントによる環境の変化から、抑うつな気分になってしまうことが増える場合があります。食事作りにやる気が出なくなった、家に閉じこもり運動をしなくなったなど、心の健康は、身体の健康にも密接につながっています。
ちょっとしたお出かけや旅行、読書や映画のような芸術鑑賞など、親の日々の生活に楽しみを取り入れてみてください。散歩に誘って一緒に歩くだけでも、高齢の親にとっては良い気分転換になるでしょう。遠距離介護をしている方は、できるだけ毎日、電話やビデオ通話で親の話し相手になり、様子を気にかけてあげてください。
心の健康を保つために私がおすすめするのが「美整容ケア」です。女性はいくつになってもメイクやお洒落が好きな人が多いですよね。もし興味がなくても、自分を美しく着飾ることは自信や前向きな気持ちにつながります。こちらのコラムも参考にしてみてください。
・お洒落をして前向きな気持ちになろう。高齢の親におすすめの美整容ケアとは?
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高齢の女性に特有のさまざまな体の変化や不調は、エストロゲンという女性ホルモンの減少が影響しています。年齢のせいと諦めず、早めに病院に相談することが大切です。
症状は多岐に渡るため、どこに相談したらいいのか分からないという方もいると思います。そんな時は、まず「かかりつけ医」に相談してみてください。必要に応じて、専門の病院を紹介してもらいましょう。
人生100年時代といわれる現代は、更年期を終えてからの時間が女性にとって人生で一番長い期間だといえるでしょう。高齢の母親が一人で症状や病気に悩んでいたら、この記事を思い出して、そっと寄り添ってあげてください。そしてバランスの良い食事や運動など、できることから生活に取り入れていきましょう。
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