介護中の親を誤嚥から守る!安心して介護をするための予防法と起きた時の対応方法

「親が高齢になり、誤嚥が心配」、でも「具体的にどのようなことに気をつければよいのだろう?」と悩んでいませんか。特に遠距離介護中の方は、近くで親の食事のサポートができないため、不安が大きいと思います。

そこで今回の記事では、誤嚥の予防に効果的な方法やいざ起きたときの対応方法、そして在宅介護、遠距離介護中の方が頼れるサービスについて紹介します。

誤嚥は放置しておくと命にかかわる危険があるため、理解を深めてリスクを回避していきましょう。

なぜ誤嚥が起きるの?〜誤嚥の原因と症状・リスク〜

誤嚥とは、飲み込んだ食べ物、飲み物、唾液などが、食道ではなく気管に入り込んでしまう状態のことです。また、食べ物などに含まれる細菌が気管や肺で増えてしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まります。誤嚥性肺炎は、令和4年に行われた厚生労働省の調査で、死因順位の6位という結果が出ています。

1.誤嚥の原因

通常、食べ物を飲み込む時は、のどの奥にある喉頭蓋が閉じて気道の入り口をふさぎ、食べ物が気管に入ることを防いでいます。しかし、様々な要因でこの喉頭蓋が閉じにくくなってしまうことがあります。この飲み込む力の低下が誤嚥の原因です。

飲み込む力の低下には、加齢と病気が関わっています。

加齢による誤嚥
加齢により全身の筋肉が衰え、飲み込みに必要な筋力も低下します。歳を重ねるにつれ、食事中にむせたり、食べこぼしが増えたりしていませんか。

また少量ずつしか飲み込めなくなることで、食事に時間がかかることもあります。結果、食事をとることが億劫になり、栄養不足、体重の減少などの悪循環に陥ります。

病気による誤嚥
食道がん、咽頭がんなど、喉に腫瘍がある場合や、脳梗塞などの脳血管障害の後遺症や神経系の病気の発症がきっかけで飲み込む力が低下します。また、認知症により食事に対する集中力が低下することも誤嚥の原因の一つです。

2.誤嚥が起きたときの症状とリスク

誤嚥が起きると、むせたり咳き込だりしますが、ほかにも次のような症状が現れます。

・誤嚥が少量の場合、むせたり咳込んだりする代わりに、ガラガラ声になったり、呼吸からヒューヒューという音が聞こえたりします

・誤嚥したものを吐き出せずにいると、血液中の酸素が不足し、顔面や唇が青紫色になるチアノーゼの症状が現れます

・咳や声が出なくなり、手でのどをつかむようなしぐさをして、そのまま意識を失うこともあります

誤嚥の症状は、2つのリスクにつながる恐れがあるため、見逃さないことが重要です。

リスク1. 窒息
口の中に残っている食べ物が咳で吐き出せず、気道に詰まり呼吸ができなくなる状態につながります。呼吸困難で死に至る恐れがあるため、一刻も早く救急車を呼ぶ必要があります。

リスク2. 誤嚥性肺炎
食べ物と一緒に入り込んだ細菌が、気管内で増殖することで肺炎を引き起こします。細菌を増殖させないために、口の中を清潔に保つことが大切です。

肺炎の症状として、発熱、激しい咳、黄色い痰などがありますが、高齢者の中には症状が現れない場合もあります。元気がない、食欲がないなど、普段と違う様子がみられたら、早めに医療機関を受診しましょう。

参照:厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)の概況 」

誤嚥の予防法〜食べやすくする方法と毎日のケア〜

ここでは、誤嚥を回避するための効果的な方法として、食べ方の改善と、体の機能を保つために必要な口腔のケア・体操を紹介します。

1.食べ方の改善〜食べやすくする方法〜

「食材選び」「調理法」「食べる環境・姿勢」の3つのポイントを改善していきましょう。

①食材選び
水やお茶のようなサラサラした液体、そぼろ、焼き魚など口の中でバラバラになりやすいものを、そのまま口にいれるのは避けるようにします。

キャベツ、ごぼう、にんじんといった固い野菜、繊維が残る野菜にも注意しましょう。

②調理法
食べにくい食べ物、飲みにくい飲み物は、調理法を工夫することで安心して口に入れることができます。

サラサラした液体、口の中でバラバラになりやすいものは、片栗粉やとろみ剤を使ってとろみをつけます。とろみ剤は、メーカーによって使用量や使用方法が異なるため、事前に説明書を確認しましょう。

固い野菜、繊維が残る野菜は、すりおろしたり、よく加熱して柔らかくします。繊維が多い野菜は、繊維を切ると噛みやすくなります。

③食べる環境と姿勢を整える
食べる環境と姿勢を整えることも、誤嚥を防止するために大切なポイントです。

椅子に座って食事をとる場合は、両足がしっかりと床につく椅子に深く腰をかけ、姿勢を正してあごをひきます。テレビは消し、食事に集中できる環境を整えます。少量ずつ口に入れて、意識してゆっくり食べるようにしましょう。

ベッドで食事をとる方、介助が必要な方の場合は、ベッドのリクライニングの高さを工夫することが大切です。自力で食べられる場合は60℃程度、介助が必要な場合は、30℃程度あげます。あごをひいた姿勢になるように枕を置いて調整し、介助者は椅子に座って視線の位置を合わせます。食後すぐに横になると、誤嚥のリスクが高まるため、2~3時間は座った状態を維持しましょう。

2.誤嚥を予防する口腔ケアと、口腔体操

日頃から口腔ケアと、口腔体操を行って体の機能を保つことが大切です。

口腔ケア
口の中の清潔を保ち、細菌を増やさないことが、誤嚥性肺炎の予防に効果を発揮します。毎食後に歯磨きと舌磨き、入れ歯の手入れを行い、定期的に歯医者を受診しましょう。

噛む力、飲み込む力を鍛える口腔体操
代表的な体操に「パタカラ体操」があります。「パ・タ・カ・ラ」の4文字をはっきりと発音することで口・舌の筋肉を使い、食べたり飲み込んだりする機能を鍛えます。唾液が分泌しやすくなるため、食事の前に各発音8回を2セット行うと効果的です。

誤嚥が起きたらどうする?〜対応方法〜

気をつけていても誤嚥が起きてしまったときは、落ち着いて対応しましょう。

<咳が出たり、むせたりしているが症状が軽い場合>

前かがみにして背中を優しくさすりながら、咳を続けるように声かけを行います。食べ物がさらに気管に入る恐れがあるため、背中は強く叩かないようにしましょう。

またこの時、水やお茶を飲ませてはいけません。症状が落ち着いて深呼吸してみて、むせなければ食事を再開します。

<咳が止まり呼吸困難を起こしている>

至急、救急車を呼びます。救急車を待っている間に、次の応急処置を行います。

口の中の異物が見えている場合は、横に寝かせ、口の中に指を入れてかきだします。素手のまま指を入れるとケガの原因になるため、タオルやガーゼを指に巻いて対応します。

・背部叩打法
頭を胸より低い位置にし、手のひらの手首に近い側で肩甲骨の間を叩きます。喉に詰まったものが出てくるか確認しながら、5回程度叩きます。

・腹部圧迫法
背後にまわり、腰に手を回して抱きかかえます。片手で握りこぶしを作り、みぞおちのやや下に置きます。もう一方の手で手首を握り、お腹を4~5回突き上げるように圧迫します。

遠距離介護、在宅介護で活用できる介護サービス

特に遠距離介護中で離れて暮らしている方は、親がきちんと食事がとれているのか、変わった様子がないか心配になると思います。そこで親の食事の様子を見守るために利用できる介護サービスを紹介します

1.訪問介護

訪問介護は、要介護認定を受けた高齢者が受けられる介護サービスです。訪問介護員が自宅を訪問し、食事の介助などの「身体介護サービス」、掃除や洗濯などの「生活介護サービス」を行います。要介護認定を受けるためには、各自治体に申請を行う必要があります。

2.見守りサービス

最近では、カメラやセンサーを利用した見守りサービスも増えています。状況や予算に応じて導入を検討してみてはいかがでしょうか。

カメラ型見守りサービス
親が普段生活をしている寝室やリビングにカメラを設置し、映像で様子の確認ができます。商品によっては、緊急時に通知が届いたり、会話ができたりします。24時間の見守りが可能ですが、プライバシーの点で抵抗がある方も少なくないため、親の意思も尊重しながら話し合って導入しましょう。

センサー型見守りサービス
カメラの設置に抵抗がある方には、センサー型の見守りがおすすめです。人の動き、室内の温度や明るさを測定し、普段と異なる場合に通知が届くサービスです。また、開閉センサーを冷蔵庫などの生活導線に設置し、親が開閉しているかどうかをアプリで確認できる商品もあります。

※見守りにおすすめのIT機器や、活用事例についてはこちらの記事をご覧ください

3.配食サービス

一人暮らしの高齢者や高齢者世帯を対象に定期的に手渡しで配食されるため、親は栄養のある食事をとれ、同時に安否確認もしてもらえます。週1回など定期的な見守りを希望する方に適したサービスです。自治体が窓口になっている場合がありますので、お近くの自治体に問い合わせてみましょう。

サービスの導入が初めての方は、どれを選んだらいいのか悩まれる方も多いと思います。自治体の窓口、地域包括支援センター、ケアマネジャーなど、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。

一見、普通に食事をとっているように見えても、飲み込み力の低下や誤嚥の症状は始まっているかもしれません。さっそく、親の食事の様子を確認してみてください。

遠距離介護中の方は、見守りサービスなどの利用で、少しでも不安の解消につながればと思います。また、緊急時にすぐに駆けつけられない時のために、親の住む地域のご近所さんにも声をかけて、普段から見守りをお願いしておくと安心です。

今日から始められる誤嚥の予防法や対策も多いため、できることから実践してみましょう。


介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。

「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。

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