みなさんは“ケアマネージャー”と呼ばれる仕事についてどんなイメージをお持ちでしょうか?
「介護にまつわる仕事であることは何となく分かるけれど、具体的にはどういった仕事なの?」と思っている方もいらっしゃるかと思います。
いざ、ご家族やご親族の方で介護が必要になった場合、ケアマネージャーはどうサポートしてくれるのか、できることできないことは何なのか。
今回は「わたしの看護師さん」代表の神戸と現役ケアマネージャーの渡辺さんで「ケアマネージャーのあれこれ」について対談しました。
この記事の内容は、Youtube配信をもとに記事化しています。
音声でお聞きになりたい方は、こちらのYoutubeをご覧ください。
「なんでも屋」になってしまう、ケアマネージャーの仕事とは?
神戸:ケアマネージャーさんのお仕事はざっくり言うとどんなものでしょうか?
渡辺:ざっくり言うとある意味“なんでも屋”です。
神戸:なんでもできるんですか?
渡辺:いえ、なんでもはできないんですけど、なんでも要求されるという意味ですね。
神戸:あ!なるほど。確かに、そうしたくなります。実は私も15年ほど前に親戚の介護をしたときに、ケアマネさんは何でもやってくれると思っていました。その時にお願いしたことは、とりあえずワガママを言う叔母のお願いを聞いてほしくて「病院受診に行ってほしい」という内容でしたね。でも、そうしたら断られたことを覚えています。
渡辺:そのケアマネージャーは、勇気のある方だと思います。断るってことはやっぱりそれなりの覚悟と責任が必要になってきますからね。
神戸:そうなんです。「ダメですよ」という言い方ではなくて、「介護保険では病院受診に付き添うというプランを作れません。だからヘルパーさんはもちろんついていけないけれど、私たちヘルパーさんも緊急以外、どうしても家族が走ってこられないときには、たまに付き添いますが基本は私たちにはできません。」と丁寧に教えてくださって、お断りになったんです。
渡辺:そのようにきちんと説明されたらご家族が納得されると思うんですが、案外、ケアマネージャー自身が自己満足で引き受けてしまうこともあるんです。
神戸:自己満足とはどういうことですか?“助けてあげたい”とか?
渡辺:そうですね。本当は今お話されたケアマネージャーさんの立ち位置は正解なんだと思いますが、「自分じゃないとダメだ」と思い込んでしまったら、ケアマネージャーという立場なんですが、まるで自分の家族のように接してしまうこともあります。
神戸:家族からするとありがたいですが。
渡辺:そうですね。でもこれはケアマネージャーになりたての方やベテランの方、私もそうなんですが、よくあることです。
地域のネットワークを使ったチーム作り
神戸:ケアマネージャーさんのお仕事は、なんとなく束ねるというかコーディネート役のようなイメージがあるんですが、他にも色々と束ねられますよね?
渡辺:そうですね。私たちでご利用者のご意向やご希望を考慮し、訪問看護やヘルパーさん、デイサービスなどのチーム作りをします。 その方が望む生活ができるかどうかというとこまでを 毎月見守りをしていく形です。
神戸:なるほど。これが例えば入居施設であればいいと思うんですが、在宅と言われる、地域でお過ごしであれば民生委員の方々も巻き込んでネットワークを活用していくようなコーディネーターという役割ですか?
渡辺:そうですね。これは地域差がかなりあると思います。島根県松江市の場合はケアマネ発信で民生委員さんとの民児協と言うんですが、ケアマネージャーとの懇親会が定期的にいろんな地域で開かれます。
包括支援センターの職員さんが調整するんですが、その地区で活躍しているケアマネージャーに声がかかり、そこで民生委員さんの様々な声を伺って、ケアマネージャーとしてどうやって関わっているのかの意見交換をしています。
地域包括支援センターとは?
神戸:地域包括支援センターの“包括”という括りはざっくりとどのようなことですか?
渡辺:地域包括支援センターは介護保険ができたあとに作られた施設です。元々、在宅介護支援センターが担っていた仕事にプラスアルファで、地域のネットワークを作ったり地域住民の声を吸い上げたり、地域で足りないものや社会資源の開発や権利擁護などをしています。それから、居宅介護支援事業所のケアマネージャーさんの中には1人で仕事をされている方もいます。そのケアマネジャーの後方支援や一緒に同行して、少しでも解決を図っていく仕事が包括支援センターの仕事です。
民生委員や行政、ありとあらゆる機関を通じて、地域全体の40歳以上で身体だけでなく精神的にも、介護保険を使っている方々を救っていくシステムづくりの場というところです。
神戸:例えば高齢者でいうと要支援1,2や要介護1~5とありますけど、その中の区分からすると包括支援センターはいくつのところで分かれているんですか?
渡辺:包括支援センターは要支援1と要支援2です。
神戸:比較的介護度が軽い方、家の中や地元で生活できる方を担当されているチームやケアマネージャーと考えたらよいですか?
渡辺:確かにケアマネージャーもいますが一応3職種に分かれています。主任ケアマネージャーと保健師さん、それから社会福祉士さんの3職種が合わさって様々なケースにあたっています。
神戸:すごいですね。プロフェッショナルが集まっていますね。
渡辺:そうですね。誰が相談を受けても難しいケースなども一つ一つ協議して、地域を巻き込みながら一つのケースにあたることも包括の仕事です。
神戸:では、徘徊はせず認知症もそこまで重くない軽度の場合、その地域にある包括支援センターに駆け込めば色々なプロフェッショナルの方々がいらっしゃるので細やかに相談に乗ってくださるということでよろしいでしょうか?
渡辺:そうですね。日本全国どこでも同じ対応だと思います。
居宅支援センターについて
神戸:介護を始める最初のステップとしては先ず、包括支援センターに相談しに行けばよい。では、居宅支援センターというワードが出てきましたが、こちらはどのような施設ですか?
渡辺:居宅介護支援事業所は要介護認定1~5の方を専門的に見る、ケアマネージャーの事業所です。
神戸:要介護1となると、「現状は歩けるけれど認知症が始まった」とか、疾患にもよりますが末期の方が該当する場合がありますが要介護2ではどうですか?
渡辺:要介護2は例えば、認知症で日常生活がままならない、何をしたらよいか自分で考えられない状態ですね。
神戸:朝何時に起きてとか買い物やご飯を作るといった日々のスケジュール管理が自分では難しいということですか?
渡辺:そうですね。認知症だけで要介護2となればかなり重いと思います。
神戸:なるほど。要介護3については私も少しわかります。よく“特養”と言ったりする特別養護老人ホームに入るには要介護3でないと無理だと言われますが、要介護3になると具体的にはどうですか?
渡辺:症状的には生活するのがまず難しいです。身体的な部分でも1人で一日の生活をしていくことはまず不可能な状態です。様々なサービスが必要になってきます。個別の介護保険の看護師さんやヘルパーさんが通所リハビリやデイケア、デイサービスと色々と組み合わせてもなかなか隙間が埋まらず事故が起こったり。できることもあるけれど生活が危ういみたいな感じですよね。
神戸:誰かの見守りは必ず必要なくらいのレベルになってくるからこそ「特養に入るのはどうですか?」という話になってくるんですね?
渡辺:そうですね。
神戸:要介護4、5になると、いわゆる寝たきりとまではいかないかもしれませんが、徘徊が多かったりベット上で生活される方が多いとは聞いています。なかなか介護保険制度は難しいですね。
渡辺:難しいです。やはり最初のとっかかりのところは市役所に行かれたらいいんですが、市役所では「ここのエリアは〇〇包括支援センターなのでそちらでご相談ください」と言われることがありますので、どこが包括支援センターなのか、自分がどこに行けばいいのかわからない場合は、市役所へ出向かなくても電話で教えてもらえます。また、包括支援センターへお電話されますと大概は訪問してくださいます。
神戸:お家に来てもらえるんですか?
渡辺:包括支援センターの職員が伺うと思います。そこは遠慮なく、相談窓口ですので。
神戸:助かりますね!
ケアマネージャーにうまく頼るには?
神戸:先程からのお話で、「ケアプランを立てる人を地域のネットワークを活用して、その後高齢者の方々が住みやすい生活ができるように考えていく」とのことでしたが、一般の方はそこまでわからないですよね。勘違いしてお使いになったり、ケアマネージャーさんに期待する方がいらっしゃると思います。幅広く対応する何でも屋と言いきられていたので「ホントかな?」と思ったんですが。
渡辺:なんでも屋だと思われていますね(笑)
神戸:そうですよね。勘違いしてついつい使いたくなる、私もはじめは勘違いしていました。ただやはり、「これは困ったな」と思う場面があったと思います。みなさんに「これはわかっていてほしいな」ということをいくつかご紹介いただきたいと思いますが、まずどのようなことがありますか?
渡辺:お一人暮らしの方はもちろん、高齢者世帯の方は特にお金のことや認知症になった後のことが気になっておられます。そういう意思が明確で認知症になってきていると気づいている段階で、包括支援センターや市役所にご相談いただけると社会福祉協議会がしている権利擁護の話などにもスムーズに繋がるのかなと思います。
包括支援センターも本当は65歳以上の高齢の方で介護保険に特化したというところですが、今は共生社会と言われていまして、包括支援センターの障がい者の方やいろいろな方に関わっていると思いますので、ありとあらゆる相談は包括支援センターに集約していくのが一番いいのかなと思います。
神戸:今のお話を聞くと高齢者様の金銭管理などでお困りの方は例えば、「年金と介護保険のサービスを受けていてもバランスが無くなって目減りしていった時にどうしましょう」という相談があった時に、ケアマネージャーさんが全て抱え込むのではなくて、社会福祉協議会などに繋げてくださるんですかね?
渡辺:療育手帳をお持ちの方などは金銭管理だけ難しいという方は金銭管理だけしてもらって、あとの生活はご自身である程度される方もおられます。
神戸:なるほど。権利擁護という難しい言葉がありましたが、今はお一人様もいらっしゃいますし老老介護もそうですけど、その方々でもし自分が明日倒れてしまい意識がないとか、財産管理や余命の治療を含め、それが権利や養護などとなってくると思います。これも相談があって難しいと伺ったことがありました。
渡辺:そうですね。ご家族が本当にいらっしゃらないのか何親等まで調べるという決まりは無いんですが、ある程度その方に関わっているご家族やお知り合いの方は一応関係機関で当たります。
神戸:生活のお金の工面に関しては専門家に繋ぐことはできたとしても、お金を貸すことはしませんし銀行などには繋げないけれど、本当に困っていたら行政や社会福祉協議会などの相談窓口には繋ぐことができる。ケアマネージャーは解決するところではない。というまとめ方で大丈夫ですか?
渡辺:そうですね。
神戸:なるほど。介護保険のサービスはケアマネージャーを含め、使い勝手がよいわけではなく、地域のネットワークを使いながらアイデアを出したりコーディネートをすることはできるけれども、やって当たり前という形で全てをケアマネージャーさんに任せることは難しいしお受けできない。ということですね。
渡辺:そうですね。ケアマネージャー自身が壊れてしまいますので。
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ケアマネージャーは地域のネットワークを活用し介護をスムーズに行っていくサポート役。
いざ介護となると、不安な気持ちや心配が重なり、どうしても誰かに頼りたくなってしまいます。ですが、ケアマネージャーは“なんでも屋”ではありません。
介護にまつわる仕事のそれぞれの役割を事前に知っておくことで、ケアマネージャーさんに無理をさせずトラブルも未然に防ぐことができます。
介護が必要になったらまずは地域の包括支援センターを訪ねてみましょう。そうすることでケアマネージャーをよりよく頼り、望む介護をする体制・ネットワーク作りを前に進めることにつながるはずです。
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