今日からできる!嚥下障害の食事サポート|食事中に親がむせてドキッとしたら(後編)

「食事中の高齢の親に、むせがたびたび見られるようになった」といった不安を感じながら、在宅介護をしておられる方も多いかもしれません。むせは親自身が飲み込みにくさを感じているサインの可能性があります。

今回は、食べものを飲み込みにくくなる高齢者の嚥下障害について、前編と後編の2回シリーズでお届けします。

後編では、実際に医療に関わるスタッフが行っている準備や工夫をもとに、嚥下障害のある親の食事をサポートするコツや、誤嚥が起きたときの対処方法ついてご紹介します。親に食事を楽しんでもらい、在宅介護の不安や負担を減らす食事介助のヒントを、一緒に見つけていきましょう。

今日からできる食事サポートのコツ

親に嚥下障害があり、食事介助が必要な場合は、食事の前に適切な準備を整える必要があります。食事介助の流れにあわせて、主に5つのポイントを理解しておきましょう。

1. 食べる環境を整える

親が「ながら食べ」をせず、食べることに集中できる姿勢を保てるようにします。椅子に座る場合は、足の裏を床につけて姿勢を安定させると、飲み込むための力が入りやすくなります。

ベッド上で食事をする場合は、ベッドを45度から60度を目安に傾け、首が軽く前屈するように枕で調整します。ただし、嚥下障害や体の状態によって最適な角度は異なります。親にとって一番安全に食事ができる角度を、リハビリスタッフや看護・医療の専門スタッフに相談して確認してもらいましょう。

2. 食べるペースと一口量を調整する

若い頃から、早食いが習慣になっている方の食事介助には注意が必要です。飲みこめていないのに、ご自身でどんどん口の中に詰め込んでしまい、むせたり、最悪の場合は窒息したりすることがあるので注意してください。

「ごっくん」と飲み込むのを確認してから、次の食べものを口に入れることが大切です。ペースを意識し、間を置く工夫をしてみましょう。

また、嚥下障害がある場合は、口に運ぶ食べ物の量が多すぎると、1回では飲み込めないことがあります。何度も嚥下しているうちに誤嚥してしまうことがあるので、ティースプーン1杯ずつ口に入れるようにしましょう。

「ごっくん」と嚥下して、のどぼとけがしっかりと上下に動くことを確認してください。これが飲み込みのサインです。親の食べるペースに合わせて、急がせることなく食事介助をするように意識しましょう。

3. 食材の選択と料理の工夫

親が無理なく食べられるように、嚙む力や飲み込む力に合わせて食材や調理法を選ぶことが大切です。

さらさらとした液体は、嚥下のタイミングがずれやすく、むせにつながることがあります。お茶や味噌汁を飲み込むときに頻繁にむせる場合は、とろみをつけてみましょう。粘度が高すぎると飲み込みにくくなるため、「とろみ剤」を活用する際は、ポタージュ状を目安に少量ずつ使用してみましょう。

また、パサパサしたもの(パンやいも類)や、パラパラしたもの(ひき肉や焼き魚)は、口の中で散らばりやすく誤嚥を招きます。その場合は、あんかけやマヨネーズを和えることで「まとまり」ができると、格段に飲み込みやすくなります。 

しっかり蒸したり加熱したりしてやわらかく仕上げる、水分を含ませて口の中でまとまりやすくするなどの工夫をしてみましょう。

4. 介護食を賢く取り入れる

毎回、飲み込みやすい食事を手作りすると、ご家族の負担が大きくなることがあります。時には、市販の介護食を上手に取り入れることも、無理のない介護を続けるための選択肢の一つです。

ドラッグストアなどで販売されている「ユニバーサルデザインフード(UDF)」マークがついたレトルト食品は、とろみの具合や固さが段階別に分けられており、栄養バランスも考えられています。嚥下障害の程度に合わせて、やわらかさも異なっているため、親の状態に合わせて活用できます。

5. のどのお掃除にゼリーを使う

食事の途中や食後に、半固形のお茶ゼリーや、市販の水分補給ゼリーを一口食べてみるのもおすすめです。

高齢になり飲み込む力が弱くなると、食べた後にのどに食べ物のかすが残っていることがあります。つるんとしたゼリーを食べると、ゼリーがほうきのように食べ物のかすを絡めとり、胃まで運んでくれます。これによって食後の咳やゴロゴロ声を防ぐこともできます。

ただ、嚥下の状態や安全な食事方法は、人によって大きく異なります。親が食事をとるときの姿勢や、食べ物のとろみの強さに少しでも不安を感じたら、信頼できる医療や介護の専門家に相談しましょう。無理をして介護を続けず、専門家による嚥下評価(飲み込みの評価)を受けることをおすすめします。

むせない誤嚥に要注意!もしものときの対応方法

誤嚥が起きたらどうする?むせたときの対応法

親が激しくむせているとき、慌ててお茶を飲ませたり、背中を叩いたりしていませんか?まずは親に、お辞儀をするように少し前かがみになってもらいましょう。優しく背中をさすり、親が咳を出し切り、落ち着くまで見守りましょう。

むせは、食べ物や唾液が誤って気管に入ったときの防御反応です。無理に食事を続けず、一旦呼吸が整ってから再開するようにします。万が一呼吸が止まったり、チアノーゼが出たりした場合は、窒息の恐れがあるため、救急車を呼ぶなどの緊急対応をしてください。

「むせない誤嚥」は要注意!見逃さないでほしいサインとは?

親がむせていないからといって、安全に食事ができているとは限りません。のどの筋力や全身状態が弱ってくると、咳込む力が低下し、肺に食べ物が入っても咳反応が出ない場合があります。むせない誤嚥のサインにも注意を払いましょう。

次のような症状が数日続く場合は、医療・介護の専門スタッフやケアマネジャーに早急に相談してください。

▢むせはないが、食事中に声の変化がある
▢だんだん元気がなくなり、食後に痰が増えてきた
▢排泄状況は変わらないが、原因不明の微熱が出るようになった

食事の準備体操と口腔ケア

嚥下障害や誤嚥の予防には、お口の準備体操や口腔ケアが重要な役割を果たします。家族みんなで関わりながら、予防に取り組みましょう。

楽しみながらできる食事前の「お口の準備体操」

嚥下・呼吸・発声は、同じ「口」「のど」を共有しています。「しっかり息を吐けること」

「大きな声ではっきり話すこと」は、しっかり咳を出して異物を吐き出すことにつながります。食事の前にちょっと遊びを含んだお口の準備体操を取り入れてみましょう。 

<お口の準備体操>
・「パ・タ・カ・ラ」とはっきり発音する:唇や舌の動きが滑らかになり、唾液が出やすくなります。
・「おーい!」「いただきます!」と大きな声を出す:声を出すことは、吐き出す力につながります。
・「ぷーっ」と頬を膨らませるにらめっこ:口を閉じる力を鍛え、食べこぼしを防ぎます。
・「あっかんべー」と舌を出す:舌を出したりひっこめたりで舌の動きを促します。

「お口の準備体操」というと、高齢者の中には嫌がる方もいますが、 孫や家族と一緒に「にらめっこ」や「あっかんべー」などをしながらおしゃべりをすると、抵抗感なく取り組めます。遊びの感覚で取り組むことで次第に笑顔になり、顔や口周辺の筋肉がほぐれてくるため、おすすめです。

参考:日本歯科医師会ウェブサイト

お口を清潔に保つ「口腔ケア」の重要性

食前に口の中を刺激して湿らせることで、飲み込むための嚥下スイッチが入りやすくなります。また、食後に歯磨きや入れ歯の洗浄を徹底し、口の中に食べかすを残さないようにしましょう。寝ている間に、細菌が肺に入り込み、肺炎になるリスクを大幅に減らしてくれます。

誤嚥と肺炎予防につながる食前・食後の口腔ケアは、おいしく食べるための土台づくりです。

親が高齢になり、嚥下障害があるとしても「口から食べる」楽しみを持ち続けてもらうために、家族でできるサポートを実践してみてくださいね。

まずは、親の食事中の様子を注意深く観察してみましょう。もし、食事で不安なことがあれば「いつ、何を食べているときに、どんな症状があるのか」といった、食事メモをとっておいてください。

普段、介護をしている家族だから見つけられる変化があります。数日間の様子をメモして、医療や看護・介護の専門家に相談してみましょう。メモは医療や介護に関わるスタッフの手がかりとなり、非常に役立ちます。

しかし、嚥下障害の状態や安全な姿勢は、その方の筋力や抱えておられる病気によって、一人ひとり異なります。今回の記事の方法はあくまで一般的な目安なので、むせが改善しないなど少しでも不安を感じた場合は、言語聴覚士(ST)などの専門家に、嚥下評価(飲み込みの評価)を依頼するのがおすすめです。

ご本人に合った最も確実な「オーダーメイドの介助法」を専門家から教えてもらい、安心安全な介護を行っていきましょう。

介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。

「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。

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