高齢者にとって、ペットは生きがいや心の支えになる大切な存在で、日々の暮らしを豊かにしてくれます。しかし、高齢者が自宅でペットを飼うにはさまざまな課題が伴います。高齢の親に介護が必要になった時や急な入院時などに、残されたペットはどうすればいいのでしょうか。
今回の記事では、高齢者がペットと暮らすメリット、高齢者とペットに関わる課題、その課題の対処法をご紹介します。
高齢者とペットの関係とはどんなもの?
ペットとの暮らしは、高齢者にどのような良い影響を与えるのでしょうか。
ペットが高齢者にもたらすメリット
・規則正しい生活
ペットは自分で餌の準備や散歩などができません。飼い主の「自分がお世話をしなければいけない」という使命感は、日々の生活の張りにつながります。毎日決まった時間にペットの世話をすることで、自然と規則正しい生活が習慣になります。
・運動量の増加
犬などの散歩が必要なペットと暮らせば、毎日の散歩が自然な運動習慣になります。億劫に感じていたウォーキングも、ペットと一緒なら楽しみながら続けられるのではないでしょうか。
一方で、散歩の必要がない猫などのペットも高齢者の運動量の増加につながります。例えば餌の準備、トイレ掃除、遊び相手になるなど、ペットがいることで身体を動かすきっかけが増えます。何もすることがなくじっとして過ごすより、確実に運動量は多くなります。
・社会との交流の増加
犬などのペットとの散歩は、高齢者が外出する機会を与えてくれます。外に出ると、昔からの友達に会うこともあれば、ペットがきっかけで初めて生まれる出会いや交流もあります。さまざまな動物を飼っている人と、ペットの話題をきっかけに話が盛り上がることもあるでしょう。ペットを飼うことは、ペットとふれあうだけではなく、周りにいる人々とのつながりも深めることにつながります。
・孤独感の軽減
ペットとの暮らしは、高齢者の孤独感を軽減させてくれます。言葉は通じなくても名前を呼ぶと犬や猫、小鳥なども反応してくれます。このような些細なコミュニケーションも一人暮らしをしている高齢者にとってはとても嬉しいことです。自分を必要としてくれるペットの存在は、高齢者に大きな安心感を与えてくれるでしょう。
・介護予防にも
犬や猫の世話をすることは、生きがいや喜び、心の健康をもたらしてくれます。活力が生まれると、規則正しい生活や外出をする意欲が湧き、趣味に取り組む気力も出るなど生活に良い影響を与えてくれます。
高齢者とペットの暮らし~見えてくる課題とは~
高齢者にとって、ペットは日々の暮らしをともにするかけがえのない存在になることでしょう。一方で、高齢者がペットと暮らしていくには課題も少なくありません。高齢者とペット、お互いに無理なく暮らしていくために、その課題もしっかりと理解しておきましょう。
高齢者がペットと暮らす3つの課題
1. ペットの世話ができなくなることがある
高齢になるにつれ、心身ともに活力が低下してしまうのは自然なことです。高齢者は、急な入院や介護が必要になる場合があるため、ペットの十分な世話ができなくなってしまうことがあります。高齢の親がペットより先に亡くなってしまうこともあるかもしれません。けれど、餌の準備やトイレ掃除など、ペットの生活は続いていきます。ペットの世話ができなくなった時、親の代わりに誰が世話をするか、ペットシッターなどに頼むのかなど、事前に考えておく必要があります。
2. ペットの飼育費用
ペットと暮らしていくにはお金がかかります。毎日の餌やトイレシートのような日用品の他に、去勢・避妊手術代、ワクチン接種代などの医療費も避けることはできません。ペットも私たちと同じように体調を崩し、急に病院に行かなくてはならないこともあります。動物病院に行くとなれば、高齢の親がペットを連れて病院まで行けるのかという新たな問題も出てきます。
親にペットを飼う経済的な余裕があるのか、もしお金がなくなったときはどうするのかなど、慎重に考えてみてください。
3. ペットの高齢化
犬や猫の平均寿命は約14歳から15歳と高齢化が進んでいます。そのためペットも人間と同様に、病気や高齢化により介護が必要になる場合が増えています。ペットが高齢化し介護が必要になる時、同様に親も年齢を重ねていますよね。その時、高齢の親にペットの介護ができるのかは難しい問題です。高齢の親が例えば80歳になったときにペットは何歳になるのか、早いうちから考えてみてはいかがでしょうか。
課題が出てきたら、その都度話し合いをしましょう
ご紹介した課題以外にも、高齢になり判断力が低下すると、ペットとともに暮らしていくなかでさまざまな問題が出てくることもあります。
寂しさから世話ができないほどの猫を飼い始める、入所予定の高齢者施設では飼育できないがペットと離れたがらないなど、事前に考えていなかった問題が出てきたら、親本人や家族と話し合い、お互いにとって最適な解決策を考えていきましょう。
動物愛護センターをはじめ、動物の保護などの活動を行っている団体や、高齢者の味方である地域包括支援センターに相談してみることも解決につながるかもしれません。
高齢者とペットが安心して暮らすためにできること
高齢者とペットがお互い幸せに暮らすために、課題をしっかり理解し、もしもの時のために備えておきましょう。
ペットの世話ができなくなったときのために。もしもの時の5つの備え
1. 一時的な預け先を探しておく
高齢者は、急な入院などでペットの世話ができなくなる場合があります。そんな時に、一時的にペットを預けられる場所があると安心ですよね。高齢者の家族の家、ペットホテルなど預けられる場所を探しておきましょう。
また、かかりつけの動物病院をつくっておくことも重要です。一時的に預かってくれる病院もあります。高齢の親が世話ができなくなることがあるかもしれないという事情を話し、預けられるか事前に聞いておきましょう。
2. 代わりに世話をしてくれる人を探しておく
ペットの世話を代わりにしてくれる人を探しておきましょう。高齢の親と離れて暮らし、遠距離介護をしている方は、長期間ペットの世話をすることは難しいかもしれません。高齢の親の近くにいる友人や近所の人など、ペットの世話を頼めそうな人がいるのか考えておく必要があります。
代わりに世話をできそうな人がいない場合、ペットシッターや動物の保護団体など、有料で世話をしてくれる人を調べておきましょう。動物の世話に慣れているプロに頼む場合、ペットを可愛がっている高齢の親も安心して預けられるのではないでしょうか。ペット自身にとってもストレスが少ないかもしれません。
また、ペットを飼育できない高齢者施設に入居する場合や、飼い主が亡くなってしまった場合、ペットはどうなるのでしょうか。誰がペットを引き取るのか、引き取ってくれる団体などがあるのかを調べておきましょう。
3. 飼い主以外の人にも慣れさせておく
飼い主以外の人に慣れていないペットは、預けることや他の人に世話をしてもらうことが難しいです。餌を食べなかったり、粗相をしてしまったりが続くと大変です。ペットのストレスは最小限に抑えてあげたいですよね。そのため、普段から飼い主以外の家族や友人にも慣れさせておきましょう。ペットのストレスにならない程度に、ペットホテルに預けてみる、ペットシッターを利用してみるなど、事前の準備があると、いざというときに安心です。
4. ペットと一緒に入居できる高齢者施設を探しておく
高齢者施設に入居することになり、ペットと暮らせなくなる可能性もあります。最近は、ペットと一緒に入居できる高齢者施設が増えてきています。高齢者施設に入居後もペットと暮らしていけたら幸せですよね。飼い主が亡くなってしまった場合、ペットはそのまま世話を続けてもらえる施設もあります。まだ施設数は少ないですが、事前に探してみてはいかがでしょうか。
5. 高齢者がペットを飼い始めるなら、成犬、成猫がおすすめ
子犬、子猫は見ているだけでもとても可愛いですが、高齢者が新たにペットを飼い始める場合、成犬、成猫のような大人の動物をおすすめします。子犬、子猫は体調が安定しておらず、 必要な世話も多いため、大人の動物に比べて飼育が難しい場合が多くあります。大人の動物は大きさや性格をある程度は把握できるため、親に合ったペットを選ぶことができます。
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ペットは高齢者に大きな安心感や幸せな気持ちだけではなく、規則正しい生活や社会との交流のきっかけなど、さまざまなメリットをもたらしてくれる存在です。けれど、メリットがあるからといって高齢者が容易にペットを飼うことはおすすめしません。動物にも私たちと同じ命があります。高齢の親にペットの世話ができるのか、ペットがいることで日々の生活が豊かになるのかを吟味したうえで、ペットを迎えることを考えてみてください。
一方で、高齢者はペットを飼ってはいけないということも決してありません。長年連れ添ってきたパートナーが亡くなり、残されたペットと一人暮らしをしている高齢の親が心配な方も多いのではないでしょうか。高齢者とペットがお互いに無理なく、幸せに暮らしていけるよう、高齢者ご本人や周りの家族が、しっかりと課題を理解し対処していきましょう。
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