親が高齢になり、家の中の少しの段差につまずいたり、階段の上り下りに苦労したりする様子を見て、安心な住まいを見つけてあげたいと考える方も多いのではないでしょうか。
私の離れて暮らす義母は、要介護認定を受け、昨年から介護施設に通うことになりました。住まいについては、介護付き有料老人ホームを勧めてみましたが、義母は「長年住み慣れた場所や家を離れたくない」という思いを持っていました。そのため、近くに住む義弟に様子を見てもらいながら、一人暮らしをすることになりました。
義母に限らず、高齢になっても自宅で過ごしたいと考えている方は多いようです。実際、内閣府の「令和2年度 高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」によると、「現在のまま、自宅に留まりたい」と答えた高齢者は、男性41.2%、女性34.1%に上ります。親が安心して暮らせる住環境の整備が重要だということがわかります。
今回は、介護や医療を必要とする高齢者が、住み慣れた住まいで、自分らしい暮らしを続けるために、遠距離介護でもできる住環境整備のポイントを紹介します。
参照:内閣府|「令和2年度 第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果(概要版)」
親の部屋の位置はどうしたらいい?
高齢者に適した部屋の位置を選ぶ際の、3つのポイントを見ていきましょう。
1. 訪問介護サービスを受けやすい
介護サービス利用時の家族のプライバシーに配慮するため、部屋は、玄関の近い位置にして、サービス提供者がなるべく他の居室に入らなくても良いようにしましょう。玄関とは別に勝手口を設けるのも良いでしょう。
2. トイレ、洗面所、お風呂に近い
夜間など、頻繁にトイレに行く必要がある場合、部屋からトイレまでの距離が近いことは非常に重要です。同じように洗面所やお風呂も、足腰が弱っている場合は、移動距離が短いほど負担を軽減できます。高齢になり足腰に不安を感じている場合は、日常生活で移動する距離がなるべく短くすむ部屋で過ごすのが良いでしょう。
3. 日当たりが良く、換気しやすい
日中は日光が差し込み、適度に換気ができる部屋を選びましょう。日当たりが良いと、高齢者の気分転換や生活リズムの維持にもつながります。また、適度な換気は感染症予防にもつながります。
これらの条件をすべて満たすことが難しい場合は、優先順位をつけて、できるだけ条件に合う部屋を選びましょう。
また、在宅介護を行う場合は、家族の目が届きやすい部屋であれば、何かあったときにすぐに対応できます。リビングや家族の居室に近い場所を選ぶと、異変に気づきやすく安心です。
室内のレイアウトで工夫することは?
高齢者が暮らしやすい環境にするためには、室内レイアウトも重要になってきます。安全で過ごしやすい空間を作るために、次の4つのポイントを確認してみてください。
1. 広い動線を確保する
介護居室の面積の目安は6〜8畳程度が適切だと考えられます。車椅子や歩行器を使用する場合も考えて、家具の配置に注意します。スムーズに入退室できるよう、出入口は引き戸にした方が良いでしょう。
2. 段差をなくす
わずかな段差でも、つまづきや転倒の原因になります。できる限り段差をなくし、やむを得ない段差には、段差を解消するスロープなどを活用しましょう。
3. 手すりを設置する
廊下やトイレ、お風呂などに手すりを設置しましょう。手すりがあることで、移動や座ることが楽になり、転倒防止にもつながります。転倒防止には、居室の床材を滑りにくいクッション性のあるものにすると望ましいといえます。
4. ベッドの配置を工夫する
高齢になりベッドで過ごす時間が長くなっても、窓から外の景色が見える場所や、自然光や照明が入りやすい場所にベッドを配置することで、快適な生活を保つことができます。
また、介護が必要になったとき、介助者がアクセスしやすい場所にベッドを移動できる状態にしておきましょう。訪問診療で、医療機器が持ち込まれることも想定し、ベッドの近くにコンセントの差し込み口を確保し、抜き差ししやすい位置になるよう配慮しておくと安心です。
室内のレイアウトを工夫するとスムーズな動作が可能になり、高齢者と介護をする家族やスタッフにとって、安全で快適な室内環境を実現できます。場合によっては介護保険や、行政による補助金などを使ってバリアフリーリフォームも可能なので、行政の窓口や、ケアマネジャー等専門家に相談してみることをおすすめします。
家の中や部屋にあると役立つ設備やグッズ
介護が必要になった場合、生活に役立つ福祉用具などを室内に設置すると便利です。高齢者の生活に役立つ設備やグッズをご紹介します。
・介護用ベッド
高さ調整やリクライニング機能が付いた介護用ベッドは、起き上がりや寝返りをサポートし、介助者の負担も軽減します。
・ポータブルトイレ
夜間など、トイレまでの移動が難しい場合に便利です。部屋にポータブルトイレを置くことで、移動の負担を減らすことが可能です。
・見守りカメラ
遠距離介護の場合、見守りカメラがあると、親が室内で過ごす様子をスマートフォンなどで確認でき安心です。
・センサーライト
夜間、トイレに行くときなどに、自動で点灯するセンサーライトがあると、足下を照らして転倒を防ぎます。
・転倒防止マット
ベッドの周りやトイレ、お風呂の入り口など、転倒しやすい場所に設置することで、転倒時の衝撃を和らげます。
・ヒートショック対策グッズ
冬場、風呂場や脱衣所での温度差によるヒートショックを防ぐために、暖房器具などを活用しましょう。
・緊急時に家族や事業者につながる機器の設置
<緊急通報タイプ>
携帯しているペンダント型の機器のボタン等を押すと、契約している事業者や警備会社に連絡が行き、自宅まで駆けつけてもらえます。家族が同居している場合、高齢者がボタンを押すと、家族のいる部屋のブザーが鳴る仕組みの機器もあります。
<電話相談タイプ>
契約している事業者に、高齢者が電話で相談することができます。相談内容によって、自宅まで事業者が駆けつけ、対応するサービスも提供されています。
<安否確認センサータイプ>
居室、トイレ、浴室などに安否確認センサーを設置し、一定の時間の反応がない場合、契約しておいた事業者や家族に連絡が届きます。カメラでの見守りに比べて、高齢者のプライバシーが守られるため、親も機器の導入に抵抗が少ないでしょう。
高齢者の見守りについては、こちらの記事をご覧ください。
離れて暮らす親の見守りをIT化!事例やポイント、おすすめ機器を紹介
介護の設備やグッズは、安全性、使いやすさ、耐久性など必要に応じてケアマネジャー等専門家と相談しながら用意しましょう。
私の義母の場合も、通所している介護施設職員と相談して、福祉用具のレンタルを活用することで住環境を整えました。介護保険の「福祉用具貸与」の対象となったので、費用を抑えることもできました。
<参考>
厚生労働省|介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? 福祉用具貸与」
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介護を必要とする高齢の親が住み慣れた家で安心して暮らすには環境の整備が必要です。部屋の位置やレイアウトを工夫し、介護に役立つ設備やグッズを使用することで、親は快適に過ごせ、介護を行う家族の心労やサポートの負担を軽減することにもつながります。
特に遠距離介護の場合は、親がどんなことに困って、どこを改善したらいいのか、つかみにくいこともあります。親と密にコミュニケーションをとることや、日頃親の介護を担っている信頼できる専門家に相談することで、親の健康状態や、ライフステージの変化を把握することが大切です。
部屋の位置や室内のレイアウトを整えて、高齢になっても親が快適に安心して過ごせる環境を作りましょう。
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