離れて暮らす親が高齢になり、生活状況を心配している方も多いのではないでしょうか。頻繁に連絡を取っていても、実際に顔を合わせることが少ないと、健康状態や生活のちょっとした変化を見逃してしまうこともあるかもしれません。
一方で、遠距離介護の場合には費用や時間、体力の負担がかかるため、親からすると「子どもに迷惑をかけたくない」という思いを持っておられるかもしれません。親が安心して過ごすことができ、離れて暮らす子どもも負担なく遠距離介護を続けられる住まいの形を見つけてみませんか?
今回は「離れて暮らす親が安心して暮らせる住まいを探している。生活面で見守りをしてもらいたい」と考えている方に、「居住サポート住宅」と「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」について解説します。
「居住サポート住宅」とは
単身世帯の増加や持ち家率の低下を背景に、今後は一人暮らしの高齢者世帯がさらに増加すると見込まれます。それに伴い、賃貸住宅への円滑な入居を支援するニーズも一層高まっていくでしょう。
こうした状況を踏まえて、2024年に「住宅セーフティーネット法」が改正され、「居住サポート住宅」が認定されました。都道府県が指定した「居住支援法人」が、安否確認や見守り、福祉サービスとの連携を担います。
「居住サポート住宅」では、次のようなサポートが想定されています。原則として、居住者がサポート料を負担することになります。
・ICT、IOTを活用した安否確認
家電等とインターネットをつなげる人感センサーなど、IOT技術を活用し安否確認や異変がないかを確認します。
・訪問などによる見守り
居住支援法人の職員による見守りを行います。
・福祉サービスへのつなぎ
居住支援法人が、高齢者を自立支援や介護、福祉サービスへつなぎ、適切なサービスを受けられるようサポートします。
「居住サポート住宅」であれば、見守りに加え福祉サービスにも適切につないでもらうことができるため、孤独死や孤独・孤立のリスクも減ります。高齢の親にとっても、離れて暮らす子にとっても安心できる住宅の選択肢の一つといえるでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは
サービス付き高齢者向け住宅とは、どんな住まい?
高齢化が急速に進む中で、高齢の単身者や夫婦のみの世帯が増加しており、介護・医療と連携して支援するサービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高住」という)が、2021年「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」の改正により創設されました。
サ高住は、バリアフリー設計の賃貸借住宅で介護認定の有無は不要で、原則60歳以上であれば、入居の対象となります。「訪問介護などの介護サービスは必要無いが、誰かに見守ってほしい」という場合にも利用できます。キッチン、浴室、トイレは基本的に各部屋に設置されており、ご夫婦で入居可能な物件もあります。
サービス付き高齢者向け住宅で、受けられるサポート
サ高住では職員が定期的に各居室を巡回し、安否を確かめる「安否確認サービス」と、買い物の代行や、「生活相談サービス」があり、入居者の日常生活をケアの専門家がサポートします。
また介護が必要になった場合には、外部の介護サービスを柔軟に利用することもできます。例えば、外部の訪問介護やデイサービスを利用することも可能です。中には、介護職員が介護保険サービスを提供している施設もあります。ただし病院の付き添いや食事の提供なども含め、各施設によって提供しているサービスが異なるため注意が必要です。
親に適したサービス付き高齢者向け住宅を見つけるポイント
サ高住には、自立して生活できる高齢者から、介護が必要な方まで幅広く、居住することができます。しかし、入居後に介護状態が重度になった場合は、別のサ高住や介護施設などに住み替えなければならない可能性もあります。また認知症の程度によっては入居できない施設や、看取りを行っていない施設もあり、事前に調べておくことが大切です。
サ高住を運営する主な事業者は、医療法人、社会福祉法人、株式会社となっています。サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムでは、全国の施設の検索もでき、利用できるサービスや費用、施設の特色を知ることができます。体験入居が可能な場合もありますので、親と話し合い希望にあった住まいを見つけていきましょう。
参照:国土交通省|「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」
高齢の親の住まいの現状と、遠距離介護をしている家族ができるサポート
高齢者の住まいの現状
内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、2025年には団塊の世代の方たちが75歳以上の後期高齢者になり、2041年には人口の約25%を後期高齢者が占めると見込まれています。急激な高齢化が進む中、厚生労働省の「世帯構成の推移と⾒通し」では、2040年に18.6%が65歳以上の単身高齢世帯になると予想しており、住まいの確保に困難を抱える高齢者の増加も懸念されます。
また同白書では、65歳以上に実施した調査の結果、現在の住宅の問題点について、老朽化や防災・防犯面での不安等を約3割の人が挙げていることも指摘しています。災害時に備えて、家具の転倒を防止するための備えや、避難が必要になったときの手立ても考えておく必要があります。
遠距離介護をしている家族ができるサポート
遠距離介護をしている方の中にも、離れて暮らす親の住まいについて心配している方も多いのではないでしょうか。介護が必要になったときや災害時にも、親が安心して暮らせる住まいについて家族で考えてみましょう。
まずは親の希望や状況を把握し、適切な住まいやサービスの情報を集めることが大切です。電話やメールなどで連絡を取り、定期的に訪問して親の様子を確認しておくと、住まい選びの際にも安心ですね。
高齢者の住まい選びのポイント
・親の希望や状況をよく聞く
・専門家(ケアマネージャー、介護サービスの職員等)に相談する
・経済状況を考慮し、必要な場合は、住居費や介護費用などの経済的支援を行う
・親と一緒に住まいの見学に行く
・介護が必要になった場合のことを考え、住まいがバリアフリー設計であるか確認する
・災害時、緊急時の対策ができているか、どのようなサポートを受けられるか確認する
・住まいのある地域の情報や介護サービスを調べておく
今回のコラムでご紹介した「居住サポート住宅」と「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」について、以下の表にまとめました。住まい選びの参考にしてみてください。

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高齢化が進む日本において、住まいの問題は、個人の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。高齢者が安心して暮らせる住環境を整備することは、高齢者の生活の質を高めるだけでなく、社会全体の活性化にもつながると考えられます。
居住サポート住宅やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢の親の住まいとして、新たな選択肢となる可能性があります。それぞれの特徴や注意点を理解して、家族や専門家と話し合いながら、親の状況や希望に合わせて最適な住まいを選ぶことが大切です。
介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。
家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。
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