在宅介護の介護者の中には、腰痛に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。介護は介護者にとって身体的な負担が大きく、腰痛が悪化した場合には在宅介護が難しくなることが考えられます。そして、腰痛は介護だけではなく介護者の日常生活にも影響が出てしまいます。
今、在宅介護で腰痛に悩んでいる方も、これから在宅介護が始まる方も、腰痛についてよく知っておくことで、できるだけ腰痛の発生や悪化を防いで、在宅介護を少しでも長く続けていきたいものです。この記事では介護による腰痛について、予防策や腰を痛めない正しい介護姿勢、頼れる外部サービス等についてご紹介します。
介護で腰痛になる理由とは
では、なぜ介護によって腰痛になる人が多いのでしょうか?原因の一つは、腰の筋肉に負担がかかる動作を繰り返し行ってしまうからです。介護で行う動作で次のような姿勢や動きが腰への負担を大きくしています。
・中腰になる
・腰をひねる
・重いものを持ち上げる
・前かがみになる
などになります。これらの動作は、介護における下記の介助に多く含まれます。
・おむつ交換
・トイレ
・入浴介助
・食事介助
・ベッドから車いすへの移動などの移乗介助
毎日腰に負担のかかる動作をしていたら、腰痛になるのも無理はありません。重度な腰痛になると、在宅介護を続けていくのが困難になる場合があります。身体的に無理せず在宅介護を続けていくために、普段から腰痛予防を心がけましょう。
在宅介護で腰痛を予防するには
日常的にできる腰痛予防を5つご紹介します。
1.コルセットや腰痛ベルトの使用
腰への負担が大きい介助を行う際に、コルセットや腰痛ベルトを付けることで、腰の筋肉への負担が軽減されます。
ただし長時間装着すると腹筋や背筋の筋力が衰え、腰痛が酷くなるリスクもあります。必要なときだけ着用するように心がけましょう。
2.介護機器の使用
身体的な負担が大きい介助の動作を補助してくれる介護機器があります。
介護が必要な親が車椅子を使っている場合、ベッドと車椅子の間などの移乗に役立つのがスライディングボードです。親は座った姿勢のまま車椅子から移乗できるため、介助者にかかる負担が軽減されます。
またベッド上での体の移動や体位交換の介助が楽にできるスライディングシートも便利です。レンタルもできるため、まずはお試しで取り入れてみてはいかがでしょうか。
3.バランスの良い食生活
腰痛の予防と治療には、食事も大切です。
・ビタミンB1(豚肉、ナッツ、大豆、ほうれん草など):筋肉の疲れをやわらげる働き
・ビタミンE(卵、大豆、アーモンド、かぼちゃなど):血流の改善に役立ち、筋肉の緊張をとる働き
・たんぱく質(肉、魚、卵、乳、豆、穀類など):痛みをやわらげるのに役立つ筋肉の強化
毎日の食事に意識して取り入れるようにしてみましょう。
4.介護環境の見直し
自宅の環境は介護しやすい環境になっていますか?ベッドの高さが低く、介助しにくい場合はベッドの高さを上げましょう。
ベッドの周りやお風呂場などは、スペースを広くとることも大切です。余計な物があると、物を避けるため無理な姿勢で介助する必要が出てくるかもしれません。
5.ストレッチと正しい姿勢
厚生労働省の「今日の腰痛予防対策マニュアル」に腰痛予防の「これだけ体操」が紹介されています。
簡単にできる体操で、息を吐きながら、3秒間骨盤をしっかり押すだけです。おしりの上あたりの骨盤に手を当て両肘を近づけながら、骨盤を前に押し込んでいきましょう。これを1〜2セット行ってください。
移乗の介助や、前かがみの作業の後、重いものを持った後、座りっぱなしだった後におすすめの体操です。ほかにも太ももやふくらはぎを伸ばすものなどさまざまなストレッチがあります。隙間時間にその場で簡単にできるので、ぜひやってみてください。
介護するときに気を付けること
介護するときに身体への負担を減らすため、正しい姿勢をとることがとても大切です。
厚生労働省の「今日の腰痛予防対策マニュアル」には、基本姿勢としての「パワーポジション」が紹介されています。肩幅に足を開いて立ち、背筋を伸ばして骨盤を前に倒すイメージで上体を倒します。そしておしりを後ろに出した後、膝を適度に曲げましょう。少し胸を張り、重量挙げ選手がバーベルを持ち上げる時の姿勢をイメージしてください。
この姿勢を介護の移乗や前かがみの姿勢を行うときに心がけてみましょう。猫背や無理な体勢でいるより、腰への負担が少なくなります。
その他にも、介助の際に気を付けるポイントがあります。
1.身体を近づけて介助する
介助する親が体から遠いところにいると、腰への負担がその距離に比例して大きくなります。身体を近づけることで、重心が近づいて安定して介助することができます。
2.同じ作業や姿勢は長く続かないよう変化をつける
同じ姿勢でいると血流が悪くなり、腰にも大きな負担となります。動きに変化をつけて、血流をよくしましょう。
3.低い姿勢になるときは膝を曲げる
前傾や中腰姿勢になることは避けて、パワーポジションを意識しましょう。
4.身体をひねった状態での介助はできるだけ避ける
食事介助の時など親の横に座り、身体をひねった姿勢で食事介助することは、腰への負担となります。ひねるのではなく、体の向きを変えて介助しましょう。
5.可能であれば複数人で介助する
一人で介助を行うと、抱え上げ、腰のひねり、前かがみ、中腰などの無理な姿勢が生じ、腰部に特に強い負担がかかります。可能であれば複数人で介助をすれば負担が軽減します。家族に協力してもらえる場合は、できるだけ手伝ってもらいましょう。
気を付けていても腰痛になってしまった場合は、次のことを心がけましょう。
1.腰痛になったらまずはエビのような姿勢で横になる
急な腰痛になった場合はまず横になり、エビのような体勢になりましょう。少し楽になったら、カニのような横歩きで移動してください。おなかに力を入れて少し前かがみになりゆっくり歩きましょう。
2. お風呂につかる
シャワーだけでなくお風呂につかり、身体を温めましょう。筋肉がほぐれ、症状の緩和が期待できます。
3.マッサージや整体へ行く
身体をほぐすことは、血流が改善し腰痛に効果的です。
4.整形外科を受診する
痛みが続く場合は整形外科を受診をしてみましょう。
外部サポートを利用してみてはいかがですか
毎日、在宅介護を続けていると、介護者にかかる負担も積み重なっていきます。定期的に腰を休めるためにも、外部サービスの利用も検討してみましょう。
・訪問介護
要支援・要介護の高齢者が、自宅で自立した生活を送ることができるようサポートをします。ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事、入浴、排せつ、衣服の着脱などの身体介護と、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助を行います。
自宅での生活を続けたままサポートが受けられ、費用を抑えられることがメリットです。
・通所介護(デイサービス)
デイサービスセンターに通い、食事や入浴などの介護サービスを受けることができます。レクリエーション活動やリハビリを行っているところも多くあります。
・ショートステイ
要支援・要介護の高齢者が施設に短期間入所し、食事、入浴、排せつの介護などを受けることができます。1〜30日程度宿泊が可能です。
・介護保険外サービス
介護保険サービスでは対応できない通院の付き添いや、親御さんの見守り、家事お手伝いなどを行えるサービスです。
弊社が行う「わたしの看護師さん」のサービスもその一つです。トイレ移動・食事・更衣、移動、入浴など腰に負担がかかる介助も、サービスを利用することで軽減できます。
「みなさんのご自宅は介護しやすい環境ですか?」「介護者自身がバランスの取れた食事ができていますか?」腰痛予防としてできることはないか、ぜひ普段の生活を振り返ってみてください。在宅介護の場合、親の介護が第一で介護者であるご自身の普段の生活のことは後回しになりがちです。ですが、介護者が動けなくなってしまっては元も子もありません。
可能な範囲で親の「全介助」ではなく「部分介助」を目指し、腰への負担を減らすことも大切です。家族や外部サービスなど周りを頼って、無理なく在宅介護を続けていきましょう。
介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。
家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。
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