忙しい日々の中でも、毎日の食事を楽しみに生活している人も多いのではないでしょうか?
生きていくうえで、何歳になっても食事は必要です。年齢を重ねても、楽しく食事の時間を過ごしたいですよね。しかし年齢を重ねると、自分で食事をとることが困難になる場合があります。その際は食事介助をうまく行わないと、高齢者にとって食事の時間が苦痛になることも考えられます。
そこで大切になってくるのが、食事のバランスです。バランスの良い食事をとることが健康に長生きすることや、さまざまな不調を防ぐことにつながります。
この記事では親の介護を在宅でされている方に向けて、高齢者の食事のバランスやカロリー、楽しく食事ができる食事介助のポイントについてご紹介します。
カロリー不足やカロリー過多になるとどうなる?
高齢者の食事では、カロリーが不足していても、多すぎても悪い影響があるとされています。その人に合ったちょうど良い食事のカロリーを意識することが大切です。毎日の食事の準備は大変ですが、カロリーについても頭の片隅に置いて食事内容を考えましょう。
日本人の食事摂取基準(2020年版)(厚生労働省)によると、65〜74歳のふつうの活動量の男性の1日に必要なエネルギー量は2400kcal、女性では1850kcalが目安です。「ふつう」とは、座っていることが多くても、立ち作業や通勤、買い物、軽い運動もする状態です。
座っていることがほとんどの場合は、男性が2050kcal、女性は1550kcalです。立ち作業が多い場合はより必要エネルギーが多く、男性は男性は2750kcal、女性は2100kcalです。
また75歳以上で自立して生活しているふつうの活動量の男性では2100kcal、女性では1650kcalと、歳を重ねるにつれて必要エネルギー量は少なくなります。自宅にいてほとんど活動しない場合は、男性は2050kcal、女性は1550kcalです。
人によって必要なエネルギー量が変わるので、必要カロリーを日頃の運動量から考えてみましょう。
・カロリー不足によって引き起こされること
カロリーが不足していると、さまざまな不調が起こりやすくなります。
1.筋肉量が減少し、転倒しやすくなる
2.骨密度が低いので、骨折の危険性が増加する
3.免疫機能が低下し、風邪などの感染症を引き起こしやすくなる
4.上記3つの症状が寝たきり状態や死につながることがある
いつまでも元気でいるために、これらの不調を起こしたくありませんよね。少しでも予防するために、摂取するカロリーは不足しないように心がけましょう。
・カロリー過多によって引き起こされること
肥満の原因は、内臓脂肪の増加や生活習慣の乱れによるものです。肥満に加え、加齢とともに筋肉量が減っていくと、転倒や骨折、ADL(日常生活動作)の低下を招きやすくなり、死亡リスクが上昇します。
肥満に関連する健康障害が死につながることもあります。しかし年齢を重ねると食欲が減ることが多いので、食べ過ぎを過度に気にする必要はありません。適切なカロリーを心がけ、健康に暮らす時間を増やしましょう。
高齢者の適切な食事のバランスとカロリーとは?
高齢者の食事では、カロリーだけでなく食事のバランスも大切です。食欲がなく、少ししか食べなかったり、好物ばかりを食べたりしていませんか?
普段の食事に偏りがないか、チェックしてみましょう。「食事バランスガイド」(農林水産省)にある理想的な食事内容と食事量の目安を、5つの料理区分に沿ってご紹介します。
ここでは1日に必要なエネルギー量を、70歳以上の方が当てはまることの多い1400~2000kcalの場合で考えます。
1.主食、生活のもとになるエネルギー源
・食事内容:炭水化物を補う、ごはん・パン・麺
・1日の摂取目安:ごはん(普通盛り)3杯程度
2.副菜、体の調子を整える
・食事内容:食物繊維、野菜・きのこ・いも・海藻料理
・1日の摂取目安:野菜料理5皿程度
3.主菜、血液や筋肉等を作り体力や免疫力等を維持する
・食事内容:たんぱく質を補う、肉・魚・卵・大豆料理
・1日の摂取目安:肉・魚・卵・大豆料理から3皿程度
4.牛乳・乳製品、骨を強くし体力を高める
・食事内容:カルシウムを補う、乳製品
・1日の摂取目安:牛乳コップ1杯程度
5.果物、貧血予防・便秘の改善などに役立つ
・食事内容:ビタミンC・カリウム等を補う、果物
・1日の摂取目安:みかん2個程度
1日の食事を思い出して、5つの料理区分がすべてとれているでしょうか?牛乳、乳製品は不足することが多いので、意識して取り入れたいですね。例えば果物を食べていなければ、毎日の食事にりんご半分を加えてみるなど、食べやすい食材からチャレンジしてみましょう。
「食事バランスガイド」には、1日の食事を書き出し、バランスの良い食事が取れているか確認できる「食事バランスガイドチェックシート」(農林水産省)もありますので、親の食事の適量を確認してみてください。
また、嚥下機能が低下した場合は、「嚥下食」を用意して安全に食事ができるようにしましょう。「嚥下食」とは、飲み込む機能が低下した人に、やわらかさや形態を調整した飲み込みやすい食事のこと。食材を柔らかくし、ペースト状やゼリー状に調理したものです。
「嚥下食」という言葉には聞きなじみがない人も、多いかもしれません。親の嚥下機能が低下したと感じたときは、ぜひかかりつけ医に嚥下食について相談してみてください。
自分で食事をするのが難しくなったら?食事介助のポイント
高齢になると身体機能の低下により、自分で食事をすることが難しい場合があります。誤嚥や窒息などのリスクが高まるため、安全に食事をするため食事介助が必要になります。
ここでは、食事介助をするときのポイントと、在宅介護ならではの食事介助のポイントを3つご紹介します。
食事介助のポイント
1.正しい姿勢をする
正しい姿勢をすることで、誤嚥のリスクを減らすことができます。椅子に座る場合は、足の裏を床につけ、腰と膝、足首を直角にしましょう。
2.介助者が横に座る
介助者が立ったままや、正面に座るとうまく介助ができず、誤嚥のリスクが高くなります。隣に座って目線を合わせて介助しましょう。
3.水分を先にとる
水分がないとむせることがあります。先に水分をとり、口腔内の食事の準備をしておきましょう。
4.一口の適切な量を考える
一口の量が適切でない場合、誤嚥のリスクが高くなります。体調に応じて、適切な量を探りながら介助しましょう。
5.親のペースに合わせる
親のペースに合わせ、飲み込んだことを確認してから次の一口を運ぶことが大切です。体調や食事のペースに合わせて介助しましょう。
6.食後に摂取量の確認と口腔ケアを行う
食事をどのくらい食べたかによって、食事量が適切か、体調の変化がないかを確認します。食後は歯ブラシ等を使って洗浄し、うがいを行います。入れ歯がある場合は、入れ歯も洗浄しましょう。
在宅介護での食事介助のポイント
1.食事に好物を取り入れる
親の好きな食べ物を取り入れ、楽しく食事できるように促しましょう。嚥下の機能の状態によっては、調理する介護者の負担が大きい場合もあります。無理のない範囲で、親の好きな食べ物を食べやすい調理法に工夫するなどして取り入れると、食事の時間が楽しみになります。
2.献立の説明をする
嚥下食の場合、ペースト状のものは、どのような食べ物がわかりづらかったり、高齢となり目が見えにくくなっているため、食べ物が確認できなかったりする場合があります。献立に加えて、調理をした際のこだわりや調理法などを話すことにより、食事がより楽しくなります。
3.かかりつけ医やヘルパーなどに体調や食事の報告をする
在宅介護に関わっている人に、日頃から体調や食事のことを話しておきましょう。もし誤嚥してしまったときの対処法なども聞いておくと安心です。普段食べ慣れない食べ物で、心配があるときは病院にかかりやすい平日の日中に食べるようにしましょう。
高齢者は摂食・嚥下の状態により、準備する食事が異なります。食事の介助が必要な場合は、親をよく観察して介助することが大切です。適切な食事が親の元気のもとになり、在宅介護を続けやすくなります。毎日の食事の準備は大変ですが、適切なカロリーや栄養バランスについて知っておきましょう。
親が食べたいものを取り入れられるのは、在宅介護のメリットです。無理のない範囲で親の希望を叶えてあげたいですね。食事を美味しく食べ楽しい時間にするためにも、毎日の食事の時間に、今回ご紹介したことを少し意識して取り入れてみてください。
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