高齢者が一年中寒い理由~在宅介護などで気をつけるべき寒さ対策~

「高齢の親が、一年中寒いと言っていて困っている」といった経験はないでしょうか?「在宅介護をしているので、いつも寒くないように気をつけているはずなのに……」「ただ困らせたいだけ?」「ずっとエアコンをかけておくべきなのかな」など、いろいろ考えてしまいますよね。

「快適な温度」と一口に言っても、感じ方は人によって異なり、外気温や湿度にも左右されます。親が「寒い寒い」と繰り返していても、介護する側が寒いと感じていなければ、「ひょっとして、私の介護の仕方がまずいのかな?」とあれこれ頭を悩ます原因になりかねません。

今回の記事では、在宅介護において高齢者の寒さ対策に悩んでいる方に、寒さによって生じる主な症状やケアについてご紹介します。

高齢者にとっての快適な温度を知る――親がー年中「寒い」と感じる理由――

親が一年中「寒い」と言っている理由として考えられることは、「寒さに弱くなったこと」ではないでしょうか。加齢によって、筋肉量の低下、食生活の変化などがおこることで、若い頃のような身体の耐久性は失われていきます。

また、加齢で寒さを感じるのは女性の方が多く、その原因は、ホルモンの周期的な変動によって、自律神経のバランスを崩しやすいことだといわれています。もともと冷え性の方も多いと思いますが、体温の調節機能がうまく機能しないことで、寒さを感じることが多くなるようです。

高齢の親が寒がっている場合、「年だから何を言い出すかわからない」「もう仕方がない」と頭ごなしに否定せず、まずは親の意見に向き合って話を聞くことが大切です。

例えば、親がどれぐらいの室温だと快適な温度と感じるのか調べてみてはいかがでしょうか?温湿度計などを在宅介護をしている部屋に置くことで、親自身や家族が室温を確認できるようになります。快適な温度や湿度を感覚ではなく、数値化することで、親も納得しやすくなるはずです。

介護における適切な家の中の温湿度は、冬は、温度20~22℃、湿度45~55%程度が目安といわれています。ですが、体感温度には個人差がありますので、親や家族が「心地いい」と感じた時に、室温や湿度をチェックし、その数値を目安に毎日の室温管理をすることをおすすめします。親の好む室温が、極端に高すぎたり、低すぎたりする場合には、身体に何らかの異変が生じているのかも知れません。早めに医療機関を受診するようにしましょう。

「寒さ」を我慢する危険性――覚えておきたい寒さによる代表的な症状――

高齢者にとって「寒さ」を我慢することはさまざまな症状を引き起こす原因になります。ちょっとした工夫で改善できる場合もありますので、まずはどのような症状があるのか知ることから始めましょう。

・低体温症

低体温症が続くことで、心臓や肺などさまざまな機能を低下させてしまう可能性があります。低体温症患者は高齢者が多いのも特徴で、屋内発症と屋外発症では、約3:1の比率で屋内が多いといわれています。また、糖尿病や甲状腺機能低下症、心疾患、血液疾患などの持病やケガ、麻痺等で自力で動くことが難しいなどの症状からも低体温症になりやすいので、注意が必要です。

・チアノーゼ

血液中の酸素が不足し、皮膚や唇などが青っぽく変色する症状です。最悪の場合は壊死してしまう可能性があります。指などは、普段見えるところなので、周りで気づくことができますが、足指などは、ずっと靴下を履いて隠している場合もありますので、定期的にケアやチェックをすることで早期発見を心がけましょう。

・凍死

凍死は雪山登山だけの話ではありません。厚生労働省の人口動態統計によると、2000年~2021年の凍死者数の合計は約1万4千人で、熱中症での死者数(計約1万1千人)を上回っています。特に一人暮らしや、日中は家族が仕事に行き一人になる高齢者は、知らぬ間に寒い部屋で眠ってしまったり、転倒して動けなくなったりといった不慮の事故に備えておくことも必要です。

・隠れ脱水

冬でも気づかぬうちに脱水症状に陥ることがあります。これを防ぐためには、喉が乾いていなくても、保温ボトルなどに暖かい飲み物を入れるなどして、こまめに水分補給をすること、部屋の温度や湿度を保つことを心がけましょう。成人は体重の60%が水分ですが、65歳以上となると水分は体重の50%になります。高齢者は身体の中の水分が少ないため、脱水症状になりやすいので、注意しましょう。

・ヒートショック

高齢者は、季節の変わり目や寒暖差が苦手です。特に、台所や浴室、お手洗いなどで、ヒートショックのために死亡することもあります。室内の温度をできるだけ一定に保つことが重要です。

簡単にできる寒さ対策――冷やさないことが大切――

寒さ対策の方法は、いろいろありますが、冷えてしまったものを温めるのではなく、普段から冷やさないように心がけましょう。

・3首を温める【普段から冷やさない癖をつける】

寒い時は、まず、首・足首・手首を温めるのが良いと聞いたことがあると思います。最近は、「温活」という言葉も定着するようになり、首を温めるネックウォーマーや、足首を温めるレッグウォーマーや靴下など、安価でも質の良いものもたくさん販売されていますので、お好みのものをいくつか持っておくと安心です。この3首が冷えてしまうと風邪などもひきやすくなるので、普段から温活を意識するようにしましょう。

・入浴で血行を良くする【安眠や免疫力アップも期待できる】

若い頃は入浴好きだった方も高齢になると、身体が思うように動かないせいか、億劫になるようです。毎日入浴をしなくなると、寒くて寝付けないという方も少なくありません。入浴ができない場合は、手浴や足浴でも効果が期待できます。手足がポカポカの間に布団に入るなどして、湯冷めしないように気をつけましょう。

・就寝時は特に暖かくする【就寝時の寒さは病気のもと】

冬は布団が冷たいですよね。そんな時は、就寝する前に、布団乾燥機などで布団を暖かくしておくと、眠りやすくなります。湯たんぽや電気あんかを使用することも手軽な方法です。しかし、使い方次第で低温やけどの恐れもありますので、認知症などにより本人が管理できない場合は、使用を控えるか低温で使用するなど、家族が管理して使用するようにしましょう。

・筋肉量を減らさない運動と食事【日中は活動する、タンパク質を意識して食べる】

筋肉量を減らさないための工夫として、動けるようであれば、家の中でも簡単な家事をするなど、日中はできるだけ身体を動かすようにしましょう。

食事面では、タンパク質を意識して摂取することが大切です。主に、マグロ、カツオ、牛サーロイン、鶏胸肉、納豆、卵、豆腐、ヨーグルトなどタンパク質を多く含む食品を毎食に一品でも追加し、寒さに強い身体を作りましょう。

・自律神経の乱れを防ぐ【規則正しい生活でリズムを整える】

自律神経の乱れを防ぐことも効果的です。自律神経の乱れにより、さまざまな体調不良が現れます。在宅介護の際にも、朝はカーテンを開けて日の光を部屋に入れる、日中はできるだけ身体を動かしたり、活動したりするように心掛ける、夜はやや部屋の照明を落とすなどして、自律神経のリズムを整えましょう。

「からだを冷やすことは、万病のもと」とよくいわれています。「暑さ」を我慢する怖さに比べると、「寒さ」を我慢することに対しては、「風邪を引いてしまう」ぐらいの認識がほとんどです。その他にどのような症状が出るのか、どんなことに気をつけなければならないのかなどはあまり知られていないのではないでしょうか。

高齢になって寒さに弱くなってしまうことは、自然なことです。大切なことは、高齢者自身や家族が筋肉量の低下や自律神経の乱れ、食生活の変化によって、若い頃と違って寒さに弱くなっていることを自覚することです。そして、寒さによってどのような症状が出てしまうのかなどを正しく理解し、適切なケアや対策をすることが重要です。健康で快適な生活を送るためにも、日頃から「温活」を意識するようにしてみてくださいね。


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