手術するべき?認知症の高齢者の手術を考えるポイント

あなたが高齢になったと想像してみてください。

手術が必要と言われたとき、どのような選択をされるでしょうか?

また、両親が高齢になって、手術が必要と言われた時は…?

手術を受けさせたい、受けさせたくないといったように様々な意見があると思います。

そんな人生の最終段階での医療、いわゆる、終末期医療における手術に対する考え方、起きやすい問題についてご紹介していきたいと思います。

看護と介護の目線で「高齢者の手術」について考える

今回は「高齢だから積極的な治療は勧められないと、病院から説明があってどうしたらいいか悩んでいます」という方からのご相談です。

この相談に対して看護と介護の目線で、お答えしたいと思っています。

実は、相談者様のお父さんは以前から膝の調子が悪くて様子を見ていたみたいなのですが、ついに「歩きづらくなった」と伝えられたようで、膝の精密検査を受けられたそうです。整形外科医の判断からしますと、「手術が必要だ」と言われたんだとか。ところが、認知症もわずかながら持っていたことから、積極的な手術は勧められないという説明だったそうです。

認知症と手術の関係。引き起こされる二次障害とは?

厚生労働省によると、認知症は2025年時点で高齢者の約5人に1人が発症していると公開されています。このことから、認知症は誰しもが考えなければいけない問題ということが分かります。

実はこの質問者様のお父さんと同じように、高齢になって認知症があることから、積極的な治療がすすめられないというケースはよくあります。なぜかといいますと、まず手術前の準備が整わなかったり、整いにくい場合があるからです。そもそも、高齢者の方は若い人に比べて、持っている病気が多いことがしばしば見受けられます。

よくあるのが、高血圧や脳卒中、心筋梗塞などの持病をお持ちで、血液をサラサラにする薬を普段から飲んでいるというパターンです。そういった普段から薬を飲んでいると、手術をするまでに体調を整える必要があります。ただ緊急手術になると、体の調子を整える期間もなく手術が始まります。そのため、手術後に二次障害が起こる可能性が出てきます。

では、二次障害とはどのようなことが起こるのでしょうか。

例えば、せん妄と呼ばれる、精神疾患のようなものがあります。これは、今自分がどんな状況で病院にいるのか分からないとか、手術をした意味がわからないとか、そういう症状が出てくるのです。手術後に高齢者の方がせん妄を発症することはしばしばあります。

こうした二次障害が引き起こされると、入院中に必要な一定期間の安静が守れなくなったりします。安静にしない体勢が続くと、手術をした縫い合わせの部分がくっつきにくくなってしまったり、傷口から感染症を起こしてしまったりするなど、新たなリスクも出てきます。

他にも、安静にする期間が長くなることよって、内臓機能の低下が進みやすいともいわれています。入院中にせん妄が発症してしまった場合は、家族の付き添いが必要になってきたりするなど、家族側の介護負担が大きくなることもあり得ます。

こういったことが手術後に起こるリスクだと考えられます。

このように、高齢者が手術を受けるをいうことは、とてもハードルの高いものだということを理解する必要があります。手術後に予期せぬリスクがあったとしても手術を選ぶかどうか。とても難しい問題ですよね。選択する際には、担当の医師としっかりと話し合う必要があります。

どのような治療を受けたいか?人生会議で話し合いを

最近日本では、終活という言葉を聞くようになりました。

これについて家族でしっかりと考える時間、それが人生会議です。

手術の傷が落ち着いてくると、リハビリが始まることがあります。

特に元の生活に戻りたいという方ですと、積極的にリハビリを受けたいという思いが高まってくることもあるでしょう。しかし、二次障害が出ていたり、認知症を持っていたりするとなかなか希望通りにならないことがあります。

それは、本人がリハビリをする意味がわからなかったりすると、リハビリの効果が十分に得られない可能性が出てくるからです。

整形外科の場合、例えば骨折したとき、急性期病院やリハビリ施設への転院が続くことが考えられます。そうなると、状況によっては半年近く家を不在にしなければならないこともあります。また、長期のリハビリからのストレスが原因で、認知症がさらに進んでくるなどのリスクや、家族の負担も大きくなることも考えられます。

こうしたことを考慮して、病院側の説明では、ご家族の理解やご本人のリハビリに対する意志、治療に対する協力が得られるかというところを重視していきます。それを踏まえてリハビリの必要性や、手術をして本当に元の生活に戻れるのか。そこを見極めていくことが大切です。

眼科の手術でもこうした話が出てきます。

白内障やまぶたが下がってくる眼瞼下垂など、こういう手術に関して丁寧にチェックしていきます。本人の安静が確保できるのか、手術前後の通院は自分で来れるのかといったように、病院側もとても慎重になるのです。

最近、人生会議という名前で老後の生活や治療の受け方など、家族で話し合ってくださいというキャンペーンをよく見かけます。自らの希望を伝えられるうちに、家族と十分に話合いをする必要があります。

もし認知症が出始めたら、自分はどのような治療を受けたいのか?それについて話すだけでもとても役立ちます。親御さんに対してどういう治療を受けていきたいのか、どうしたいのかっていうことも話し合うことが大切なのです。

認知症の影響は、リハビリにも大きく関係することがわかりました。病院側からしても認知症の患者さんを受け入れるのは、大変なことです。

あなたが認知症になったとき、もしくは両親が認知症になったときにどのような選択をしますか?人生会議を通じてあなたらしい答えを見つけることで、安心して老後を迎える。そんな準備を少しでも進めることができたら思います。

この記事の内容は、YouTube配信をもとに記事化しています。

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