みなさんは自分の「足元」に意識を向けたことはありますか?
「いくつになっても元気に歩き続けたい」
これを叶えるために足元のケアはとても大切です。
今回は「わたしの看護師さん」代表の神戸と、フットケアナースの為石さんで「足元から始まる介護予防」について対談しました。
為石さんはキャリア39年の看護師さんです。以前は国家公務員として全国をまわっていましたが、山形県へ転勤した際、フットケアや足裏のバランスなどを診ていくうちに「足元の大切さ」に気づきました。それから、公務員を辞めて下関に渡って、足の専門外来に勤めることになりました。
現在は、岡山県や松江市を拠点に「フットケアナース」として、主に高齢者の方の足を専門に診ています。なんとこれまで足を診てきた患者さんの数は総勢4000人にもなるそうです!
そんな足のスペシャリスト為石さんから足元のバランスはなぜ大切なのか・改善する秘訣などをお聞きしました。
「爪の丸みが増している」は要注意のサイン
神戸:為石さんは、4000人の足を診るだけじゃなく、実際はケアまでされていると思います。フットケアナースから見て高齢者の足はどのように変化していますか?
為石:まず、治療目的で糖尿病の方の足を専門で診るフットケアナースと、また私の視点は少し違っています。私の場合、指が正常に開くかどうかを確認します。
為石:たとえば、逆立ちをするときの手を想像してみてください。この時、指が開いてますよね。小さな手で全身を支えるためには指をしっかりと開くことが大切になります。そこで、足の場合それがどうなっているのかという点で、まず足を診させていただくんですよね。
神戸:なるほど~。
為石:つまり、足の指が開いているかどうかという点が外反母趾とか、浮指とか偏平足を予防するために重要になってくるんですよね。
特に、高齢者の場合は外反母趾・内反小趾(ないはんしょうし)・爪の肥厚(ひこう)・そういうのがすごく多くて、体のバランスを崩されてる方が多いなっていうことで診ていきます。
神戸:ちょっとごめんなさい。これを聞いていらっしゃる方がいわゆる一般の方が多いので、外反母趾は、まぁ皆さんご存知だと思うんですよね。この「肥厚」ってどういうことですか?
為石:そうですね。爪は、体重がかかると指を圧迫して血管にかかる圧力を調節してくれます。それにより、血流が良くなります。また、血のめぐりが良くなることで、踏み出す力を与えてくれます。こうしたはたらきを持つのが爪なんですが、足裏からの圧力がかからないと、爪の機能がどんどん低下してしまいます。機能が低下した爪は丸みが増して、分厚く変形してしまいます。この現象のことを肥厚と呼び、指を正しく使えていないことを指します。
神戸:なるほど!よくいらっしゃいますよね。みなさんどうですか?お父さんお母さんの爪、ご覧なってください。爪が分厚くなっている方いらっしゃると思うんですよね。亀の甲羅みたいな。あれを肥厚っていうんですね。
為石:まさにその通りです。別名できちっとした名前もついているんですけども、だいたい肥厚ですね。
浮指と偏平足が体のバランスを崩してしまう原因
神戸:あとは何がありますか?
為石:浮指と偏平足ですね。
神戸:そういう形になっていると、どうなりやすいですか?
為石:体のバランスが崩れて、横に足を捻りやすくなります。足の裏は例えるなら「家の土台」に当たるので、そのバランスが悪くなると上半身で支えようとするんですよね。そうすると膝・腰・股関節などを痛めてしまいます。
為石:そして背骨・肩・首にも負担がかかってきます。女性の方に多いんですが、首をちょっと前に突き出すようにしてバランスを取ろうとするんですよね。そういう姿勢の方って本当に多いと思うんですよ。そうすると、いつも負担がかかっている筋肉が方くなったり、血行が悪くなったりしてしまいます。こうなると、体のバランスが崩れ、膝の骨に負担がかかったりします。脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)というのもそれに影響されたものだと考えられています。
為石:あとは血行が悪くなり足元から冷えたりとか、痛みですね。そういったものがでてきます。最終的には転びやすくなるんですよね。
神戸:あ~嫌ですね。特に女性って転ぶとみんな骨折しちゃうじゃないですか。
為石:そうです。畳の上でも転んでしまって骨折って例が本当に少なくないんですよね。
神戸:ほんとですよね。1回入院しちゃったらひとつの大きな総合病院とかで1ヶ月~2ヶ月過ごすなんてこともありますよね。さらに、リハビリを続けるとなると、あっという間に半年以上入院しちゃうなんてこともあるかもしれません。
為石:そうですね。もう回復力がどうしても少ないだけに1回アクシデントがくると大変です。せっかくバランスよく頑張っていたとしても柱が折れてしまい、結局2・3日寝たきりになってすぐに動けなくなるということも考えられますよね。
足の裏で大切なポイントとなることは何か
神戸:そうですね。やはり足の裏が大事ということですか?
為石:そうです。ここで皆さんにも本当に見ていただきたいことがあります。逆立ちの手をして、その手のひらを自分の方に向けてみてください。親指が広がっている状態で、親指の下の母指球というところの筋肉が盛って内側にアーチが出てくると思います。これが足でいう土踏まずになります。小指側を広げると、小指の下にも筋肉が盛り上がります。これが「足の縦アーチ」といいます。
為石:指の付け根って筋肉が盛っていますよね、さらに地面に手がしっかり食い込むようにつくので、これは指先のアーチで繋げると「指の付け根のアーチ」。そして「土踏まずのアーチ」、「小指側の縦アーチ」。アーチはよく3本と言われますが本来はこの4つのアーチ、それがあって初めてバランスがとれるんですよ。
神戸:なるほど。つまり、この4つのアーチが大事ということですね。高齢者になってくると歩く回数が減ってくるので、筋肉が盛らなくなるのでバランスが悪くなってしまうということですか?
為石:そうですね。それもあるんですが、指を開くことを忘れることがすごく多いんですね。
神戸:え!そもそもですか?でも足って指がくっついているでしょ?きちんとハイヒールの先がとんがったような感じで!
為石:そう思いますね。よくみなさん言われるんですよ。最初からこうだったんだって。でも最初の赤ちゃんの時はすごい指が動いてるんですよ!
神戸:え、忘れてます。覚えてないです。
為石:わたしもそうだったんですけど、最初に靴屋さんに「指を開いてごらん」って言われた時に、私自身が外反母趾、内反小趾のように指が丸くなっていたんです。なので、指を開いてって言われても開けなかったんですよ。だけど、ここは意識一つなんです。指を開こうという意識が湧いてくると、指ってもともと開いてたので、開こうとするんですね。そうすると体のバランスが全然変わっていきます。
為石:介護施設の方とその話をしたら、さっそくスタッフさんが利用者さんに5本指のソックスを履かせてくださったんです。その利用者さんがちょうど私が担当の時に履かれていたので、「じゃあポータブルトイレでちょっと排尿してみようか」と言って、その方が歩かれ始めました。その直後、ヨタヨタってなられたんですよ。だるまのような体型の方だったんですけど、なんと転ばずに体のバランスを保ったんですよ!びっくりしました!
神戸:そのまま普通は転んじゃいますよね。ごろんとね~。
為石:そうそう、転びますよね。でも保ったんです!履いておられて良かったって思いました。それだけ違います。
「5本指ソックス」の使用法と意外なメリット
神戸:意識したうえで足の指をより開くためには、5本指ソックスが良いということですか?
為石:はい。市販の安いものでも構わないのですが効果が弱いので、既に足の指がくっついちゃってる人は、2枚履きがおすすめです。夏だろうが2枚履きです!
神戸:えぇ~、ただでさえそれぞれの足指を5本分通すのは難しいのに、夏でも2枚履きだなんて大変じゃないですか!?
為石:そうそう。でもそれがですね、市販の安いのだと結構伸び縮みするんです。まだ初歩段階だったらそれを指1本1本丁寧にいれていただくと、指の向地性、要するに「指先を使う」っていうことや、「なかなか入らないわ~」って混乱することも頭の刺激になります。
為石:そしてついに指が入った際には、「やったー!」と嬉しさでまた興奮するでしょう。これも刺激になりますよね。これがひとつのお仕事だと思って履いて頂いて、1足履けたら重ねて履いて頂くと、指の間隔を広げられます。それが立って歩くとさらに体重がかかって、ちょっとした矯正力になるんですよ。まずはここから始めてみると、転ばぬ先の杖が「靴下」に代わります。
神戸:へぇ~、靴下からスタートってことですか?
為石:そうなんですよ。いつもと同じように、普通のソックスを履いてしまうと、せっかく指の間隔を広げられる方法があるのに、1つにまとめてしまうのはもったいないんですよね。そうすると指が開かない状態と一緒になってしまいます。
為石:私の講演会では、よくバランステストをします。時には、講演活動で100人以上の人に向けてお話することもあります。その100人の前でですね、何人かモデルになってもらってバランステストをします。すると、せっかく安定してた足も、普通のソックスを履くだけですっごくバランスが悪くなります。これは証明されているのでもったいないんです。
神戸:なるほど。みなさん、5本指いわゆる1本1本を独立するために意識することも大事だけど、まずは手っ取り早くいえば5本指ソックスを1枚履き、または2枚履きしていただくということですね。
為石:そうです。よく質問が出るのが「同じサイズでいいんですか?」ってよくいわれるんですけど同じサイズでいいです。それと「靴が履けるんですか?」っていわれますが、窮屈にはなるかもしれませんが履けます。意外と履けるんです。
神戸:履けるんですね!
為石:履けます。意外と。チャック付きのひも靴のようなものなら全然問題ありません。
老若男女におすすめしたい5本指ソックスはどこで買えるの?
神戸:いつ頃から5本指ソックスを履き始めたらいいですか?
為石:そうですね、実は小学校3年生で足はもう決まってしまうんです。そのため、機能が維持できていればいいんですけど、やっぱり足の指が開いてる意識が無くなっていくものです。これを防ぐためには小さい時から履いてもらうのも本当はいいと思います。そうは言っても、高齢者になって思い立ったのが吉日ですので、1日でも早く気がついた時点で始めて頂ければと思います。意識一つで変わるんです。
神戸:なるほど。ではもうひとつは、今なんとなく女性寄りの話をしてきましたけれども、男性の方にも5本指ソックスは効果がありますか?
為石:はい、もちろん!同じことがいえます。特に男性の場合は筋肉が結構ありますので、反対に足の外側からかかとにかけて、よく靴底が擦り減ってしまう人が多いです。踏み出す力も強くなっていきますので、足のゆがみは外に外にいきますからやっぱり男性の方も是非とも履いて頂きたいと思います。
為石:事例としては過去に患者さんで、外反母趾がひどい男性の方がいらっしゃいました。だいたい女性の方が多いんですけど、男性の方も実際おられるんですよね。その外反母趾、要するに親指の第2番目の指に対する力が強いんですよ。中には、強く押してしまって脱臼したという例もあるんです。そういったこともありますので男性の方も然りです。
神戸:ありがとうございます。じゃあ、男女問わずに思い立ったら吉日で、5本指ソックスをすぐに履くことが安定した歩きを保証してくれるということなんですね。
為石:そうです。家の基礎がしっかりしてたら家の傾きも少なくて済みますよね。特に、親指を開かせるのを意識させるんですが小指を開かせることを意識しない方が多いんですよね。でも、よくみられるのが小指の爪が退化しちゃってなくなっている。あるいは、小さくなっているっていう方も結構おられるので、「あ!自分の足もそうだ」と思ったら要注意です。そうなると、小指がうまく使えてないということですね。
神戸:よくみかけます!わたしよくお風呂の手伝いに入りますけど、小指の爪無い方多いですよね!
為石:そうなんですよ。そういった方に限って「元からだから仕方ないよー」って言われますけど仕方なくないですからね。もう爪を見ただけでも指が使えてないかどうかわかります。
神戸:わかりました。5本指ソックスって靴下屋さんに売っていますか?
為石:はい。衣類が売っているところだったらどこにでも売っています。まずは市販のでいいですよ。ただ、外反母趾がひどい人とか、指が本当に曲がってしまって硬くなっている人はちょっと専門的なソックスを履いた方がいいかなとは思います。
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みなさんいかがでしたか?
今回は、足の指の開き具合や正しく足裏を地面につけて歩いているかなど、日々の暮らしで意識をしながら気を付けていくことによって、ご高齢になってからも元気に歩くことができるという内容でした。
少しの隙間時間をつかって足の指を開かせてみたり、気軽に手に入る5本指ソックスなどで矯正するなど、思い立ったら吉日、今からぜひ実践してみましょう!
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この記事の内容は、Youtube配信をもとに記事化しています。
音声でお聞きになりたい方は、こちらのYoutubeをご覧ください。
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