知っておきたい嚥下障害の原因とサイン|食事中に親がむせてドキッとしたら(前編)

食事は栄養補給だけでなく、空腹を満たし満足感を生む、日常生活の楽しみの一つです。しかし、「最近、食事中にむせることが増えてきたかも?」と心配になっている方も多いかもしれません。

「食事時間が1時間かかるようになってきた」「微熱が出る」など、親の小さな変化に気づくことができるのは、毎日そばで介護をするご家族です。

今回は、食べものを飲み込みにくくなる高齢者の嚥下障害について、前編と後編の2回シリーズでお届けします。

前編では、在宅介護で知っておきたい嚥下障害の基礎知識とリスク、嚥下障害の兆候を見つけるサインについて、わかりやすく解説します。住み慣れた家で、親が「安全に食べ続ける」ためのヒントを一緒に考えていきましょう。

嚥下障害とは?高齢になると起こりやすい飲み込みの変化

私たちが食べる時に「ごっくん」と飲み込む動作を「嚥下(えんげ)」と呼びます。その動作がうまくいかない状態を、「嚥下障害(えんげしょうがい)」といいます。

食べるときに、私たちの体で何が起こっているのかを確認しておきましょう。まず、食べ物や飲み物を口の中に取り込み、よく噛み、飲み込みやすい大きさにします。その後、飲み込み、のどから食道、胃へ送り込む一連の動作へと続きます。

外からみると、のどの辺りが上下に動くのがわかるでしょう。のどには、筒状の空気の通り道である「気道」と、食べる時だけ開くゴムホースのような「食道」が並んでいます。のどの内部では、飲み込む瞬間に驚くほど素早い、気道と食道の「切り替え」が行われています。この切り替えのおかげで、食べ物は安全に胃へ運ばれます。

呼吸をするために気道は常に開いていて、気管の入り口には「喉頭蓋(こうとうがい)」がついています。食べるときに一瞬だけ閉まり、誤って食べ物が気管に入らないように防ぐのが、喉頭蓋の役割の一つです。

しかし、高齢者や体調がすぐれない方は、喉頭蓋の切り替えが遅れる場合や、閉まり方が不十分になることもあります。すると、嚥下障害が起こりやすくなるのです。

嚥下障害が起こる原因と3つのリスク

嚥下障害が起こる原因

なぜ、飲み込みの切り替えがうまくいかなくなるのでしょうか。嚥下障害は、「高齢になったから」という理由だけでなく、いくつかの要因が重なることで起こります。嚥下障害の原因を4つに分けて解説します。

1. のどの周りの筋力低下
高齢になると、のどの周りの筋肉や、舌を動かす力が弱くなります。

2. 病気の後遺症
飲み込む指令を出す脳・神経に影響を与えるのが、脳血管障害やパーキンソン病です。また認知症になると、「食べる」ことについての認識が薄れることがあります。

3. 感覚の鈍化
加齢に伴い、のどの感覚が鈍くなり、動きもゆっくりになります。誤嚥しそうになったとき、のどに残った食べ物を排出しようとする「むせ」も起こりにくくなります。

4. 薬の影響
抗うつ薬や血圧の薬の中には、服用することによって、唾液が出にくくなる、飲み込みにくくなる、意識がぼんやりして飲み込みが悪くなるなどの影響が出るものもあります。

嚥下障害が引き起こす3つのリスク

「食べにくい」「飲み込みにくい」という状態になる嚥下障害は、放っておくと命に関わる問題につながることがあります。3つのリスクを確認し、予防することが大切です。

リスク1. 誤嚥性肺炎
食べ物や細菌が肺に入り炎症を起こします。日本の高齢者の死因として多くみられる肺炎です。

リスク2. 窒息
飲み込む力が弱いと、食べ物がのどに詰まり、呼吸ができなくなることがあります。

リスク3. 脱水や低栄養
「飲み込みにくいから食べたくない」と考えるようになると、だんだんと必要な水分や栄養が取れなくなります。すると体重減少や筋力低下、全身状態の悪化につながります。

嚥下障害を見つけるサイン

嚥下障害は急に始まる場合もありますが、高齢者は日々の生活の中で少しずつサインを出しています。親に当てはまる症状がないか、以下のリストをもとに時々チェックしてみましょう。

食事の様子 チェックリスト

Q1:食事の様子に変化はありますか?
▢ 食欲が落ちた、または好みが変わった
  以前好きだった汁物やパサつくもの、イカやタコなどの噛み切れないものを避けるようになった
▢ 食事時間が極端に長くなった
  以前は20分で食事を食べ終わっていたが、40分から1時間以上かかるようになった
▢ 食べ終わる前に疲れている
  食事の途中で疲れてしまい、残すことが増えた

Q2:口の中や食べ方の変化はありますか?
▢ 食後、口の中に食べ物が残っている
  頬の脇や舌の上に食べかすがいつまでも残るようになった
▢ 食べこぼしが増えた
  口角から、汁物や食べ物が垂れてしまう
▢ 口の中に食べ物をため込む
  口に入れたまま、いつまでもモグモグしているだけで飲み込まない

Q3:食事中に、のどや声の変化はありますか?
▢ むせたり、せき込んだりすることが増える
  食事中や食後、あるいは水分を飲んだ時に「コンコン」とむせる
▢ 食べた後に声が「ガラガラ」と濡れたような音になる、ガラガラ声になる
※これは食べ物や唾液がのどに残っているサインです
▢ 何度も飲み込む
  一口に対して2、3回、「ごっくん」と繰り返さないと飲み込めない

Q4:そのほかの意外なサイン
▢ 鼻水が出る、目が潤む
※誤嚥をしかけていると、むせていなくても、食べている最中に鼻水が出たり、目がウルウルと潤んだりするなどの体の反射が出ることがあります
▢ 原因不明の微熱
※のどの違和感だけでなく、微熱が出るなどの症状は、誤嚥性肺炎の初期症状の可能性があります

親の異変に気づいた場合は、早めに主治医やケアマネジャー、医療・看護・介護の専門スタッフへ相談してみてください。在宅介護を家族だけで抱え込まないことが大切です。

全身の筋力の低下やのどの感覚が鈍くなるなどの体の状態に伴い、高齢者の嚥下状況は日々、変化しています。在宅介護をする家族が、嚥下障害の知識を持ち、食事の状況に注意を向けることは、親の嚥下の変化に気づくヒントとなります。

この記事に続く、「今日からできる嚥下障害の食事サポート|食事中に親がむせてドキッとしたら(後編)」では、嚥下障害の親の食事をサポートするコツや誤嚥が起きたときの対処方法についてご説明していますので、参考にしてくださいね。

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