「親の足腰が弱ってきて、一人暮らしをしていることを危なっかしく感じる」「要支援認定を受けたけれど、このまま体が弱っていくのだろうか」など、高齢の親の生活について、心配されている方も多いのではないでしょうか?
遠距離介護をしている方は直接、親のそばで様子を見ることができない分、その不安もより大きいのではないかと思います。そこで注目したいのが、介護が必要になることを防ぐ「介護予防」という取り組みです。
高齢者ができるだけ健康で自立した生活を送ることを目指すために行われるもので、自治体や地域で、さまざまな介護予防のプログラムやサービスが提供されています。今回の記事では、介護予防の必要性や、自治体や地域での取り組み、また要支援認定を受けた方が利用できるサービスについてご紹介します。
介護予防とは?〜身体的・精神的・社会的な健康を保つために〜
厚生労働省の「介護予防マニュアル第4版」では、介護予防とは「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」と定義しています。
つまり、高齢者ができるだけ自立した生活を送るために、身体的・精神的・社会的な健康を保ち、介護が必要にならないようにすることを目指すものです。また、万が一要介護状態となった場合にも、リハビリや適切な保健医療サービス、福祉サービスを利用して状態の軽減や悪化防止に取り組むことも重要になります。
内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、介護保険制度における要介護または要支援の認定を受けた人は年々増加し、令和元年度で655万8000人に達しています。しかし、運動や栄養管理、認知機能向上のための活動を行うことで、健康寿命を延ばし、介護が必要になるリスクを減らすことができます。
高齢者一人ひとりの介護の必要性を減らすことで、社会全体の医療や介護の負担が減ることが期待されます。さらに、高齢になっても親が健康で充実した生活を送ることができれば、離れて暮らす家族にとっても介護負担が軽減され、安心にもつながるでしょう。
参照:厚生労働省|「介護予防マニュアル第4版」
参照:内閣府|「令和4年版高齢社会白書(全体版)」
介護予防に取り組むには?〜自治体や地域で行われている介護予防〜
介護予防は大切だと理解していても、個人で取り組むのはなかなか気が進まない場合もあるでしょう。しかし、近所の人や地域の友人など、身近な人の存在が高齢者のモチベーションをアップさせます。
そこで、自治体や地域での取り組みに参加するよう、親に勧めてみてはいかがでしょうか。実際に運動や栄養指導を受けて体力や気力が向上した方が身近にいると、介護予防の必要性を「自分事」としてとらえやすくなります。地域で行われている主な介護予防の取り組みを3つご紹介します。
1.地域包括支援センターが提供する活動
<介護予防・活動例>
・体操教室や体力測定会などの運動機能維持・向上プログラム
・健康相談や栄養指導
・生活習慣病予防の講座
・認知症予防ワークショップ(認知症についての講義、脳トレ、体験談の共有)
・ウォーキングなどの高齢者向けイベント
週1回など定期的に開催されるため、外出の機会が作れます。継続的に体力づくりができたり、仲間との交流を通じて心身ともにリフレッシュできたりする点が魅力です。
原則として無料で参加できますが、活動内容によっては事前予約が必要な場合があります。詳細は最寄りの地域包括支援センターに問合せてみましょう。
2.公民館や集会所での活動
<介護予防・活動例>
・健康講座(転倒防止対策や熱中症予防など)
・血圧チェックや体操(フレイル予防、100歳体操など)
・茶話会、昼食会、音楽会、ゲーム等のレクリエーション、音読教室など
地域のボランティアが主体となって運営していることが多く、歩いて通える近隣の公民館や集会所、お寺などで行われています。顔見知り同士でお互いの様子を気にかけあうことができるので、心身の不調や異変に気付いてもらいやすいのがメリットです。
基本的に無料で参加可能ですが、特別講師を招いた講座や教材が必要な場合は、費用がかかることもあります。
離れて暮らしていても、親が自治体の教室へ通えるようサポートする、近隣のイベントにも定期的に参加できる環境を整えるなど、できれば複数の居場所を確保しておくといいでしょう。
3.地域の見守りネットワーク
行政や地域が連携して高齢者の見守りネットワークを構築し、活動している自治体もあります。高齢者の自宅を訪問して安否確認や健康チェックなどを行います。様子に異変があれば、早期に気づいてもらえ、今後の対応を検討できるので安心です。配食サービスなどもあり、栄養管理の手助けにも。地域の方に見守ってもらいながら、要介護状態になることを防ぐことができます。
登録方法や利用料金については、自治体によって異なります。地域包括支援センターや、市役所、町村役場に問い合わせてみましょう。
住み慣れた地域の見守りネットワークは、体力維持や介護予防だけでなく、孤立を防ぐ役割も果たします。顔見知りの人達と定期的に顔を合わせていれば、いざという時に行政のサービスや医療へ素早くつなげてもらうことが期待できます。
遠距離介護をしている場合、帰省した際に、近所の方や地域でお世話になっている方へ挨拶をしておくことも大切ですね。困った時に誰かに気付いてもらいやすくなります。
部分的に介助が必要になった際の介護予防〜「要支援」とは?〜
介護予防に努めていても、介護認定で「要支援」の判定を受けることがあるかもしれません。「要支援」とは、高齢者が基本的には一人で生活できるものの、部分的に介助が必要な状態を指します。
この状態の高齢者には、介護保険制度において「要支援1」「要支援2」という認定が行われます。要介護認定では、以下のような高齢者の生活の状態を考慮して介護サービスの必要度が判断されます。
要支援1(自立した生活が可能だが、軽度の支援が必要な状態)
・日常生活の基本的な部分は、ほぼ自分で行うことができる
・掃除やゴミ出しに一部見守りや手伝いが必要
・立ったり座ったりする際に支えを必要とする場合がある など
要支援2(自立した生活が可能だが、要支援1より支援を必要とする場面が多い状態)
・入浴で背中を洗うなど一部介助が必要
・生活における意思決定や買い物に支援が必要
・身だしなみを整えるのに手助けが必要
・立ち上がりや歩行に杖やサポートが必要 など
自治体に要介護認定を申請し「要支援」と認定されると、介護保険サービスを利用して介護予防に取り組むことができます。ご本人の身体の状態に合わせた介護予防サービスを提供してもらえるので、状態の悪化や改善を期待することができます。
要支援・要介護認定について、詳しくはこちらをご覧ください。
要介護認定とは?介護保険サービスを利用するためにまずは申請を〜申請方法をご紹介〜
「介護保険のしくみ」
「要支援」と認定されたら、どんな介護予防サービスを受けられる?
「要支援」認定を受けた方は、状態の改善や悪化防止を目的とした介護予防サービスを利用できます。まずは地域包括支援センターへ連絡し、介護支援専門員(ケアマネジャー)に介護予防サービス計画書(ケアプラン)を作成してもらいましょう。そのケアプランに基づき、さまざまなサービスが提供されます。主なサービスは以下のとおりです。
・自宅に訪問
訪問看護:看護師などが、主治医の指示に基づいて病状チェック、点滴や医療機器等の管理、薬の飲み方指導等を行います。
訪問入浴:介護士などが専用の浴槽を持参し、入浴介助を行います。体の清潔保持だけでなく、全身症状のチェックもしてもらえます。
訪問リハビリテーション:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などがリハビリを行います。日常生活の基本的動作の訓練、福祉用具の使用訓練、言語機能の訓練等で心身機能の維持回復を目指します。
・施設に通う
通所リハビリテーション(デイケア):日中、老人保健施設や病院などの通所リハビリ施設に通い、食事や入浴などの日常生活動作をスムーズに行うための訓練、筋力トレーニング、転倒防止体操などを行います。また他の利用者とのコミュニケーションを通じて、精神的健康の維持を図ります。
認知症対応型通所介護:デイサービスセンターやグループホームなどに通い、脳トレやパズルなどの認知機能訓練、体操やストレッチ、料理や洗濯などの日常生活スキルの訓練、認知症の進行予防や軽減のためのケアなどを行います。
・短期間の宿泊
短期入所生活介護(ショートステイ):短期間の宿泊を通じて、食事・入浴・排泄などの日常生活動作の支援や、集中的なリハビリを受けることができます。また、自宅でも自立した生活を続けられるよう、生活環境の調整や指導も行っています。
・福祉用具の貸与、販売
利用者の希望や生活環境を考慮し、その方に合った福祉用具(手すり、スロープ、歩行器、歩行補助杖など)が貸与されます。またスロープ、歩行器、歩行補助杖などは販売もされています。これらを利用することで日常生活の自立度を高め、転倒や事故を防止し、長期的に自立した生活をおくることを目指します。
サービスの利用者負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある場合、2割または3割となります。また、居住地の地域区分によって負担額が異なる場合があります。
詳しいサービス内容、地域区分については以下をご参照ください。
介護予防サービスについて
参照:厚生労働省|介護サービス情報公表システム「公表されている介護サービスについて」
地域区分について
参照:厚生労働省|「第243回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」
親が高齢になり心身の変化による生活の困りごとを感じたら、家族だけで悩みを抱え込まず、地域の介護に関する窓口や専門家に相談してみましょう。
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遠距離介護をしていても、親の介護予防は実践可能です。介護予防に積極的に関わることで、親の生活の質が向上し、介護が必要になるまでの期間を遅らせることができます。
また、介護予防は、地域や社会とのつながりを保ちながら行うことが大切です。介護予防が広まれば、介護サービスの負担が減り、社会全体の利益にもつながります。
親が元気に自分らしい生活を続けていくことは、家族にとっても幸せなこと。まずはできることから介護予防に取り組んでみませんか。
介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。
家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
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