「親が倒れた」
想像もしたくないことですが、誰しも突然経験するかもしれない問題の1つです。更に親が高齢になればなるほどそのリスクは大きくなっていきます。
そんなもしもの時が突然やってきた時、少しでも冷静に迅速に行動ができるように、知識を蓄え事前準備をしっかりしておくことが重要です。
この記事では、「わたしの看護師さん」の広報スタッフが体験事例も踏まえながら、親が突然倒れた時のいろいろなケースの対応やサポート方法について解説していきます。
親が倒れた!そんな時の行動・事前準備は?
では、親が倒れる時のケースとしてどういった場合があるのでしょうか?
・祖母が高熱を出した
・認知症の祖母が寝返りの際にベッドから転落し骨折した
・デイケアに通っている祖母が施設で食事中にハンバーグを食べて喉を詰まらせた
これらは全て、私の祖母の身に起こった出来事です。どのケースも突然起こり、母は何の心構えもできておらず大変苦労したそうです。
このように私の周りの出来事だけでも親が倒れる理由は様々です。
また、親が倒れた場合、遠くに住んでいるか近くに住んでいるかで対応は変わってきます。以下はその2つの場合に合わせた対応を紹介します。
<遠距離の場合>(病院から、遠くに暮らしている親が入院したと連絡がきた場合)
病院名を聞き、出来るだけ早く向かいましょう。
すぐに駆けつけられない時は何時くらいまでに病院へ行けるか伝えると待っている側も安心します。
<近距離の場合>(親が急に目の前で倒れた場合)
家族が車を運転して連れていける状態でも、症状が重い場合は、救急車を頼みましょう。
救急車を呼ぶべきか判断がつかない時は、「#7119 救急相談センター」に電話をしてみるのも良いでしょう。症状を伝えると急を要するかどうか、救急車を利用するべきかを判断してくれます。また、家族が連れて行く場合でも夜間や週末の時には、救急外来の担当病院などを教えてもらうこともできます。しかし、救急相談センターの対応地域ではない場合もあるので事前に確認しておくことが大切です。
また、救急車、家族が連れて行く、どちらでも専門医のいるかかりつけの病院がある場合、入院に対応できるならそこへ連絡を取り、夜間や週末で主治医と連絡が取れない場合は、救急外来で診てもらえる所を探しましょう。
救急車を呼ぶ場合の対応方法
1.まずは横にさせて楽な状態にすると同時に119番
症状などを聞かれるので、できるだけ焦らずに伝えましょう。また救急車が来るまでの間に、患者の体を横に向ける、衣服をゆるめるなど、できることなどを教えてくれます。
コードレスの電話を使うと、話しながら作業できるので便利です。
2.救急隊から聞かれること
□通報者の名前
□住所、目印となるもの、電話番号
□患者の名前
□年齢・性別、血液型
□症状とそれが生じた時間など
□現在の容態
□通報前にした処置
□持病の有無
□通っている病院、飲んでいる薬など
また、「遠距離、近距離に住んでいる」に関係なく、病院に持っていくものや親が突然倒れた時に少しでも慌てないために事前に準備しておくと良いことは以下になります。
病院に持っていくもの
□本人の保険証
□本人のお薬手帳
□印鑑
□現金
+αで入院に必要な物を持っていけるとなお良しです。
事前にしておくこと
□前もって家族の保険証等の保管場所の確認
□いざという時のために必要なものをバッグなどにまとめておく
□緊急の処置を求められることもあるので、前もって治療の希望を本人と話し合っておく
□職場の介護休暇制度などの確認
□親の持病の症状や体調などを普段から正しく理解しておく
たくさんの対応方法がありますが、身近な人が倒れてしまった時、冷静に全ての対応を行っていくのは大変なことです。しかし事前に少しでもこのような知識を蓄えておけば、「大丈夫、私はこんな時どうしたらいいか読んだことがある」と思え、少し焦る気持ちを抑えることができるのではないでしょうか。
親が入院する場合に必要なこと
まずは入院をする場合の対応について、母の体験事例を踏まえ解説していきます。
祖母は今まで3回倒れ、全て入院しています。いずれの場合もコロナ禍ということもあり、病室などへの付き添いが難しく、更に病院に着いてから医師の話を聞くまでは2時間ほどの待ち時間がありました。この時間は、不安な気持ちが大きかった母にとってはより長い時間に感じられたそうです。
流れとしては、行きは自分で連れていくか、施設に居る時に倒れた場合は施設のスタッフが連れていってくれます。施設の場合、母は連絡をもらってから駆けつけ、医師の話を聞きました。その後の対応は全て病院側がやってくれて入院中の面会は禁止でした。
以下は医師に聞くことや入院時必要な物などを細かく挙げていきます。
①医師に確認しておきたいこと
□症状や検査結果
□治療後はどのような状態まで回復が見込まれるか
□どのような治療をするか
□治療をするとどのような効果があり、しないとどうなるか
□治療によって起こり得る合併症や副作用
□副作用などが起きた時の対応
□他の治療法はないのか(提案されている治療法との比較)
<手術の場合>
□麻酔の方法
□病巣部の切除法
□手術時間
分からないことはそのままにせず、医師に質問しましょう。
メモをとって後で確認すると、今の状況をより整理しやすくなります。
②主治医との面談(治療や手術に計画と同意)に立ち会う
□入院診療計画書で入院の全体感を把握
計画書は入院から7日以内に患者に説明することが病院に義務付けられています。
主治医、入院中の検査内容、推定入院期間などが記載されています。
□インフォームド(情報提供)、コンセント(同意)は必ず同席
検査や治療及び手術の内容と目的などの説明に納得した患者は同意書にサインします。また親本人に意識がない場合や判断能力が欠ける場合は、家族が同意を代行します。
医師には、患者の理解を得るように努力する義務があります。疑問がある場合は遠慮なく、他の選択肢はあるか念のため聞いておくのも良いでしょう。
③入院時に必要なもの
□診察券
□健康保険証(後期高齢者医療保険者証)
□入院申込書
□誓約書
□入院時預り金
□お薬手帳
□保証人確認書(氏名、住所、電話番号、印鑑)
④入院生活に必要なもの
□洗面用具
□筆記用具
□コップ
□スプーンや箸
□ティッシュペーパー
□室内履き
□病衣
□タオル類
□下着
□おむつ
□眼鏡、入歯、補聴器など普段使っているもの
□小銭
□イヤホン(テレビ利用の場合)
ただし今は、入院に必要な日用品などがセットになった1日セットパックがあります。費用はかかりますが最初に契約しておけば、おむつ・パジャマ・歯ブラシ・タオル・ティッシュなどの必要な物は、病院側から提供してくれます。
⑤入院時に慌てないために確認しておくこと
□生年月日
□血液型
□既往歴
□持病
□手術歴
□処方箋
□アレルギー
□マイナンバー
□連絡先(自分の兄弟姉妹、親の仕事先、親戚、親が親しくしている人)
近年はコロナの流行で様々な対応が変わってきています。
付き添いの制限など、一緒に居たいのに居られない、会いたいのに会えない……付き添う側も付き添われる側も不安に思うことがあると思います。
しかしデメリットばかりではありません。送り迎えが終われば、後は病院側が丁寧に対応してくれます。日用品のセットパックなどを契約しておけばパジャマを洗ったり、歯磨き粉を補充したりとその都度通う必要はありません。コロナ禍で付き添う側の負担は減ってきつつあります。
ただ、入院している人の寂しさは膨らんでいるのかもしれません。良いところは残しつつ、入院している方、付き添いの方、どちらにも寄り添える環境になっていけるといいですね。
親が通院することになった場合のお助けサービス
次に通院をすることになった場合です。
通院は、倒れてしまった本人はもちろん、送り迎えなどを行う方の負担も大きくなります。病院付き添いの負担が大きく身体を壊してしまっては元も子もありません。
ここでは対処法の一部を紹介していきます。
①訪問診療
体力の低下などで医療機関の受診が難しい場合、定期的かつ計画的に医師が患者宅を訪問して行う診療方法です。
頻度としては、患者の状態に関わらず、月2回程度、定期的に訪問してもらえます。また、状態が悪化した場合の緊急訪問も可能で、処方箋も出してもらうことが可能です。(病院と連携している薬局に頼めば、薬剤師が薬の配達もしてくれます。)
どの段階で切り替えるかは、本人の体調や病状を医師と相談しながら決めると良いでしょう。具体的には、親が車椅子ごと乗れる介護タクシーでないと通院できなくなるなど、利用者本人や介護者が通院を負担と感じた時などです。
ただし、どこの医療機関でも行っているわけではないので注意しましょう。
②介護保険サービス(通院介助)
自宅から通院先までの行き帰りに発生する乗車・降車の介助や、屋内外における移動介助、受診の手続き、薬の受け取りなどの介助が該当するサービスです。
条件は「介護認定が要介護1~5に該当していること」と「ケアマネージャーが必要と考えてケアプランに組み込まれていること」の2つ。
また原則として、病院内での介助は院内スタッフが担当するため、介助者による通院介助には含まれませんので、診察の待ち時間中の付き添いなどは通院介助の適用範囲外となります。
③介護保険外サービス
介護保険外サービスは介護保険サービスに比べて費用はかかってしまいますが、利便性が高く、1日だけサービスを利用したい時なども利用できます。
「わたしの看護師さん」でも、病院付き添いの時、資格を保有しているスタッフが診察室の中まで同行し、医師の診断を分かりやすく説明したり、利用の様子を伝える詳細なレポートを送るなどのサービスがあります。
このような様々なサービスを利用して介護保険の手の届かない隙間を保険外サービスで補っていくという方法も良いでしょう。
たくさんあるサービスの中から自分に必要なサービスを組み合わせて利用していきましょう。
他に頼ることは決して悪いことではありません。付き添われる側も付き添う側も無理なく通院できるような環境づくりを心がけましょう。
退院後、これからの生活に必要な準備
やっと退院できる状態となっても、その後の生活のことなど考えることはたくさんありますよね。
私の祖母は2回目の入院中に認知症が進行し、退院後そのまま入居型の施設へ入ることになりました。その時の施設は、入院中にケアマネージャーさんと病院の方が探してくれました。デイケア時代からずっと担当してくれていたケアマネージャーさんだったので退院時もご厚意で次の施設への見届け、引継ぎをしてくれました。
母は入院中に使っていた物の引き取り、退院の手続きなどを行い、家族とケアマネージャーさんで施設に行く祖母を見送りました。
私の家族のように退院後施設で過ごすか、もしくは自宅で過ごすかを選択することは難しい問題です。退院時慌てることのないように事前に考えておきましょう。
①退院後の住まいを考える
自宅以外の選択肢も視野に入れ、退院後の住まい、サービスの活用を検討しましょう。
具体例としては、
例1)介護保険の訪問介護サービスを利用しながら自宅で暮らし、必要に応じて自宅をリフォームする
例2)介護が必要になるまで普通に暮らし、要介護になったら介護保険の訪問介護サービスを受ける
例3)介護保険を使い、施設が提供する介護サービスを受ける
例4)病院の「退院支援」を受け、分からないことは相談する
などがあります。前もって同居や施設入所についての考えを本人に聞いておきましょう。
②退院後の生活準備は入院中に進めておく
早期退院だがまだ施設入居など検討しきれていない場合は、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟へ一旦転院をして、在宅復帰や施設を検討する時間稼ぎをするのも一案です。
地域包括ケア病棟とは、治療を終了し直ぐに在宅や施設へ移行するには不安のある患者などに対して、在宅復帰に向けて診療、看護、リハビリを行なうことを目的とした病棟のことを言い、回復期リハビリテーション病棟とは集中的なリハビリテーションを行なうことで低下した能力を再び獲得するための病棟のことを言います。それぞれ対象となる条件などがありますので、主治医と相談してみましょう。
また、医療ソーシャルワーカーに退院後の生活について相談しておくのも良いでしょう。医療ソーシャルワーカーは豊富な情報を持ち相談も無料です。ある程度の規模がある病院には医療相談室などの部門があり、医療ソーシャルワーカーが在籍しています。社会福祉士などが医師などと連携をとり、患者の状態や患者及びその家族の希望に沿って提案や相談に乗ってくれます。
最後に、早いうちから定期的に食事・排泄・入浴など日常生活動作に関する親の状態を確認しておくのも大切です。状態により介護保険が未申請ならすぐに申請しようという判断にも繋がります。
退院後の生活は本人にとっても家族にとっても一番重要なことと言っても過言ではないでしょう。入院中からしっかり考え、お互いを思いやった良い結論を探していきましょう。
家族が急に倒れてしまうことは想像しただけで動揺してしまうような大変な出来事です。
事前に準備したり知識を蓄えたりすることが、実際に起こった時に最悪の事態を避け、慌てずに対応する鍵となります。
初めてのことは、誰でも多かれ少なかれ不安がつきものです。時には頼ることも悪いことではありません。自分一人で抱え込まないで下さいね。
この記事が皆さんの学びになり、心を少しでも軽く出来るような記事になっていれば幸いです。
介護にまつわる悩みやお願いごとは、「わたしの看護師さん」にご相談ください。
介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。
家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。
「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。
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