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育児に介護、それに仕事も?!実践者が語る、ダブルケアの乗り越え方。

ダブルケアってご存知ですか?おじいちゃんとおばあちゃんを同時に介護している、ってことではありません。

ダブルケアは、狭い意味では子育てと介護が同時に重なっている状態のこと。広い意味では、一つの家庭の中でいくつかのケアが重なっている状態を指すこともあります。

例えば、自分自身が病気を抱えながら、子育てもしくは介護をしている。あるいは、複数の人を同時に介護している状況もダブルケアです。

今回、自身も両親の介護と3歳の長女の子育てのダブルケアを経験し、子育てと介護と仕事を両立するための社会支援整備を目指し活動するNPO法人こだまの集い代表の室津 瞳さんをお迎えし、「ダブルケアの乗り越え方」について伺いました。

3人に1人がダブルケアを経験する

神戸:ダブルケアは私もやったことがあります。18年くらい前の話で、その当時は珍しくて、特例だという扱いでした。今は令和になりましたが、当たり前になりつつありますか?

室津:ある調査によると、子育てが終わるまでに3人に1人はダブルケアを経験すると言われています。身体的なおむつ交換をすることが介護だというイメージがまだまだ強いですが買い物にひとりで行けない、転びやすくなってきた、介護保険の申請手続きなどもケアにふくまれると思います。そのようなケアや子育てもしている方々のダブルケアラーさんは、介護を始めているけれどダブルケアということに気づかない方もすごく多いと思います。

神戸:私自身の経験ですと、たしかにスタートは買い物の手伝いからはじまったんですよね。見守りとか親戚のおてつだいといったはじまり方でした。でも、あれよあれよという感じで重くなってしまって、大変だったんですよね。室津さんもこういう事業を立ち上げてらっしゃるということはご経験があったりするんですか。

室津:はい。私もダブルケアを経験しています。今振り返ると、6歳と2歳の子どもがいるんですが、上の子どもを妊娠中から実はダブルケアだったなと思います。妊娠している段階で、父親が入退院を繰り返すという状況でした。

妊娠中の自分の体を気遣い、子どものケアもしながら、父親の入院のサポートをしていて、もう7年前からダブルケアがはじまっていたなと思います。


NPO法人こだまの集い 代表理事 室津瞳さん
2017年に両親の介護と3歳の長女の子育て、自身も長男を妊娠中であるダブルケアを経験。当事者になり、子育てと介護が重なることでの就労継続の困難さや、日本はダブルケア支援制度が未整備である現場を知る。これらの社会課題の改善に向けて、NPO法人こだまの集いを設立。

神戸:大変ではなかったですか?

室津:そうですね、大変な時もありました。結婚して父親と母親の暮らしていた実家から少し離れた場所に暮らし始めたんですが、夫と実家に帰ると、父親が倒れていました。妊娠中でお腹も大きかったんですが、一大事が起きていると思って病院に運びました。

着替えをし、緊急で入院になり、入院備品を準備してとか。母も仕事をしていたので、ちょうど発見したのが私たちでそんなとこもありました。

神戸:そこから、介護のスタートですか?

室津:そのあたりから、介護が始まったという印象です。肝臓が悪く、お医者さんにはあと2,3日の命ですといわれたんですが、幸い、寝たきりの状態から自立の状態に復活しました。それから3年後に、末期がんだという診断が出ました。本人は自覚がなかったんですけど、すい臓がんと肺がんが見つかって、1年ぐらいは元気だったんですが、だんだん食べれなくなったり、転ぶことも少し増えたりしました。

身体的な介護期間は一か月くらいだったのですが、いよいよ父を在宅で看取るというときに、母親が主に父親のサポートをしてたんですけど、母親にも癌が見つかってしまって。

父親の在宅のターミナルケアと母親の手術の準備と、2人のケアが同時に重なってしまいました。私は車で一時間の距離に住んでいたので、フルタイムで仕事しながら父親の住んでいる実家にいき、母親のいる病院に行って…と、1週間単位でめまぐるしく動いてましたね。

妊娠初期だったのでつわりもありましたし、そのときはいちばん大変でした。自分が主となってうごかないといけなかったので。

神戸:そうなると、トリプルケアといってもいいくらいですよね。

室津:そうですね。お腹の子どもと自分のケアを含めたりすると、いくつだろう…という状況でした。実家に犬がいたんですよ。両親がペットの世話をしてたので、犬が一匹家に取り残されていたんです。

犬の世話も結構大変で、毎日散歩に連れていかないと犬自身がノイローゼになって逆にケアの負担が増えてしまいます。家族を巻き込んで、犬も含めてどうマネジメントしていくのかは非常に大変でしたね。

実の兄はフルタイムで働いていましたが、できるところは兄にも助けてもらいました。夫も巻き込んで介護するチームを組んで、出来ることを出来るタイミングでやってなんとか乗り切りましたね。

神戸:お話しを伺うと、身体的介護っていうのがお亡くなりになられるまでの一か月程度だったっていう話、もしかすると一般的な介護保険のサービスはお使いにならなかったんじゃないですか?

介護保険サービスに出遅れた後悔

室津:そうなんです。それが失敗だったんですが、もっと早く申し込んでおけばよかったと後悔しました。最初、父親が末期がんだったので、医療保険で訪問看護師さんや訪問診療医の先生、薬剤師の方のサポートを受けていたんですね。何かあっても母親が対応できるっていうところもあって、介護保険の申請をしなくても医療保険で乗り切れるかなって思ったんですよ。

メインの介護者である母が倒れるとは考えていなかったので、余力を持たせるという意味でも、介護保険の申請を早めにしておけばよかったなというのは反省でした。

母親の入院が決まると、急いで介護保険の申請をしました。父親も急激に悪くなっていったので、なんとかヘルパーさんに入っていただく形にしました。

ケアマネさんも決まり、ヘルパーさんに入っていただく段階にまでは整ったのですが、そのヘルパーさんに助けてもらう段階で父が亡くなったので、結局は介護保険は使えなかったんです。とはいえ、介護用品のレンタルなどはお世話になりました。

神戸:もう少し早めに情報があれば、室津さんやご家族の皆さんが安心してお父様のラストステージを見守ることができたかもしれないという苦い思い出があったんですね。

室津:もっと早く介護保険の申請をしておけば家族全体が余力が出たかなとは思います。申請と医療の訪問在宅の先生を探したり、看護師さんに来てもらったり、調整の関係がもうバタバタだったので。ただ、家族としては出来る限りのチームワークを組んでやれたので、最後は納得した看取りができたかなとは思います。

困っている人は多いものの、支援が行き届いていない“ダブルケア”

室津:私がダブルケアの当事者になってみて気づいたのが、子育てと介護両方重なったときに必要な支援がなかったということ。どうすれば仕事が両立できるのかっていう情報を求めていたんですが、そういった情報が見つからなかったんです。行政にも連絡しましたが、具体的な支援・サポートがない状況だったんですね。

少し勉強してみたところ、私のような状況の人は少なくないことが分かったんです。だけどもこんなに支援が整ってない状況を知って、自分の子どもたちが大人になったときに今と同じ状況じゃ困るなと思いました。ダブルケアをしている当事者の声を集めて行政や保育や介護の支援者さんに望ましい情報を与えるような団体を作ろうと、NPO法人こだまの集いを令和元年に立ち上げました。

神戸:まだまだ“ダブルケア”が世の中としても十分に認知、市民権を得ていなかったんですね。

室津:そうですね。ただ、興味を持たれる方が増えてきたというのも少しづつ感じ始めています。自治体さんからご意見を聞いてもらえることが増えていて、ダブルケアについて少し関心を持っていただけたかもしれないと思っています。

私のまわりのママ友さんや子育てのイベントで個別にお話を伺ってみたりすると、ダブルケアという言葉は知らなかったけど、「それうちのことだ」っていうご意見があったりして、意外と身近に感じていただけたのかなと嬉しい感触を得ています。

子育ての話はするけど、介護の話はしない

神戸:振り返ってみると、私もダブルケアで、まだ20代にして高齢者の介護をしている方はいませんでした。あの時の孤独を思ったら、こういう活動団体があって、情報提供もしてくださる。それに、仲間がいるってすごく心強いなと思いますね。

室津:ありがとうございます。意外に孤独感って感じやすいんですよね。ママ友さんって子どもの話はするけど介護の話しないじゃないですか。

神戸:やっぱりそうなの?女性でも?あれだけおしゃべり好きなのに?

室津:おしゃべりは好きなのに、介護の話ってあんまりでないと思うんです。

神戸:私もまわりに介護の話をすると、介護をしている人がいなかったのでドン引きされちゃうんですよ。「神戸さんなにそれ?」って。あんまり言いすぎると引かれちゃうなって感じもしたので、やっぱりその話題は避けるようにしましたね。

室津:話せば、もしかすると仲間も見つかるかもしれないですが、何となく子育てをしているママ友さんに介護の話ってしづらいし、壁があってダブルケアについて語れる場はない気がするんです。だから不安に陥りやすいと思うんですよ。そういったとき、うちの団体へ連絡いただければと思っています。

神戸:イベントもあって、しかもZOOMだと全国どこからでも参加ができるのがいいですね。

室津:そうなんです。例えば、子育てと介護が重なったらどうするかというセミナーや個別でお話しすることもできます。「一人じゃない、大丈夫だよ」ということと、「困っていることがあったら、一緒に考えよう」と思っていますので、ご遠慮なくご連絡いただければと思います。

介護が重なっても仕事も子育てもあきらめない環境づくり

神戸:ダブルケアについては、大学の先生とも一緒に研究をされているんですよね?

室津:武蔵野大学社会福祉学科の渡邉浩文教授と一般社団法人ダブルケアサポートと一緒に、去年からダブルケアの研究をしています。30人くらいの方にお話し伺ってどんなことに困っているのか、どんな支援が必要なのか、逆にどんな支援に助けられたのかを聞いてきました。今年はそういった声をどうしたら還元できるかということを考えています。みなさんに研究を通してお役に立てるような何かを伝えたいと思っていて、勉強会も開催できるように準備をしています。

神戸:子育てと介護は同時に起こるイメージからすると、女性が社会進出をして出産が少し遅れ気味になる、いわゆる晩婚化によって、どうしても避けれないということもありますよね。

室津:ダブルケアはとても大変なイメージがあって、「避けたい」と思うかもしれませんが、避けれるものではなく、自然現象だと思っています。

女性が活躍してキャリアを積むことはとっても素晴らしいことだと思います。女性がどんどん活躍していますので、30代で結婚される方や40代で出産される方も珍しくないと助産師さんのご意見も伺っているんですね。

その時点で親がもう70や80歳手前という方も多くいらっしゃるので、ダブルケアは必然的に増えますよね。それから、兄弟数が少ないこともあって、介護を避けるというのは無理が生じてきている。介護が重なっても子育ても仕事もあきらめないっていう考え方にシフトしたほうがいいのかなって思っています。

神戸:私は、「現役世代が介護を理由に辞職しない、辞職させない」と謳い続けて活動してきましたけど、それプラス子育てなんですよね。

室津:仕事も含めて、やりたいこと、大切にしたいことって、現役世代の方だってたくさん持ってらっしゃいますよね。趣味や地域活動、人それぞれ違うと思いますが、大切にしたいものをあきらめないっていうのはとても大事だと思います。「介護だから」を理由に何かを諦めていく姿を子どもが見ると、子どもが未来において何かを諦めちゃう人生になってしまうんじゃないか。

彼らが大人になったときのほうが、介護に直面する割合は多いですよね。20年後30年後、現役世代と高齢者が1対1になる中で、もう介護が避けて通れない。子どもたちはそういった時代を生きることになるので、私たちが介護をしているから仕事辞めますとか、何かを大事にしたいところを諦めちゃうと、子どもたちが大人になったときに、社会が大変なことになってしまう。だから、諦めることなく、ダブルケアをすることができる環境を私たちの代で作りたいんです。

遠距離介護でも、仕事と子育てと介護は両立できる

室津:東京都などの都心部と地方のダブルケアって全然特性が違うんですよ。地方から大学進学を機に東京へ出てきて、そこで仕事をしたり家庭を築き、親が遠方に住んでいる方は多いと思います。データで明らかにしていないのですが、東京都は遠距離ダブルケアの割合が相当高いと感じました。それでも、マネジメントの仕方次第で子育ても介護も仕事も両立できると、私は思ってます。

だからこそ、神戸さんのやられている「わたしの看護師さん」はその支えになると思います。実は、私のお世話になっている知人も「わたしの看護師さん」を利用してダブルケアを乗り切ってる方もいらっしゃいます。

神戸:ありがとうございます。室津さんがおっしゃったみたいに、地方から都会へというと、男性が都会へ出ていくっていうイメージが強いじゃないですか。

でも実は、女性のほうが高かったりするんですよ。田舎の親も、娘を介護の一員として期待していると思うんですよ。でも例えば、女性が就職や進学を機に東京へ行き、そこで出会い、家庭を持ちます。そして結婚し、出産となると、完全にその期待は絶たれますよね。

室津:そうですよね。昭和とか子どもがもっとたくさんいて、7,8人で1人の高齢者を支える時代は家族だけで介護を乗り切るっていう考え方も成り立っていたと思います。今はもう2人で1人を支える時代、未来においては現役世代が1人で1人の高齢者を支えるっていう中で、家族だけで介護を支えることは難しいのではないでしょうか。

みなさんもご存じの通りだと思いますが、介護保険もしかりです。それと並行して、いろんなサービスを組み合わせて、「わたしの看護師さん」のような遠く離れた親のところに行ってくれて、そこで必要なサポートを柔軟にしてくれる方々も介護のチームに組み込んでいくことで、都心部に住んでいながらも、遠方の親を介護することはできると思うんです。

遠距離介護って、真っ先に頭によぎるのは自分が田舎に帰るか、それとも親を自分が住んでいる東京に呼び寄せるかですが、それによる影響も考える必要がありますよね。

介護のしくじり経験。子どもたちには“そうなってほしくない”

神戸:現役世代の40代、50代の人たちが実家に帰りますって言っても、そのお子さんたちがせっかく受験して入った東京の中学校や高校のことを考えて、お父さんだけ帰ってくださいという状況もあります。

ご高齢者様が今までコミュニティがあった場所から、1人単身で東京に行く。言葉も通じないし、寂しい、まちも分からないって話になると、住み慣れたまち、住みたいまちで生き続けること、一番大事だと思います。

「介護を一人で抱え込むのが当たり前」っていう感覚、意識を早くマインドチェンジしてほしいと心から思います。

室津:私自身も失敗しているので、もっとメインの介護者が楽になるような仕組みを作ってあげればよかったと後悔しています。例えば、介護保険の申請を元気なうちからしておくとか、もっと頼れる先を増やしておくとか。

私の失敗経験をみんなに伝えて、みなさんには1人でも頼れるサポートを増やしてほしいなと思います。

神戸:私たちも失敗の上に「わたしの看護婦さん」を作ってきていますので、私たち世代も困っているし、私たちの子ども世代の未来のことを思ったら自分事なんですよね。

こういう情報があれば、もっと楽に介護とも向き合えたかなって思いがあります。だからぜひとも、ダブルケアっていう言葉を教育の中にも入れてほしいですよね。情報があるのとないのでは目の前に突然介護がやってきても不安や恐怖が少なくなるんじゃないかと思うんです。

介護って大人の問題だと思われがちですが、教育の中に介護やダブルケア、もちろん結婚出産もそうですが、情報があることで子どもたちも将来設計がしやすいと思うんです。こういう風に生きていくんだ、この時に親がこんなことになるんだ、もしかしたら30代で介護がやってくる?と。私たちの失敗経験を、マイクを持って叫び続けなければならないのかなと思いますね。

この記事の内容は、Youtube配信をもとに記事化しています。
音声でお聞きになりたい方は、こちらのYoutubeをご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=uKSG7Ll_hJU

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