視覚障がいのある親の在宅介護 〜安全に暮らすための環境づくりとサポート〜

いつかはやってくる高齢の親の介護。高齢となり視覚に障がいを抱えるようになった親の介護に直面し、どのように日常生活のサポートをすればよいのか悩んでいる方もおられるのではないでしょうか。在宅介護をする場合、生活の中の些細な動作でさえ危険につながると不安を感じることもあるでしょう。

今回の記事では、視覚に障がいのある親を在宅介護する際に役立つ情報伝達の方法や、日常生活の介助のヒント、安全に暮らすための工夫をご紹介します。

視覚障がいのある親への情報伝達のポイント

以前とは、物の見え方が変わった高齢の親とともに暮らす中で、どのように視覚情報を伝えれば分かりやすいのか戸惑っている方も多いのではないでしょうか。親と安全と安心を共有するための情報伝達のポイントを解説します。

1. 歩行時の視覚情報伝達のポイント

場面を想像できるように、具体的に伝えることが大切です。「そこ」「あれ」といった抽象的な表現は避け、「右」「左」「前」「後」と伝えるようにしましょう。「5歩くらい先」など、数を入れて説明するとより距離感がわかりやすくなります。

2. 物の位置を説明するポイント

ご本人の体を基準にし、「右側に〇〇があるよ」などと具体的に伝えるようにします。また、手を引いて実際に物に触れてもらうようにすると、より理解が深まります。

時計の方向で物の位置を伝える「クロックポジション」も有効です。クロックポジションとは、時計の文字盤をイメージして方向や位置を表す方法です。本人から見て、正面奥を「12時」、右を「3時」、手前を「6時」、左を「9時」とします。物の位置を伝えるとき「3時の方向にあります」といったように伝えます。

3. 会話のポイント

視覚で情報を得られないため、会話の途中で介助者が頷いたり首を横に振ったりしても、本人には伝わりません。会話をする際は、「はい」「いいえ」などがきちんと伝わるように、声を出して返事をするように心がけてくださいね。

また、視覚に障がいのある方は、声のトーンに敏感になる場面も多いでしょう。突然大きな声で話しかけられたり、怒ったような口調で話しかけられたりすると、相手の表情や周りの状況が見えない分、とても不安になることがあります。なるべく落ち着いたトーンで話すようにしましょう。

4. 声かけのポイント

介助者が今何をしているのか、次に何をするのかといった状況を伝えることで、安心して過ごせます。席を外す時など、次の行動に移る時は一声かけてから行動するようにしましょう。

家族が部屋から離れるときは、「トイレに行ってくるよ」などと声をかけ、部屋に戻ってきた際も「戻ってきたよ」と簡単な声かけをすることで、親は安心できます。

<場面別> 安心して日常生活を送るための介助のヒント

親のサポートに少しの工夫を加えることで、より快適に生活できるようになります。暮らしの場面別に、介助の方法や気をつけることをお伝えします。

日常生活のサポート (着替え・食事・トイレ・入浴)

着替え
服の前後が分かりにくかったり、靴下の踵の位置が分かりにくかったりして、着用に時間がかかることがあります。前後が分かりにくい衣服には、手で触って前後左右が分かるようにボタンなどで目印をつけると便利です。

着替えを自分で行える場合でも、季節やTPOに応じた衣類か、服が汚れていないかなどを家族が確認することで、親は安心できます。

食事
食事の前にはメニューの内容や料理に入っている食材、食器の位置を説明しましょう。クロックポジションを活用するのもおすすめです。

また、直接食器に触れてもらうと、器に何の料理が盛りつけてあるかを理解しやすくなります。事前に、熱いものや食べにくいものは気をつけるように伝えます。調味料などは本人に確認してから食事にかけるようにしましょう。

トイレ
個室内に不要な物は置かず、できるだけすっきりとしたレイアウトにすると安全です。自分でトイレに行くことができると、本人の気持ちの負担が少なく、家族にとっても介護の負担が減ります。

外出先では、トイレが和式か洋式か、レイアウトはどうなっているかを説明します。トイレットペーパーや流すボタンが、本人から見てどこにあるのかを明確に伝え、実際に手で触って位置確認をしてもらいましょう。

入浴
入浴の際に気をつけたいのが転倒です。リスクを減らすためにも転ばないよう声をかけ、必要に応じて浴槽の出入りの介助、洗い場への移動介助を行うと安心です。

家の中を移動するときのサポート (歩行・階段・座るとき)

歩行
家具などを触りながらの伝い歩きは、住み慣れた家だからこそできる移動手段です。介助をするときは、親に介助者の腕または肩を持ってもらいます。介助者は親の半歩ほど前に立ち、歩調を合わせて歩きます。段差がある場所、歩きにくい場所を歩くときは、その都度伝えるようにしましょう。

階段での移動
介助者が階段に対して斜めの位置に立つと段差を把握しづらいため、階段の正面に立ちます。介助者の腕を親に持ってもらい、「階段を上るよ、下りるよ」など声をかけてから、一歩を踏み出すようにします。階段の上り下りが終わる時にも声をかけましょう。

座るとき
着席の際、椅子が動くとバランスを崩して転倒する可能性があります。椅子の位置を具体的に伝え、椅子の近くに来たら背もたれを手で触れてもらうように介助します。軽い椅子や、回転するタイプの椅子を利用するときは、介助者がしっかりと椅子を押さえておいてください。

住み慣れた家で安全に過ごすためのレイアウト

安全に過ごすための環境づくりの工夫をチェックリストにまとめてみました。参考にしてみてくださいね。

<家の環境づくり チェックリスト>

▢ 家具に目印をつける
視覚に障がいのある人は、家具の配置を頼りに移動しています。家具に触れたときに現在地が分かるような目印をつけておくのも効果的です。手がかりが増えることで、安心して家の中を移動できます。

▢ 模様替えはコミュニケーションを取りながら
部屋のレイアウトを本人に断りなく変えることは避けましょう。模様替えを頻繁に行うと、思わぬ転倒や家具への衝突につながることがあります。もし、家具の配置を変更した場合は、親と一緒に変更した部分を確認するようにしましょう。

▢ 廊下、階段に手すりを設置
手すりがあると、安心して移動できる範囲が広がります。半開きのドアや床に置いた荷物、コード類も転倒リスクを高めるので、安全に歩けるように整えてくださいね。

▢ 階段に物がないかチェック
階段は転倒リスクが高い場所の一つです。階段に物を置くと、つまずきの原因になるので注意しましょう。

▢ 椅子の周りに空間を確保
椅子の周りには物を置かず、動作がしやすいようにしておくと安全に座ることができます。

▢ 浴室を使いやすく
転倒リスクを減らすためにも、浴室には物を置きすぎず、整理整頓を心がけましょう。シャンプーとリンスは、ボトルについたギザギザ状のきざみ(ユニバーサルデザイン)を活用すると区別しやすくなります。また、輪ゴムを巻いてボトルを区別をする方法も便利です。

住み慣れた家でも、レイアウトによっては思わぬ危険につながることがあります。毎日過ごす場所だからこそ、安心して暮らせるように環境を整えましょう。

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視覚に障がいのある親を在宅で介護をするには、住み慣れた家の中の環境を整え、声かけなどのよる適切な情報伝達をすることが大切です。どのようなサポートが必要なのかを話し合うことで、親の自立を尊重しながら、お互いに良い距離感で共に暮らすことができます。

しかし、在宅介護を家族だけで抱え込むと大きな負担になることもあります。不安になったときや困ったときには、介護サービスや行政などのサポートを活用しながら、それぞれの家族に合った無理のない介護を続けていきましょう。

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