介護をしている親にせん妄の症状が現れたら? ~症状を改善させるためにできること~

介護をしている親が、急に大きな声で怒り出したり、今いる場所が分からない様子を見せたりして、戸惑った経験はありませんか?認知症に似たこの状態は、せん妄によって起きている場合も少なくありません。

親にせん妄の症状が現れたとき、「どのように対応すればいいの?」と不安になる方もいるでしょう。せん妄は正しい理解と接し方、日常生活に少しの工夫を取り入れることで、症状が落ち着きやすくなります。

この記事では、せん妄の基礎知識や症状が現れたときの親との接し方、症状を改善させるためにできる工夫についてご紹介します。

せん妄の基礎知識

せん妄って何?

せん妄は高齢者に多くみられる、混乱や注意力の低下を引き起こす一時的な意識障害です。数時間から数日、場合によっては数週間以上続くこともあるといわれており、次のような症状が多くみられます。

・急にぼーっとして感情が鈍くなる
・時間や場所が分からなくなる
・幻覚や妄想が出現する
・急に興奮して落ち着きがなくなる
・夜中に覚醒し、昼間に眠くなる

また、日中は落ち着いていても、夕方から夜中にかけて症状が強くなるという特徴があります。

せん妄が起こる原因

せん妄は一つの原因で起こるのではなく、複数の原因が重なって発症することが多くあります。発熱や便秘、脱水などの体の不調が原因となる場合が多く、その他に環境の変化や精神的なストレスによってもせん妄が起こる可能性が高まります。

認知症との違いを知ろう

せん妄は認知症と症状が似ているため、認知症と間違われる場合も少なくありません。それぞれの症状の特徴や経過を確認しておきましょう。

<せん妄の特徴>
急激に発症し、症状の出方が時間帯で異なります。原因となっている体調不良や環境要因が改善されると、症状も徐々に落ち着いていきます。

<認知症の特徴>
徐々に症状が強くなり、元の状態に戻ることが難しいといわれているのが認知症です。時間帯によって症状の出方が大きく変わることはありません。

認知症とせん妄は、同時に発症する場合もあります。正確に診断するためにも、気になる症状が現れたら医師の診察を受けることが大切です。

せん妄によって生じる介護の4つの困りごと

1. 会話や意思疎通が難しくなる
つじつまが合わない言動を繰り返すため、介護者は親とのコミュニケーションに難しさを感じることがあります。

2. 徘徊によって事故のリスクが高まる
今いる場所が分からなくなり、急に屋外に飛び出すことがあります。その場合、迷子や事故の危険性が高まるため、親から目を離せません。

3. 転倒や転落を起こしやすい
せん妄になると注意力や判断力が低下し、転倒したりベッドから転落したりする危険性があります。骨折などのケガに注意が必要です。

4. 夜間にせん妄が現れる場合がある
夜中に暴れたり大声を出したりすることがあります。夜間にせん妄が続くと、親も介護者も睡眠不足になり、疲労が蓄積してしまいます。

親がせん妄になったときの接し方と対応方法

せん妄の症状が表れた親との接し方

せん妄が起きているとき、親は強い不安や混乱を感じています。そのため、落ち着いた態度でゆっくりと話しかけてください。介護者が穏やかに接してあげると、親は安心できますよ。

親が時間や場所を間違えたり、幻覚や妄想が見られたりしても、否定するような言動は避けましょう。親の発言を正そうとせず、気持ちに寄り添う言葉かけをすることが大切です。

夜中に症状が出た場合の対処法

夜中は暗さや静けさから不安や混乱が強まり、せん妄の症状が現れやすい時間帯です。急に目が覚めて落ち着かなくなったときは、部屋を少し明るくし、ゆっくりと優しく声をかけてみてください。

また「家に帰らなきゃ」と外へ出ようとする方も少なくないため、思わぬ事故を防ぐために、寝る前には必ず玄関の施錠を確認しましょう。玄関の扉にセンサーや鈴などを取り付けると、玄関が開いたときに音がするので、おすすめです。

コミュニケーションの工夫

<在宅介護編>
日付や時間、今いる場所を親にこまめに伝えるようにしましょう。「今は朝の9時だよ」「ここは自宅の部屋だよ」など、具体的に今の状況を教えてあげると、親は安心して家で過ごすことができますよ。

<遠距離介護編>
親と直接コミュニケーションをとるのが難しく、「家で落ち着いて過ごせているのだろうか」と心配になりますよね。定期的に電話やビデオ通話をして、親とこまめに連絡を取り合うようにしましょう。通話機能が付いた見守りカメラを導入する方法もあります。

介護サービスの利用

せん妄になった親の介護は、疲労や睡眠不足などの大きな負担につながることがあり、心身に余裕がなくなると、親と落ち着いて関わることが難しくなります。そんなときは、訪問介護やショートステイなどの介護保険サービスの利用を検討してみましょう。

また、介護保険サービスでまかなえない部分に対応する介護保険外サービスもあります。買い物や病院への付き添い、せん妄が起きやすい夜間の見守りなど、介護保険サービスより柔軟なサービスを受けられる場合があります。

心に余裕を持って穏やかな気持ちで親に接するためにも、介護サービスを上手に利用しながら、ゆっくり休める時間を確保しましょう。

せん妄の症状を改善させるために在宅介護で気をつけること

せん妄の症状は、体がつらいというサインかもしれません。発熱や痛みなどの不調があるときは、かかりつけ医に相談し、必要に応じて治療をおこないましょう。また、脱水によってせん妄の症状が現れる場合もあるため、こまめに水分摂取を促すようにしてください。

家族ができる親のサポート

日常生活に少しの工夫を取り入れてみると、せん妄の症状が改善しやすくなる場合もあります。親の体調管理と生活環境を整えることは、日常的なケアとしてとても大切です。

せん妄の症状を改善するには、生活リズムを整えることが欠かせません。起床・食事・就寝の時間をできるだけ同じにすることが、親の安心につながります。また、親の表情や行動、食欲、睡眠などの変化に日頃から注意しておくと、少しの変化にも気付くことができます。

日常に取り入れたい小さな工夫

次のチェックリストを参考に、症状を改善させるためにできることを取り入れてみるのもおすすめですよ。

▢ラジオやテレビを活用する
ラジオやテレビによる刺激も、せん妄の症状を落ち着かせるのに効果的と言われています。

▢時計やカレンダーを目に入りやすい場所に置く
時間や日にちが分かりやすくなり、不安の軽減につながります。

▢眼鏡や補聴器はすぐ手に取れる場所に置く
周囲の状況を把握しやすくなり、混乱を防ぐことができます。

▢散歩や家事
在宅介護では、親が体を動かせるような関わりが大切です。一緒に散歩をしたり家事をしたりするなど、簡単なことから始めてみましょう。

介護、医療の専門家を頼る

せん妄の親を介護する方にとって、介護・医療の専門家は心強い味方です。せん妄の症状を改善させるためには、原因となっている体の不調に対応することが大切です。「いつもと様子が違う」と感じたときは、かかりつけ医に早めに相談し、薬や治療法について確認してみましょう。

また、地域包括支援センターの保健師やケアマネジャーに相談すると、せん妄の症状が出たときの親との接し方や、介護サービスの利用についてアドバイスをもらうことができます。「自分だけで何とかしなければ」と抱え込まず、困ったときは専門家を頼ってくださいね。

親のせん妄は、突然やってきます。「いつまでこの状態が続くのだろう」「がんばって介護をしているのにうまくいかない」と悩み、疲れてしまうこともあるでしょう。

そんなときは一人で抱え込まず、介護・医療の専門家の力を上手に取り入れながら、無理のない介護を続けていきましょう。

親もご家族も少しでも安心できる時間を増やしていけるよう、この記事が介護に悩む方の助けになれば幸いです。 

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