親の介護で在宅医療を利用したい!在宅医療を考えたときに知っておきたい基礎知識

親の介護が始まったとき、介護方法のひとつとして「在宅医療」という選択肢があることを知っていますか?

高齢化や住み慣れた場所で暮らし続けたいという思いを背景に在宅医療のニーズは高く、在宅医療が受けられるサービス機関も増加しています。

精神的・肉体的に大変な介護。その中でもさらに負担が大きいと考えられがちな在宅医療ですが、事前に基礎知識を知っておくことで、さまざまな負担を減らすことができます。

今回は在宅医療を考え始めた人が押さえておきたい基礎知識をご紹介します。

在宅医療はどんな医療が受けられる?

「在宅医療」とは、医療者側が患者さんの住んでいる自宅に訪問し、診療を行うことです。

通院が困難な方を対象としており、寝たきりや認知症で介護、支援が必要な場合、終末期の療養を自宅で受けたい人などが利用しています。

在宅医療では、医師や訪問看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)などの医療や介護の専門職の方が連携し、患者さんや家族と相談しながら治療計画を作成します。その計画にもとづき、定期的に訪問しながら治療を行います。

在宅医療で受けられるサービスは次の6つです。

①訪問看護
②往診
③歯科診療・歯科衛生指導
④リハビリテーション
⑤薬剤管理指導
⑥栄養指導

医師による診療だけでなく、歯科医師による歯科診療、管理栄養士による栄養管理・指導などさまざまなサービスを受けることができます。

在宅医療のメリット・デメリット

在宅医療を検討しているときの参考として、どのようなメリットがあるのかを知りたい人も多いのではないでしょうか。

在宅医療を考えるうえで、知っておかなければならない代表的なメリット・デメリットを紹介します。

在宅医療のメリット

1.患者さんの通院の負担を軽減できる
自宅から病院までの距離が長ければ長いほど、準備や移動など患者さんの負担が大きくなります。在宅医療であれば、移動せず治療を受けることができるので、それらの負担を軽くすることができます。

2.家族や介護者の負担を軽減できる
家族や通院に付き添う介護者についても通院・入院準備、移動介助などの負担を軽くできます。

3.患者さんが安心して過ごすことができる
住み慣れた家・地域で治療を受けることで、患者さんが安心して過ごすことができます。

在宅医療のデメリット

1.容体が急変したときの対応が難しい
常に家に医療者がいるわけではないので、容体が急変したときに家族だけでは対応が難しい場合があります。

2.家族の細かなサポート・支援が必須
同居している家族が日常の細かなサポート・支援をする必要があります。

3.最先端の医療を受けることが難しい
自宅に医療機器などをそろえることは難しいため、最先端の医療を受けたい、という場合は入院・通院での治療が必要になるでしょう。

在宅医療は患者さん自身の負担を減らし、住み慣れた家・地域で安心して治療が受けられることが魅力です。
その反面、自宅に医療機器をそろえることが難しいため、どうしても治療範囲が狭くなってしまいます。

このようなメリット・デメリットを理解したうえで、患者さんと家族、医師などの医療者とでよく話し合う必要があるでしょう。

在宅医療ではどんなことに費用がかかる?

在宅医療と通院による医療とで悩んでいる場合、知っておかなければならないのが費用面についてです。
在宅医療に必要な費用について説明します。

1.医療費
通院時と同じように医療費として診療費・薬代がかかります。公的医療保険制度が適用され、年齢・収入により1割〜3割の負担になります。

医療費が多くなってしまう場合には、次の2つの制度が利用できるか確認しましょう。

①高額療養費制度
病院や薬局などでの医療費の支払いが1ヶ月で上限(年収や所得によって変動)を超えた場合には、その超えた額が支給されます。
なお、支給を受けるには申請が必要となります。

参考:厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html

②自立支援医療制度
自立支援医療制度とは、心や体の障害がある場合に、その障害に関わる医療の自己負担額を軽くする制度です。
所得に応じて1ヶ月あたりの負担上限額が決まっているため、利用できる人が限られていますが、該当している場合には負担が軽くなります。
かかりつけの医療機関で確認しましょう。

参考:厚生労働省|自立支援医療
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/index.html

2.介護サービス
介護サービスを利用するときには、公的介護保険制度が利用できます。
介護保険内サービスと介護保険外サービスの一例を紹介します。

①公的介護保険内で受けられるサービス
 ⅰ福祉用具の貸与
 ⅱ訪問介護で食事や排泄の介助
 ⅲ訪問リハビリテーション

②公的介護保険外で受けられるサービス
 ⅰ主におむつなどの物品(自治体により助成がある場合があります。)
 ⅱ訪問理美容
 ⅲ外出支援

介護保険対象外のサービスは全額自己負担となるため、いくらまで負担できるのかを考える必要があります。
金銭的な負担は増えますが、介護保険外サービスを利用することで家族の負担を軽くすることができるので、選択肢の一つとして、検討しておくと良いでしょう。

在宅医療で家族の負担は増える?事前に準備しておくこと

在宅医療の場合「家族の負担がどれくらい増えるのか?」「事前に準備しておかなければならないことがあるのか?」などが気になりますよね。

在宅医療と聞くと排泄や入浴、食事の介助などで1日親につきっきりではないのか?と家族は不安になるかもしれませんが、介護保険サービス内の範囲で訪問介護を受けることにより、その不安は解消されます。
また、介護保険外サービスも取り入れることでさらに負担を軽減することもできます。

在宅医療を選択したときに事前に準備しておくことがあります。

1.介護サービスを受けるにあたって必要な手続きを済ませておく

介護保険の要介護認定の申請をして認定されると、福祉用具の費用や住宅改修費用などの一部について補助が受けられます。
また、認定を受けると介護保険内の在宅サービスを利用できるようになるため、訪問介護や訪問入浴介護などのサービス利用にかかる費用負担を少なくできます。

申請から認定を受けるまでに時間がかかるので、住宅改修などを考えているときは早めに準備していくことをおすすめします。

2.自宅の環境を整える

介護を始めるときには、自宅を介護しやすい環境に整える必要があります。
・トイレやお風呂、玄関に手すりをつける
・介護用の電動ベッドを購入、レンタルする
・浴室や玄関などの段差をなるべく少なくする
など、必要に応じて自宅のリフォームや福祉用具の購入、レンタルをしましょう。事前に調べ、介護保険の補助制度を活用すると費用を抑えて環境を整えることができます。

3.緊急時の対応を具体的に決めておく

在宅医療で不安になるのが、患者さんの具合が急に悪くなったときですよね。
「夜間や休日に具合が悪くなったらどうしよう」「どこに連絡していいのか分からない」といった疑問や不安に思うことは事前に調べてメモをしておきましょう。

緊急時の連絡先は誰でも見られる場所に貼り、いつでも確認できるようにしておくと安心です。救急処置方法も、担当のケアマネジャーなど普段から介護に関わってくれる人に相談して学んでおくと、いざという時に落ち着いて対応ができるでしょう。

在宅医療の一番の特徴は、医療や介護が必要な状態になったときに愛着のある地域でリラックスして治療を受けられることです。

「住み慣れた家・家族とともに安心して過ごしたい」
在宅医療は、そのように考える患者さんの思いを叶え、さまざまなサービスを利用することで家族の負担も減らすことができます。

在宅医療を考えるのであれば、大切なのは患者さんと介護に関わる家族が、お互いに在宅医療を選んで良かったと思えるようにすること。

在宅医療を検討するときは、一度かかりつけの医療機関へ相談し、しっかりとした事前準備を行いましょう。

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