遠距離介護の親が困りごとを言わないとき 〜見逃せないサインと対話のコツ〜

離れて暮らす親に「困っていることはない?」と聞くと、決まって「大丈夫だよ」「心配しなくていいよ」という答えが返ってくる。そんな経験はないでしょうか。その背景には、「子どもに気を遣わせたくない。弱みを見せたくない」と考える親の本音が隠れている場合があります。

遠距離介護では、親の本音を直接確かめることができず、もどかしさを感じることも少なくありません。しかし、親からのサインは、帰省時の様子や日々のやり取りの中に表れています。

この記事では、心身の状態や衣食住・生活環境の変化に見られる困りごとのサインを紹介し、親との対話のヒントや専門家に相談する大切さをお伝えします。

親の心身の困りごと 〜見逃せないサインはどのように表れるの?〜

加齢とともに、身体の衰えや物忘れなど、心身の変化による困りごとは少しずつ増えていくものです。こうした変化は、日常のさまざまな場面の中に表れます。

<帰省したとき> 実家で確認したい、心身の状態から分かる困りごとのサイン

お盆や年末年始などで実家に戻ったときは、親の日常の様子をさりげなく見ておくことが大切です。

・身体機能の変化
日常の動作や体の変化では、歩くときの歩幅が狭くなっていないか、段差でつまずくことが増えていないかに目を向けてみましょう。椅子から立ち上がる際に支えを必要としていないかも確認しておきたい点です。

買い物の際に小銭を出すのに時間がかかる、お札ばかり使うようになったなどの場合は、手先が動かしにくさや判断力の低下が影響している可能性もあります。

食事中にむせることが増えていないかも見逃せない変化です。

・認知機能の変化
会話や身の回りの変化から、認知機能の低下に気づくことがあります。親が運転をしている場合は、車体や車庫に以前はなかった傷やへこみが増えていないか確認しましょう。

また、会話の中で同じ話を繰り返していないか、話のつじつまが合っているかも気になる点です。身近な物や人の名前を「あれ」「あの人」と言い換えることが増えていないか、最近の出来事を覚えているかも確認しましょう。

・意欲・感情の変化
親の普段の過ごし方にも目を向けてみましょう。外出や人との交流が減り、横になってテレビを見ている時間が増えていないでしょうか。

夜遅くまで起きて昼間に眠ることが増えたり、夜中に何度も目が覚めたりするなど、睡眠のリズムの乱れも注意したい変化です。生活の変化は、落ち込みやいら立ち、表情の乏しさとして表れることもあります。

<日々のやり取りを通して> 遠距離介護で気づく心身の困りごとのサイン

遠距離介護では、電話やビデオ通話が親の体調や心の変化を把握する手がかりになります。

・会話での違和感
言いたい単語がすぐに出てこず言葉に詰まったり、話のテンポが以前と変わったりしていないか確認しましょう。また、同じことを何度も言う、話の筋が通っていないといった変化も重要なサインです。

・意欲や感情の変化
以前はよく話していた趣味や好きなことの話題が減っていないでしょうか。些細なことで怒りっぽくなったり、落ち込んだりするなど、性格や活力に変化を感じることもあります。

・身体の変化
ビデオ通話では、顔色や表情だけでなく、以前より痩せていないか、声に力があるかといった身体の変化を確認しましょう。あわせて、何度も聞き返す、聞こえにくさから声が大きくなるなどの変化がないかも意識しましょう。

こうしたやり取りは、介護サービスの利用を始める時期を見極める重要な手がかりになります。

衣食住・生活環境の困りごと 〜暮らしの中の見逃せない手がかり〜

衣食住や生活環境の状況は、親の暮らしが無理なく回っているかを知る手がかりになります。変化に目を向け、困りごとのサインを確認しましょう。

<帰省したとき> 実家で確認したい、衣食住・生活環境から分かる困りごとのサイン

親の生活を4つのポイントを参考に、あらためて見渡してみましょう。離れて暮らす普段のやり取りでは見えてこない変化に気づくことができます。

1. 衣 (身だしなみ・清潔さ)
久しぶりに会った親の身だしなみに、以前との違いを感じることはないでしょうか。いつも同じ服ばかりを着ていたり、服の汚れにあまり気が回らなくなっていたりする様子は、気にかけたい変化のひとつです。また、暑い時期に厚着をしているなど、季節感にそぐわない服装をしていないかも、あわせて確認しておきたいポイントです。

2. 食 (食事・栄養)
冷蔵庫に賞味期限切れのものや、同じ食品がいくつも入っていないか確認してみましょう。栄養が偏っていないか、同じものばかり食べていないかなど、食事中の様子を確認することも大切です。買い物や調理が負担になっていないかも気にかけてみてください。

3. 住 (家事・家の管理)
部屋が散らかっていたり、掃除が行き届いていなかったりする様子は、気にかけたい変化です。洗濯物を干す、畳むといった作業が負担になっていないかも確認してみましょう。ゴミ出しでは、分別やゴミ捨て場への運搬がスムーズにできているかにも、意識を向けてみてください。

4. 生活環境 (移動手段・お金の管理・薬の管理)
通院や買い物の際に、車や公共交通機関をこれまで通り無理なく使えているか、確認してみましょう。運転中に不安な場面が増えていないかにも、目を向けてみてください。

金銭管理では、通帳や現金の置き場所を忘れていないか、請求書などが未開封のまま放置されていないかを確認しましょう。

薬の管理についても、処方された薬を忘れずに飲めているか、取り出しがスムーズにできているかを確認しておくことが大切です。

<日々のやり取りを通して> 遠距離介護で衣食住・生活環境の困りごとに気づくには?

遠距離介護では、親の住む地域の介護サービスの専門家や、周囲の方の客観的な視点から、暮らしの状況を把握することが重要です。

・安否確認、見守りサービスの活用
配食サービスや見守りサービスを利用すると、対面でのやり取りを通じた顔色の変化、会話の受け答えの変化など、小さな異変にも気づいてもらえる場合があります。

・近隣の方や地域とのつながり
近隣の方や地域の民生委員などに、ときどき様子を見てもらえるようお願いしておきましょう。ゴミ出しができているか、庭の手入れが放置されていないかなど、遠距離からでは見落としがちな生活環境の変化を把握しやすくなります。

・専門家とのつながり
地域包括支援センターや訪問介護サービスなどのスタッフに、訪問時の親の様子や気になる点を家族に報告してもらう仕組みをつくりましょう。第三者の視点が入ることで、客観的に親の変化を捉えやすくなり、いち早く異変に気づけるようになります。

親とのコミュニケーションの取り方と困りごとへの対応方法

日頃から会話を重ねることは、親のちょっとした変化に気づくために欠かせません。もし困りごとのサインに気がついたら、そのままにせず、コミュニケーションを上手にとり本音を聞くことが大切です。専門家の力も借りながら、共に支えていく姿勢を心がけましょう。

本音を聞くためのコミュニケーション、3つのコツ

親が何に困っているのか、その本音を話してもらうためには、まずは自分から歩み寄る姿勢を大切にしましょう。

1. 家族みんなでビデオ通話
お孫さんにも参加してもらうと、場が和やかになり、親も自然な流れで近況を話しやすくなります。

2. 会話の進め方のコツ
いきなり困りごとを聞くのではなく、まずは最近の出来事や、たわいもない日常会話から始めてみましょう。親の変化に気づいたとき、頭ごなしに指摘するとプライドを傷つけてしまい、困りごとを話してもらえなくなります。責めるのではなく、寄り添う姿勢を大切にしましょう。

3. 会話を広げる工夫
話を遮らず、聞き役に回ることを意識してみましょう。「自分の話をしっかり聞いてくれている」と感じると、親はもっと話したいという気持ちになります。親の話に質問を投げかけると、「関心を持ってくれている」という安心感が伝わり、会話がさらに弾みます。

聞こえづらさがあるときは、ゆっくり、はっきりと話しましょう。言葉だけでなく、身振り手振りや笑顔を心がけることで、スムーズなコミュニケーションにつながります。

困りごとへの対応を家族だけ抱え込まず、介護の専門家に相談

まだ介護が必要な段階ではなくても、変化のサインに気づいた早い段階から、①から③の流れに沿って介護サービスの情報を集めておきましょう。介護予防に取り組むことで、親の自立した生活を支える助けとなります。 

① 地域包括支援センターへ相談
まずは地域包括支援センターや市町村の高齢者福祉を担当する窓口へ相談しましょう。介護サービスの利用方法や遠距離介護での心配ごとなど、さまざまな相談に乗ってもらえます。 

② 介護保険制度や介護保険外サービスの活用
親が介護保険制度において要介護・要支援の認定を受けた場合、ケアマネジャーは遠距離介護においても非常に頼りになる存在です。親の状態に合わせて介護保険サービスの利用を検討しましょう。

要介護・要支援の認定を受けていない場合や、病院付き添いなど原則として介護保険サービスでまかなえない部分は、介護保険外サービスを活用することで、親の心身の状況を把握しやすくなります。

③ 多角的な連携と継続的な確認
帰省したタイミングで、地域包括支援センターやケアマネジャーへ直接相談を行い、今後の訪問や生活設計について話し合いましょう。その後も定期的に連絡を取り、専門家の目から見た親の様子を聞き続けることが大切です。

遠距離介護では、「大丈夫」という言葉に隠れた親の本音を見逃さないことが大切です。帰省時には歩行や会話などの心身の変化、冷蔵庫の中やゴミ出しなどの生活環境を直接確認しましょう。

また、日ごろから電話での声のトーンに気を配ることや、見守りサービスなどの利用も異変に気づく貴重な手段です。変化に気づいたら、親のプライドに寄り添う対話を心がけながら、早い段階で専門家へ相談し、連携し支え合うサポート体制を整えましょう。

介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。

「わたしの看護師さん」は、東京・愛知・大阪・兵庫・鳥取・島根・広島・長崎など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。

「介護に関するお役立ち情報」を随時更新しています。ぜひ介護のお困りごとの参考にご覧ください。

Facebook X Instagram