「実家に住む親が認知症かもしれない……」
「親が認知症で介護をしているけど、離れて暮らしているからどうしたら良いかわからない……」
そんな悩みや不安を抱えていませんか?
遠距離介護の場合は、いざという時に駆けつけることができなかったり、普段の親の様子がわからない、という点から心配になることも多くあるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、離れて暮らす認知症の親の介護のポイントや対応法などを紹介します。
認知症の実家の親を介護する上でのトラブルとは?
まずは、認知症の親を遠距離介護する上でおこり得るトラブルを挙げてみます。どのようなトラブルがあるのか把握して、それぞれに対処していきましょう。
トラブル① 徘徊
徘徊とは、認知症の中核症状の影響で現れる周辺症状の1つです。認知症になると必ず徘徊するわけではありませんが、症状が現れた場合、昼夜問わず徘徊することが多く、介護する側の負担は大きいでしょう。
実際に起きている行動の例として、自室やトイレの場所がわからなくなり、いつまでも歩き続けることが挙げられます。また、外出先から自宅に帰れなくなったり、踏切内への侵入や車道への飛び出しといった命の危険をともなった行動を起こしたりすることがあります。
認知症の親と離れて暮らしている場合、このようなことがあっても気付くことができません。特に、家の外での出来事は何が起きるか予測できず不安が尽きません。
トラブル② 治療が思うように進まない
認知症による不安や妄想などの心理症状によって、病院に行くことを拒否したり、医師に自分の状態を上手く伝えることができず、治療方針が定まらないことがあります。また、症状の進行にともない服薬の自己管理が難しいことも。
しかし、遠距離介護の場合、一緒に暮らしていないので普段の親の症状を把握できません。親も認知症のため症状を本人から聞くことも難しく、病院付き添いをしても医師に親の症状を伝えられない場合があります。
トラブル③ 身の回りのことが自分でできなくなる
物忘れや筋肉の衰えにより、何をするにも時間がかかるようになります。また、理解力や判断力が低下すると、食生活の乱れや火の不始末を起こしやすくなる危険性も。
認知症の進行状況に応じては、家事や身支度が1人でできなくなることがありますが、親がこのような状況下にあったとしても、遠方に住んでいると、月に数回しか手伝うことができません。
認知症の遠距離介護にはどんなサポートが必要?
それでは、遠距離で認知症の親の介護をする上で必要なサポートがどのようなものなのか考えていきたいと思います。
介護はいつまで続くかわからないので、無理なく出来る範囲で継続してサポートを続けられることが重要です。大きなミッションを自分に課すと介護する側自身の生活や健康に影響が出てしまうこともあるので、大きな負担を抱えず、少しの努力を長く継続するようにしましょう。また、親自身の意思も可能な範囲で尊重することが円滑な介護を行う上で大切だと考えられます。
実際に介護が始まると、親の代わりに意思決定をしなくてはならないときが多々あります。
長くなる可能性のある介護生活も、できる限り自分らしく楽しく過ごして欲しいですよね。そのためにも、事前に親と定期的なコミュニケーションを取り、どんな老後を送りたいのか親の希望を聞いてみるのも良いでしょう。
他にも、家の改修やバリアフリー化を行っておくと、いざ介護をするとなった時にスムーズに進めることができます。
また、便利グッズを活用すると介護をよりスムーズに進めやすいです。事前に検討してみましょう。
ここで、便利グッズについて少し紹介します。
①ネットワークカメラ
照明や家電のような毎日使用するものに通信機器がついているものがあります。一定時間使われないと家族に通知されるなど、監視カメラとは違い、プライバシーは保ちつつ、見守りできるICT機器があります。ICT機器を用いれば、遠方からでも親の様子をうかがうことができます。
②GPS
GPSがあれば、家から出られないようにしてしまうなど極端な対策ではなく、日常的な心配を減らしながら、もしもの時に備えることが可能です。徘徊の心配があるときは特に有効です。携帯しやすい小型のGPS端末でスマホから位置確認できるものもあります。遠くからでも一目で親の居場所がわかるので安心できるでしょう。
③服薬サポート
知的機能の低下に伴って、多種類の薬を指示通り服用することが次第に難しくなります。だからといって、介護する側が全面的に管理し始めるのは必ずしも適切ではありません。介護の基本は、介護される側の残存能力をできるだけ尊重して、できない部分をさりげなく支えることです。そのために、薬を一包化したり、お薬カレンダーを使うと、薬の飲み忘れを防ぐことができるでしょう。また、遠距離介護では親のサポートを毎日することが難しいため、認知症の親自身で薬の管理が可能なことは大きなメリットになるでしょう。
④配食サービス
高齢になると咀嚼力が衰えるため誤嚥をする可能性が高くなります。そのような場合、食材を細かくしたり、とろみをつけたりと調理の仕方を工夫しなければなりません。また、認知症の影響で食事を取り忘れることや偏った食事になることがあります。配食サービスを利用することで、栄養を考慮して調理したものが届くのでバランスの取れた食事ができるようになり、さらに配食サービスでは調理した料理が定期的に手渡しで配食されるため安否確認が同時にできます。
遠距離介護を続けていくための介護方法やサービス
それでは認知症の親の遠距離介護をうまく続けていくためにどういった介護方法を活用したら良いのでしょうか。
介護保険サービスの利用
65歳以上で日常生活の介護や支援が必要になった方は介護保険サービスを利用することができます。地域包括支援センターや市区町村の窓口で申請した後、要支援・要介護と認定されれば、サービスや給付金を受け取れます。
<自宅で受けられるサービス>
・訪問介護
介護員が自宅訪問をし日常生活の支援
・介護やリハビリテーション
健康状態の確認、身体機能の維持や回復を支援
<通所サービス>
・デイサービス
食事や入浴の支援、健康状態の確認、レクリエーションなどを通した生活支援
・デイケア
身体機能の維持や回復を支援
<入所サービス>
・ショートステイ
介護老人福祉施設などへ短期間入所し機能訓練や日常生活を支援
これらのサービスを利用すれば、遠方に住んでいても公共の機関と協力して認知症の親の介護を安心して行うことができます。
介護保険外サービスの利用
介護保険外サービスには、定期的に親の様子を見に行きたくても遠方のためなかなか行けない、仕事をしていて親に連絡をする時間が取りづらい、といったお悩みを解決してくれるものがあります。
例えば、病院・外出先への付き添いや体調維持の相談にのってくれるサービスなど。これらのサービスの中には、医療介護資格や看護師資格を保持したプロが対応してくれるものもあるので安心して任せられるでしょう。
「わたしの看護師さん」では、看護師など有資格者による、病院付き添いや買い物代行などの保険適用外のサービスを受けられます。特に、病院付き添いでは、医療資格を持っているからこその視点で医師や家族へ説明することが出来るため、治療を円滑に進めやすくなるというメリットがあります。また、遠くからでも見守りができるように見守りカメラの設置やビデオ通話をサポートすることも。看護師が横についているので、親御さんの日頃の様子をご家族へお伝えしたり、聞き取りづらい会話は間を取り持ってお伝えすることもできます。
紹介したようなサービスを利用すると、よりスムーズに遠距離介護を進めることができるかと思います。
しかし、遠距離介護でスタートしたとしても、ある段階を迎えたら同居や近居、施設への入居といった選択をする必要が出てくる時がくるかもしれません。1人でトイレに行けなくなった、食事をとらなくなった、火の始末が出来なくなったなど、日常生活を送る上で大きな支障が出てきた時がタイミングとなるでしょう。しかし、これといって明確な移行段階があるわけではないので、それぞれの家族でよく話し合って決めましょう。
遠距離介護を成功させるためのコツ
ここからは遠距離介護を成功させるためのコツを紹介します。
遠距離介護をする上では、実は“下準備”が大事なのです。今は、親の介護の心配がなかったり認知症を発症したりしてなくても、その時は突然訪れるかもしれません。急なことで焦らないように準備はしっかりと行うと良いでしょう。遠距離介護中の方や認知症の親の介護をしている方も、意外と見落としていることがあるかもしれませんので、もう一度確認しておきましょう。
介護の分担を相談する
家族でどのように介護の分担をするのか相談をしておきましょう。
例えば、自分たちでサポート出来そうなことや出来なさそうなこと、帰省の頻度などを考えておくと良いでしょう。直接介護に携わるのが難しい場合は、資金の援助をするといった方法でも介護に関わることが出来ます。また、ケアマネジャーや介護サービス事業者など外部の方々とのやり取りがスムーズにいくよう、連絡の窓口担当も決めておくと良いのではないでしょうか。お互いの生活状況を踏まえて、何が出来るのかを確認し、分担を決めておきましょう。もちろん、1人にだけ負担がかからないよう、家族一人ひとりが担当を持ち協力することが大切です。
介護方針を相談する
家族間で事前に認知症の進行度合いに応じた対応方法を決めておくと良いでしょう。例えば、1人で入浴することが難しくなったら訪問介護やデイサービスを利用する、買い物や火の取り扱いに不安が生じたら配食サービスをお願いする、というように大まかにでも考えておきましょう。そうすることで、どのサービスを使えば、どの段階までは遠距離介護を続けられるのか把握することができます。また、ある程度方針が定まっていれば、今後の動きを見越して事前に備えることができるでしょう。
介護にかかる費用に備える
病院への通院や入院、介護保険サービスの利用には当然費用がかかります。これらの費用は、基本的に年金や貯蓄など、親の資産でまかなうものと考えておくと良いでしょう。しかし、親の資金だけでは足りず、子どもが負担するケースもあります。お金のことは親子でも聞きにくいものですが、親の年金額、預貯金、借金の有無、加入している保険の種類などを事前に知っておくことをお勧めします。また、あわせて通帳や印鑑の保管場所などを事前に確認しておくと良いでしょう。
介護保険サービスについて知っておく
介護サービスといっても、自宅から通うもの、自宅に来てもらうもの、施設に入所するものまで、サービスは多岐にわたります。これらを一通り全て知るのは大変です。サービスによっては、事前に見学した方が良い場合があるので、あらかじめ情報を集めておくことが大切です。
地域包括支援センターや市町村などが運営している地域の施設やサービスなどを確認しておきましょう。
介護への取り組み姿勢を考えておく
遠距離介護では、精神的・体力的な負担、トラブルが起きたときに上手く対処できないことに対するストレスなど、様々な問題が起こる可能性があります。このような負担やストレスを1人で抱え込む前に、ケアマネージャーをはじめとするプロ、周りの家族や親族、近所の人などに相談や協力をしてもらい、少しでも負担やストレスを抑えることが大切です。
親の現状について知る
親の日常の生活パターン、認知症を発症している場合は症状を把握しておきましょう。その中で、親が困っていることや不安に思っていることを知り、支援が必要なことを事前に確認しておくことが大切です。
また、親の友達や近所付き合いのある人を把握しておくと良いでしょう。もしかしたら、サポートしてくれる人がいるかもしれません。そのためにまずは帰省の回数を増やしたり、zoomやLINEなどのwebツール、電話などでコミュニケーションを密に取り始めましょう。
今回は認知症の親の遠距離介護についていろいろ紹介してきました。
いざ介護が始まったときに少しでも慌てないようにしたいですよね。特に普段の様子が見えにくい遠距離の場合は、事前準備をしっかりと行っておくことが大切です。また、準備を万全にしていても介護では予期しないことが出てくるものです。そんな時でも、柔軟に対応出来るよう、離れて暮らす親とはもちろん、介護に協力をしてくれる人たちとの密なコミュニケーションを欠かさないことが成功のカギとなります。
遠距離介護は、近くでサポート出来ないことで不安や心配も多くなりますが、決して1人で抱え込まず、周りに頼ったり、制度やサービスを上手に活用していきましょう。
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