認知症の親御さんが治療のために、お薬を飲んでいるという方も多いと思います。しかし、年齢を重ねるたびに服薬するお薬も増えて、「本当に効果があるのか?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、岡山県にある「なかよし薬局」の中山智津子先生をお呼びし、「認知症の薬物治療」についてお話しました。
神戸:智津子先生はお薬治療がお得意ということで、認知症の方のための治療薬についてお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
中山:こんにちは、よろしくお願いいたします。
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この記事の内容は、Youtube配信をもとに記事化しています。
音声でお聞きになりたい方は、こちらのYoutubeをご覧ください。
認知症の治療薬について~副作用の実態と正しい薬の選択~
中山:代表的な認知症のお薬には 、“アリセプト”、“レミニール”、“リバスタッチ” があります。また、最近では“メマリー”と呼ばれるお薬も出てきました。これらのお薬の目的はあくまでも進行を止めるということ。つまり、服用したからといって必ずしも完治するわけではないんですよね。
神戸:私も認知症の方の通院に付き添うときに、お医者さんにそのようなお話を聞いたことがあります。しかし、大抵は「認知症は進むかもしれないけど、ゆっくりになるよ」と曖昧な話で終わるんですよね。
中山:そうなんです。それは進行をゆっくりにするという意味でもありますし、そもそもご本人も周りの方も薬の効果に気付きにくいんですよね。
また、服用するにあたって副作用も出てきます。吐き気や食欲不振などは少しずつ慣れてきますが、興奮性の副作用が出る場合があるんです。例えば、今まで温和だった方が急に乱暴な言葉を喋りだしたり、暴力を振るったり、あるいは生活習慣が昼夜逆転してしまうなんてことが挙げられます。
神戸:しかも、結構な頻度で症状が見られたりしますよね。
中山:メマリーに関しては副作用は出にくいと考えられているんですけど、アリセプトなどは興奮性の副作用が出てきやすいと言われています。そういったリスクを抱えてまで、薬物治療をする必要があるのかなっていうのは思ったりしますね。
神戸:ただ、ご家族がお医者さんに「副作用が強いのでやめてほしい」ってなかなか言いづらい気もするんですよ。
中山:たしかにそうですよね。でも、どうしても副作用がひどい場合は、一度お医者さんに相談することをおすすめします。
疑問に感じたら主治医に相談する
中山:デール・ブレデセンというお医者さんが書いた『アルツハイマー病 真実と終焉』という本があります。この方は500人以上ものアルツハイマーの患者さんを治した名医です。
神戸:治したってところがこの人のすごいところですよね。
中山:そうなんですよね。
この方は「アルツハイマー病というのは屋根に穴が36個空いた状態の雨漏り」と表現しています。これは、アルツハイマー型認知症の発症には36個の要因があり、それに対処することで認知症は治るという意味です。ところが、実際に治療薬で対処できる要因は1~2個程度と考えられており、非常に少ないことが分かります。
では、残りの要因はどのように対処すればいいのでしょうか。これは、生活習慣の改善が有効だと考えられています。例えば、食生活において糖質制限をしたり、添加物の少ないものを摂取したりといったことです。
神戸:なるほど、そんな本があるんですね。もし患者さんや、ご家族がこの本の内容を知ったら、今の治療法に疑問を抱く方が出てくるかもしれませんね。
中山:そうですね。実はお医者さんであっても、生活習慣を変えることが認知症の治療に効果的であることを知らない方も多いです。そのため、興奮性の副作用の相談をした結果、安定剤や睡眠剤の量が増えてしまうなんてこともあります。また、一般的にお薬を5〜6種類くらい飲むと、副作用が出やすくなると言われています。
神戸:副作用のせいで転倒して入院なんてことも起こってくると怖いですよね。そうならないためにも、治療に疑問を感じたら一度、主治医に相談してみることも大切だと思います。
中山:そうです。お医者さんと上手なディスカッションをするためにも、お薬の量が多いとそれだけリスクも多いということを今一度理解することが大切です。
漢方薬による認知症の治療
中山:漢方薬ってご存じでしょうか。認知症の治療には高血糖予防が不可欠になるので、糖質をコントロールするような漢方薬を使うことがあります。また、漢方薬といっても血圧を下げるものや、血流を改善するものまで様々なものがあります。
ところで、「女性ホルモンはものすごく認知症との関わりが深い」といわれているんです。実は、女性ホルモンが低下すると認知症になるリスクは急増し、特に75歳以上になると男性よりも発症率が圧倒的に高くなると考えられています。そのため血流をよくすることで、女性ホルモンの分泌を助けてくれるような漢方薬を使うこともあります。
神戸:そうなんですね。はじめて聞きました。
中山:あとは、アリセプトを服用することで攻撃的になったりする方に出される漢方薬に抑肝散と呼ばれるものがあります。これは、周りの人のための漢方薬であって、本人のための漢方ではないんですね。というのも、夜寝てくれないとか、攻撃的で困るとか、そういった訴えを聞いてお医者さんが処方するという流れがあります。
神戸:なるほど。私も冷え性などが出てきて女性ホルモンの乱れを感じる事があります。
歳を重ねると女性に限らず、もちろん男性もホルモンのバランスが崩れて身体のケアが難しくなってきますよね。中山先生がおっしゃってくださいました漢方薬は、医療保険の処方箋でも出してもらえるお薬なんですか?
中山:医療保険適用のものもあります。また、処方箋無しであってもご購入いただくことは可能です。
神戸:私は認知症の治療を受けている方にお会いすることもあるんですが、漢方薬で治療されている方にはなかなかお会いしたことがないんですよね。
中山:そうですね。漢方薬のみの治療というのはあまりないと思います。
神戸:漢方薬の治療の効果が期待されるということで、お医者さんに相談して、お薬の処方箋を出してもらうこともよいかもしれません。
電子版おくすり手帳~新しいおくすり手帳のあり方~
神戸:例えば、先ほどお話された漢方薬の処方箋をもって薬局に行ったところ、取り扱っていなかった場合があったとします。そこで、中山先生の「なかよし薬局」に処方箋を郵送したら処方してくださるのでしょうか?
中山:もちろん処方させていただきます。ですが、郵送だと時間がかかってしまいますので、FAXで送っていただくだけで大丈夫です。あとは、スマホのアプリで使える“おくすり手帳の電子版”があるんです。このアプリを使うと、処方箋をスマホのカメラで撮り、写真を送っていただくという方法で対応することができます。
神戸:おくすり手帳の電子版ですか?
中山:そうなんです。アプリのおくすり手帳はたくさん出てきていますが、いずれも同じように情報を送っていただいて処方箋の内容を確認することができます。
※(日薬アプリ正式名称:“eお薬手帳” を記事に起こさない場合)
神戸:自分でスマホを操作して処方箋の内容を薬局に送るということですか?
中山:そうですね。ご本人やご家族の方が、処方箋の内容をスマホで送信すると、事前に登録している薬局のほうにその内容が伝わるようになります。
神戸:すごい、新しいですね。これは「なかよし薬局」でも同じように使うことが可能ですか?
中山:はい。もちろん可能です。
高齢者の方は機械を扱うことに抵抗があるかもしれませんが、スマホをお使いの方がご家族にいらっしゃれば、ご本人さんに代わりご利用できると思います。
神戸:このスマホのおくすり手帳を活用することで、介護をするご家族が親御さんの服用されているお薬の情報をすぐに把握することもできますね。
中山:そうですね。電子版おくすり手帳の中にはデータとして残るように我々もQRコードを発行しますので、いつでも確認することが可能です。
ただ、処方箋の原本はどうしても必要ですので郵送していただくことになりますが、後で送っていただいてかまいません。また、処方箋無しでもお出しできる漢方薬もあります。そういった場合は私たちの公式のLINEで相談していただいたり、お電話をいただくなどで対応することができます。
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認知症の方の介護をしていると、治療方法に疑問を持つご家族もいらっしゃると思います。そのような時は素直に主治医に相談することをお勧めします。また、糖質制限をしたり血圧を正常に保つ食事を摂るなど、生活習慣を変えることで認知症が改善することも分かってきました。
さらに漢方薬を使って、からだの調子を整えることで認知症を予防する効果があると期待されています。患者さんのご家族も積極的に治療に関わっていくことが、認知症との上手な付き合い方に繋がるでしょう。
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